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『野球小僧』編集部アンケート

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過去のアンケート内容とその結果

  • 001 今年最も興味があるチームは?

2010-10-05

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈最終回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをお送りして来ました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件とし、本人も「臨むところ。1度でも遅れたら連載やめてエエワ!」と、了承のうえで始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 実際には一度締め切りを守れなかったことがありましたが、読者のみなさまの温かい励ましもあり、連載は継続。パ・リーグは全日程を終了し、このたび無事に最終回を迎えました。

 筆者・谷上史郎氏の今シーズン最後の苦言と、それでもなお抱き続ける愛情あふれるゲキをご堪能下さい。            

       

今季を振り返ってみると

101005tokada大阪周辺の地下鉄駅にはパ・リーグ本塁打王が確定したT-岡田選手のポスターが掲示されている

 

 10月2日の午後、福岡博多で人を待っていると携帯にパソコンからの転送メールが届いた。オリックスが配信する「EmilyのバファローズNet裏通信Vol.99」だ。開けてみると記事はこんな感じで始まっていた。

「昨日、パ・リーグの全日程が終了いたしました。最後の最後まで皆さんの声援が力になりました!! 温かいご声援、本当にありがとうございました(^^)。Bsは、69勝71敗4分の5位と言う結果でしたが…金子投手の最多勝利投手賞に、T-岡田選手のパ・リーグ本塁打王!! カブレラ選手は最高出塁率賞!!来シーズンへ向け、収穫があったのも確か(* ̄0 ̄*)ノ」

 というわけで今シーズンが、1日の最終戦(対ロッテ)で終了。CSに進出していれば続く予定だったブログも今回でひっそり終了となる。
 あとになって振り返れば、今季はオリックスファンにとってT-岡田が世に出た年として記憶される1年になるのだろう。そこにチームとして振り返った時にも「翌シーズンにつながる1年だった」と位置づけできるようになっていればいいのだが。そのためにはもちろん、来季の成績次第ということになる。
 今季の5位は確かに昨年の6位と順位は1つしか違わなくとも、残した数字も内容も大きく違う。ただ、そこを「それ以上」に捉えてしまうと、前回も書いたが一昨年の首位まで2.5ゲーム差の2位から最下位に転落した昨年のようになる可能性もある。

       

▼「これでCSへ進んでいいのか」という想いも

 最終のロッテ戦が行われた1日。夕方に横浜で取材が終わり、足を伸ばせば何とか千葉マリンへ向かえたが、そうはせず大人しく大阪へ戻った。10日ほど前なら、この最終戦(雨で順延とならなければ9月30日開催)が3位争いを賭けた大一番になる可能性もあったが、もはや“終わっている”戦いを見に行っても仕方がなかった。僕の中での今季の最終戦は札幌で観戦した日本ハム4連戦の初戦(9月18日)、ダルビッシュに完封されたあの試合だった。
 さて、今年のオリックスの戦いを振り返ると、確かにCSの制度の下で最後まで楽しむことはできた。ただ、最後には「これでCSへ進んでいいのか」という気にもなっていた。本来、リーグ2位、3位、特に3位のチームあたりには毎年感じる疑問だが、今年のオリックスにも強くそう感じた。
 前回も書いた通り、白熱して見えた3位争いを展開した9月以降の成績も結局は9勝13敗。追い上げを見せることも、波に乗ることもなくシビアに言えば○と●を繰り返しただけだった。内容的にも、最後まで特に守備面では細かいミスが続き、走塁面でも多くの課題を残したプレーが目立った。加えてここで何度も書いてきたがチーム周辺から伝わってくる空気に「これでCSへ進んでいいのか」との思いを強くしていたのだ。

     

101005moriyama今季終盤は出番も多かった森山周。チーム最速と言われる俊足を来年はもっと生かしたい

▼ここぞの場面で使える走塁力を

 今年は新体制1年目で、首脳陣にも選手側にも手探りの状態が続いていたことだろう。その中で互いに「こんなはずでは…」と感じる面も多かったはずだ。このあたりの距離感、空気感が来季はどこまで近づき、馴染んでいけるか。
 戦力面での課題として、最も感じたのは走塁面の強化だ。今年のパ・リーグを見ると、とにかくどのチームもよく走った。盗塁数だけでなく、上位3つに日本ハムまでを加え、各チームとも実にいい走塁を見せた。シーズンを通して見ると、序盤に飛び出したロッテは荻野貴司効果がてき面で勢いに乗った。逆に荻野故障欠場と共に勢いが落ち、最後は厳しい戦いを強いられたが、後半は西岡剛がバッティングだけでなく随所に好走塁を決め、チームをグイグイ引っ張った。シーズン中盤から覇権を争ったソフトバンクと西武も、足の威力をまざまざと見せつけた。
 ただ、西武でも片岡易之が9月終盤に故障で1軍を離れてから一気にチームがバタバタし始めた。逆に最後に笑ったソフトバンクは、チーム打率は最下位楽天とほぼ同等の数字(.267)ながら、リーグ断トツトップの148盗塁をはじめ、足の力を年間通じていかんなく発揮。立役者となった本多雄一、川崎宗則の2人が144試合を戦いきったことが何よりチームの力となったはずだ。
 その足攻めに一役買ったのが今年オリックスから移った大石大二郎というのが何とも皮肉だが、一方で走られるオリックスは走れないオリックスでもあった。「速い」と言われる坂口智隆でも金子圭輔でも赤田将吾でも、「最も速い」と言われる森山周でも「ここ一番」で走れるレベルにはない。もう一度、チームとして走塁技術のレベルアップを求めて取り組んで欲しい。一方で本当に必要な場面で走れる選手をドラフトでも指名し、育てていきたい。

      

▼多くの課題を実感した来年こそ

 もう1つの課題点は捕手。シーズンが終わると直ぐに楽天からFAの可能性がある藤井彰人の「獲得に興味」という記事が出ていたが、今年は捕手が定まらなかった。岡田の日高剛への風当たりの強さには異論をおぼえたくなる場面もあったが、リード面とは別に日高にはかつての強肩に衰えが見え、続く正捕手の育成は必須だ。
 ただ、鈴木郁洋、前田大輔、辻俊哉といった顔ぶれでは弱い。かといって、34歳・藤井で急場を凌ぐのもチーム作りを思えば逆行の流れを感じるのが、ここは本当に大きな課題で簡単に埋まりそうにはない。何より、岡田監督の考えを十二分に理解できる捕手であることが大きな条件であり、また難しい。
 そのあたり、選手との間に入るバッテリーコーチについてもどうなるのか。シーズン序盤で三輪隆がファーム落ちし、途中からは吉原孝介がその職をまかなったが、ここに来てやはり今季まで楽天のコーチだった山田勝彦の名前も出ている。投手コーチも含め、バッテリー間を選手、首脳陣ともどう整備し、強化していくか。ここもまた来季の戦いを左右する大きなポイントだ。
 他にも野手陣全体を見てもわかる通り、T-岡田に続く若手の不在や、当初の岡田構想とはまったく逆に外国人に頼った布陣など、不安点は挙げればきりがない。

101005okada今年の戦いによって見えてきた課題をどう来年につなげていくか? 岡田監督のお手並みを今後も見守っていきたい

 ともかく問題はここから。監督就任当初に目指した野球にはまだまだ遠いと感じているだろう指揮官が、2年目にどんなチームを作っていくのか…。
 半年余りの間続いたブログも今回でひとまず最終回。途中、頓挫しかかったときは冷や汗をかいたが、最後まで読んでいただいた読者のみなさんには心から「ありがとうございました」とお礼を申し上げたい。連載はここで予定通り終了となるが、引き続き秋も、来春もチームを追い、その変化、成長を確認していきたいと思う。
 そして、来年こそは…。オリックス原稿の依頼で手が回らなくなるようなシーズンをそろそろ迎えたいものだ。

      

(取材・文/谷上史朗)

約半年もの間お楽しみいただきまして、ありがとうございました。今後も『野球小僧』、『中学野球小僧』誌に掲載される谷上史朗氏の記事にご期待下さい。

2010-09-27

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第18回〉

Score01 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせています。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件とし、本人も「臨むところ。1度でも遅れたら連載やめてエエワ!」と、了承のうえで始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 実際には一度締め切りを守れなかったことがありますが、その際は読者のみなさまの暖かい励ましによって継続することになりました。

 そして、パ・リーグはついにソフトバンクが優勝。クライマックスシリーズがかかった最終節のオリックスの動きをレポートいたします。

            

       

最後の望みを託した北海道決戦

100927nashida記者に囲まれ取材を受けているのは梨田昌孝監督(日本ハム)。シーズン中盤以降、本来のペースを取り戻した昨年の王者とCS出場をかけた最終決戦はオリックスの1勝3敗に終わった

 9月18日。札幌ドームでCS出場を狙う日本ハムとの4連戦が始まった土曜日、僕も北海道にいた。この時点で3位ロッテとのゲーム差は1.5、4位日本ハムとのゲーム差は0.5。ドームへ向かうタクシーの運転手が「2勝2敗がどっちのチームにとっても最悪ですよねえ」と話しかけてきたがまったくその通り。オリックスも日本ハムも、ここで一気に4位争いにケリをつけ、ロッテへの挑戦権を握りたいところだった。
 オリックスに関しては、ここでも書いて来た通り、3位以内を賭けた戦いを続けながら、実際には数字以上にCS進出は厳しいと思っていた。ただ、この土壇場で思いもよらぬ爆発力を発揮し、白星を重ねれば「今まで」をある意味でチャラにできる位置にいたことは確か。だから、前回の原稿の最後にも「残り11試合。何かのきっかけで今とは違う空気がチームの中に生まれるなら、オリックスの戦いは10月まで続いていく可能性があるだろう」と書いた。そして…。
 ちょうど北海道へ渡ってくる2日前、T-岡田が故障を押しての代打出場で起死回生の満塁ホームランを放ち、西武を下すという離れ業をやってのけた。まさにチームへ新たな空気が生まれる可能性を含んだ“劇的”だった。
 その流れでもし、前回一度勝ったとは言え、天敵・ダルビッシュを初戦で倒すようなことがあれば、これはもしかして、もしかするかも…、と思った。
 だから気合を入れて観戦したのだが…。結果は、ダルビッシュの見事な返り討ちに会い、オリックスは完封負け。これもやはり前に書いたが、ダルビッシュ、和田、岸、成瀬…、各球団のエース格を崩せない姿が最後まで続き、ここで僕の中では今シーズンが終わった。

      

日本ハムとのチーム力の差を象徴する4戦目のラストプレー

 試合途中まで観戦した2戦目は金子が完封でやり返したが、大阪へ戻ってテレビ観戦した3、4戦目は連敗で結局4連戦は1勝3敗。ここで完全に終わった。
 改めて、CS進出を争った日本ハムとの4試合をじっくりと見て感じたのは、走力と守備力の圧倒的な差だ。たとえば、日本ハムの足と言えば田中が真っ先に浮かぶが、小谷野のスタート、陽のベースランニング、糸井の脚力…。オリックスにも森山や坂口、金子といった足の速い選手はいるが、実戦での走塁レベルがまるで違って見えた。打率や本塁打数はリーグトップを争いながら、オリックス打線が相手エースを崩せないのは、打てない時、長打が出ない時に、点を取る術を持っていないからである。ある意味で去年の戦いを思い出させる攻めも“あと一歩”が届かなかった原因だろう。
 守備力に関してもはっきり差を感じた。オリックスの布陣を見た時にゴールデングラブ賞を取れる可能性のある選手は坂口1人と言っていい。対して日本ハムは可能性のない選手がいないほどの顔ぶれ。どこを見ても守備範囲は広いし、肩はあるし、判断もいい。奇しくも、4連戦の最後は、オリックスが9回に1点差まで追い上げ、北川が劇的な代打同点タイムリー! と思った瞬間、センター糸井からのまさに矢のようなバックホームでバルディリスが本塁で憤死。ゲームセットとなったが、あのシーンは走力から見ても、守備力から見ても両チームの力を示す象徴的なラストだった。

   

確定した順位

 この時点で3位日本ハム、ロッテとは2ゲーム。残り5試合で、上に2チームあっての2ゲームは極めて絶望的な数字だ。それでももちろん、可能性がある以上、戦い続けるチームは25、26日と京セラでロッテと対した。
 その初戦を試合途中から観戦。午前中から京都の園部で佛教大学の試合を取材した帰り道、電車の中で携帯サイトをチェックしていると3回終了時点で0対0。そこまで50分足らずの進行に、変わらずの金子の好調を思わせた(実際はそうではなかったようだが)。最近の素晴らしい結果の一方で、何かまだ柱としての印象が弱い(僕にすれば)金子にとって、チームの天敵・成瀬にここで投げ勝てばひとつスケールアップするチャンスだったが、4回に致命的な4失点。シーズン前半の姿を思い出させる失点の仕方で試合は決まった。試合後の岡田監督は、次のような内容だった。

Score0225日のロッテ戦終了時のスコア。翌26日は劇的なサヨナラ勝ちを収めたが、同日、日本ハムが西武に勝利しオリックスのCS出場は果たせなかった

「(成瀬に対し)空回り言うか、1年間打てんかったいうことやん」
「札幌の結果待つって…。待ついうか、そら負けるに越したことないけど、昨日も言うたけど、こっちが勝たなアカンのやから」

 怒りというほどでもなく、しかし、ところどころで尖った口調に記者の質問も続かず、会見は早々に終了。いよいよ、いよいよ、ここで終わった…、と京セラをあとにした。

 翌日。外出から戻りテレビをつけると、間もなく、延長10回に後藤のサヨナラ2ランが飛び出した。30分ほどするとネットの速報画面には、沸き立つ空気が伝わってくる記事と共に岡田監督の「この時期にこういう試合ができるのは(ただの)一つの勝ちじゃない」というコメントも紹介されていた。しかし、その劇的な幕切れから1時間余りあとだったのだろう、日本ハムが西武を下し、ソフトバンクの優勝が決まり、同時に、オリックスのクライマックスシリーズ進出の望みが完全に消えた。 
 キャンプから追いかけたシーズン、最後まで盛り上がったと言えばそうだが、クライマックスシリーズというシステムが作る盛り上がりに騙されてはいけない。それで翌年失敗するチームがある。去年のオリックスしかり…。
 3試合を残してのチーム成績は69勝68敗、4分け。大混戦の3位争いを演じた9月も振り返ればここまで9勝10敗…。このオフもまた課題は山積みである。
 途中、いろいろあったこのブログも、オリックスの終戦が確定したところで次回を最終回とすることにした。最終章は今季の総括と来季への展望で、まとめようと思う。

      

(取材・文/谷上史朗)

いよいよ次回は最終回です。10月5日に更新いたします。お楽しみに!

