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過去のアンケート内容とその結果

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2010-03-12

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-最終回-

 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、昨年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、岡田選手は主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、4年目の2009年、ウエスタンリーグでの好成績を引っさげ、ついに5月に1軍昇格。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず2軍落ちとなりましたが、再び昇格した8月に立て続けに7本の本塁打を量産。ほとんどフルスイングすることなくスタンドに叩き込むシーンは、多くのプロ野球ファンに衝撃と可能性をもたらしました。

 4年間追いかけてきた当ブログでの連載も、今回が最終回。昨年の飛躍で、期待が高まったT-岡田選手が、これまで以上にがむしゃらに取り組んだキャンプが終わり、いよいよシーズン目前。筆者が4年間を振り返り、そしてこれからのT-岡田選手への期待を綴ります。

 それではスタートです。

100311okada01_2 プロ入り一年目のフレッシュオールスターでは本塁打を放った

★岡田との4年間の足跡
 いよいよ今回で最終回。最後くらいは余裕を持った更新で、しっかり、じっくり書きたいと思っていたが、結局、今回もバタバタの中での更新になってしまった。しかし、思えば2006年の4月1日の第1回更新から丸4年。いろんな意味でよく続いたと思う。そこで最後は僕の思いを書いて終わりにしたい。
 履正社高校での1年時から、その活躍が知れるにつれ、僕も、間もなく「ナニワのゴジラ」と呼ばれ始める岡田貴弘を知った。履正社高校は僕の家から歩いて15分ほどのところにあり、思えば、チームの97年の甲子園初出場時はほとんど一人のファンとして大阪大会から、甲子園まで追いかけた思い出の学校。そんな縁のあったチームに岡田が現れ、そこから……、ここまでつながってきた。
 高校時代から含め、もう何度取材をしたかわからない。しかし、その回数ほど打ち解けたかというとちょっと微妙だ(笑)。もちろん、僕とは年の差も性格の違いもいろいろあるが、なかなか岡田の中に入り込むことは難しかったというのが素直な感想だ。
 岡田からすれば、毎度毎度、軸足がどうしたこうした、タイミングの取り方がどうだ、股関節のトレーニングがどうだ…、という話を懲りもせず聞かれたわけだ。まして、この4年は、岡田にとって思うようにいかない時の方が遙かに多く、そんな中での細々した質問に面倒な気分になることも少なくなかっただろう。とは言いながら、懲りもせず、これだけ見て、聞いて、書いてきたことで、多少は信頼を置いてくれたか…、という思いもあるが、よくわからない(笑)。たまに岡田が自分から進んで話してくる時があれば、僕はそれだけで十分に喜んでいたものだった。

 

100311okada02_5 2009年8月14日、筆者は待ちに待った岡田のプロ第一号ホームランを目撃した

★「ああ見えて」岡田は――
 岡田は「ああ見えて」(?)非常に頑固なところがある(はず)。これまでバッティングについてもいろんなコーチが、いろんな教えをしてきたが、必ずしも素直に耳を傾けるタイプではなかった(はず)。それはプロの世界で成功する条件の一つでもあるが、かと言って、本人の中に「コレだ!」という譲れないものが技術的にあったかと言えば僕には疑問だった。だから、早く自分なりのモノを掴んでほしいと、そればかりいつも思っていた。
 岡田に対しては周囲の「大人しすぎる」「ハートが足りない」という声をよく聞いた。確かに、「気は優しくて力持ち」を地でいくような岡田は調子が悪ければ、そう言われやすいタイプだ。ただ、岡田に必要だったのは周囲を心地よく納得させる見た目の元気ではなく、自分が信じられる確かな技術だった。
 もちろん、岡田もそれを目指してやっていたのだが、そこでまた僕は「もっとやれるはず」「もっとやってほしい」と思い続けていた。岡田は「ああ見えて」(?)ケガやコンディションに対し非常に慎重な面も持っている。これも成功する選手の条件面と言えるが、逆に成功する選手にはプロ入り初めの3年くらいは死にもの狂いで練習したという逸話もたくさん残っている。しかし、岡田には自らを追い込む前に練習を終えてしまうイメージがあった。そこは昨年まで、総じて他球団に比べ練習量が劣って見えたチームへの僕の不満でもあった。ファームには球場が寮から遠いという環境面の問題もあった。だから、もし、岡田が他球団にいっていたら…、と想像することも多々あった。

★今年の活躍は間違いない

 1年目から3年目まではファームで打率も2割台の前半。ホームランも5本前後で停滞していた岡田に変化が見えたのが一昨年の秋だった。3年目のシーズンを終えた秋のキャンプ。さすがに危機感も芽生え始めていただろう。ここで現場藤井コーチと体の使い方から見直しフォームを研究。その形を覚え込もうと、それまでになく振り込んだ。そのキャンプ中、あまりのスイングのしすぎで手の平を痛め、大阪の行きつけの治療院へ休日を利用し極秘に戻ってきたことがあった。あとで僕はその話を知ったのだが、こういう話が聞きたかった、と思うと同時に、来年の岡田はやる、と確信した瞬間だった。そして昨年のファーム二冠、1軍での7発。

100311okada04_2 ボロボロになった岡田の手の平が、自信の裏付けになっている

 ところが、昨秋から今度は左肩、足の痛みが続き、秋季キャンプ終盤からオフは満足に振り込めなかった。前回のブログでも書いたが、1月の自主トレで話を聞いた時には、本当に、周囲の大きな期待と目の前の岡田の姿のギャップに、今シーズンがたまらなく不安になったものだった。それが、いざキャンプが始まってみると、本人も開き治ったのだろう、遮二無二バットを振り込み、連日の特打、夜間練習…。休日も返上を続け、わずか1日の休みで昨日まで続いたキャンプを乗り切った。そして、岡田監督からは「期待も込め」野手への「キャンプMVP」に選ばれた。この32日間に及んだこのキャンプは岡田にとって生涯忘れない時間になったことだろう。

 宮古島に続き、高知で話を聞いた時も「これだけやったんで」と本人も素直に手応えを口にしていた。そんな言葉を裏付けるボロボロになった両手の平がまた今年の爆発を約束していた。最後にずっと見たかったヘトヘトになりながらバットを振り続ける岡田を見ることが出来、僕も迷いなく今年の活躍を信じ、このレポートを終えることができる。
 岡田監督が「三振も打率もいい」と言ってるように、仮に100試合以上、スタメンで出場できれば目標の30本は十分可能だ。それどころか、僕は40本だって可能性はあると思っている。それほど猛練習の中で技術的にも、精神的にも昨年からすれば1段も2段も上のところへ来たはずだ。

100311okada03 キャンプでは遮二無二バットを振ったT-岡田。今年の活躍は新聞、テレビで見てください!

