締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記〈最終回〉
T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事「ナニワのゴジラ奮闘記」 は、同選手の本格的な1軍定着を契機に、その役目を終えたと判断して終了しました。しかし、筆者の谷上史朗氏の強い要望により、4月から月3回のペースでオリックス1軍の今年の戦いぶりをレポートするコンテンツをお送りして来ました。
過去、他の取材や締め切りなどと重なって更新日を変更することが何度かあり、編集部の方でも誌面編集に追われて原稿の更新が遅れるという失態があった経緯を省みて、「更新日に向けて1度でも締め切りを守れなかったら、即連載終了」を絶対的な条件とし、本人も「臨むところ。1度でも遅れたら連載やめてエエワ!」と、了承のうえで始めたこのコーナー。題して「締め切り過ぎたら即終了!? 谷上史朗サバイバルレポ・岡田オリックスパーフェクト観戦記」は、シーズン終了までお伝え続けることができるのか? 実際には一度締め切りを守れなかったことがありましたが、読者のみなさまの温かい励ましもあり、連載は継続。パ・リーグは全日程を終了し、このたび無事に最終回を迎えました。
筆者・谷上史郎氏の今シーズン最後の苦言と、それでもなお抱き続ける愛情あふれるゲキをご堪能下さい。
今季を振り返ってみると
大阪周辺の地下鉄駅にはパ・リーグ本塁打王が確定したT-岡田選手のポスターが掲示されている |
10月2日の午後、福岡博多で人を待っていると携帯にパソコンからの転送メールが届いた。オリックスが配信する「EmilyのバファローズNet裏通信Vol.99」だ。開けてみると記事はこんな感じで始まっていた。
「昨日、パ・リーグの全日程が終了いたしました。最後の最後まで皆さんの声援が力になりました!! 温かいご声援、本当にありがとうございました(^^)。Bsは、69勝71敗4分の5位と言う結果でしたが…金子投手の最多勝利投手賞に、T-岡田選手のパ・リーグ本塁打王!! カブレラ選手は最高出塁率賞!!来シーズンへ向け、収穫があったのも確か(* ̄0 ̄*)ノ」
というわけで今シーズンが、1日の最終戦(対ロッテ)で終了。CSに進出していれば続く予定だったブログも今回でひっそり終了となる。
あとになって振り返れば、今季はオリックスファンにとってT-岡田が世に出た年として記憶される1年になるのだろう。そこにチームとして振り返った時にも「翌シーズンにつながる1年だった」と位置づけできるようになっていればいいのだが。そのためにはもちろん、来季の成績次第ということになる。
今季の5位は確かに昨年の6位と順位は1つしか違わなくとも、残した数字も内容も大きく違う。ただ、そこを「それ以上」に捉えてしまうと、前回も書いたが一昨年の首位まで2.5ゲーム差の2位から最下位に転落した昨年のようになる可能性もある。
▼「これでCSへ進んでいいのか」という想いも
最終のロッテ戦が行われた1日。夕方に横浜で取材が終わり、足を伸ばせば何とか千葉マリンへ向かえたが、そうはせず大人しく大阪へ戻った。10日ほど前なら、この最終戦(雨で順延とならなければ9月30日開催)が3位争いを賭けた大一番になる可能性もあったが、もはや“終わっている”戦いを見に行っても仕方がなかった。僕の中での今季の最終戦は札幌で観戦した日本ハム4連戦の初戦(9月18日)、ダルビッシュに完封されたあの試合だった。
さて、今年のオリックスの戦いを振り返ると、確かにCSの制度の下で最後まで楽しむことはできた。ただ、最後には「これでCSへ進んでいいのか」という気にもなっていた。本来、リーグ2位、3位、特に3位のチームあたりには毎年感じる疑問だが、今年のオリックスにも強くそう感じた。
前回も書いた通り、白熱して見えた3位争いを展開した9月以降の成績も結局は9勝13敗。追い上げを見せることも、波に乗ることもなくシビアに言えば○と●を繰り返しただけだった。内容的にも、最後まで特に守備面では細かいミスが続き、走塁面でも多くの課題を残したプレーが目立った。加えてここで何度も書いてきたがチーム周辺から伝わってくる空気に「これでCSへ進んでいいのか」との思いを強くしていたのだ。
今季終盤は出番も多かった森山周。チーム最速と言われる俊足を来年はもっと生かしたい |
▼ここぞの場面で使える走塁力を
今年は新体制1年目で、首脳陣にも選手側にも手探りの状態が続いていたことだろう。その中で互いに「こんなはずでは…」と感じる面も多かったはずだ。このあたりの距離感、空気感が来季はどこまで近づき、馴染んでいけるか。