2010-09-15

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第17回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせています。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件とし、本人も「臨むところ。1度でも遅れたら連載やめてエエワ!」と、了承のうえで始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 実際には一度締め切りを守れなかったことがありますが、その際は読者のみなさまの暖かい励ましによって継続することになりました。

 風前の灯火となつつあるオリックスのクライマックスシリーズ進出ですが、最後まで諦めない谷上さんの懇親のレポートを御覧ください。

            

徳山で見た西武戦

 9月14日の夜。山口県の徳山駅で新幹線を待っていた。列車到着まで30分ほどあったので駅構内にある休憩所に下りると、テレビではNHKのBS放送でオリックス対西武戦がやっていた。
 思わぬとところでの“観戦”に喜び、戦いに見入ると、試合は5回を終わったところでオリックスが2対1でリードしていた。グラウンド整備のインターバルの間、解説の鈴木啓示氏は「金子は決して調子は良くないと思いますさすがですね」と言い、アナウンサーは「クライマックスシリーズ進出へ向け負けられないオリックスが…」と繰り返していた。しかし、直後の6回表、中島がライトへ犠牲フライを放ち同点。裏のオリックスの攻撃まで見たところで、時間が来たので新幹線に乗った。そして約1時間。博多駅前のホテルに入ってテレビをつけると試合が終わり、オリックスが3対2で勝っていた。カブレラの決勝アーチに金子の12連勝に、アナウンサーは「クライマックスシリーズへ向け望みをつなぎました」と放送を締めていた。

          

感じられない火事場の馬鹿力

 この夜、連敗を止めた3位ロッテまで1.5ゲーム差。残りは11試合。前回も書いた通り、間に日本ハムがいることが何とも厄介だが、それでもここまで縮まれば当然“狙える”位置ではある。ただ、逆に見て、このシーズン最終盤にここまで来ているのに、ひっくり返す空気を僕はオリックスに感じない。
 もちろん、8月以降、1、2軍戦とも生観戦は3試合ずつで、すっかりペースダウン。時間が取れず、なかなか間近でチームの空気を感じることはできないのは確か。しかし、それでも、戦いの周辺で“オリックス的な人”と話をしながら、あるいは、テレビから伝わってくるチームの雰囲気に、感じてしまうのだ。どのチームも死力を尽くして戦う中、ここからひっくり返すには絶対なくてはならない“火事場の馬鹿力的もの”を生み出す空気の弱さ、薄さを。

          

真のリーダー不在

「CSのチャンスがあるのにこんな戦いしかできへんのやから・・・」
 12日の楽天戦に敗れ、ロッテまで1.5ゲーム差に迫りながらの痛い連敗のあと、岡田監督が残したという一言だ。短いコメントの中にも、ここまできていながら、乗り切れない選手に対する指揮官の苛立ちを感じたが、空気を作るのは容易ではないのだ。そこには、ここ数回、この記事の中でも書いてきた、ベンチと選手との間に感じる微妙な空気も少なからず影響していると思う。
 もうひとつ、ここに来て強く感じるのは、今年に限らず、オリックスが誕生以来抱え続けてきたチームリーダの不在がもたらす“弱さ”だ。こういう時に選手を力強く束ね、それぞれが持つエネルギーを同一方向へぶれなく向けられるような選手がいれば、現状の空気も大きく違ったものになっていただろう。

       

他の選手に影響を与えられる選手の獲得を

100915地元大阪では、地下街等にクライマックスシリーズを意識したポスターが貼られているが…

 今のメンバーにも北川博敏や田口壮といったリーダー格はいるが、本当の意味で中心となって引っ張るタイプではない。オリックス誕生以来、唯一、“その役割”を戦いの中で果たしたのは一昨年の清原だけではなかったと思うが、そこでチームは万年Bクラスから脱し、クライマックスシリーズにまで進出した。
 安易な結び付けではなく、2年前のシーズン終盤のオリックスには確かに清原和博を大きな軸として、チームがまとまり、負けられない空気がそこかしこから出ていた。対して今は・・・。
 ここにはキャプテンシーを持った選手を獲得してこなかったフロントの責任も強く感じる。ドラフトでは戦力補強第一だが、そこにどこまで内面を加えて選手を評価できるか。是非、今後はチーム内の他の選手に影響を与えられるようなメンタルを持った選手も獲って、育ててほしい。

          

どこかで自分の予想が外れる展開のも期待

 ここ最近の更新内容のように精神論にばかり話を持っていくと、陳腐なアマチュアリズムを語っているような気にもなるが、しかし、プロでもやはり“そこ”なのだ。“そこ”が最後を分けるのだ。特に負けられない、トーナメントのような戦いになればなるほど。
 残り11試合。何かのきっかけで今とは違う空気がチームの中に生まれるなら、オリックスの戦いは10月まで続いていく可能性があるだろう。ただ、今の時点で、僕はその空気が生まれる気配を感じていない。
 と、言いながら、どこかではこの予測が外れることにも期待しながら、いよいよラストの戦いを見守りたい。

      

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-09-06

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第16回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせています。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件とし、本人も「臨むところ。1度でも遅れたら連載やめてエエワ!」と、了承のうえで始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか?

 風前の灯火となつつあるオリックスのクライマックスシリーズ進出ですが、最後まで諦めない谷上さんの懇親のレポートを御覧ください。

▼善戦及ばず
 5日の日曜日。別件取材のあと、15時過ぎからスカイマークスタジアムに立ち寄った。その日は13時からのソフトバンク戦で、スタンドへ上がった時には、6回裏が終わり、2対1とオリックスがリードしていた。移動中に携帯サイトで確認していたところ、プロ初登板の先発・山田修義が3回まで1失点。4回からは西がリリーフし好投すると球場到着直前に日高がタイムリーを打ち2対1…。ソフトバンク戦3連勝まであと3イニング、ここを抑えれば、この先何かが起きるかも…、そんな予感を浮かばせる展開だった。
 しかし、直後の7回表、西勇輝が先頭の松田宣浩に左中間へ一発を浴び再び同点。そこからは平野佳寿、岸田護、比嘉幹貴、前田祐二、香月良太、古川秀一とつないだが、最後は延長10回に香月が小久保裕紀にタイムリーツーベースを浴びて勝負あり。終わった時には5時を悠に回っていたが、まだまだ西日もきつく、選手、首脳陣にとってもこれ以上なく堪える負けとなった。

100906hirano勝利の方程式の一翼としてすっかり定着した平野佳寿

       

▼継投の違いに「負けられない」思いの違い

 オリックスはクライマックスシリーズ進出の望みを賭け、ソフトバンクは優勝に向け、互いに落とせない一戦ではあった。その中で、両チームの救援陣の起用法に違いがあり、ここも勝敗も分けた。
 オリックスは同点の8回から平野、9回からは岸田とつないだが、2人が降りた10回にきっちり試合を決められた。翌日は試合がなく、ここは平野、あるいは岸田の2イニング目があるかと思ったが…。
対して、ソフトバンクは延長も見越したのだろうが、通常の摂津正、ファルケンボーグ、馬原孝浩の形を崩し、7回からファルケンボーグ、そして8回から馬原に2イニングを任せた。そして、延長には場合によって複数回を投げることが可能な摂津を残した。この日に限れば、ソフトバンクの継投にオリックス以上の「負けられない」思いが感じられた。

     

▼終盤3イニングを抑える形を完璧には作れず

 この日は囲み会見を待たず球場を出たが、試合後の岡田監督は「3連勝できとったよ。楽勝よ。あと1本が出えへんのやもん」(6日日刊スポーツ)、(6回1死一、二塁のチャンスに触れ)「あそこで追加点を取れとったらこんな展開にはならんかった」(同)と語ったと言う。
 シーズン当初は「打線に期待はせへえん。打ってくれたらもうけもの」と話していた指揮官も、戦いが進む中で嘆きの内容も変わってきた。ただ、この日に関しては、西の4イニング目の続投が大きなポイントだった。
 西は僕の到着前から完璧な内容だったようで、4回からの3イニングはパーフェクト。初めて打たれた1本が松田の同点ホームランだった。もちろん、難しい決断だが、西の現状の力で言えば、ソフトバンク打線をひと周りゼロに抑えただけでも十分で、7回から別のピッチャーにスイッチする手はあっただろう。個人的にはこのところずっと、平野、岸田へつなぐセットアッパーとして7回での登板を固定してほしいと思っていた(先は先発起用を切望するが)比嘉の登場を期待したが、そうはならなかった。
 前回の記事で触れた8月22日のロッテ戦では、ローテーションを崩し、金子を7回のリリーフでつぎ込んだことがあった。「負けられない」姿勢を示しての“一手”は、7回にしっかりはまる投手がいれば、平野、岸田の2枚がより生きることも改めて示した。同時に、交流戦時の戦いを思い出しても、終盤3イニングを抑えきる形を再構築することがオリックス再浮上の最後の一手ではないか、とも思ったが、ここまでその形を作れなかった。

      

100906kishida岸田護が試合の最後を締める姿も定着してきただけに、そこまでつなぐ形も確立させたかったが。いよいよ、岡田監督も万策つきたか?

▼7回を制す形ができれば…

 ソフトバンクとオリックスは、チームとして残してきた数字は非常によく似ている。たとえば、チーム打率はオリックス.273(リーグ2位)に対しソフトバンク.270。本塁打も132(リーグ1位)と122で、得点も585と573。すべてオリックスが上回っているのだが、投手陣の数字で見ても失点はオリックスの564に対しソフトバンクは570。防御率は4.07のオリックスに対しソフトバンクが4.04。攻撃面では盗塁数が決定的に違い、オリックス28(6位)に対しソフトバンクは138と、足の力は見えないプラスαとなってはいるが、投手陣はやはり救援陣の差で、端的に現れているのが1点差ゲームの勝敗だ。
 ソフトバンクの1点差ゲーム成績は14勝7敗。対してオリックスも15勝12敗と勝ち越してはいるが、その中身には大きな違いがある。オリックスは開幕3連勝も含め、4月20日までは1点差7連勝。当時は首位争いの主役だった。しかし、4月27日の日本ハム戦、30日から5月2日の楽天戦では1点差で4連敗。交流戦直前に平野、岸田、レスターの勝利の方程式が出来、交流戦初戦も2対1で勝利したが、その1戦も含め以降はここまで1点差は8勝12敗である。
 夏前からレスターが勝利の方程式から外れ、その影響でここまで平野、岸田につなぐ7回を任せられる投手が決まらなかったことも大きいだろう。
 ソフトバンクは1点差で7つ落としているが、この7敗はいずれも5回、あるいは6回の時点でリードを許し、そこから追い上げ1点差で敗れたもの。終盤に逆転されての1点差負けは6月1日に先発杉内と2番手甲藤が7回にひっくり返された1試合のみ(対ヤクルト3対4)で、ファルケンボーグ、馬原が出た試合での1点差負けは1度もない。うしろ2人の安定感も、やはりソフトバンクの方に分があるが、その2人につなぐ投手にも差はあった。
 岡田監督は著書の中で「7回を制するものが試合を制する」といったニュアンスの内容を書いており、阪神時代にリリーフ転向直後の藤川を7回で起用した話にも触れていた。しかし、最後まで終盤3イニングを制する形が作れず、戦いは最終盤。
 いよいよオリックスもあとがなくなった。

      

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-08-25

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第15回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせています。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか?

 …ということで、前回、原稿が若干遅れた(本当のことを暴露すると、翌朝「完全ダウン。アウトやなあ」と泣きそうなコメントとともに原稿が到着した)件、多くの方から温かいメッセージを頂いたことも鑑みて、連載を継続することになりましたーーー! 書き込みいただいたみなさんのおかげです。ありがとうございます。

 ホッとしたのもつかの間、オリックスはAクラス獲得にいよいよ黄色信号がともっています。はたして、この先どうなるか? 継続決定に喜び勇んで臨んだ谷上さん懇親のレポートを御覧ください。

     

▼金子のリリーフ登板が示すオリックスの立ち位置

 22日の夜、千葉で行われたロッテ戦。7回裏のマウンドへ金子千尋が上がってきたところで、いよいよシーズン終盤を感じた。まだ8月、残りはその時点で30ゲームあったが、
 オリックスにとっては終盤どことか、最終盤と言ってもいい負けられない戦いが続いている。その試合前の時点でCS圏内となる3位ロッテに5.5ゲーム差。この数字も十分に重いが、何より重いのは上に2チームがいることだ。オリックスが4位での5.5ゲーム差と5位での5.5ゲーム差では追いかけ方も、浮上の可能性も決定的に違う。
 だから、これ以上一歩も引けない戦いの中で岡田監督が勝負手を打った。それが、本来なら昨日24日のソフトバンク戦で先発予定と見られていた金子のリリーフ登板だった。もし、あの場面で金子が打たれ、あるいは後続投手が崩れ、戦いに敗れていれば、おそらく今季のオリックスはそこで終わっていただろう。それくらい大きな意味を持つ一手により、ひとまず生き延びた。が、この先も極めて厳しい戦いが続くことに変わりはない。

        

▼あじさいスタジアムに出揃った豪華メンバー

100825hidakaサブグラウンドでの練習中に水まきをする日高(26日に一軍復帰)

 そんなシーズン終盤の鬩ぎ合いを眺めながら、前日に見たファームのゲームを思い出していた。久しぶりに北神戸にある「あじさいスタジアム」での2軍観戦。T-岡田がいなくなっただけではなく、今年からファームの本拠地がスカイマークスタジアムと合宿所に程近い神戸サブへ戻ったため「あじさいスタジアム」でのゲームは減っていたのだ。
 試合前にコンパクトな取材を1つ終え、17時半から始まった試合を見ながらスコアボードに目をやると…。ここは京セラか! と思い違いそうになるほどの豪華な名前が並んでいた。
 1番の一輝から始まり、山崎、辻、ラロッカ、濱中、由田、塩崎、日高…。ベンチに目を向ければ、終始リラックスムードのセギノールに最前列には大村。攻撃陣だけではなく、先発ピッチャーも小松で、2番手以降も加藤、レスター、古川。さらにブルペンには、吉野、清水、本柳、大久保、阿南…。ファームにいるべきでない顔がいくつも並び、逆にファームにいるべきフレッシュな顔は極めてまばら。この夜、若手で目立ったのは、1軍戦力の古川と野手では9番ファーストで出場し一発を放った土井のみ。入団1年目には日高の後釜を約束されたかのような期待を集めた伊藤は、途中出場するも腰手術の影響を感じさせ、本来の動きには程遠く…。T-岡田と同期入団の柴田は途中出場も見逃しの三球三振で、ドラフト時は「中田の外れ一位」で“スラッガー候補”の丹羽も出番なし…。これまでのチーム作りのひずみを随所に感じながら進んだゲームは、オリックスが4対0であっさりと勝利し終わった。あじさいスタジアムでは“格”が違っていた。

         

▼考えさせられるファームの役割

 この夜の勝利でオリックスのファームは阪神を抜いてウエスタンリーグの首位に立った。スタンドからは「(ファーム選手権が行われる)新潟に連れていってや~」という声も飛んでいたが、勝利の原動力となっている顔を浮かべると、とても喜んではいられない。
 東へ目を移せばロッテが首位に立つイースタンリーグで5位の日本ハムに10ゲーム差、借金26でダントツの最下位に沈んでいるのが西武。しかし、選手の顔ぶれを見るとオリックスの首位より遙かに希望を感じさせるのだから、ファームの役割とは? と改めて感じてしまう。
 なんだかなあ…と思いながら、試合終了後、スタンドからベンチ裏の通路へ下りると「今日も魔の5回や」という声が聞こえた。目の前の試合についての言葉ではなく、千葉で5回二死から先発の中山が井口に満塁ホームランを浴びた一軍の試合経過を指してのものだった。そこへ別の声が続いた。「西に香月に中山か。確かに魔の5回や」。このところ“上”では、あとアウト1つが取れず4回2/3で降板する先発陣が続いているが、チームメイトでありながら、投手であればやはりライバル。どこか明るさを含んだ言葉の裏にプロの世界の厳しさも感じながら、僕の頭は神戸と千葉の間を行きつ戻りつを繰り返し、最後にはまた、チームのこれからを思い、ちょっと重い気分になったのだった。

100825azisai_bull_penレスター、古川、加藤…1軍を錯覚させるくらいの豪華な投手が並ぶあじさいスタジアムのブルペン

▼CS出場にかけるか? 将来的なチーム作りを優先するか?