★今までありがとう! これからも、よろしく!
 この先は、とにかく大きなケガだけには注意してほしい。避けられないものはともかく、1年目から言い続けてきた一塁ベースへの頭からの帰塁は今後もしてほしくない(最近は左肩のこともありなくなっていたはず)。あとは股関節の継続的なトレーニングと、スローイングの改善にはこのオフにでもじっくり取り組んで欲しい。バッティングと同様、求め続ければもっといい送球ができるようになる。肩の違和感の原因をまずはしっかり突き止め、外野守備でもチームに貢献できるような選手を目指してほしい。まだ若いのだから可能性を自ら閉ざす必要はない。
 ……と、書いているとまた止まらなくなるので、いよいよこのあたりで。もちろん、このブログが終わっても僕の岡田観戦は続く。これからは活躍に応じ、いろんな人がいろんなメディアで岡田を語るようになり、僕は軽い嫉妬を覚えながらその様子を見ることになるのだろう。しかし、岡田がこのブログのタイトル通り、まさに奮闘し、本当の意味でプロの選手へと成長していったこの4年を知る人は他にいない。
 今度は岡田が40歳くらいになった時に、その野球人生を振り返った本でも書いてみたい。これが今の僕の目標だ。しかし、岡田が40歳ならこっちはもう60手前半。お互いどうなっているかわからないが、その頃まで見続けていれば、今よりはもう少し岡田との距離も近くなっていることだろう。それでは最後は、2月の末の高知2次キャンプでもらった岡田から読者へのメッセージで締めます。
「残念ですけど終わりはくるものなので…。今年の活躍は新聞、テレビで見て下さい」
 長い間、ありがとうございました。

★3月10日発売の「野球小僧4月号」でT―岡田選手の特集記事を掲載しております。是非、お楽しみ下さい。

●お詫び
今回の『ナニワのゴジラ奮闘記』最終回につきましては、編集部の諸事情により、更新が大幅に遅れる結果となりました。著者の谷上史朗氏をはじめ、T-岡田選手、各関係者のみなさま、またこのブログを心待ちになさっていた読者の皆様に対して深くお詫び申し上げます。

2010-02-19

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第117回-

100219okada03 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、昨年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、岡田選手は主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、4年目の2009年、ウエスタンリーグでの好成績を引っさげ、ついに5月に1軍昇格。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず2軍落ちとなりましたが、再び昇格した8月に立て続けに7本の本塁打を量産。ほとんどフルスイングすることなくスタンドに叩き込むシーンは、多くのプロ野球ファンに衝撃と可能性をもたらしました。

 今年は岡田彰布新監督に期待の選手として指名され、登録名も「T-岡田」に変更。連日マスコミにも取り上げられるようになり、かなりの注目を浴びております。
 そんな状況に対して、筆者の谷上氏が「このブログの役割を終えた」と3月の記事をもって最終回宣言。今回が「ラス前」となるレポートとなりました。宮古島キャンプ前とキャンプイン後の取材で見られた変化とはいったい何でしょうか?

 それではスタートです。

        

100219okada01沖縄・宮古島キャンプ前の自主トレで打ち込むT-岡田

★キャンプ前の不安

 2月の13、14日と宮古島でオリックスキャンプを取材した。
 今年の沖縄はどこも雨が多い上に寒い日が多く、各チームとも調整に苦労していたが、その中で何とか2日とも無事に練習、そして紅白戦が行われた。
 「紅白戦はずっと4番で使う」と明言した岡田彰布監督の言葉通り、T-岡田は4番ファーストで出場。残念ながら2試合ともノーヒットに終わったが、その結果より、この目で岡田を見た僕は、まずホッとし、そして、改めて今年の大きな活躍に期待する思いになれた。

 「ホッとした」とはどういうことか。話はキャンプ前に自主トレを取材した時までさかのぼる。
 その日は練習後にじっくり寮で話を聞くことができたのが、周囲の期待の中で本人の気持ちもさぞ昂ぶっているのだろうと思いきや、どうも岡田の様子が違っていたのだ。歯切れも今ひとつで、表情も浮かない。途中で思わず「テンション低いなあ?」と聞いてみると、「実は…」という感じで口を開いた。
 表情を曇らせ、口を重くしていた原因はコンデジション面の不安からのようだった。昨秋から続いている左肩の違和感と、足回りも少し気になるところがある、と。

「ちょっと万全じゃないんで、去年のこの時期ほど振り込めてないんです。秋以降ももっとやれるつもりだったのに、思ってたよりも全然できなくて、それが…」

100219okada02キャンプ前のインタビューでは、コンディション面の不安をほのめかしていたが…

 去年の最後の実戦となった東京ドームでの「プロU-26対大学日本選抜」のときも、状態は「まったくでした」ということだった。どおりでドームを沸かせるはず! と期待したフリーバッティングも見せ場なく終わったわけだ。
 しかし、スッキリしない状態が続きながら、一方で周囲の期待とのギャップがキャンプインが近づくにつれ迫ってくる思いだったのだろう。

「期待してもらうのはもちろん嬉しいんですけど、万全でない状態であんまり期待されるのも…」

 そういうことだった。
 だから、今回のキャンプではまず、そのコンディションを確認したかった。

         

★明らかに変化した量。そして質も

 宮古島キャンプ取材1日目の朝。9時半前に宮古市民球場へ着くと、間もなくサブグラウンドでアップが始まった。
 見ていると岡田は特にどこを気にするでもなく、ダッシュを繰り返し、表情も明るい。
 ストレッチ、軽いキャッチボールと続いたあと、室内練習場でのフリーバッティングでも、スムーズなスイングをしていた。そこまで見て、まずホッとしたというわけだ。
 練習の合間に本人に尋ねても、自主トレ時には肩よりもむしろ不安がっていた足について「キャンプに入ってやり始めたら思ってたより大丈夫でした」。シートノックでまだ7分程度の送球しか見せられない肩は「現状維持」のままだが、練習に大きな支障は出ない中でハードなメニューをこなしていた。