戦力面での課題として、最も感じたのは走塁面の強化だ。今年のパ・リーグを見ると、とにかくどのチームもよく走った。盗塁数だけでなく、上位3つに日本ハムまでを加え、各チームとも実にいい走塁を見せた。シーズンを通して見ると、序盤に飛び出したロッテは荻野貴司効果がてき面で勢いに乗った。逆に荻野故障欠場と共に勢いが落ち、最後は厳しい戦いを強いられたが、後半は西岡剛がバッティングだけでなく随所に好走塁を決め、チームをグイグイ引っ張った。シーズン中盤から覇権を争ったソフトバンクと西武も、足の威力をまざまざと見せつけた。
ただ、西武でも片岡易之が9月終盤に故障で1軍を離れてから一気にチームがバタバタし始めた。逆に最後に笑ったソフトバンクは、チーム打率は最下位楽天とほぼ同等の数字(.267)ながら、リーグ断トツトップの148盗塁をはじめ、足の力を年間通じていかんなく発揮。立役者となった本多雄一、川崎宗則の2人が144試合を戦いきったことが何よりチームの力となったはずだ。
その足攻めに一役買ったのが今年オリックスから移った大石大二郎というのが何とも皮肉だが、一方で走られるオリックスは走れないオリックスでもあった。「速い」と言われる坂口智隆でも金子圭輔でも赤田将吾でも、「最も速い」と言われる森山周でも「ここ一番」で走れるレベルにはない。もう一度、チームとして走塁技術のレベルアップを求めて取り組んで欲しい。一方で本当に必要な場面で走れる選手をドラフトでも指名し、育てていきたい。
▼多くの課題を実感した来年こそ
もう1つの課題点は捕手。シーズンが終わると直ぐに楽天からFAの可能性がある藤井彰人の「獲得に興味」という記事が出ていたが、今年は捕手が定まらなかった。岡田の日高剛への風当たりの強さには異論をおぼえたくなる場面もあったが、リード面とは別に日高にはかつての強肩に衰えが見え、続く正捕手の育成は必須だ。
ただ、鈴木郁洋、前田大輔、辻俊哉といった顔ぶれでは弱い。かといって、34歳・藤井で急場を凌ぐのもチーム作りを思えば逆行の流れを感じるのが、ここは本当に大きな課題で簡単に埋まりそうにはない。何より、岡田監督の考えを十二分に理解できる捕手であることが大きな条件であり、また難しい。
そのあたり、選手との間に入るバッテリーコーチについてもどうなるのか。シーズン序盤で三輪隆がファーム落ちし、途中からは吉原孝介がその職をまかなったが、ここに来てやはり今季まで楽天のコーチだった山田勝彦の名前も出ている。投手コーチも含め、バッテリー間を選手、首脳陣ともどう整備し、強化していくか。ここもまた来季の戦いを左右する大きなポイントだ。
他にも野手陣全体を見てもわかる通り、T-岡田に続く若手の不在や、当初の岡田構想とはまったく逆に外国人に頼った布陣など、不安点は挙げればきりがない。
今年の戦いによって見えてきた課題をどう来年につなげていくか? 岡田監督のお手並みを今後も見守っていきたい |
ともかく問題はここから。監督就任当初に目指した野球にはまだまだ遠いと感じているだろう指揮官が、2年目にどんなチームを作っていくのか…。
半年余りの間続いたブログも今回でひとまず最終回。途中、頓挫しかかったときは冷や汗をかいたが、最後まで読んでいただいた読者のみなさんには心から「ありがとうございました」とお礼を申し上げたい。連載はここで予定通り終了となるが、引き続き秋も、来春もチームを追い、その変化、成長を確認していきたいと思う。
そして、来年こそは…。オリックス原稿の依頼で手が回らなくなるようなシーズンをそろそろ迎えたいものだ。
(取材・文/谷上史朗)
約半年もの間お楽しみいただきまして、ありがとうございました。今後も『野球小僧』、『中学野球小僧』誌に掲載される谷上史朗氏の記事にご期待下さい。

大阪周辺の地下鉄駅にはパ・リーグ本塁打王が確定したT-岡田選手のポスターが掲示されている
今季終盤は出番も多かった森山周。チーム最速と言われる俊足を来年はもっと生かしたい
今年の戦いによって見えてきた課題をどう来年につなげていくか? 岡田監督のお手並みを今後も見守っていきたい
T-岡田選手(オリックス)のプロ入り以来の成長を取材、執筆してきた当ブログの看板記事
記者に囲まれ取材を受けているのは梨田昌孝監督(日本ハム)。シーズン中盤以降、本来のペースを取り戻した昨年の王者とCS出場をかけた最終決戦はオリックスの1勝3敗に終わった
25日のロッテ戦終了時のスコア。翌26日は劇的なサヨナラ勝ちを収めたが、同日、日本ハムが西武に勝利しオリックスのCS出場は果たせなかった
地元大阪では、地下街等にクライマックスシリーズを意識したポスターが貼られているが…
勝利の方程式の一翼としてすっかり定着した平野佳寿
岸田護が試合の最後を締める姿も定着してきただけに、そこまでつなぐ形も確立させたかったが。いよいよ、岡田監督も万策つきたか?