 CSのシステムがなければ、この時期の首位までの7、8ゲーム差は、チームが若手主体の起用に変える1つの目安になっておかしくない(Aクラス死守の命題は別にあったとしても)。だとして、オリックスの現状を見渡せば、特に野手ではファームから上げて試したい、と強く思う選手はなかなか見当たらないが、それでもCS出場を最後まで争うことで、若手起用の機会が削がれ、根本的なチーム作りが遅れるのかと思うとそこでまた考えてしまう。勝って欲しいような、勝って欲しくないような、微妙な気分での観戦がしばらく続きそうだ…。
 と書いていたところで、24日夜のソフトバンク戦でオリックスは敗れた。金子を中継ぎ起用したため1日繰り上げて先発となった近藤が初回にいきなり多村に満塁弾。「いつも言うてるやん…」岡田監督のボヤキが聞こえてくるような戦いで、22日の金子投入で4.5ゲームとしたロッテとの差は再び5.5に。これは最後までジリジリすることなく、間もなくデッドラインを超えてしまうのかもしれない。ならそれで…。上を見ても、下を見ても、再建にはまだまだ時間はかかりそうだが、まずは出来ることから。ドラフトも含め、しっかり腰を据えたチーム作り、ビジョンを持ったチーム作りへ取りかかって欲しい。
 

         

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-08-16

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第14回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせています。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか?

 実を言うと、今回はついに! 若干日付を超えてしまいました…。ああぁ。
 さて、どうするか? スパッと終わらせるか? 1度くらいは目をつぶるか? 編集部で審議しますが、読者のみなさまのご意見がありましたらコメント欄にお書き込みください。続けるべきか? ここで区切って次回で最終回とするか? みなさんのご意見を参考にして決めたいと思います。

 とりあえずは、熱パの中でAクラス生き残りをかけ、必死に踏みとどまっているオリックスに対するレポートを御覧ください。

     

▼「地力優勝消滅」の意味するところ

 ここしばらくは高校野球の取材が中心で、甲子園開幕以降は、ファームは一度覗いたものの、1軍のグラウンドからは足が遠ざかったまま。何とかその日の試合は夜中のDVD観戦をノルマとしフォローしているが、さすがに1試合すべて見る余裕はなく、早送りしながらの要所観戦となっている。
 しかし、夜な夜な布団の中で眺める戦いはどうにも渋く、15日の敗戦で翌日の新聞には「オリックス地力優勝消滅」の見出しが小さく載っていた。15日の夜中に見た、高山に2打席連続アーチを浴びオリックス側からすればほとんど見所なく終わった試合にはそういう意味があったのだ。
 これで西武に3連敗、通算では4連敗。僕は〈ここから全部勝っても相手が負けない限り優勝の可能性がなくなる〉という“地力V”という計算にはまったく意味を感じないが、こういう話題が出る時は、間違いなくチームの状態が悪い時。今のオリックスも確かにそうだ。

      

▼越えられない壁

 約1カ月前から遡れば、オールスター前の7月19日から31日にかけて7連勝。交流戦の勢いをパの戦いでも再び…と思わせた。8月に月が変わっての初戦で1つ落とすも、そこからまた3連勝。しかし、そこまでだった。あとはロッテに3連敗。1つ勝つもソフトバンク、西武の上位相手に引き分けを挟んで4連敗。波の大きな戦いが続き、これではなかなか上がっていけない。
 波の要因はいろいろあるだろうが、今年の戦いを見ていて1つはっきりしているのは、相手投手がエース級になると途端に分が悪くなるということ。相手も力があるからエースなのだが、それでも力関係がはっきり。例えば、ロッテの成瀬に0勝4敗。ソフトバンクの和田に1勝4敗。07年6月から9連敗中のダルビッシュには今季も0勝2敗。こういう相手に勝てるようになった時が、本当の意味で地力が備わった時なのだろうが、まだ、いくつも超えられない壁がある。
 上に書いた7連勝、1つ落として3連勝、この間の10勝の内訳を見てもそこがはっきりわかる。10勝のうち楽天戦が5つあり、相手投手は順にラズナー、井坂、川井、ケッペル、木田、ラズナー、川井、許、平野、野上。ちなみに2度目の川井と許の間で1つ負けた相手は田中(楽天)。田中からは今年2つ勝ってはいるが(3敗)、前後のほとんど「裏ローテ」と言える顔ぶれにはしっかり勝ち、田中に負けるところが何とも今季の戦いの象徴に思えた。打てない時にいかに点を取るか。いかに守りきるか。何回も書いて来たが、そのためにも今年の冒頭に岡田監督が掲げた「動いて攻める野球」「つないで守り抜く野球」を目指したはずだったが、現状の戦いを見ていると、最近は森山を2番で使ったりもしているが、特に攻めが理想の形になってこない。

     

▼鬱憤をプラスに変えられるか

100816ikki松山コーチと一輝選手(写真)の騒動はチームの現状をある意味示唆しているが、こういったことはどのチームにも大なり小なりあること。これをいかにプラスにもっていけるかが以後の展開を左右するだろう

 しかし、そういった戦い方、戦力的なものとは別に、いよいよ終盤戦という中で気になるのはチームの空気だ。これもここ数回の原稿の中で書いてきたが、外から見る限り、たまに近くで空気を感じる限り、首脳陣と選手との間に溝が出来、それが深まりつつあるように思えてならない。
 甲子園期間中、ネット裏に連日詰めかけていた各球団のスカウトや編成担当者と話した時も、オリックスの話題になるとこんな声が続いた。

「でも、岡田もきついなあ。ここまでとは思ってなかった」
「選手もそら応えるよ。○○なんか大丈夫か」

 1、2軍の入れ替えの多さや、選手への厳しい声に対する反応だが、ここからのチーム浮沈のポイントも間違いなく「このあたり」にもある。選手が岡田采配に耐えて、応えて結果が残るか、あるいは、堪えきれず、チームが壊れ、下降線を辿るか…。

 そんなことを思いながら戦いを見ていた9日、1つの「事件」が起きた。一部新聞でも報じられたが、一輝と松山コーチが神戸での指名練習中に一触即発の騒ぎを起こしたのだ。 新聞の記事を要約するとこんな感じになる。

〈野手陣がフリー打撃を行う中、内野で守備練習をしていた一輝が、外野にいる松山コーチに対して完全に切れ、何かを叫びながら向かっていった。周囲の選手達が異変に気づき止めに入ったが一輝の怒りはなかなか収まることはなく球場の空気は騒然となった。関係者の話を総合すると、松山コーチが冗談交じりのヤジに近い形でゲキを飛ばしたが、少々関西流の“毒”が効いていたのが原因らしい…〉

 とにかく岡田監督となった今季、シーズンに入っても休みがなく、練習漬けの日々が続くいている。それも炎天下での指名練習、まして思うように出番の巡ってこない一輝の現状。爆発する要素は揃っていたのかもしれないが、それとは別に、一報を聞いた時には、チームの中でくすぶり続ける鬱憤が吹きこぼれたか…、という印象を受けた。一輝と松山コーチの間に何があったのかわからないが、いつもなら聞き流せる言葉に引っかかり、感情を爆発させてしまう下地が空気としてチームの中にあったのではないか、と。
 ただ、だからといって大騒ぎするつもりも、まとまりがないからダメだ、と言うことではない。岡田監督が騒動のあとにコメントしたように、こういう衝突は「どこにでもある話やん」ということでもあり、問題はこのあと。
 不満や怒りもエネルギーであることに違いはない。ここをいかに首脳が上手くすくい取り、マイナスの現象もプラスへと転じさせ、チームを束ねていけるか。甲子園の戦いを見ていても痛感するが、勝つチームは指導陣と選手、選手同士も同じ方向を向いている。これはプロにも通じることのはずで、だから注目も「そこ」。チームの空気という見えないものを想像しながら、勝負の秋の戦いをしっかり追っていきたい。

         

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-08-05

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第13回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 今のところ、本当にギリギリの線ではありますが、なんとか更新日当日に原稿が届いております。

 さて、大変な混戦模様のまま夏を迎えております。オリックスはどうなるでしょうか!?

           

▼T-岡田の成長ぶり

100807t_okada01夏場に入ってさらに本塁打の量産ペースが上昇中のT-岡田。40本も現実的になってきた

 日高剛や坂口智隆のファーム落ちなど、相変わらず激しい1、2軍の入れ替えにチームとしてのメンタルが気にかかり「大丈夫なのか…」と書いた前回。しかし、そんな心配をよそに前回更新以降のオリックスは投打の歯車が噛み合い、貯金は4、ついには3位のロッテにゲーム差なしのところまできた。さらに首位のソフトバンクまでも4.5ゲーム差だ。
 投手陣では6連勝で2ケタ勝利到達の金子千尋の安定感も素晴らしいが、このチームの勢いを生んでいる一番はT-岡田だろう。原稿締め切り直前の3日にも2発、途中まで観戦した4日も僕の帰宅後にサヨナラヒットと見事な活躍ぶり。若手スターの出現はいつの時もチームに大きな勢いを生むが、まさに今のT-岡田とオリックスの関係はそれそのものだ。
 そこで今回は、いつものレポートとは少し調子を変えて、久しぶりに「ナニワのゴジラ奮闘記」を思い出し、T-岡田について書いてみたい。

 数日前、たまたま今年届いた年賀状を見る機会があったが、その中に岡田の父・秀和氏からの1枚を見つけた。裏面のメッセージには「今年は京セラやスカイマークでたくさん見れたらいいですね」。もちろん、岡田の1軍定着を願っての言葉だったが、そんな心配をしていた日がまさに遠い昔のようだ。
 昨年はファーム二冠に1軍でも夏場から7本塁打を打ったとはいえ、シーズン後半は、明らかに1軍の壁を感じさせるバッティング内容に終始。その打席をつぶさに見ていた人ほど、盛り上がる一方の周囲とは違う不安を感じていたものだった。
 しかし、経験と期待が技術を伸ばし、意識を育ててのこの結果。ファウルすることさえままならなかった内角球にスムーズにバットが出るようになり、右投手のインスラもしっかりカット。あれだけ差し込まれていた高めの速球を上から叩けるようになり、見え見えの配球パターンであっても崩されていた緩急にしっかり間を取って対応できるようになった。
 昨年は「どこにくれば打てるか…」と見ていた岡田の打席。今は「どこに投げれば抑えられるか…」と、投手目線で見るようになってきた。そして、その「どこ」がなかなか見当たらないのだから、相手バッテリーも困ったものだろう。

        

▼自分って頑固っすか?

 さて、ここまで書いておきながら、これだけではあまり面白みが感じられないので、急ではあるが7月末に『中学野球小僧』(8月10日発売、表紙にも登場!)で取材し、誌面に載せられなかった話を少しここで書かせてもらうことにする。
 今回の取材では、本題以外で「ほんわか系」の岡田とのやりとりとしては、珍しく話が弾んだ(?)ところがあった。
 それは自身の性格について。取材時のやりとりを再現してみる。

――自分の性格ってどんな感じと思ってる?
「そうすねえ…。まず、あんまり怒ることはないすね」
――確かに。でも、かと言ってメッチャ喜ぶこともない?
「ないすねえ。恥ずかしがり屋なんですかねえ。ワッと出すのが苦手なんです」
――怒ってる時も周りからはあんまりわからない?
「そこはわかると思いますよ。そういう空気は出すタイプなんで(笑)」
――怒ってるより、ちょっとすねてるくらいの感じ。なんとなく納得。もうひとつ、周りの人からよく聞くのは「頑固」ということ。そこは?
「(履正社高校監督の)岡田先生もそれを卒業の時に親に言ってたみたいなんですけど、そうなんですかねえ…」
――ファームで取材していた時も、藤井さん(康雄/現オリックススカウト)あたりから「ああ見えて頑固」とはよく聞いたし、それを聞いて俺も、そうやな、と納得してたけど…。
「ほんまっすか? 頑固っすか?」

 ここで顔を出した広報の熊谷さんに対しても、納得のいっていない様子の岡田が逆取材が始まった。
「自分って頑固すか?」
 すると、熊谷さんは「いい意味で自分を持ってる。柔軟性はあるんですけど、ある程度聞いたらあとは自分でやります、という感じ。自分を持ってるっていうのが一番じゃないですか」と答えた。

――活躍するとみんないいように言ってくれるなあ(笑)
「でも、頑固すか…ねえ。ただ、興味ないものに関してはまったく興味ないですね。みんながやってるから一応やらないと、とか、そういうのはないです。だから、自分のやりたいことをやりたいっていうのが…。それって頑固になるんですかね?」

100807t_okada02オールスター戦翌日の夏の大阪大会4回戦の履正社対PL学園戦。母校・履正社の応援に駆けつけたT-岡田。「僕が8回に来てから6点取りました」と笑っていたが、今の岡田は間違いなくこういう運を持っている

 こんな感じの話が、こんな調子でしばらく続いた。ひとつの話題でこれだけ話が続くのは岡田取材では結構珍しいのだ(笑)。
 しかし実のところ、ファームの時はよく指導者や球団関係者、あるいは解説陣、他球団の編成担当者などの間で岡田の性格面が話題になっていた。
 今では「大舞台でも緊張しない」「落ち着いている」と言われる雰囲気も、当時はしばしば「覇気がない」とマイナス面に語られていた。今回話題の「頑固」についても、結果の出ない中では「変われないバッター」という印象を持たれかけていた。
 それが今や…である。接している限り、岡田は何も変わらないが、周囲の見方が勝手に変わる。やはりプロは結果の世界とつくづく感じる。
 …と、書きながら何ともまとまりのない内容になってしまったが、ともあれ、若き大砲の活躍が細かなマイナス面も飲み込んでチームを引っ張っている。十分射程圏に入ってきた40本塁打に二冠王、このあたりに岡田の手が届いた時、チームはどこにいるのか。
 また楽しみになってきた。

                

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-07-26

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第12回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 今のところ、本当にギリギリの線ではありますが、なんとか更新日当日に原稿が届いております。毎回、1日だけ早く準備するだけでいいのに…と思うのですが。

 それはともかく、混戦模様のままオールスターを終え、ますます「熱パ」の様相を呈してきたパ・リーグで、オリックスはどう立ち回っていくのでしょうか!?