100219okada05宮古島では、正田耕三コーチのゲキのもと、これまで以上のハードな練習が続いている

 そんな中で目を見張ったのが今年のオリックスの練習量の多さだ。僕はこのハードな練習の中に岡田がいることで、改めて今年の活躍への大きな期待が膨らんだ。
 特にここ数年、他球団と比べオリックスキャンプの練習量に明かな物足りなさを感じていた。たとえば、中日やソフトバンクの練習を見ようものなら、その差は一目瞭然だった。

 ところが今年は違った。
 全体練習のあとに、ベテランも含めメニューが続き、内容もランニングや徹底した打ち込みなどなかなかハード。
 観戦1日目も岡田が球場を出たのは18時を軽く過ぎていたが、さらにホテルで食事を取ると一服する間もなく19時半過ぎには室内練習場へ戻って40分の打ち込み…。これまでの夜間練習はホテル内での素振り中心だったが、今年は若手数人が交代で室内練習場へやってきて打ち込むことになっていたのだ。

 1日目の帰り際に「よう振ってるなあ」と声をかけると、思わず「壊れますよ」と自嘲気味に岡田は言ったが、強制でもなんでもこれだけ振ったことは必ずのちに生きるはずだ。

 続いて2日目は、紅白戦終了後に岡田は70分間の特打を行った。2カ所あるうちの一方のゲージでバルディリス、坂口智隆、大引啓次が交代で打つ中、岡田は1人で打ち続けた。
 ゲージの横で眺める正田耕三コーチから途中に何度か「よっしゃ、あと5分いこか」「あと10本行こうか」「あと15分か」と悪戯っぽくやられているうちに70分を打ち切った。
 最後の一打は右中間の防御ネットを激しく揺らす豪快な一発だったが、見ていて何より思ったのは、明らかに芯を外したり、タイミングのずれた変な打球が減ったということ。確実に1軍のフリーバッティングになってきた。実は、タイミングの取り方に一工夫を入れ、昨秋から取り組んでいることもあったが、このあたりも身に付いてきたのだろう。

          

★見えてきた岡田の「本気」

100219okada_manager01阪神で確固たる実績を作った岡田彰布監督(写真)。T-岡田を公式戦でどのように起用するのか、今から楽しみだ

 岡田の特打が始まった頃、すぐネット裏の監督室で岡田監督の囲み取材が始まった。
 その中で、ある新聞記者が「最近T-岡田の調子が…」と言いかけた時だ。監督はすかさず「今日のあの空振りなんか最高やん」と言った。
 記者にとっては思わぬ反応だったのだろうが、僕も岡田の状態が悪いとは思わなかったし、岡田監督は続けてこう言った。

「追い込まれてあのチェンジアップにあれだけ振れたら大したもんや。今の姿勢でいってくれたらええんや、追い込まれてもあれだけ振ってきたら相手も怖いやろ。あれは今日一番の振りやったな」

 近藤一樹相手に三振を喫した打席を振り返ってのことだったが、岡田監督という人はとにかくぶれない。紅白戦とはいえ「4番起用」を明言し、大きく育てようと方針を打ち出した期待のスラッガーに対し、そう間単にぼやくようなマネはしない。
 この指揮官の姿勢が選手の力を引き出すことになるのだろ。

 僕は岡田監督のこの言葉を本人に伝えたくなり、囲み取材が終えると再びグラウンドへ出て、岡田の特打終了を待った。
 やがて、精根尽き果てた…、という感じで戻ってきた岡田に、監督の言葉を伝えた。
 すると疲れ果てた岡田の表情が確かに変わった。
 ホッとしたような笑顔で「正田さんにもいっつも思い切り振れって言われてるんです」。

 選手から迷いを消す岡田イズムが、この才能を開花させる――。

「これだけやったら絶対結果出るで」

100219okada04若手どころか、1軍の戦力として、人気、実力とも、その期待が高まる

 無責任とは思いつつ素直にそう言った僕に「だといいですけど」と返して、岡田はまたサブグラウンドへ向かっていった。さらに僕が宮古島を離れた翌日も、休日返上でバットを振ったという。
 僕がずっと見たかった岡田の「本気」。
 今度こそ、今年こそ、やってくれる、そう確信した宮古キャンプだった。

           

★T-岡田選手は3月10日発売の次号『野球小僧』4月号でもインタビュー記事を掲載いたします。今回の拡大版です。お楽しみに。

  

      

(取材・文/谷上史朗)

次回更新(3月5日予定)でこのブログも最終回となりまず。今季の活躍を期待させるいい状態の岡田をレポートできるよう、今から願うばかりです。

2010-02-10

「ナニワのゴジラ奮闘記」「現役女子大生ライター・山田沙希子の 戦国東都 いぶし銀観戦記」更新日変更のお知らせ

 ただいま毎月5日に更新している「ナニワのゴジラ奮闘記」(谷上史朗著)「現役女子大生ライター・山田沙希子の 戦国東都 いぶし銀観戦記」ですが、諸事情により更新日を2月15日以降に変更いたします

 読者のみなさまより大変ご好評頂いております連載が変更になりまして、ご迷惑をおかけいたしますが、今しばらくお待ちください。

     

(編集部担当および谷上史朗)

2010-01-08

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第116回-

100108okada_top_2 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、昨年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、岡田選手は主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、4年目の2009年、ウエスタンリーグでの好成績を引っさげ、ついに5月に1軍昇格を果たしました。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず2軍落ちとなりましたが、再び昇格した8月に念願のプロ初本塁打。その後、立て続けに本塁打を量産し、あっという間に7本に。ほとんどフルスイングすることなくスタンドに叩き込むシーンは、これまで岡田選手を知らなかった多くのプロ野球ファンに衝撃と可能性をもたらしました。

 しかし、これにより相手投手が本格的に厳しい攻めをするようになると、本塁打が出なくなり、最終的に調子が上向きにならないままシーズンは終了。それでも、岡田新監督に期待の選手として指名され、マスコミにも取り上げられるようになり、現在、かなりの注目を浴びている状況です。
 そんな状況に対して、筆者の谷上氏が今回大きな決断を下しています。果たしてその内容は…。それは、ぜひ読んで確かめてください。