サブグラウンドでの練習中に水まきをする日高(26日に一軍復帰)
レスター、古川、加藤…1軍を錯覚させるくらいの豪華な投手が並ぶあじさいスタジアムのブルペン
松山コーチと一輝選手(写真)の騒動はチームの現状をある意味示唆しているが、こういったことはどのチームにも大なり小なりあること。これをいかにプラスにもっていけるかが以後の展開を左右するだろう
夏場に入ってさらに本塁打の量産ペースが上昇中のT-岡田。40本も現実的になってきた
オールスター戦翌日の夏の大阪大会4回戦の履正社対PL学園戦。母校・履正社の応援に駆けつけたT-岡田。「僕が8回に来てから6点取りました」と笑っていたが、今の岡田は間違いなくこういう運を持っている
オリックス打線の中では機動力のある貴重な存在である坂口智隆
選手会長として、交流戦優勝の表彰に参加する日高剛(写真左)。岡田監督(写真右)の信頼を勝ち取り、投手陣にいい影響を与えたい
カブレラ(写真)をはじめ、多数の外国人選手を抱えるオリックス。打線の強化、有事の際の備えなどの目的はわかるが、岡田監督には現有戦力の底上げに期待したい
以前から交流戦での戦い方を重視していた岡田監督(写真左から2人目)。オリックスは見事に優勝したが、休み明けの公式戦は苦戦のスタートとなった
今シーズン前半戦は、勝利の方程式の一角として奮闘したレスターだが、交流戦途中から徐々に調子を落とし、20日の日本ハム戦後にファームに降格した
急遽獲得したセギノール。石毛宏典監督時代にプレーした古巣で爆発となるか?
交流戦でチームとともに打撃の調子を上げた選手会長・日高が代表で優勝賞金を受け取った
ライトスタンドの観客に挨拶をするオリックスの選手たち。交流戦で好成績を挙げたチームはシーズン終了まで好位置につける場合が多いだけに、この先大いに期待したい
6月2日の午後、ある球団のスカウト部長の取材をしていた。すると、今年の「候補生」たちの話題が一段落したところで「大型スラッガ-を育てる難しさ」の話になり、その人はしみじみこんなことを言った。
T-岡田選手のノーステップ打法。「ナニワのゴジラ奮闘記」連載中から悩ませていた打撃フォームは、現在のところ、この形で成果を挙げている
いまやオリックスの4番を任されるようになったT-岡田。今年は飛躍のシーズンとなった
昨年までクローザーとして活躍してきた加藤大輔
2008年に15勝を挙げた小松聖。復調を心待ちにしているファンも多いはず
開幕前から試行錯誤を繰り返してきた継投パターンは、平野、岸田、レスターの方程式の誕生により形になりはじめている
ヤクルト戦の2戦目以降、懸案だった2番にはソフトバンクからトレードで獲得した荒金久雄が名を連ねるようになった
2番が決まれば次は3番、コンディションが戻れば田口の打力を買いたいが…
キャンプ時に2番打者として期待が高かった大引啓次。現在はファームで調整中(右は新井宏昌2軍監督)
守りだけでなく打の個性も光る印象が強い山崎浩司。粘り強さについては岡田監督も評価している
阿部真宏とのトレードで開幕前に加入した赤田将吾は高い身体能力を誇る。2番以外の打順の方がより生きるタイプか
メジャー経験豊富な田口壮。開幕から味のある存在だったが足の故障で戦線を離脱。早期復帰が待たれる
外野席に大きく広がる日高の巨大シート。選手会長の早期復帰が待たれる
中日でセ・リーグの野球を経験している鈴木郁洋
前田大輔も相性の良い金子千尋の先発時にマスクを被り、好投を引き出した
「決まるのは5月頃よ」と言っていたリリーフ陣は、予想どおりキャンプ当初の構想からは大きく変化しつつある。その中で勝ちパターンを見つけられるか?
キャンプではセットアッパー候補だった延江も、現在はファームで調整中。戦力としての1軍昇格に期待がかかる
就任以来、注目され続けた岡田彰布監督。くしくも、開幕戦のオーダーから度肝を抜くことになった
開幕戦以後、オーダーに復帰したカブレラ。その後は、攻守に覇気あるプレーで好調・オリックスを引っ張っている






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