           

▼納得のいかぬ坂口の降格

100726sakaguchiオリックス打線の中では機動力のある貴重な存在である坂口智隆

 交流戦Vのあと「ここからオールスターまでが大事」と力を込めていた30試合(1試合は雨天中止)が13勝16敗で、45勝46敗での折り返し。最後の楽天3連戦こそ、助っ人トリオの活躍などもあり3連勝し、3つ目の勝利のあとには「今日、負けるのと勝つのとではまったく違うからな。これでいい気分で後半戦を迎えられる」とコメントを残した岡田監督としても大いに不満の残る前半戦終盤の戦いだっただろう。
 そんな戦いの中、前回も書いたが、僕が(おそらく多くのファンも)岡田監督に期待していたチーム作りとは、方向性が違ってきているようで微妙な気分を味わうこも多くなってきた。
 17日、坂口のファーム落ちを知った時にも、その思いを強くした。初めて聞いた時は故障かと思ったが、もちろん、そうではなく、不調による降格。確かに坂口にはひとたびヒットが出なくなるとピタッと当たりが止まる傾向がある。ファーム落ちする直近の5試合でも19打数1安打。岡田監督にすれば、「これ以上待ってられない」という思いと、ファーム落ちとなったのがソフトバンク3連戦の初戦後。ソフトバンク戦のあとには楽天戦と続き、この2球団に対する坂口の今季のアベレージが共に2割2分台の低さで、その計算もあったはず。もちろん、加えてオールスター休みを挟むため実際の欠場試合は少なくて済むという計算も…。
 ファーム落ちの時点ではまだ.288の打率があったが、今季のパ・リーグ各球団相手の数字を見ると西武戦の.327以外はいずれも2割5分以下。確かに交流戦以外の坂口は乗り切れない状態を続けているが、それでも…と思ってしまった。
 坂口はオリックスで唯一、全力疾走を徹底し、先発メンバーで見れば数少ないスピードを持つ選手でもある。もちろん、再三の美技で失点を防いできた守りでの貢献度も高い。今年の初めに岡田監督が掲げた「動く野球」の象徴がこの坂口でもあったはず。しかし、その男を落とすということは、助っ人がスタメンに並ぶようになった最近の戦いと相まって、ここにきてチームが戦うための看板を付け替えたかのような印象さえ持った。
 坂口はこの状況であっても、下へ落とさず、1軍で戦いながら現状を打破してほしい選手だ。そこを乗り超えてオリックスの顔になってほしい…。そのクラスの選手のはずなのだが、そうはならなかった。

          

▼変わらぬ日高の評価と投手陣への影響

 ファーム落ちということではもう1人、気になる選手がいる。坂口の翌日、18日に今季2度目の降格となった日高のことだ。前日に2対9で敗れた試合直後、またしてもそのリードが岡田監督の槍玉に挙がった。
 ミーティングでの確認事項がよほど抜け落ちているのか、感覚の問題なのか…。外から見ていては度重なる指揮官の日高への厳しい評価の根源がどこにあるかわからない。ただ、前にも書いたが、岡田監督は2月のキャンプでの紅白戦時から、そのリードに首を傾げていた。おそらく、事前に収集したチーム情報の中に“日高のリード”を疑問視する向きがあり、当初から高い問題意識を持っていたのだろう。中心捕手として12年、その間のチーム成績がすべてBクラスという事実は確かに守りの要としてどうだったのか、と考えたくはなるところだ。
 ただ、シーズン序盤にバッテリーコーチを入れ替えても、日高を一度ファームへ落としても、岡田監督の評価はなかなか変わらず、もはや日高自身も自分のリードの何がそこまで問題なのか、段々わからなくなっている状況ではないのだろうか。その悩みは相当なところまできているはずだが、日高自身のメンタルと合わせ、同時に心配になるのが投手陣との関係だ。
 当然、投手は捕手から出されたサインに従って投げる。しかし、そこでたとえ相手打者の狙いと一致したボールを投げたとしても、生きた球ならファウルにもなることもある。逆にいいコースへ投げても、投手の気持ちが球にこもっていなければ痛打の結果にもなる。つまり、これだけ指揮官があからさまに不満を口にし続ける日高のリードに対し、投手陣も疑問を持ち始めてしまうだろう、ということだ。結果、自分のコントロールミスや、サインを信じ切れないまま力のないボールを投げ打たれたとしても「あのサインのせいで…」と心のどこかに浮かぶようになってしまったら、もうそこにバッテリーの信頼関係など存在しない。これが何より怖い。

100726hidaka_okada選手会長として、交流戦優勝の表彰に参加する日高剛(写真左)。岡田監督(写真右)の信頼を勝ち取り、投手陣にいい影響を与えたい

 岡田は自らの著書の中で「主力を落とす時には直接言わなければならない」「フォローが大事」と書いているが、オリックスでもその点は実行しているのだろうか。これだけ1軍、2軍の入れ替えを頻繁に行う、激しい采配の中でこそ、そのあたりのフォローが必要だろう。そのあたりに溝が生まれ、選手達とベンチの信頼、捕手と投手陣の信頼に大きなヒビが入ってしまっては、その影響は当然グラウンドの結果に出る。
 目に見えない部分ではあるが、後半戦はこの「信頼」をテーマにしばらくチームを追ってみたい。

      

                

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-07-15

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第11回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 今のところ、本当にギリギリの線ではありますが、なんとか更新日当日に原稿が届いております。毎回、1日だけ早く準備するだけでいいのに…と思うのですが。

 それはともかく、パ・リーグは大変な混戦模様のまま夏を迎えております。オリックスはどうなるでしょうか!?

           

▼次々と加入する外国人選手

 交流戦後「強いパ・リーグ」各球団との対戦になり、岡田オリックスは乗り切れない状態が続いている。
 ここまでの約1カ月は10勝12敗。連勝も6月末からの4連勝が1度あったのみで、岡田監督も“イライラ”“イライラ”“笑顔”“イライラ”“ぼやき” “怒ッカーン”…の毎日のようだ。「この負けは大きいよ」と自嘲気味に話した6日の西武戦の翌日に連敗を喫すると、試合後には今季2度目の会見拒否で足早に監督室へ消えていった…。
 今、チームはオールスター前の9連戦を戦っているが、全体にピリピリムードが続いており、別件で球団に申し込んでいた取材もオールスター後まで検討持ち越しとなった。

 そんな中、前半戦最後の戦いにも注目しながら、一方で後半戦を見据えた時に気になっていることがある。外国人にまつわることだ。
 9日にBCリーグ群馬のフランシスコ・カラバイヨ外野手の入団が発表された。昨年は四国・九州アイランドリーグで本塁打、打点の2冠王に輝いた右のスラッガーで、カブレラ、バルディリスと同じベネズエラ出身。まだ26歳という若さもあり、ニュアンスとすれば「育てながら…、でも、早く戦力になってくれれば…」という感じではある。
 しかし…よく獲る(笑)。これで何人目の外国人だろう?

100715cabreraカブレラ(写真)をはじめ、多数の外国人選手を抱えるオリックス。打線の強化、有事の際の備えなどの目的はわかるが、岡田監督には現有戦力の底上げに期待したい

 即答できる人はさすがのオリックス通だが、正解は、カブレラ、ラロッカ、レスター、バルディリス、バイナム、セギノール、カラバイヨの7人。登録上、カブレラは今年から日本人扱いとなっているが、それにしても7人。さらに、韓国人右腕・崔のテストも引き続き継続中でこの結果によっては8人体勢となる。
 かつてオリックスにいたセギノールが再入団し、去年までオリックスにいたフェルナンデスが西武へ再入団するなど、どこも似たようなことをやっているが、野手6人での7人体勢はなかなかだ。ただ、岡田監督にはこういう補強、野球をあまりやってほしくなかった、というのが正直なところだった。

       

▼未知の助っ人より現戦力に期待を

 思い返せば、昨年の10月14日。京セラドームで開かれた就任会見で岡田監督は、要約すれば攻撃面について、
「打ってくれたらもうけものくらいの感じ」
「外国人はプラスアルファ」
「日本人中心の打線が理想」
…、といった言葉を並べていた。
 キャンプで話を聞いた時も「去年みたいな野球にはならないし、もっと動いた野球になる」と。いくつか聞いた戦力に関する話の中で最も明確に、繰り返していたのがこの「動いていく」という攻めについてだった。実際に、昨年まで活躍のローズを構想から外したのも岡田野球実践のためだったはず。
 しかし、現状を見ると、掲げた野球とは離れ、外国人カルテットが並んでいた昨年までのチームカラーを思い出させる空気がなくもない。
 もちろん、戦いが進めば理想論ばかりを追いかけてはいられない。まして、チームは今、この先の流れ一つで3位どころか優勝も十分狙える位置にいる。一気にチーム浮上の起爆剤として助っ人の働きにプラスアルファを求める考えは理解に難しくない。
 また、外国人の獲得は今日話して明日OKというわけにはもちろんいかない。つまり、セギノールに声をかけたのはカブレラ、ラロッカが故障続きで不在になったあたりが起点となっていたはず。今回のカラバイヨは、そのセギノールの現状を見ての獲得前倒しなのか、あるいはセギノールと同時期に交渉に入っていたのか、そのあたりはわからないが、まあ、当然、いろいろな思惑あってのことではある…。
 しかし、その結果、前の原稿でも書いたが、例えば、交流戦明けにセギノールを即先発起用し、交流戦で繋がった打線の流れを自ら止めてしまう、ことにもなった。オリックスの打線自体は改めて言うまでもなく力はある。これ以上、未知の助っ人の力に頼るより、現戦力でのつながり、爆発にもう1度、期待する方が賢明だと思う。それに何より、岡田監督に期待される最たるところも、個々の力を引き出す操縦術にあるはずなのだから。

     

▼「殺される」選手のいないチーム体制づくりに期待

 外国人の話題を書いたところでもう1つ。
 ペナント中盤の時期にあえて持ち出すこともないのかもしれないが、7人体制の一方で気になるのがファームの方だ。たとえば、7月10日の広島戦のスタメンでは3番・バイナム、4番・セギノール、5番・ラロッカと並んでいた。スタメンの3席が外国人で占められるファームの状況が健全でないことは明らかで、ここにカラバイヨも加われば、当然、他の若手野手の出番は削られる。
 岡田監督は自らの著書「頑固力」(角川新書)の中で「殺される選手がいるならその補強は正しくない」といった話をページを割いて書いている。FAやトレード、外国人であれ、「まず最初に考えるのはその選手を獲って殺される選手はいないか、ということだ」と。あくまで1軍を主眼に置いての話だと思うが、戦力がだぶつき、その余剰戦力がファームにたまる現状は、やはりこの先を考えた時に少し考えてしまう。
 助っ人の獲得は編成部が中心になって動くものだが、オリックスでは、あくまで岡田監督の意向をくんで、そこから動き出すという流れのようだ。毎日ギリギリの中で勝負をしていると、ましてやそれで負けが続いたりすると、「もう1人打てるのがおったら…」となるのだろうが、岡田監督には今年優勝すること以上に、ビジョンを持たずにその場しのぎでやってきたこれまでのチーム作りの流れを変えてほしい。
 「そんなこと今言うてられへんよ」という声も返ってきそうだが、一番求めているのは“そこ”なのだ。

                

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-07-05

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第10回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 今のところ、本当にギリギリの線ではありますが、なんとか更新日当日に原稿が届いている状況です。もっと早く送ってくれればいいのに、とは思っているのですが…。

 それはともかく、交流戦明けに若干負けが込んだオリックスでしたが、その後どうなったでしょうか!?

           

▼交流戦明けのつまづきを早々に取り返した要因は?

 前回、ブログを更新した6月25日の時点では、交流戦明けの5試合を1勝4敗と再スタートに躓いたオリックス。過去5年の交流戦優勝チームの数字なども振り返りながら、次の5試合が大事とも書いたが、その5戦を3勝2敗。さらに4日のソフトバンク戦まで含めると交流戦後の5カードを7勝7敗の五分にまで星を戻した。

 さて、ここからは交流戦とは違い、6,6,9と連戦が続きオールスターへ突入する。 交流戦の最後に「オールスターまでの30試合が大事」と語っていた岡田監督は前回も書いた通り「(リリーフ陣が)6回からはいけんやろう」と先発陣の奮起を促しながら、こうも語っていた。
「先発がもう1枚いるわな」
 もちろん、連戦を見越してのことで、その1枚が誰になるのか注目していると、白羽の矢は5月半ばのトレードで広島から移籍の長谷川昌幸に立てられた。迎と喜田・長谷川のトレードに際し、関西では元阪神で、岡田監督がファーム時代に指導していた喜田を扱うメディアが多かったが、オリックスのチーム事情を考えれば、関心は長谷川へ向けなければおかしかった。

        

▼途中移籍の長谷川昌幸にかかる期待

 長谷川は市銚子高からドラフト1位で広島へ入団し、25歳の02年には13勝(10敗)を挙げローテーション入り。150キロに迫るストレートにはエースの期待も大きく背負ったが、その後は勝ち星も2,2,2,1,5,3,3と期待外れの成績が続いていた。今シーズンも当初は1軍だったが、結果を残せずファーム落ち。ファームで3試合を投げ1勝1敗、14回を投げ14安打、10四球、自責点7と特別見るべき数字のない中、5月15日のトレードだった。
 それがオリックスへ移籍後は、5月29日に中継ぎでの初登板からファームで4試合を投げ、実に安定した内容を残した。ざっと振り返ると3回(自責点0)、5回(自3)、7回(自0)、6回(自0)。都合4試合、21回を投げ被安打20、奪三振20、4四球、自責点3で防御率は1.29。この間、僕は試合での登板は見れなかったが2度、ファームのブルペンで見た。そこで長谷川は、これでなぜ結果が出ないのか正直不思議になるような球を投げていた。ストレートは指にかかり、思っていた以上に変化球の制球も安定。普通に投げれば十分1軍戦力になる、と直感した。
 トレードが成立したのは5月半ばだったが、常に先の先を読む岡田監督の頭には、交流戦明けの連戦を睨み、先発の「もう1枚」のことが頭にあったはず。中山や伊原あたりが入ってくれれば、それでももちろんよかったが、状態が安定しない2人に頼るのは心許ない。そこで他チームの余剰戦力の中から「もう1枚」を探していたはずだ。
 編成部が作成の「候補リスト」を睨みながら、おそらく岡田監督が長谷川獲得を希望、決断したのだろう。長谷川が2桁を勝った02年当時、岡田監督は阪神の2軍監督を務めていたが、ファームで台頭する時期から見続けてきた指揮官の中には「力を持った投手」のイメージが残っていたはずだ。
 そこに更に思うのは、岡田監督が長谷川の獲得に木佐貫の姿をダブらせることがあったのではないか、ということだ。どちらも右の本格派で過去にローテーションとして活躍した時期を持ち、岡田監督は全盛期のボールを知っている。30歳を過ぎた近年はチーム構想から外れつつあるが、まだ見限るには早い。そこに何より…。木佐貫と長谷川に通じるのがその投球スタイルだ。どちらも好調時は140キロ台中盤のストレートにキレも持つが、大きな特徴はフォークにある。カウント球からフォークを使え、投球数におけるフォークの割合が非常に高い投手なのだ。そして、木佐貫の復活にも見えるように、その投球スタイルが初球からどんどん振ってくるパ・リーグの各打線に通じると、おそらく岡田監督は読んでいたはず。
 そして6月30日。勝ち負けはつかなかったがサヨナラ勝ちとなった楽天戦で長谷川は5回1失点の好投で勝利に貢献。おそらく岡田監督にとっても快心の勝ちではなかったか。

        

▼オールスターまでの今後の展開に注目

 この長谷川も含め、ここへきて先発陣が奮起。交流戦3カード目(西武戦)以降の、9試合で見れば5回未満でマウンドを降りた先発は6月25日の山本のみで、3人の完投を含め5人が7回以降を投げた。その結果、6勝3敗と勝ちも先行した。
 前回の原稿の中で、打線ではセギノールのぶっつけでの先発起用、投手陣ではレスターの降格に「?」をつけた。しかし、レスターについては、先発陣の踏ん張りでここまではその不在を感じさせない。それどころか、ファームで6月24日以降4試合にリリーフ登板し4回2/3、無失点投球を続けている結果を見れば、今回の期間が非常にいい微調整の時間となったように見え、早々の1軍復帰の可能性は高い。
 一方の打線もセギノールに変わり26日から先発復帰の北川が目立たないが、7試合で出塁率.385(打撃30傑の選手を目安にすれば7位相当)の数字を残すなど、いい働きをで打線をつなげている。
 いい流れに乗って、6日からの6連戦また勝負となる。ここまで3勝6敗と負け越している西武、交流戦明け13勝2敗と驚異的な上昇を見せる日本ハムとの戦いは今の本当のチーム力を計る格好の舞台となるだろう。ただ、西武では天敵・岸が1日に右肩痛で登録抹消されている上、涌井、帆足もローテーション的に当たらない。ここで弾みをつけて、現在8連敗中のダルビッシュまで一気に崩すようなことになれば、9連戦前にチームの空気はさらに上がっていくだろう。
 チームには3日、青涛館の寮長・保谷俊夫氏急死のニュースが流れた。キャンプ時の小瀬の死に続く悲報にチームは大きな悲しみに覆われたはずだが、ここにまた負けられない理由が1つ生まれた。まずはオールスターまでの残り15試合、ここをどう乗り切るか。楽天以外の5球団がすべて貯金を持つ混戦のペナントレースはまだまだ続く。

      

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-06-25

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第9回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 交流戦休みも終わりいよいよこちらも夏本番です!