 それではスタートです。

        

★3月で連載終了を宣言

100108okada_in_rookie_year岡田のプロでの苦闘を新人時代(写真)より綴ってきた(谷上氏の取材は履正社高校時代から)このコーナーも、ついにその役目を終えるときが来た

 初めにお知らせがひとつ。
 2006年の4月1日からスタートしたこのブログを、3月の更新で最終回にすることに決めた。
 開始当初から10日に1度のペースで更新を続け、昨年からは月に1度とスタイルを変えながら、今回で116回目。ネタのない時も、更新日が遅れることも度々あったが、何とか続けてこれたのは岡田への思いがあったからにほかならない。

〈この素材を活かせば必ず近い将来日本を代表するホームランバッターになる〉

 その成長、苦悩を余さず見たい、と、ひたすら追い続けてきた。また、当時は岡田に関するマスコミ情報も少なく、タイトル通り、まさに「奮闘」ぶりを伝える役目もあった。
 しかし、今やチーム一の注目選手となり、その動向、言動も広く報じられるようになった。このブログの役割も一つ終わったということだ。

 昨年の段階でも一度終了のタイミングはあったが、そのときは連載を続行。岡田本人もそれに応えるかのように1軍に昇格し、片鱗を披露した。そして、新任の岡田彰布監督に目をかけられたことで、いまや1軍どころか、何があっても1軍で結果を残さなければならない立場にもなった。この時期が区切りにはちょうどいい、という気持ちもある。
 今後の奮闘ぶりは、京セラドームやスカイマークスタジアムはもちろん、他の球場へ行っても見られるだろうし、テレビのニュースでも、新聞の報道でも、たっぷり岡田ファンの元へ届けられるだろう。

      

★関西で連日報じられる岡田の話題

 ということで、本当なら年始めに本人の今年に賭ける意気込みを入れたかったが、残念ながら締め切りを3日遅らせて接触をはかるも適わず。あと2回の中では、間違いなく本人の「ここだけの話」を入れるつもりなので、今回のところはお許しを。

 とは言っても、すでに今の時点で岡田の情報は、スポーツ新聞を広げれば…、ネットを開けば…、少なくとも関西地方においては連日のように載っている。
 例えば大阪のスポーツ新聞(以下すべて日刊スポーツ)の12月半ば以降の報道を拾ってみてもこんな感じだ。

「T-岡田年賀状アピール!」(12/16)
「T-岡田弾きっかけ直撃最高1億本塁打保険」(12/17)
「T-岡田に指令 打率より30発」(12/18)
「T-岡田 興毅に弟子入り」(12/19)
「T-岡田に王の教え 小久保から伝授」(12/20)
「T-岡田がオリの顔」(12/23)
「T-岡田が開幕狙う」(1/3)
「T-岡田 名前売るぞ そり込みヘア」(1/7)

 年末から年始にかけては岡田が神戸を離れていたため、報道も一休みだったが、それ以外はオリックスの記事といえば、岡田監督を別にすると、T-岡田、T-岡田、T-岡田…。
 他紙では父・秀和氏への取材で幼少期の岡田を語る特集が大きく掲載されたたこともある。年始には“たむけん”や亀田興毅と関西ローカルのテレビで共演し、この原稿が掲載される頃にはスカイマークで自主トレ中のイチローとのツーショットも話題になっているだろう。話題の種類も徐々にスケールアップしてきた。

100108okada_maneger岡田がこれだけマスコミに注目されるようになったのも、同姓の岡田彰布監督(写真)のPRによるところが大きい。その期待に応えることができるか? 当コーナーでは毎年主張してきたが、今年こそまさに「勝負の年」の極みとなるかもしれない

 同姓の岡田監督の就任、指揮官の期待の言葉、そこへ改名効果――。大きな流れが来ていることは間違いないが、僕はまだまだ慎重だ。
 今の「騒ぎ」は、岡田の持っている資質にやっと世間が気づき騒ぎ出した段階で、本人の活躍によって起きた「騒ぎ」ではない。このムードに乗っていけるかどうかはここから。
 1994年にイチローが「鈴木一朗」から「イチロー」になった時、当初世間の注目の大半は、佐藤和弘から「パンチ佐藤」になった佐藤の方にあった。
 しかし、シーズンが始まると、その活躍ぶりはご存知のとおり。イチローは特に面白みもない「イチロー」の呼び名を、今や世界に轟かせるまでにした。さて、「T-岡田」はどっちになるのか。
 確かに昨年、7本塁打を放ち、日本人離れした飛距離については確かに認識されたが、そのあとのシーズン終盤を忘れてはならない。下降線のまま終了し、フェニックスリーグ、11月末の大学選抜チームとの対戦を経ても、僕には大きな変化があったようには見えなかった。
 1軍主戦クラスのストレートにいかに差し込まれずに対応できるようになるか。高目は? 内角は? 緩急には?…。
 その成長を見るまで、僕は今の「盛り上がり」に手放しでは乗れない。

        

★見続けてきたからこそ、慎重になる

 ただ、技術の成長、体の使い方の変化を見たい、見たい、と求めてきたが、今年、1軍での出場機会が間違いなく増えるであろうことはもちろん好材料だ。使われる中で自然と技術が上がってくることは十分あるからだ。
 年末、ある場所で岡田と同期でもある銀仁朗(西武)に会った。
 いろいろ話す中で、バッティングの話題になった。高校時代はこちらも平安高校の4番として通算48本塁打。特に3年になってからの爆発ぶりには凄まじいものがあった。銀次朗の活躍以前から平安に馴染みのあった僕もよくその豪打を目にし、当時からいろいろと話を聞いていた。
 そこからプロ1年目に、51年ぶりとなる高卒ルーキー捕手の開幕戦デビューを果たし、3日後のソフトバンク戦では史上初の高卒新人捕手による満塁ホームランを放ち、この日は1試合2発。超ド派手な飛び出し方であったが、華々しいデビューも一瞬のこと。5月からは極度の打撃不振からマスクを細川亨に譲り、1年目は打率.181でシーズンを終了。2年目、3年目もバッティング面はプロの攻めに苦しみ、打率も.174、.125…。「一番苦しんだのは落ちるボールでした。わかっていてもバットが止まらなかったんです」と銀仁朗は当時を振り返った。

 しかし、昨年は細川の故障からマスクをかぶるようになると、最後には涌井秀章と共に最優秀バッテリー賞に輝くまでに活躍。捕手として目覚ましい進歩を見せる一方、打率は.220でホームランも3本。なかなか苦労が続いていると思ったら本人の反応はまったく違った。

「7、8、9月の打率が2割8分あったんです。それで少し手応えみたいなものを感じて終われたんで、今年はもっとやれるっていう思いを持ってます」

 技術を掴んだのか…? と思い尋ねると、「慣れです、慣れ」と即答で返ってきた。
 銀仁朗も構えをオープンスタンスからスクエアに戻したり、バットを少し寝かせてみたり、テークバックを変えてみたり…。入団からいろいろと取り組み、苦労を重ねていた。
 もちろん、それらの効果が出た面もあるだろうが、一番は「慣れ」と言った。

100108guinjiro衝撃的な1軍デビューを果たした銀次朗(西武)。その後、伸び悩んだが、順調に成長を続けている

「だってあんなに打席に立ったのは初めてですからね。毎日3打席、4打席立っていく中で、やっと夏くらいから打席で余裕も出てきて、対応できるようになってきたんです」

 止まらなかったバットも止まるようになっていった、という。話を聞きながら、頭の中には岡田が浮かんでいた。毎日1軍のボールを見る中で目が慣れ、体が慣れ、自然とバットも出るようになってくる――。改めて、ベンチが「使う気」になっている今年はチャンスなのだ。逃すわけにはいかないのだ。
 1つ、銀仁朗と岡田の違いがあるとすれば、向こうはキャッチャーとして守りの安定感があったこと。だからこそ、ベンチも銀仁朗を打席に立たせ続けた。
 対して岡田の魅力は、現時点では九分九厘バッティング。しかも、現在のオリックス外野陣は競争が激しい。阪神監督時代から基本的に守り重視で、「打線は水もの。当たればもうけもの」という岡田野球であっても、ある程度早い段階で結果を出さなければ、ベンチに座る日々が待っていることだろう。
 いかに早い段階で慣れて、掴むか。そのためにも、繰り返すが、昨年終盤からの成長がどこまでか…、ということだ。
 今年の活躍を占う技術の変化、成長。そして、勝負の年に賭ける心の変化、成長について、残り2回の原稿の中で本人に質し、語ってもらう予定。

 ぜひとも、楽しみにしていてほしい。

      

(取材・文/谷上史朗)

この連載記事は毎月5日頃に更新いたします。3月の最終回まで残りはあと2回。次回更新は2月5~10日頃の予定です。お楽しみに。

2009-12-07

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第115回-

 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、4年目となる今年、ウエスタンリーグで好成績を挙げ、ついに5月に1軍昇格を果たしました。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず、再び2軍落ちとなりましたが、再び昇格となった8月。ついに、プロ初本塁打。その後1軍に留まり、、また不調期に入っているようで…。現在はどのような状態なのでしょうか?

 それでは、スタートです。

        

091207_okada『岡田貴弘を応援する会』が今回の登録名募集以前に作った特性Tシャツ。もし、TAKAになっていればこんなユニフォームになっていたはず…

★T-岡田奮闘記に改名?

 「T-岡田奮闘記」、「T奮闘記」…。このブログのタイトルを変えるとどうなるか、と少し考えたがやはりこのままで(笑)。ちなみに僕も「登録名募集」に応募した。案はシンプルに「TAKA」。岡田本人が選ぶなら、奇抜なものやマスコミ受けしそうなものは選ばないだろう、と思いシンプルに考えたが、残念ながら名付け親にはなり損ねた。
 新登録名に対する反応は、僕の周りでもやや微妙だが、テレビや新聞、雑誌で「T-岡田」が、どんどん取り上げられるようになれば、すぐ新しい響きも耳に馴染んでくるはず。何を置いても活躍次第ということだ。
 さて、そんな来季の活躍を前に、爆発を期待したのが、僕も観戦に向かった11月22日の『セ・パ誕生60周年記念 U-26NPB選抜 対 大学日本代表』。アマ側にも来年以降のドラフト候補がズラリと揃い、試合前のグラウンドも報道陣でごった返していた。同じ東京ドームで行われた3月のWBCのアジア予選をちょっと思い出したが、マスコミの数もお客さんもその時より遙かに多かった。となれば、岡田にとっても絶好のアピールの場だったが、結果はいいところなく2打席で交代(空振り三振、ショートゴロ)…。
 残念!

        

★中田と岡田が並ぶ打撃練習

091207nakata_and_okada試合前のバッティング練習で談笑する中田と岡田。将来、このユニフォームでWBCの3、4番になることを期待したい

 試合前、オリックスの小浜裕一広報の姿を見かけたので話しかけた。すると、「この2人のフリーバッティングは見ものですよ。大学生も度肝を抜かれるんじゃないですか」と言った。「この2人」とは目の前でティーバッティングを行っていた岡田と中田(日本ハム)のことだ。頷きながら「でも飛距離は岡田ですよ」と僕が返すと、「そうでしょうね」と小浜さんもニヤリ。
 しかし――。期待したフリーバッティングから、本来の飛距離は出ず、スタンドを沸かせるまでには至らなかった。飛ばす前に自分の形、ポイントでとらえる確実性の問題をやはり感じた。バッティングへ向かう直前、ベンチ前で岡田に一声かけると「調子はボチボチです」と返してきた。言葉に慎重な岡田の「ボチボチ」は、決して悪い表現ではないと期待していたのだが…。岡田にとっても不本意な結果は、僕にとっても消化不良の今年の見納めとなった。
 とは言っても周囲の岡田に対する期待は大きく…。

        

★福本豊氏「走ってバランスを!」

 この原稿を書いている直前、岡田は大阪の朝日放送のラジオで福本豊さんの番組に生出演していた。朝にある人からその話を聞き、時間が取れればラジオ局に駆けつけ、福本さんと岡田という僕にとっての「夢の競演」を生観戦しようと思ったが、結局、時間が取れず、放送を録音したものを夜中に聞いた。