           

▼交流戦1位チームのその後の成績

 ペナントレースの開幕、交流戦の開幕、そして3度目の開幕。交流戦明けの戦いに注目していたが、完全に躓いた。その姿を見ながら、過去の交流戦優勝チームの戦いに頭が向き、交流戦前、交流戦後の数字を調べてみた。ざっとこんな感じだ。

2005年 ロッテ 
交流戦前 24勝8敗(1位) 
交流戦  24勝11敗(1位)
最終成績 84勝49敗(1位)

100625okdada以前から交流戦での戦い方を重視していた岡田監督(写真左から2人目)。オリックスは見事に優勝したが、休み明けの公式戦は苦戦のスタートとなった

2006年 ロッテ
交流戦前 18勝17敗(4位) 
交流戦  23勝13敗(1位)
最終成績 65勝70敗(4位)

2007年 日本ハム
交流戦前 21勝23敗(4位)
交流戦  18勝5敗(1位)
最終成績 79勝60敗(1位)

2008年 ソフトバンク 
交流戦前 23勝25敗(4位)
交流戦  15勝9敗(1位)
最終成績 64勝77敗(6位)

2009年 ソフトバンク
交流戦前 17勝20敗(5位)
交流戦  18勝5敗(1位)
最終成績 74勝65敗(3位)

2010年 オリックス 
交流戦前 16勝22敗(4位) 
交流戦  16勝8敗(1位)
最終成績 ?

 岡田監督は交流戦が終わった時「交流戦で調子の良かったチームは、これまでのもの見ても後半に上にいっとる」というコメントを口にしていた。ただ、優勝チームに限れば最終成績は1、4、1、6、3とやや微妙。
 05年のロッテはシーズンを通し安定した力を発揮しての優勝でここではやや“例外”。しかし、06年は交流戦中の9連勝で一気に星を稼ぎ、首位に立つも、リーグ戦再開後の6、7、8、9月とすべて負け越しで最後は借金5の4位。交流戦12連勝などでつけた勢いを、そのまま後半戦にもつなげシーズンを制したのは07年の日本ハム。前年V経験を持つチームに一旦ギアが入ると6月24日に首位に立ち、そのまま勝ちきった。
 08年のソフトバンクは交流戦で勝ちを積み上位争いに絡んできたが、後半は故障者が続き、王監督の体調不良もチームに影響したのだろう、急失速で最後は借金13。12年ぶりの最下位に沈んだ。09年もソフトバンクが制したが7月、8月が5割、9月は負け越しと、交流戦以降が波に乗れず3位。
 それぞれチーム事情はもちろんあるが、大きな故障者を出さないことを前提に、勝負の夏に勝っていかないと当然ペナントは見えてこない。

    

100625leicester今シーズン前半戦は、勝利の方程式の一角として奮闘したレスターだが、交流戦途中から徐々に調子を落とし、20日の日本ハム戦後にファームに降格した

▼レスターのファーム落ちは吉か? 凶か?

 そこでオリックス。再開後の2カード、5試合を見て気になる点が大きく2つある。1つは投手陣で交流戦突入直前に出来上がった勝利の方程式が崩れてしまっていることだ。交流戦最中の6月1日の中日戦で敗戦投手となり、抑えの座を剥奪されたレスターが、20日の日本ハム戦で1回2失点のピッチングを見せるとファーム落ち。確かに好調時の姿ではなかったが、他の投手陣の状況を見ると、ここでレスターを10日使えないのはかなり痛いと思ったのだが…。
 交流戦の戦いが示したようにパの打者にごまかしはきかない。決定的なボールか、緻密なコントロール、明確な武器を持たない投手は短いイニングでも抑えられない。その点、オリックスの今のブルペン陣を見ると、岸田、平野以外は勝ち試合、接戦での展開で任せられる顔が見当たらない。古川のボールがもうひとつ上がってくれば可能性はあるだろうが。
 交流戦終わりに岡田監督はこの先、6連戦、9連戦とつながってくる戦いを見越し「(リリーフ陣が)6回からはいけんやろう」とも話していた。それは先発陣への叱咤でもあり、平野、岸田への過度な負担をかけたくないという思いでもあったはず。そう考えるとなおのことレスターをもう少し辛抱して使い、夏場の浮上を待つ手もあったと思うが、どうなのだろう。

        

▼セギノールの加入は急ぐ必要があったのか

 気になる点のもう1つは、攻撃陣についてで、交流戦後から新加入のセギノールを打線に加えたことだ。再開後5試合は打線も低調で22日のロッテ戦で9点を取ったが、あとの4試合の得点は0,1,1,2。交流戦でほぼチーム打率3割と打ちまくった打線が、皮肉にもパの投手陣の質の高さを証明する形にもなってしまった。その中で、24日のロッテ戦は14人の走者を塁上へ送りながら2得点と象徴的だったが、交流戦であれだけつながった打線がどうもつながらない。その原因をセギノール1人に背負わせるつもりはもちろんないが、ここまで20打数3安打(.150)、1打点。5度2人以上の走者を塁上に置いた場面で打席に立ち、いずれも凡退。
 その結果より、言いたいのはファームで慣らすこともなく急いで使う必要があったのかということ(なぜセギノールを獲ったのか? 去年までの野球に戻るつもりなのか? という思いはここでは置いておき)。

100625segui急遽獲得したセギノール。石毛宏典監督時代にプレーした古巣で爆発となるか?

 セギノールの加入で交流戦絶好調だった北川がスタメンから外れ、カブレラがファーストに入ることにもなっている。交流戦では岡田監督が以前から理想としてきた「つながる攻撃」が見事に形になっていただけに、しばらくはその形を崩さずにいってほしかった。打線というものは1人替わっただけでも感じは違ってくるはずだから。
 レスターをあえて勝ちパターンから外し、逆にセギノールをあえて打線へ入れたことも、「交流戦と同じでは勝てない」という岡田監督が打った先手とも言えるが、開幕から2カ月近く経った交流戦前後からようやく出来てきた攻めの形、守りの形を自ら動き崩してしまったようで、もったいない気がしてならない。

「オールスターまでの30試合が大事」

 交流戦後にこう語っていた岡田監督。再開後の5戦が1勝4敗と出遅れたが、6月の残り5試合をまずしっかり戦い7月につなげていかなければ。ここからどう持ち直すのか。また、岡田手腕の見所ではある。

      

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-06-15

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第8回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 今回は本当にすごい選手に覚醒し始めているT-岡田選手が久々に登場! 懐かしいあの「ナニワのゴジラ奮闘記」の一時復活を思わせる内容はオリックスファン超必読です!

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交流戦「アレ」の要因を考える

 交流戦の最終戦に勝利した直後。毎試合後、囲み会見が行われる一塁側ベンチ裏のスイングルームで岡田監督の口は滑らかだった。

「借金6くらいで入ったんかな、まあ、優勝とかそんなん、なあ、考えてなかったけど、なあ、そら…」

「他(のチーム)が勝ったって途中からなあ、見んかったよ。そんなんなあ、1試合、1試合、計算しとったら、なあ、身がもたんよ」

「(交流戦)最初の一回りが8の4(8勝4敗)で次も同じ8の4やったけど、なあ、最初はTもカブレラもいない中で、まあ、よういったけど、でも、全然意味は違うよ、あとの2回り目の方が大きかったわ」 

 交流戦終盤には禁句となっていた「アレ」も解禁となり、16勝8敗での交流戦初制覇を早口に振り返った。この勝利には当然いくつもの要因があった。
 まず、パ・リーグのチームが6年連続で制し、特に今年は6位まですべてパ・リーグ勢が独占。ある球団関係者は「正直なところ、セとパの現状のレベルの差を感じました」と呟いた。交流戦で爆発したT-岡田も「(全体に)パの投手の方がボールは上だと思います」と迷わず言った。ダルビッシュ、涌井、田中、岩隈、杉内…。今の日本を代表する投手たちが揃ったパ・リーグで戦ってきた成果が、素直にバッティングの結果に出たと言って言いだろう。各打者の交流戦前後の打率を比べるとその“打ちっぷり”がよくわかる。

100615orix_02交流戦でチームとともに打撃の調子を上げた選手会長・日高が代表で優勝賞金を受け取った

 坂口 .248 → .302
 後藤 .272 → .312
 北川 .326 → .335
 T-岡田 .233 → .260
 日高 .286 → 
.326

 交流戦期間中のチーム打率が脅威の.300で、トータルのチーム打率も交流戦前の.255から.271に跳ね上がった。岡田監督はキャンプ当初から「今年は動きのある攻撃になると思う。このチームにはそういう攻めの方が合ってると思う」と語っていたが、まさに指揮官が描いていた理想の攻撃が何度も展開された。7日の広島戦(福山)での10者連続安打など、まさにしその象徴的なシーンでもあった。

 打線だけではない。スイングルームの岡田監督は続けた。

「チームの方向性が見えた言うんかなあ、こういうゲームでいくいうのが見えてきたと思うよ。(交流戦の)前半終わって、まあ、2回り目からなあ、落ち着いてやってたわなあ」

 岡田監督の言う「こういうゲーム」とは、見事につながった攻撃陣にも当てはまるが、勝利の方程式が誕生した投手陣にも言えた。
 交流戦に入る直前のロッテ戦で岸田がリリーフに回り、平野-岸田-レスターのリレーが初めて行われた。交流戦の途中で、レスターと岸田の順番が入れ替わったことはあったが、勝ちパターンができたことで、攻撃陣にも、先発陣にも、ベンチにも安心感を与えた。数字では打線の高打率ばかりが目立ったが、投手陣全体の防御率も交流戦前の4.55から4.25に大きく上げてきた。交流戦16勝の内、実に10勝が逆転勝ちという結果も、打線と投手陣の信頼関係が出来てこそのものだったのだろう。

 投打好調の陰には、おそらくまた別の要因もあり…。やはり、勝手知ったるセの野球…、ということで岡田監督の采配やチームのデータ分析の“冴え”もあったはず。
 今年のオリックスはミーティングがかなり細かくなっていると聞くが、あるところかこんな話を聞いた。対戦前にセのあるチームの打者のデータ確認をしていたところ、話の途中で岡田監督自らが「○○(選手名)にはここを攻めとけば大丈夫や」と言い切ったことがあったというのだ。僕が耳にしたのはそのワンシーンだけだが、阪神時代の経験から頭の中に蓄積されてきた「ゲームの中で得た生きたデータ」が交流戦中には随所に活かされたはずだ。
 また、今年の初めに某球団の元編成担当者が「岡田監督の人脈は球界トップじゃないか」と驚いていたこともあったが、たとえデータ一つでも、ありとあらゆるところから生きたデータを集めていただろう、ということも想像できる。その上で岡田監督も言った「スコアラーとかに一生懸命やってもろうたし、(交流戦の結果は)一人一人の積み重ね」だったのだ。

100615orix_01ライトスタンドの観客に挨拶をするオリックスの選手たち。交流戦で好成績を挙げたチームはシーズン終了まで好位置につける場合が多いだけに、この先大いに期待したい

 そして――。
 そんな緻密なデータ活用も含め、開幕から約3カ月。岡田監督の野球観がコーチやナイン、チームスタッフにも浸透し始めたのだろう。極端に言えば、感覚的な物言いをする岡田監督の言葉に、何を怒っているのか、真の意味は何なのか、何を求められているのか…、当初は理解できない面々も多くいたはず。
 京セラドームの試合には足繁く観戦に来ている岡田監督の母・サカヨさんの「あの子、真ん中抜かしてしゃべるやん。選手が聞いてて分かるんかなって心配やわ」という話が新聞(日刊スポーツ)に紹介されていたが、“そこ”がわかるようになり、チーム全体が勝つための意識を共有するようになったのだろう。そんないくつもの要素が重なっての交流戦初制覇――。 
 首位西武とのゲーム差5.5は交流戦前の7.5から2ゲームしか縮まらなかったが、今シーズンのオリックス野球がはっきりみえた約1カ月の戦い。優勝の結果よりも何より大きかったのはそのことだったはずだ。

                 

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-06-07

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第7回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 今回は本当にすごい選手に覚醒し始めているT-岡田選手が久々に登場! 懐かしいあの「ナニワのゴジラ奮闘記」の一時復活を思わせる内容はオリックスファン超必読です!

      

T-岡田、その開眼の裏にある「ノーステップ打法」

100607okada02_2 6月2日の午後、ある球団のスカウト部長の取材をしていた。すると、今年の「候補生」たちの話題が一段落したところで「大型スラッガ-を育てる難しさ」の話になり、その人はしみじみこんなことを言った。

「競争させちゃいけないんですよ。こいつを一人前にする、という信念でチームが使い続けないと。そうしないと本物のホームランバッターもスターも育ってこない」

 その人も頭の中に何人かの顔を浮かべているようだったが、こっちの頭にはもちろんT-岡田の顔が浮かんでいた。
 ファームでは1年目から先発出場を続け、昨年、一昨年あたりは1軍で使いきれなかった面もあったが、今年は岡田監督の抜擢に応え、今、この活躍。
 その取材から戻った夜、テレビをつけるとオリックス対中日戦の中継がやっていた。しばらく見ていると、北川の満塁ホームランで7点差を追いつき、最後は岡田のサヨナラホームランでまさかの大逆転勝利。一気に岡田の元へ波がやって来た。
 ただ、誰より岡田の潜在能力を4年間の追跡取材の中で感じていた僕とすれば、世間ほどこの活躍に驚くことはない。何より今、驚いているのは…。そのバッティングスタイル。「ノーステップ打法」。最近、岡田の活躍を伝える記事の中に何度か見つけた“コレ”のことだ。

 サヨナラホームランの場面。打席の岡田は投球モーションに合わせ右足の踵をわずかに浮かせ1度踏んだが、ステップはなし。しかし、そこからセンター右へ放り込んだ。これがとんでもないことなのだ。簡単に言えば、過去の日本のプロ野球史の中で、ノーステップで活躍した長距離ヒッターを僕は知らない。一部の外国人の中にこの形は見えるが、それは上体に大きなパワーを持つ彼らだから、という風に見られていたはず。体重移動をしっかり取って、その動きの中でエネルギーを生み出さないと日本人は飛ばせない、と思っていたはず。もちろん、タイミングを取りにくいといった感覚の問題も含め、これまで日本では定着しない打法だった。
 ノーステップ打法と言えば、楽天の田中が交流戦前に「今年はこれで打ってみます」と話し、少し話題になったことがあった。改めて田中のコメントを探してみるとこうあった。

100607okadaT-岡田選手のノーステップ打法。「ナニワのゴジラ奮闘記」連載中から悩ませていた打撃フォームは、現在のところ、この形で成果を挙げている

「イメージはキューバの選手。ステップしないと(軸が)ぶれないし打ちやすい。(ロッテの)金泰均(キム・テギュン)も大リーガーもそうですよね」(5/7サンケイスポーツ)

 確かにぶれないというのはノーステップの大きな魅力だろう。ただ、確実性は上がってもパワーが落ちるのでは? という考えがあった。ひとつは体重移動が小さくなるため、生み出されるエネルギーが少量になるからだ。
 4月後半、打率が1割台にまで落ち込んだところで岡田はステップをしなくなった。当時、岡田自身も違和感を持っており、一度、ある試合前に話をした時も「どうなんですかねえ…」「これからはどうすかねえ…」と浮かない顔で返してきた。
 実際、フォーム変更からしばらくは岡田らしくない渋いヒットが続いた。ほとんどがレフト前、レフト横へ落ちる当たり。ちょうどその時期、現役時代は中軸を打っていたある球団の編成担当者と話をすると「あんなノーステップで打ったら、そら、左方向にしかいかんよ。もったいない」とこぼしてきた。
 僕も当初はそう思っていた。その見方を変えたのが5月5日のソフトバンク戦。京セラドームの5階席まで飛ばす一発をテレビで見た時だ。「ノーステップであそこまで…」と僕はなり、岡田もこの一発で何かを感じた、そんなホームランだったはずだ。