「でかいなあ。これをほんまにうまいこと使わないとダメだわ」

091207_okada_01期待されたU-26NPB選抜 対 大学日本代表戦での岡田は2打席で無安打に終わった

 岡田の登場からすぐ、福本さんも改めて驚きの声を上げていたが、パワーを活かすも殺すも技術次第。技術アップには体の使い方に通じるということで、福本さんも「走れ。走ってバランスよく鍛えんとな」「打ってても上の力がまだまだ強いからバランスが悪い。両手両足を一緒に動かすランニングはバランスを良くする一番の方法」とアドバイスを送っていた。まったく同じ話を、ダルビッシュや田中将大らが信頼を置く佐藤義則コーチから聞いたこともあった。「下半身の強化はもちろんだけど、ランニングは両手両足を一緒に動かすからフォームのバランスがよくなる。だからいつもやっとかないと」と。
 現在、岡田の体重は入団時より約10キロ増え102キロになっているが、今の岡田に求められるのは体のパワーそのものより、バランスであり、体の使い方だろう。「確率が上がればキング獲れますよ」という福本さんの言葉を現実のものとするためにも「そのあたり」へ意識を向けていってほしい。

        

★上半身の悲鳴は下半身から

 バランス良く、体を効率よく使えるようになれば、芯でとらえる確率も上がるだろうし、飛距離もさらに増すだろう。そして、体の不調も減っていくはず…。というのも、以前から軽度ではあるが、左肩やヒザといったところに違和感が出ることがあった。プロアマ交流戦ではファーストを守ったが、事前の情報ではDHでの登場かと見られていた。というのも、シーズン終盤から左肩の違和感が続き、フェニックスリーグの時同様、シートノック時も捕るだけで、ほとんど投げていなかったからだ。
 いったい、左肩の痛みはどこからくるのか――。
 東京へ向かう前日、大阪市内で野球関係者や、病院関係のドクターが集まったある交流会へ参加した時のことだ。先日のドラフトで阪神から2位指名を受けた立命館大の藤原正典が左肩を痛めた時に通っていた病院の先生、理学療法士と話す機会があった。藤原には何度も取材する機会があり、診断やリハビリの話も聞いていたのだが、その始めにこんなことを言っていた。

「左肩を診てもらいにいったのに、最初に下半身のストレッチとか股関節の動きを見たり、そういうことばっかりで『えっ』っていう感じだったんです」

 ドクター達とそういった話になると、肩の痛みの原因が実は肩以外にあり、特に下半身の硬さが招くことが少なくないと改めて教えてくれた。間単に言うと、股関節の柔軟性に欠けると、スローイングの際も下半身からの力を十分に上体へ伝えきれないため、上の力でボールを投げようとし、肩への負担も大きくなる――。逆に、しっかり股関節の柔軟性が生まれ、下半身を使って投げられる選手は、下の動きに腕がついていき、勝手に振れていくのだ、と。
 このバッティングにも通じる理屈でもある「股関節を十分に使い、下半身に乗せて、絞って、移して、回転」の動きがしっかりできれば、ヘッドは勝手に走るようになる――。
 岡田には肩の違和感を考える時にも、「体の使い方」と「投げる」「打つ」をしっかりつなげて考えてほしい。そうすれば、もっと違う視点も生まれてくるはずなのだが…。

       

★デッカイ夢を!

091207hara_and_okada原辰徳監督と話す岡田。毎年のことだが、オフの過ごし方が来シーズンにつながる。岡田には本気で50本を目指して欲しい

 登録名も決まり、年俸もアップし、期待の大砲候補に周囲は盛り上がる中、まだまだ心配が先に立ってしまう。ラジオ番組の最後に岡田は来季へ向けた意気込みを語っていた。

「来年は勝負の年なんで、開幕から一軍に定着して1本でも多くのヒット、ホームランを打ってチームの勝利に貢献したいです」

 その通りなのだが、気持ちの中ではもっと、もっと、デッカイ夢を持っていてほしい。
 最近は「レギュラーで1年間使えばホームラン25本はいける」とか「30本も…」なんて声も聞こえるようになったが、岡田の持っている力からすればそんな数字は小さなものなのだ。本人には本気で50本、60本を目指してほしいし、そのためにも1日、1日の「今」を大事にしてほしい。
 この12月、1月をどう過ごし、何を掴むのか。自分のペースで過ごせる時間の中で深く、バッティングを、コンデジションを、体の使い方を考えてほしい。
 気づけば今回が今年のブログの最終回。最後まで小言で終わった気もするが、来年は明るい内容の更新が続くよう、超ド級の活躍を期待したい。

      

(取材・文/谷上史朗)

この連載記事は以後、毎月5日頃の更新いたします。本年はこれで終了です。毎回欠かさずアクセス頂いたみなさま、本当にありがとうございました。次回は年明け1月の5~10日頃の予定です。来年もお楽しみに。

2009-11-13

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第114回-

091113okada_batting 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだし、4年目となる今年、ウエスタンリーグで好成績を挙げ、ついに5月に1軍昇格を果たしました。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず、再び2軍落ちとなりましたが、再び昇格となった8月。ついに、プロ初本塁打を放ちました。その後1軍に留まり、現在7本塁打まで達しましたが、また不調期に入っているようで…。現在はどのような状態なのでしょうか?

 それでは、スタートです。

               

★岡田彰布新監督イチ押しの岡田

091113okada_managerオリックスの新監督に就任した岡田彰布監督。早くも岡田に大きな期待をかけている

「こんなに飛ばす若手は指導者になって初めてちゃうかなあ」
 あるテレビのインタビューで聞いた岡田彰布監督の言葉だ。新指揮官にため息混じりで語らせたのは、もちろん岡田貴弘。秋季キャンプ初日に「指導第1号」としても話題になった。レフト固定の案によりレギュラー起用の期待も高まっている。橋本徹知事の元を訪ねた際も、岡田監督は記者とのやりとりの中でスター待望論を口にし、岡田の名前を挙げていた――。
 この時期、話題の少ないオリックスにあって、聞こえてくるニュースの中には相当な割合で岡田が混じっている。
 当然と言えば当然。あの飛距離を目の前で見せられれれば誰だって飛びつきたくなるし、語りたくなるのだ。岡田監督が解説者時代にオリックス戦を見ていれば多少の“慣れ”はあっただろうが、それもほとんどなかっただろうし。

 ただ、岡田監督効果で岡田が取り上げられる機会は多くなったが、去年も一昨年も岡田は飛ばしていた。問題はここからだ。この期待をシーズンへ入っても続け、さらに大きくしていけるか。
 そのためには一にも二にも技術のレベルアップ次第。パッと現れては消える、好調時のフォーム、感覚をいかに体に定着させられるか。来季の活躍はこの秋の作られる! ということで、10月20、21日にフェニックスリーグが行われていた宮崎へ飛んだ。

      

★本調子を欠いたフェニックスリーグ

 8日の本拠地最終戦(対日本ハム)以来の生観戦だったが、去年はこのフェニックスから劇的な変化を見せ、それが今シーズンのファーム二冠、1軍での7発にもつながった。だから今回は、シーズン終盤の姿からの立ち直りを期待しての訪問だったが…。2試合と試合前後の練習を見た印象は、「シーズン終盤の不調を引きずったまま」だった。
 観戦初日は生目の森第二球場(宮崎市内)での巨人戦。岡田は4番ファーストで出場し4打数2安打で結果は悪くなかった。しかし、試合前のバッティング練習からたびたび首をひねっていたように状態は今一つ。2本のヒットは木佐貫洋の抜き球にタイミングずらされながらバットの先で右中間へ持っていったツーベースと、2メートルの長身投手・ロメロのスライダーに「ポーンと合った」感じのライト前。どちらもしっかりととらえた当たりではなかった。

091113fujiiokada02一方、フェニックスリーグでの岡田はシーズン後半の不調から脱出できず、悩んでいた

 試合後、練習に入った岡田は丹羽将也と組んで、藤井康生コーチのあげるトスを打っていた。その様子も、「どうも乗り切れない」といった感じに見えた。三塁側のベンチ前で見ていた僕の近くに転がってきたボールを拾いにきた岡田と眼が合うと、本人がポツリ。
「いい時の感じが出てこないんすよ…。なんでなんですかねえ…」
 僕は思わず「股関節やってる?」と返した。これまで何度も書いてきたが、岡田の課題のひとつが股関節の硬さにあることは確か。フェニックスリーグ終了後、現場を離れてフロント入りすることになっている藤井コーチも「本人もわかってるんです。でも、まだそこがなかなな。でも、下が柔らかく使えるようになってくれば、もっと“粘いバッティング”ができるようになるんですけど」と、歯がゆそうに語った。

 岡田は別に下半身が弱いわけではなく、常人にはないパワーを秘めている。だからあれだけ飛ぶのだが、少しずらされるともろい。このもろさを解消する大きなポイントが股関節にある。ここの柔軟性がアップすれば、これまで空振りしていた球を拾い、見極められるようになる…。岡田も「そこ」に意識はあるはずで、急に効果が出るものではないとはいえ、地道に股関節のストレッチ、柔軟性アップのトレーニングを続けていって欲しい。
 観戦2日目の日本ハム戦。岡田は左腕・浅沼寿紀からライトオーバーの一発を放った。前日の練習の最後に「明日帰るから一発を!」と頼んでおいたらきっちり応えてくれた(笑)。しかし、飛び込んだのは両翼92メートルと小さい東光寺球場(日南市)のライト芝生席最前列。僕はビデオを撮るため三塁側のスタンドにいたが、打った瞬間、目の前のブルペンにいた酒井勉コーチがキャッチャーの前田大輔に向かって「ライトフライや」と言った打球。それが入ったものだから、同コーチがその後「今、ボコッと言ったよなあ。ボコッて。あれで入るか…」という驚きのリアクションを見せたのは当然だったが、確かに「ボコッ」という当たりで力技の一発。それ以上のものではなかった。

      

★グリップが動く選手、動かない選手

091113okada_top_3「動く」「動かない」を含めて、グリップが決まるかどうかは「間」がとれているかどうかを意味する。どんなにいい選手でも、常に気になる重要なポイントだ

 一方、股関節の柔軟性を含めた下半身の使い方が下の課題とするなら、上の課題は構えからテークバックに移るときの手の動きだろう。前回の原稿で門田博光氏が岡田のこの動きを指摘していたという話を書いたが、ほかにも思い当たる機会が10月末にあった。
 ある取材でヤクルト、巨人、阪神で活躍した広澤克実氏に話を聞いた時のこと、本家ゴジラ、松井秀喜の話題になった。松井の巨人入団時はヤクルトの主砲として、95年の巨人移籍以降は同僚として「ゴジラ」を見てきた広澤氏は、松井のバッティングの素晴らしさについて「構えたところからグリップがほとんど動かないこと」を真っ先に挙げた。「1年目に入ってきた時からピタッと止まって動かない。当然、バットが素早く出るし、いい形で球をとらえる率も上がる。その1点だけ見てもこれは凄いバッターになる、って思いました」と話していた。
 この話を聞きながら、僕は岡田の姿を浮かべていた。

 ただ、たとえば藤井コーチの現役時のバッティングフォームを思い出せば、構えた時からテークバックまで軽く動いていた。あるいは金本知憲(阪神)についてもそうだ。以前はよく「ヒッチする」と言われていた。
 しかし、藤井コーチも金本も実績を残してきたわけで、どちらがいいのかについては一概には言えないし、同じ動いているように見えても、実はどこかのタイミングで止まる一瞬があるはずで、その差が岡田との違いなのかもしれない。動くこと自体は、まさにその「動き」によってタイミングを取ったり、あるいはその動きで力を抜くことを優先する選手にとっては、ある意味で有効な形と言える。また、松井の素晴らしさを口にした広澤氏も、自身もそういう形で打ちたい、と若い時から試しながら、最後まで会得することはできなかったと言っていた。あえて言えば、「無駄な動き」を省くことが簡単ではないことは確かなのだ。

091113fujiokadaフェニックスリーグ終了と共にフロント入りする藤井康生コーチ(写真左)。後ろ髪を引かれる想いで岡田のバッティング練習を見守る

 これまで4年、特にファームで岡田を見てきた。その中でも、上体を軽く揺らし、その流れの中でテークバックを取っていた時の方が、いい打球が飛んでいた印象が強い。
 ただ、その時打っていたのは当然ファームの投手の球だ。1軍投手の伸び、キレ、緩急、制球に対応するために、今の形がベストなのか、ベターなのか、それとも…、ということだ。
 フェニックスリーグを終え、今は神戸でのキャンプに取り組んでいる岡田も、まさに「このあたり」について取り組んでいることだろう。できれば、秋季キャンプ終了までにもう1度を岡田を見て、今の取り組みを確認したい。そして、今シーズンの締めとして、22日に観戦予定のプロ選抜対大学選抜戦(東京ドーム)では、岡田らしい一発を見たい。
 この試合は、全国へ「岡田貴弘」をアピールする絶好の機会でもあるが、何よりコーチとしてベンチに入る岡田監督の心をわしづかみにする絶好機であもる。
 こういう舞台にはなかなか強い岡田だけに、いい形での、いい一発を期待したい。