      

タイツ先生の理論

 それにしても…。今、岡田は構えたところから一旦、投手寄りの右膝へ軽く体重を乗せ、そこからテークバックへ移る体重移動を行っている。もちろん、動き自体は小さい。それでいてあの飛距離の説明が自分の中でしっかり整理できない。体のパワーが並外れていることはもちろん、それだけではない気がした。
 そこで、いろいろ探していると、以前、岡田に間接的なアドバイスを送ったこともある野球小僧本誌でもおなじみのタイツ先生の記事に行き当たった。目にしたのはソフトボールのバッティングを解説したものだった。いくつか抜粋しながら紹介させてもらうと、まず、タイツ先生は、ソフトボールと野球のバッティングではタイミングの取り方も体の使い方もまったく違うことを指摘しこう続けていく。
「野球の場合、ゆっくりの体重移動からスイングを始動します。ソフトボールの場合、バックステップがない位の小さなトップから瞬間的にスイングを始動します。トップから一瞬でトップスピードでボールに対応しています。勢いをつけずにトップの構えから瞬間的にトップスピードで振り切るバットスイングが必要です」

100607okada03いまやオリックスの4番を任されるようになったT-岡田。今年は飛躍のシーズンとなった

 さらに「ソフトボールのトッププレーヤー達はいとも簡単にノーステップ打法でボールを打ちます」、「この秘密は身体の重さを慣性力に乗せて振り出すところにあります」と続け例を示す。つり革につかまってバスに乗っている時に急ブレーキがかかった時にどうなるか、と。「あなたの身体は大きく後方に振れて次の瞬間には身体が前方に投げ出されるようになります。このエネルギーが慣性力なのです」。
 そして「ソフトボールのバッティングでは慣性力を使ってノーステップ打法でスイングをします。右半身と左半身やバットと腕の重さと胴体や脚の重さなど交互に使うことにより、慣性力を発揮させスイングをするのです

 …と、書いて、これはあくまで“さわり”。ここで詳しくノーステップ打法の謎を解き明かすまでには至らないが、非常に興味があるポイントには違いない。
 また、岡田の活躍によって、これまで日本人には馴染まないと見られていたスタイルが一気に野球界に広がる可能性も感じる。近々機会を作って、このたありをまた本人にもしっかり聞いてみたい。
 今回はオリックスの戦いからは少々外れた話を書いたが、革命的なバッティングで目覚めたT-岡田に引っ張られるように、チームの状態も上向き、なかなかいい感じになってきた。

                 

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-05-25

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第6回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? オリックスファン超必読です!

      

加藤大輔と小松聖の「自分らしさ」

100525kato昨年までクローザーとして活躍してきた加藤大輔

 注目を集めた阪神との関西ダービーの第一ラウンドをオリックスが快勝。しかも、交流戦直前に定まった平野、岸田、レスターの必勝リレーでの連勝に岡田監督の気分も久しぶりに晴れたことだろう。また、チームにとっても勝ちパターンを確立しての勝利は今後の戦いへ向け大きな意味を持ったはずだが、そんな勝利に沸いた阪神戦を前に昨年までのクローザーがひっそりファーム落ちとなった。
 ここ2回の原稿で「復調気配」と書いてきた加藤大輔の降格だ。岡田監督がファーム行きの決断を下すに至った19日、広島戦での投球は僕もスタンドから見ていた。打線が追い上げ姿勢を示した直後、2対4の4回途中からの登板で、打者8人に1安打、2四球、1失点。さらにピンチを残した6回途中でマウンドを降りた。確かにその夜の加藤からは力みを感じ、ひっかかって外れるストレートも目についたし、変化球のキレも今一つ。それでも失点そのものは2度の「またぎ」を入れた3イニング目、それも北川の失策が絡んでのもの(その後の四球は頂けなかったが)。開幕直後のストレートが140キロに届かない加藤としての「異常事態」は確実に脱し、その夜も最速は146キロを示すまでに戻ってきていた。はず。しかし…。
 降格となる数日前、加藤と話した時も「ストレートが上がってきましたね」と向けると確かに頷いた。そしてまだ途上ながら上向きに転じた理由を2点挙げた。一つは「原点に戻って下半身を使うフォームを見直した」こと。もう一つは「自分のタイプはどうなのかってことをもう一回考えたんです」とメンタル面を挙げた。去年は球速表示では150キロに達していてもクリーンヒットされるケースも少なくなかった。技術的問題もあったとして、最後の結果を分けるのはどこまでボールに気持ちが伝わっているか――。そこなのだ、と、フォームを改めて見つめ直した。

「去年は結果が出なくなる中で段々コーナーを狙おうという気持ちが強くなっていったんですけど、自分の持ち味はそうじゃない。コントロールはアバウトで少々甘いところにいってもそれがファウルにできたり、打ち取れるのが自分のタイプ。自分らしさを確認した、そんな感じですね」

 結果が出ないと、つい、周囲の声に左右されそうにもなる。変わらないといけない、という思いも浮かんでくる。どうすれば…。堂々巡りの自問の中で辿り着いたのが「自分らしさ」。苦しむ中で加藤は自分が進むべき道をしっかり見つけはいた。が…。

 加藤が口にした「自分らしさ」というフレーズに思い出す顔がもう1つあった。先発転向後、白星も挙げたが厳しい投球が続いている小松聖だ。加藤と小松は年齢も近く、九州で年明けから再起へ向けた自主トレを行った仲でもあるが、小松も苦しんでいる。開幕から負け試合でのリリーフを重ねる中で、去年の状態より、キャンプ、オープン戦での状態よりも、よくなっていたことは明らかだった。変化球のキレ、低めへの制球が上がっていた。だから2回目の原稿で「復調気配」とも書いた。岡田監督は常に小松を語る時「スピードがなあ…」と話してきたが、15勝を挙げた08年もストレートの球速自体は140キロ前後が中心だった。だから僕は岡田監督がおそらく持っているイメージよりも数字は低く、あと3、4キロ上がってくれば完全復活も見える、と今も思っている。ただ、まだそこが…。

100525komatsu2008年に15勝を挙げた小松聖。復調を心待ちにしているファンも多いはず

 話は古くなるが小松には昨年の夏前にじっくり話を聞く時期があった。ちょうど2度目のファーム落ちの時期で場所は合宿所。初めは「何で今頃…」という表情も浮かべていた小松だったが、時間が経つにつれ、ポツリ、ポツリと心境を語ってくれるようになった。その時に小松が口にし、言葉の端々から伝えてもきたのが「自分らしさ」という部分。
 希望枠で入団の1年目はシーズン終盤までほぼファーム暮らし。それが2年目の昨年に15勝の活躍で新人王どころか一気に周囲はエースの称号まで与えた。そして、昨年は3月のWBCメンバーに選ばれ、第2ラウンドの韓国戦では2回2/3をノーヒット、5奪三振の好投。勢いに乗って真のエースへの道を歩む、と期待も膨らんだが、何がどうなったのか、WBC後、チームに再合流すると別人のようなピッチングを続けることになった。序盤で2度目の2軍落ちも経験しシーズンは終わった。
 疲れやフォームの乱れを指摘する声も相次いだが、小松はそんな問いに目線を強めて返してきた。「疲れのせいにしたらすべてが終わってしまう。それで解決にしたくない」「落ちて、落ちて、どうしようもないとこまで落ちた時にどれだけ踏ん張るか」。「こうして悩んでる自分がいるということは成長できる自分がいるということ」…。
 小松が昨年から始めたブログ「一球入魂」にしばしば「自分らしさ」という言葉を見つけた。調子のいい時、結果の出ている時は誰もが自分らしくいられる。結果が出なくなった時にどれだけ自分を貫けるか。そんな声を聞いた気がした。そして今年、小松のブログに野球の話題が出ることはほとんどない。そこにまた迷い込んだ闇の深さを感じる。
 チームにはJHKの勝利の方程式が誕生し、打線もT-岡田や荒金、バルディリスら昨年までのファーム組の選手の活躍を中心につながりはじめた。浮上ムードが漂う。
 しかし――。
 「元」とつけるのは忍びないが、ここからシーズンが進んでいく中で、元エースと元守護神の姿がどこにあるのか。自分らしくあり続けようともがく2人のKの戦いを見失わずに追っていきたい。

        

(取材・文/谷上史朗)

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2010-05-17

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第5回〉

100517leicester開幕前から試行錯誤を繰り返してきた継投パターンは、平野、岸田、レスターの方程式の誕生により形になりはじめている

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? オリックスファン超必読です!

      

固まりつつある投打の形

 12日から始まった交流戦。オリックスはヤクルトに連勝スタートも続く中日戦では連敗。なかなか乗り切れない戦いが続くが、それでもチームが良い方向へ向かっていることは間違いない。観戦した神宮でのヤクルト2連戦でその思いを強くしたのは、戦う形が決まってきたからだ。「形」とはまず投手陣のつなぐ「形」だ。ヤクルト戦の初戦、1対1の8回からまず先発の近藤を継いで平野が登板。この日、球の走りは今ひとつだったが、それでもストレートを中心に3人で封じると、9回は新セットアッパーの岸田。昼間には中央大の澤村が東都リーグ戦で150キロ台を連発したように、スピードの出やすい神宮のマウンドとは言え、こちらも大台越えにドラフト候補とは1段も2段も上のキレを加えたストレートで三者凡退。そして勝ち越したあとの延長10回裏はレスター。これまで生観戦、テレビ観戦を通じ、今季の登板は全て観てきたがその中でもおそらくベストピッチ。最速155キロの真っすぐでグイグイ押し、そこにこの夜は制球も安定。まったく前に飛ぶ雰囲気さえ漂わせず試合を終わらせた。3回前の原稿で復調気配と書いた小松が、交流戦から先発に回ったが、そのお陰もあり、ここに平野―岸田―レスターの勝利の方程式が誕生した。
 神宮のあとの中日戦ではレスターが打たれ敗れたが、「これでダメなら仕方ない」と思える形ができたことが大きい。HKLのパターンに、前回も書いた通り、はっきり復調気配の加藤が、場合によっては平野に代わるケースも出てくるだろう。あるいは加藤が平野の前後に入り、KHKL、HKKLの4枚つなぎというプロ野球史上初の方程式が生まれるかもしれない。とにかく点を守る形がここに来て出来上がった。

100517arakaneヤクルト戦の2戦目以降、懸案だった2番にはソフトバンクからトレードで獲得した荒金久雄が名を連ねるようになった

 一方の打線にも点を取る形が見えてきた。これまでの原稿でも書いてきたポイントの2番について、前回の原稿では赤田の2番に「?」をつける内容を書いた。その2番にヤクルトとの2戦目から荒金が座った。延長となった初戦は代打で登場ししぶとい二塁への内野安打から勝ち越しのホームを踏んだ流れを受けての初スタメンだったが、まあ、素晴らしい働きを見せた。7打点のカブレラがヒーローという試合ではあったが、監督賞がもしオリックスにあるなら間違いなく荒金が受け取っただろう。
 まず1打席目。ツーベースの坂口を2塁に置いた場面で、バーネットの内角へ食い込んでくるファーストボールにファウルで粘った後、6球目をセカンド前へ転がした。この夜から「つなぐ人」から「還す人」となった3番・赤田は倒れたものの、カブレラのタイムリーで先制点を挙げた。
 1死一塁で回ってきた2打席目。ここでもファウルで粘ったあとの8球目、2-2からの外角ボールゾーンへのスライダーに飛びつくようにバットを出しライト前へ落とした。スタートを切っていた坂口は楽々三塁へ達しチャンスを拡大すると、赤田のファーストゴロで1点。さらにそのあとの得点にもつなげた。ここまでオリックスの戦いをつぶさに観てきたが赤田が2番時にこうも見事なエンドランを観た覚えがなかった。
 3打席目にも2死一塁からやはり8球粘って四球を選んだかと思えば、4打席目には1死一塁から増渕の甘いスライダー(2球目)をコンパクトに振り抜き痛烈なレフト前ヒット。そして5打席目は無死一、二塁からバントの構えを交え相手にプレッシャーを与えながらボールを見極めての四球…。その後のカブレラの満塁弾を呼んだ。
 この夜の荒金は5打席でヤクルト投手陣に実に29球を投げさせた上、エンドランあり、四球あり、進塁打あり、ヒットあり、と2番としての役割を完璧にこなした。まさに岡田監督が思い描いていた2番の誕生、スタンドに座りながらそんな思いを強く感じた。
 連敗を喫した中日との2試合も、打撃成績的には2番・荒金は7打数1安打。しかし、よく見れば、四球を2つ選んでおり、9打席で3度の出塁ということになる。ここまでの数字を振り返っても5月4日の初打席以来、19打席に立ち15打数5安打、4四球、5三振。3試合、4打席目までは代打での登場で、四球の4つは2番に入った13日からの3試合、14打席の中で選んでいる。その結果、打席数は圧倒的に少ないとはいえ、17日現在で出塁率はカブレラの.504に迫る.474。
 入団時は「秋山2世」の呼び声も受けていた荒金だが、プロ10年目、新天地での戦いに、「何とかしたい」という思いがそのまま打席の姿勢に表れている。荒金がどこまで2番として働き続けることができるかわからないが、「仕事を出来る2番」の誕生は必ず打線をつなげ、得点効率を上げていくだろう。岡田監督には出来るだけ動かさずに使ってもらいたい。

100517taguchi2番が決まれば次は3番、コンディションが戻れば田口の打力を買いたいが…

 2番が決まれば次はカブレラの前後。本質的に「つなぐ人」より「還す人」タイプと書いた赤田が乗り切れない後藤に変わり3番に入っているが、ここがまだ弱い。昨年のファーム首位打者でここへ来てヒットメーカーの片鱗を見せてきたバルデリスも候補だと思うが、僕は体が万全に戻れば田口を3番で使ってもらいたい。前回の原稿では2番候補の筆頭とも書いたが、荒金が決まった今、同じく何でもできる上に勝負強さも魅力の田口を最大限に生かしてほしい。ここまでの田口は19試合で51打数15安打、4打点、1本塁打で打率は.294。際立つものではないが、内容は数字を遙かに上回るものを見せている。とにかく芯でとらえる確率がメジャー行きの前より間違いなく上がった印象でアウトになったとしても常にいい打球を飛ばしている。相手バッテリーにしても後藤や赤田よりもイヤな感じを受けているはず。
 もし、3番田口となれば2、3、4番に右が並ぶことになるが、これまですでにリーグ最多の併殺打数を数え、得点効率がもうひとつ上がらない打線を思えば、右左の並びよりも、各打順の役割をこなせる選手を上位に並べたい。というわけで、救援陣の形と2番が決まってきた次の注目は、2番とカブレラの間をつなぐ3番。1つ1つ形が整っていけば、まだまだ巻き返すチャンスは十分ある。

        

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-05-06

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第4回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? オリックスファン超必読です!

      

100506ohbiki_2キャンプ時に2番打者として期待が高かった大引啓次。現在はファームで調整中(右は新井宏昌2軍監督)

打線をつなぐ理想の2番打者が不在

「勝ったり負けたりこんな展開が続くんやろうな」
 先月27日から始まった9連戦。初戦が負け、2戦目に勝利したあとの試合後、岡田監督はこう言って先の見通しを語った。カブレラに続き、田口も戦線を離脱し、当然しのいで星を拾う戦いが予想された。しかし、その思惑通りともいかず、29日から6連敗。9連戦目となった5月5日のソフトバンク戦も、あと1人まで2点リードしながら守護神レスターがつかまる何とも辛い展開で4時間55分の末のドロー。トンネルは続いたままだ。
 思えば昨年も28試合目からの9連敗で一気に借金生活に入ったが、今年も今の時点で15勝21敗1分。昨年の37試合終了時の15勝22敗と非常に近い数字になってしまった。その内容も先発が崩れた試合あり、レスターが捕まった試合あり、守りで落とした試合あり、あと一本が出ない試合あり…。なかなか噛み合わない。
 その中で前々回はリリーフ陣について、前回は捕手陣について書いたが、今回は打線、中でも2番について考えてみる。救援陣の整備、バッテリーの意識改革、そして攻撃では2番の働きが今季の課題でもあり、僕もキャンプから注目していた点だった。
 「攻撃」について、高知キャンプを訪ねた時、岡田監督はこんなことを言った。

「去年なんか、打率がリーグ2位で得点が5位。普通考えられへんよ。でも、メンバーを見たら思ってたより動けるヤツもおるし、このチームはもっと動いた方が点が入る感じはしてるんよ」

100506yamasaki_2守りだけでなく打の個性も光る印象が強い山崎浩司。粘り強さについては岡田監督も評価している

 去年までとかなり違う攻めになりそうですか? と確認すると「そら、全然違うようになるはず」と迷いなく言った。ところが、ここまでの攻めを見ていると、去年との違いはなかなか見えてこない。ちなみに昨年はチーム打率.274(リーグ2位)で585得点(5位)だったが、今年のここまでは打率.251(4位)で117得点(4位)。1試合の平均得点は昨年の4.06に対し今年は3.97とほぼ横バイで皮肉なことに打率が落ちた結果、打率と得点のバランスが合うことになっている。
 ちなみに本塁打は昨年の117本(4位)のペースよりやや上がり、現在はリーグ3位の35本。対して盗塁は昨年もシーズン67個(5位)と走れなかったが、今年は輪をかけて走れずここまで9盗塁はトップを走るソフトバンクの58個を引き合いに出すまでもなくダントツの最下位。盗塁だけではないが、残念ながら「動く攻め」の片鱗も見せられないでいる。そこで2番を考える。
 機動力を使った攻め、流れる打線を考えた時、岡田監督も、当然2番の役割を重視していたはずだ。キャンプ当初、指揮官の中には1番坂口、3番後藤の間には、はっきり大引の名前があった。野手陣の顔ぶれを見れば適任に思え、昨年までも多くの場面で2番に座ってきた。ところが、宮古島キャンプで僕も取材した日。紅白戦で2番に座った大引がバントミスに続き、エンドランを空振り(結果、盗塁を助ける)、さらに走者2塁の場面で中途半端なスイングでのショートゴロ…。それまでの積み重ねもあったのだろうが、岡田監督は試合後、「体も頭も硬いわ。もっとグニャグニャにしていかんと…」と、ひろしきり2番大引への物足りなさを語った。
 その時点で、岡田監督は山崎(浩)のしぶとさを評価していたが、直後に西武から赤田が加入すると2番は赤田で固まっていった。ただ…。
 赤田はオープン戦から派手な活躍も見せたが、試合を重ねて見るごとに、僕の中でも「2番赤田」に疑問を感じるようになった。赤田は決して岡田が望む、しぶとさや臨機応変さを持った2番タイプではないと感じるようになったからだ。送りバントのケースで結果、成功した時でもファウルのあと…、というケースを何度も見た。エンドランのシーンでのフライアウトや追い込まれてのアッサリの三振…。そんな印象の打席が少なくない。特にバントに関しては、上手いとは言えず、そんな話をかつて西武で赤田とプレーしたある関係者にすると「将吾は全然器用じゃないですよ。身体能力でやってきたタイプですから」と、即答で返ってきた。思い返せば、赤田は本来は右打ちで俊足を生かすためにプロ4年目の2002年にスイッチに転向。そのこと1つからも特に左打席での敢えて言えば“不器用さ”に納得してしまう。西武時代も1番や9番、そして2番も打ったが、その2番も攻撃型の近年の西武野球の中で座ったもので、やはり岡田が望む2番とは違ったはず。

100506akada阿部真宏とのトレードで開幕前に加入した赤田将吾は高い身体能力を誇る。2番以外の打順の方がより生きるタイプか

 赤田のここまでの打撃成績からもそんな一面が伝わってくる。数字を並べてみると打率.242(27位)、19打点、5本塁打、8四球、28三振、9犠打、2盗塁、出塁率.286、長打率.403。例えば、これらの数字を他球団で常時2番を打つ荻野、栗山、本多の3選手と比べると打率、出塁率、犠打数、盗塁数、四球の数では一番下になり、本塁打、三振、長打率ではトップ、打点も栗山の24に次ぐ2位となる。前後の打者との絡みもあるが、それらの数字からもつなぐ人ではなく、還す人のイメージさえ浮かぶ。ベンチが求めるものとのギャップを感じる。
 昨年のオリックスでは実に10人の選手が2番を打ったが、今年はここまで赤田が28試合であとは山崎4,田口2,下山、坂口、塩崎が各1試合ずつ。そんな中、赤田の打率が2割前半を低迷していた4月半ば頃から僕がずっと思っていたことがあった。それは「田口の2番固定だった。

               

惜しまれる田口壮の戦線離脱

 キャンプ時から岡田監督は田口の1打席、1打席、スタンス、構えを微妙に変えるなど、意図の見える打撃スタイルを高く評価していた。その田口こそ、考える岡田野球に最もふさわしい2番に思えたのだが、なかなかなかそういう形にはならなかった。
 田口が今季2度目の2番に入ったのが4月20日の日本ハム戦。4対3でサヨナラ勝ちした試合の中で2番としての際立つ働きはなかったが、僕の中には〈しばらくこれでいってくれないか…〉という思いがあった。
 また、岡田監督の中にもその気持ちがあったのではないかと推測する。というのも、この試合まで赤田が2番を外れたのは左投手が先発の7試合と楽天・田中が先発した2試合の計9試合のみ。ところが、20日の日本ハムの先発はルーキー右腕の増井。そこに岡田の決断があったように感じたのだ…。しかし、この試合の8回の走塁で田口が太腿を肉離れを発症。岡田の真意はわからないまま、田口は翌日に登録抹消された。もし、田口の故障がなければその後の2番はどうなっていたか、その後の打線はどうなっていたか…、と今も思う。ちなみに、20日の夜、試合を決着させたのは途中出場でサヨナラヒットを放った赤田。還す人の働きを見せた2番候補の働きに妙な気分を感じたものだった…。

100506taguchiメジャー経験豊富な田口壮。開幕から味のある存在だったが足の故障で戦線を離脱。早期復帰が待たれる

 9連戦では再び赤田が2番に固定されたが、なかなか打線も流れていかない。その間には4月30日にソフトバンクとの間のトレードで金子圭輔、荒金久雄の2人の野手も獲得し、すでに1軍デビュー。一方で楽天に3タテを食った2日の試合直後に日には大引を含む4選手がファーム落ち。岡田監督もまだ選手の試合の中での適性を把握しきれていないイライラを感じるし、選手にも岡田イズムを感じ切れていない戸惑いを感じる。

 「GW頃をメドに」とつなぐ形のメドを語っていた投手陣では、開幕から安定していた平野に加え、加藤が明らかに調子を上げ復調気配。レスターを含めた勝利の方程式が見えてきただけに次は攻め。頭を使う、意識を求める、岡田野球を体現する重要なパーツ、2番に誰が座り、どんな働きを見せるのか。一定のスピード感はある赤田、しぶとさの山崎、成長の余地を残す大引…。そして、個人的にはやはり田口の復帰が待たれるが…、どうなっていくか。「去年と違う攻め」を見せるためにも、2番が機能する打線を早く見たい。

         

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日祝に重なってしまった場合は翌日の平日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-04-26

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第3回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? オリックスファン超必読です!

      

巻き返しに向け、立て直し必須のリリーフ陣

100426stand外野席に大きく広がる日高の巨大シート。選手会長の早期復帰が待たれる

 今年のオリックスの戦いを前に、僕の中で明確なポイントが3つあった。昨年壊滅状態だった救援陣の整備と、「去年とは違って動く攻撃が多くなる」と語っていた岡田構想から、つなぎ役・2番バッターの役割。そして、もう1つがキャッチャーの働きだ。
 宮古島、高知とキャンプを取材して回った時も、岡田監督はシート打撃や紅白戦のあとの囲み取材でしばしば捕手陣への不満を口にしていた。
「なんであそこでインコースいくんや」
「なんであんあのに外ばっかり続けるんや」
「なんで合ってへんのに最後に真っ直ぐなんや…」

 なんで、なんで、なんで…と続いた最後には「俺の方が配球知っとるで」と嘆いていた。中でもオリックスで実質99年からレギュラーを務める日高への指摘にはなかなか厳しいものがあった。
 キャンプで一度、「そのあたり」について聞いたことがある。するといつも通りの淡々とした口調で「確かに今までの自分の考えとは違うところもありますね。具体的に? それは言えませんよ。でも、通じるところもあるし、その中でよりいい判断をして結果を出すだけです」と話していた。
 その日高が22日、特に先発陣不調の責任を負わされた形でファーム落ちとなった。選手会長でもある日高の降格はチームにとってショッキングな出来事だった。
 スタートは順調だった。開幕戦では金子が1対0の完封。2戦目もサヨナラで勝つと3戦目は山本から継いだ岸田が好投し、最後は5対4とすべて1点差での3連勝。大きく貢献した日高は3戦目の最終回、二死1,2塁のピンチに鉄平をフォークで空振り三振に打ち取った瞬間、まるで高校野球の優勝シーンでも見るかのように、ガッツポーズを作ると、飛び跳ねるようにマウンドの岸田の元へ走っていった。まだあれから1ヶ月しか経っていない。

100426suzuki中日でセ・リーグの野球を経験している鈴木郁洋

 岡田と日高の間に配球に関する考え方のズレがあったとして、1つ思うことがある。それはセ・リーグとパ・リーグの野球の違いだ。今年のキャンプ時に阿波野秀幸氏に話を聞いたことがあった。近鉄、巨人、横浜でプレーした阿波野氏にセとパの野球の違いを聞いていると「少なくとも僕らの時代ははっきり違いました。まず、配球に対する考え方が全然違います」と言ったのだ。簡単に言えばパは細かなことは考えず、投手のいい球でどんどん勝負にいく。仮にそこで1つ打たれても「次はその球で抑えてやる!」とまた勝負にいく…。対してセ・リーグは相手の嫌がるコース、球種で徹底して攻め、「セに移ってからは試合前のミーティングでも、近鉄時代には見たことのないようなデータの束を持って攻め方を考えてた」と話した。同じような話を中日でコーチ、監督の経験も持つ山田久志氏からも聞いたことがある。つまり、セの野球が染みついている岡田監督とパ・リーグ一筋でやってきた日高の配球には、ここに至るまでのズレがあってもある意味当然とも言えるのだ。
 ともあれ、日高は1対11で敗れた22日の日本ハム戦を最後にファーム行きとなった。その前日、21日の日本ハム戦。日高に代わり今季3試合目のマスクをかぶった鈴木が一発を含む4安打6打点の大活躍。守っても4人が継いだ投手陣をアシストしチームは勝った。そして日高がファーム落ちとなった23日、僕も観戦の西武戦では、前年2完封の相性の良さを変われ金子と組んだ前田(大)が、開幕戦以降失点続きだった金子との呼吸も良く完封勝利を演出。打っても満塁ホームランで試合を決めたが、ピンチの場面で三振を取った際、小さくガッツポーズをしていたがその姿に開幕当初の日高を思い出した。

100426maeda前田大輔も相性の良い金子千尋の先発時にマスクを被り、好投を引き出した

 日高とセの野球も知る鈴木のリードにどんな差があるのか。あるいは、日高とキレにキレていた金子のストレートでどんどん押した前田のリードにどんな差があるのかは、難しい。配球通りに球がいっての失点。甘く言っても相手が打ち損じての無失点。結果から遡っての好リードであり、配球ミスとなることも少なくないだろうし、評価は難しい。
 捕手の入れ替えに先立ち、8日には一軍バッテリーコーチの三輪とファームの吉原との入れ替えも行われた。三輪コーチもまたパ・リーグ一筋で育ってきた人だ。降格直後、ファームの試合を見に行くと、試合前の練習が一段落となったところで1人、ベンチ前でグラウンドを眺め佇んでいた。
 〈何が正解なのか…〉〈どうすれば抑えられるのか…〉。もう1度、頭を整理し配球を考える日々なのだろう。一軍へ緊急昇格となり、セの野球も知る吉原コーチもまた考え抜く日々だ。観戦した23日の西武戦、やはり試合前の練習が一区切りとなり、選手が一旦軽食をとるためベンチ裏へ下がった時だ。1人、一塁側ダグアウトの後部座席に残り、西武の打撃練習が始まったグラウンドへぼんやり目を送っていた。やはり、その表情には。〈何が正解なのか…〉〈どうすれば抑えられるのか…〉と書いてあるようだった。

 ただ、配球に対する考え方、捕手に対する要求に岡田監督の野球観を大いに感じることができる。これは確か。そんな視点を持って、この先の戦いも追ってみたい。そして、いずれどこかで日高が上がってくるはずだが、その時の配球にも是非、注目してみたい。

         

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日に重なってしまった場合は週明け月曜日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-04-15

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈第2回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをスタートさせることになりました。

 過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かありました、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件として始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? オリックスファン超必読です!

      

巻き返しに向け、立て直し必須のリリーフ陣

100415okada開幕3連勝を皮切りに好スタートを切った岡田オリックス。しかし、貯金はまたたく間に減っていった

「打ち合い?ミスが多すぎるわ。守りにしても、攻撃でも送られへんし…」
「いらん点をやりすぎや。防げる点が2、3点はあったよ」
「貯金なくなったいうても、このチーム状態じゃ、やっとなくなったんかいうくらいよ」

 観戦した4月13日のソフトバンク戦。
 敗戦が決まった直後、ベンチ裏にあるトレーニングルームで記者に囲まれた岡田監督は、もっともな理由を口にしながら6対8で敗れた一戦を振り返っていた。
 開幕シリーズの試合後の囲み取材では3連勝の興奮から、随分と早口でつながれていた言葉も、この日は自嘲気味な苦笑いに乗ってゆらゆらと伝わってきた。まさに、「そらそうよ、負けて当然よ」とばかりに…。

 この夜の敗戦で9勝9敗、4月に入り2勝8敗。2週間前に6つあった貯金をアッサリ吐き出した。
 坂口、赤田の1、2番を中心に「カブレラの前」が機能せず、バントや進塁打のミスが目立つ打線。一発頼みの格好は本来目指そうとしていた形とは明らかに違う。
 一方で「守りの野球」を掲げてきたオリックスにとっての生命線、投手陣も相当に厳しい状況にあり、今回はここを考えてみたい。特に気になるのは、打ち込まれ方が目立つ先発陣以上に、今後の上昇のカギを握っているであろう「先発の後」の働きだ。キャンプで岡田監督を取材した時、こんなことを言っていた。

「決まるのはゴールデンウィークの頃よ、阪神の時もそうやったんやから。順番が決まるのは5月入ってからよ」

 何が決まるのかと言えば、岡田監督の言う「ブルペン」、つまりはリリーフ陣の配置と勝ち試合で投げる顔ぶれだ。今年のオリックスの最重要課題でもあったリリーフ陣の整備がどう進むのか。ここがこの先の戦いを占う最大のポイントになっていくはずだ。
 開幕3連勝を含めここまで1点差の試合は5勝0敗。ただ、内容的には金子の完封やサヨナラ勝ちなどを含み、しっかりつないで、しのいで勝った1点差ゲームは連敗を5で止めた8日の西武戦のみ。この試合も厳密には7回に香月が失点し、詰め寄られての1点差勝ちだったが、まだ半信半疑の部分を残していたレスターが最後を3者連続三振で締め、新守護神がチームに安心感を与えた夜ではあった。
 しかし、レスターにつなぐ形、試合後半の戦い方がまだまだ見えてこない。だから…。
 13日のソフトバンク戦では5回まで8安打、5失点と打ち込まれていた岸田を6回もマウンドへ送り、直後、勝ち越しの2点を許した。後半になればSBM(攝津正、ブライアン・ファルケンボーグ、馬原孝浩)が控えるソフトバンク相手には何とも痛い失点だったが、試合後に岸田の続投を問わた岡田監督は「当然よ。中6日もやって計算してるんやから」と語った。シーズン序盤でもあり、先発としての責任をしっかり意識させる意味では「当然」の続投でもある。ただ、リリーフ陣への不安という一方の現実をはっきり映し出した続投でもあった。
 6日、岸に完封負けの西武戦。
 中盤までは緊迫の投手戦だったが、イニングが進むにつれオリックス先発・岸田のボールは岸に比べ明らかに威力を落としていた。それでも、その時点での岸田以上の投手がいないため、続投させ6回に2点目、8回にその夜の岸相手には致命的な3点目を与え、敗れた。
 11日、田中に完投負けの楽天戦も、中盤までは互角以上に投げ合っていた木佐貫が5、6、7回と1点ずつ失点を重ね、特に7回の3点目で中盤以降完全に立ち直った田中相手に勝負あり。木佐貫も岸田も、尻上がりのタイプではなく、岸田ならストレート、木佐貫ならフォークのキレが鈍ると即失点の怖さを持つ。まして岸や田中相手には終盤2点差が限度であり、なら、活きのいい救援陣を送り込み、攻めの継投で流れを引き寄せたいところだった。本来、そういう形が岡田野球でもあるのだが、現状ではその起用に応える投手陣がいない。

100415change「決まるのは5月頃よ」と言っていたリリーフ陣は、予想どおりキャンプ当初の構想からは大きく変化しつつある。その中で勝ちパターンを見つけられるか?

 13日のナイターの前、オリックスファームと徳島インディゴソックスの交流戦が行われる神戸サブグラウンドへ立ち寄った。古川秀一、比嘉幹貴、延江大輔の状態を確認したかったからだ。いずれも順調なら1軍ブルペンの中に入っていなければならない男たちだ。
 岡田監督にとって離脱が最も痛かったのは古川だっただろう。重いストレートに安定した制球力。日本文理大ではリリーフ経験も豊富でマウンド度胸も抜群。紅白戦から安定したピッチングを続け、大きな期待を寄せていた。それが、2月末に左大胸筋筋挫傷でリタイア。当初は「全治10日」の診断だったが、その後、復帰が遅れ、確認したところ「キャッチボールを再開したところで実戦登板のメドはまだ立っていません」(酒井勉2軍コーチ)
 昨年のドラフト時点では、社会人ナンバーワンの声もあり、サイドハンドから多彩な投球から、やはり「中」を期待されていた比嘉。こちらはキャンプから肩の違和感で出遅れ、そこから状態が上がらず、現状は「50パーセントの力で30球の立ち投げに入った段階」(酒井勉2軍コーチ)と状況は厳しい。
 さらにキャンプでは投手陣のMVPに選ばれた延江大輔は、その直後から調子を落とし2軍暮らしが続いている。
 「キャンプの時は自分でもいい状態で、そんなに落ちることはないだろうって思ってたんですけど…。オープン戦初戦の前の日のキャッチボールで『あれ、なんか感覚がおかしいな』って思ったら、そこからどんどんおかしくなっていって…」と、まだ模索の状況が続いている。
 この日の登板でも、1イニングを投げ4四死球を与えるなど、ボールは荒れに荒れていたが、リリースが定まった時のキレはレベルが違った。きっかけ1つで救世主になる可能性を捨てきれないが、ただ、それがいつになるかはわからない。
 そんな現状も踏まえると、今、1軍にいる顔ぶれからレスターにつなぐ形を見つけていくしかない。中でも期待の選手としては、レスターに次ぐ球威を誇る平野に目がいく。ただ、故障前の状態に戻りつつあるとはいえ、本来の低めの伸びる球筋はまだ物足りない。球速は出るが相手打者がタイミングを合わせやすいストレートになっているように見える。
 となると、次に挙がるのは加藤か。状態はゆっくりと復調気配で、13日には僕が開幕から確認した中では今年最速となる144キロを記録した。今シーズンは大幅減量の影響なのか、ストレートが別人のように走らなくなっていたが、ようやく明かりが見えてきた。また、変化球を昨年まで以上に多投し、そこで打ち取る感覚も身に付いてきたように見える。新味が出てこないか

 そういう中で大きな期待をしたいのが小松だ。まだ目立つ活躍はないが、開幕からのピッチングを球場、テレビですべて見ていると、確実にボールの質は戻りつつある。ここまで7試合、5回2/3に投げているが、起用される場面も徐々に変わってきた。

・3/22楽天 2点負けの7回から1回
・3/30日本ハム 4点リードの7回途中から打者2人
・4/2 ロッテ 4点負けの8回から1回
・4/4 ロッテ8点負けの8回から1回
・4/8西武 同点の7回から1回
・4/9楽天 5点リードの9回から1回
・4/13 ソフトバンク1点負けの7回途中から打者1人

100415nobueキャンプではセットアッパー候補だった延江も、現在はファームで調整中。戦力としての1軍昇格に期待がかかる

 13日は1点もやれない2死一、三塁の場面で登板し、松田をセンターフライに打ち取った。イニングは短いが自責点はいまだゼロ。いい当たりを返される場面もあるが、ボールが低めに集まっているので、去年のように長打で頭を越される怖さは薄れている。
 1年目にファームで抑えとして投げていた姿を思い出すが、清川コーチも当時の姿が印象深く、岡田監督に小松のリリーフ転向を後押ししたという。ちなみにこの時はファームで40イニングを投げ49奪三振。また先発で大活躍した一昨年の数字を見ても172回1/3で151奪三振。この奪取率はこの年の岸や和田毅を上回り、田中将大に匹敵するものでもあった。決してスピードで圧倒するタイプではないが、140代前半のストレートとスライダー、フォークのキレで打ち取り、三振も取れるのが本来の小松。昨年からストレートが130台前半で止まっていたが、13日のソフトバンク戦では138キロを掲示し、スタンドから見ていてもキレを感じるようになってきた。気持ちの強さは折り紙付きで試合の流れを引き寄せる力を持っている。目安としてスピードが140キロを超えてくれば…、レスターの前の1イニングを任せられる存在になっていかないか。岡田監督が言っていたGW前後には後半の3イニングを任せられる形をしっかり作っておきたいが、まずはレスターの前。そこへ小松が嵌るかどうか。

 チームはこの原稿をまとめた14日夜のソフトバンク戦で勝利し、10勝9敗。奇しくも19試合を終えた時点での勝敗は昨年の数字とまったく同じになった。ここから昨年のようにならず、再び浮上していくためにも投手陣の整備が不可欠。特にうしろがしっかりすれば、岸田や木佐貫ら後半のスタミナにやや不安を残す先発陣へのプラス効果も大きいはず。
 そのためにも小松。次回更新までの10日は、その投球に注目したい。

         

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日に重なってしまった場合は週明け月曜日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

2010-04-05

締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスを追う〈第1回〉

 T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 。同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了したのはつい先日。ところが、筆者の谷上史朗氏から「今年のオリックスはひと味違う。T-岡田のときのようなレポートを、月3回のペースでやらせて欲しい」と編集部に要望が来たのはそれからすぐのことでした。

 しかし、T-岡田選手のブログ連載において、谷上氏は取材や締め切りなどと重なって原稿が書けず、更新ペースや更新日を変更することが何度かありました。また、最終回においては、編集部の方でも誌面編集に追われて、原稿の更新が遅れるという失態もありました。その経緯を省みて、当初はこの提案は断念するつもりでしたが、同氏の熱意が大変強かったことと、最終回を迎えたT-岡田選手のブログにおける反響が多々あったことから、新連載を始めることを決意。「そのかわり、ダラダラした更新はもうしない。更新日には多少余裕をもたせるが、1度でもその期間(つまり締め切り)を守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件としました。

 題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」シーズン終了まで果たして続けることができるのか? 谷上史朗氏、編集部とも、緊張感のある中で、岡田彰布新監督の新生オリックスの躍進ぶりを伝えていきたいと思います。オリックスファン超必読です!

 さて、第1回の内容はいかなるものか? みなさん、以後、応援の程よろしくお願いします。

      

100405okada_manager就任以来、注目され続けた岡田彰布監督。くしくも、開幕戦のオーダーから度肝を抜くことになった

カブレラ爆発の裏に岡田監督のマネジメント力

 楽天との開幕戦を前にした3月19日。ある球界関係者と話をしていると、その人がこんなことを言った。

「オリックスは3つやられないようにしないと。ありますよ3連敗。(オリックス)打線は走者を置いての長打だけを警戒しておけばいいし、投手も金子の時には3点取られたら厳しいけどあとは…」

 楽天事情に詳しいその人がそう話すのも無理はなかった。昨年のオリックスは、1年間で楽天からわずか4つの白星しか挙げられなかったのだから(19敗1分)。
 ただ、その人は今年のオリックスがどれだけ変わろうとしているかを十分に知らなかった。結果、見込みは見事に外れ、オリックスは楽天との開幕3連戦を1対0あり、逆転あり、サヨナラありとすべて1点差で3タテ。開幕4カード目となったロッテ戦で思わぬ3連敗を喫したものの、昨年までとは一変の好スタートを決めた。
 一番の立役者は原稿締め切り(4月4日)時点の出場10試合で打率429、9打点、4本塁打と打線を引っ張ったA・カブレラだろう。ただ、ここで強調したいのはその素晴らしい数字よりも、欠場した開幕戦のことだ。この開幕戦こそ、まさに新生オリックスを象徴する一戦だった。

 3月20日の開幕戦の試合前。
 一塁側ベンチで新聞記者に囲まれていた岡田彰布監督は「よっしゃ」と言って立ち上がるとメンバー表の交換にグラウンドへ足を踏み出した。
 間もなく手にした楽天のメンバー表に目を落としながら戻ってくると、そこへ日高剛が歩み寄り、小さく驚きの声を挙げた。

「えっ、キャッチャー藤井ですか? ないと思ってたのになあ…」

 しかし、交換したメンバー表に何より驚いたのはオリックスの4番の打順に、北川博敏の名前を見つけた楽天のM・ブラウン監督だったはずだ。
 間もなくこの「事件」を知った記者達も、〈何があったのか…〉とざわついた。
 その少し前。カブレラはいつも通り、地面にボールを叩きつけてから打つティーバッティングをこなし、続くフリーバッティングでもスタンドインを連発していた。それなのに…。
 ネット裏のスタンド上段にある記者席では脇腹や手を痛めたのでは? と言った憶測から「腹をこわした」といった声まで飛んでいたが詳細不明のまま試合は始まった。

 そして、金子千尋が見事な完封を飾った試合後、岡田監督は、当然、この件について記者の質問を受けていた。
 「故障ですか?」の問いには「ベンチにおったんやからな、まあ、そういうことやないよ」。「カブレラは以前からファーストでの出場を望んできましたが、そのあたりで何かあったのですか」の質問には「まあ、守る日もDHもいろいろあるわけやから。でも、そこはキャンプから言うてきてるんやから…」。そう語るにとどめたが、言葉のニュアンスからどうやら“このあたり”の周辺に真相があると想像がついた。
 カブレラは守って、打席に立ちたい選手なのだ。ファーストの守備自体も捕れる範囲のボールに対してはかなり上手い。肩も滅法強い。ただ、いかんせん動く範囲が狭い。一、二塁間やライン際の打球の処理能力については、ここまで交代でファーストを守るT-岡田と比べても明らかに劣る。西武時代、カブレラと同時期に内野を守っていたある野手の「とにかく横も前も動かないんだから。こっちはおもりが大変ですよ」と言うボヤキを聞いたこともある。岡田監督も当然、そのあたりを考慮して、DH起用の腹づもりだったはずだ。
 開幕当日、スタメン発表を聞きながら思い出していると、先発欠場を言い渡したのはおそらく“あの時”だったのだろう、と気づいた。試合前のバッティング練習を終え、一旦、ベンチ裏へ下がったナインは食堂へ集まった。来場していた宮内義彦オーナーからの檄を聞くためだ。そこへナインの中では最後に登場したのがカブレラだった。そして、すぐあとから岡田監督が続いた。
 岡田監督には、過去の経験から、「主力を休ませる時には監督が絶対直接いわなアカン」という持論がある。想像にすぎないが、おそらく食堂へ集まる直前に監督室で自ら「欠場」を言い渡し、再度チームの方針を伝えていたのだろう。例え主砲の欠場によって、チームの得点力が落ち、試合に敗れたとしても、長期的な視野に立った選択を下したのだ。

100405cabrera 開幕戦以後、オーダーに復帰したカブレラ。その後は、攻守に覇気あるプレーで好調・オリックスを引っ張っている

 それでも、開幕戦の主砲欠場は、チームにとっての一大事で、その後の取り扱いによってはのちのち火種を残しかねなかったが、結果はまったく逆。2戦目の試合前に通訳と共に監督室を訪ね、頭を下げたカブレラを4番DHで出場させると、意地を見せた主砲は、2ランホームラン。さらに、3戦目は本人の希望どおりファーストで出場し、2戦連発。守りでもいつになく軽快な動きを披露した。2戦目の試合後、岡田監督も「今日は相当気合入っとったんちゃう」と表情を緩めた。
 その後も、カブレラは一塁とDHでの出場を続けているが、戦いの中では、2月初めから体を動かしてきたことによる体調の良さに加え、気持ちの充実を感じる場面も度々目にした。
 3連敗を喫したロッテ戦でも、初戦では初回に失点を重ねた近藤一樹のもとへ歩み寄り、声をかけていた。2戦目でも捕球はできなかったものの福浦和也の一塁線の打球に飛び込み、ユニフォームを汚し、大敗ムードの3戦目には2年ぶりのスリーベースでスライディングも決めた。
 それらの姿は、これまで自分の仕事にのみ徹していた感の強いカブレラがチームの中へ入ってきている印象を強く持たせるものだった。
 そもそも、今年のカブレラはキャンプから様子が違っていた。
 2月1日からの参加自体、近年の姿からすれば“異例”で、その上に休日返上までして練習にも励んだ。別人のような取り組みに思わず僕はある球団関係者に、「どうしたらこうなったのですか?」と聞いたことがある。するとその人からは「選手はチームのムードを敏感に感じるんですよ」と短く返って来た。新指揮官の伝えてくる空気がカブレラの姿勢も変えた、ということなのだ。
 まあ、それだけキャンプからやってきたからこそ、本人は一塁での出場にこだわったとも言えるが、岡田監督との出会いが、12月に39歳になる主砲を心身共に甦らせたと言っていいだろう。同時に、たとえカブレラであってもチームの方針に従わないものは許さない、と指揮官が示したブレない姿勢がナインに与えた効果も大きかったはず。おそらく、あとになって振り返れば「あの一戦が象徴していた」と思い出す出あろう開幕戦。さらにそこから続いた開幕ダッシュは、まさに新生オリックスの肝である岡田監督のマネジメント力を強く感じさせる戦いだった。

      

(取材・文/谷上史朗)

以後、更新は毎月5日、15日、25日(土日に重なってしまった場合は週明け月曜日になります)を更新時期とし、月3回更新していきます。

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