   

(取材・文/谷上史朗)

この連載記事は以後、毎月5日近辺の更新いたします。次回は12月5日頃の予定です。お楽しみに。

2009-11-06

「ナニワのゴジラ奮闘記」更新日延期のお知らせ

 毎月5日近辺の更新しております「ナニワのゴジラ奮闘記」ですが、諸般の事情により11月12日(木)近辺での更新とさせて頂きます。

 いつも楽しみにしていらっしゃるファンの方には大変申し訳ありませんが、今しばらくお待ち下さい。

 よろしくお願いします。

(編集部および谷上史朗)

2009-10-05

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第113回-

091006okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだし、4年目となる今年、ウエスタンリーグで好成績を挙げ、ついに5月に1軍昇格を果たしました。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず、再び2軍落ちとなりましたが、再び昇格となった8月。ついに、プロ初本塁打を放ちました。その後1軍に留まり、現在7本塁打まで達しましたが、また不調期に入っているようで…。現在はどのような状態なのでしょうか?

 それでは、スタートです。

               

★再び上げだした右足

091006okada_0316日から上げ始めた右足。その日と翌日はホームランが出たのだが…

 9月16日にスカイマークスタジアムで行われたソフトバンク戦。3回裏、岡田は和田毅の外角ストレートを素直に返しレフトへ7号ホームランを放った。試合後に聞くと「和田さんの真っすぐが走ってなかったんである程度狙ってました。逆方向の意識はなかったですけどいい感じで打てました」。

 しかし、その日は一発よりも気になることがあった。試合前のフリー打撃から右足を上げて打っていたのだ。
 昨年までは何度も「上げる」「上げない」の試行錯誤を繰り返してきたが、昨秋のフェニックスリーグ以降は、すり足で定着。その中で「ボールを呼び込む形」「間」を徐々に覚え、秋からの大きな成長、さらには今年のファーム二冠、8月以降の1軍定着にもつながったはずだった。
 それがここへ来ての再びの「変化」。

「上げても上げなくてもそんな変わらないんです。ミズさん(水口栄二バッティングコーチ)と話をして、最近タイミングが取れてなかったんで上げてみようかって感じで上げました」

 こちらが思うよりも軽い調子で岡田は返してきた。上げ始めたのは前日からだったそうで、あとでビデオを見直すと確かに上がっていた。その前日に6号、この日が7号。一見、効を奏したように見えたが7号以降は絶不調。ホームランはなく、ヒットもわずか2本の23打数2安打。さらに言えば、21日の楽天戦の最終打席で小山からライト線へ打ってからは11打数ノーヒット。そして原稿締め切りの10月5日時点で直近の3試合は出場なし…。
 確かに「足を上げる」のは、バットのヘッドを揺らしてタイミングを取ったり、投手寄りの足を一度踏む動作や、上体を揺らすといったものと同様、タイミングを合わせるためのひとつと言えばそう。ただ、ようやく昨秋以来、安定してきたはずの「形」がこの時点で変わったことに軽い不安を覚えた。
 そして、更新の時点では最後の出場となった29日の日本ハム戦からは再びすり足に戻り、同時にスタンスも狭くなっていた。いろいろ試すことも大事だが、ひとつのことをやり続けることで見えてくるものもあるはず。

 16日の試合前にはこんなことも言っていた。

「(その時点で苦しんでいた)低めの変化球は頭にあるんですけど、意識があるから余計手が出てしまうところもあって。今の一番の意識はタイミングですね。タイミングを早めにとって…、そこくらいです」

        

091006okada_01背番号55のバッティング練習を見守る大石監督(左から2番目)と水口バッティングコーチ(一番左)

★速いストレートへの対応

 この1カ月、各方面で取材をする中で岡田の打撃についていろんな人と話をした。水口コーチはこんなコメントをした。

「ファームと上で一番違うのはストレート。そのスピード、球の質に慣れること。低めの変化球に崩されるのもスピードが頭にあるから。あとは1軍の怖さを知ったんですよ。最初はがむしゃらにやるだけである意味、気分にも余裕があった。それがだんだん勝負の厳しさや怖さを知るようになって思うように振れなくなってくる。でも、そういう経験も積んでここからですよ。よく練習する選手だからもう少し待っていて下さい」

 現在、オリックスのスカウトを務める小川博文氏にも聞いた。一昨年、ファームで岡田のバッティングを指導していた人だ。

「フリーバッティングでポンポン柵越えして、そんなので満足しないようにせんとね。岡田のパワーがあったら上(体)だけの力でも楽に入るけどそれじゃダメなんです。もっと下を使わないと。ローズのバッティングを見ろ、松中(信彦/ソフトバンク)のバッティング練習を見ろと言いたい。彼らがどうやって打ってるのか、下半身の使い方を勉強して、下の力で飛ばすようにならないと。フリーバッティングの時間ももっと大切にしてほしいなあ」

 ある別の取材では、来季から2軍監督が確定的とされる新井宏昌氏と岡田話になった。今年もCS放送の解説で球場を訪れ、岡田のバッティングは間近で見ているが、水口コーチ同様「ストレート」「タイミング」の課題を口にした。

「タイミング的に立ち後れが目立ちますね。しっかり見て打たなきゃ、という気持ちもあるんでしょうけど、準備しながら打ちにいかないと。見て、打ちに行くでは遅れる。相手が球を離す前に準備を整えて、離した時にはもう足を着いてあとは振るだけ、という状態にしておかないと。その形ができないまま打ちにいってる。速い球が打てないんじゃなくて、打てない形になってるだけ。それに真っすぐに遅れる人ほど変化球に泳がされる。それはストレートに遅れる頭があるから余計早く出て行ってしまうから。でも、前に行けば行くほどまた真っすぐも速く感じるんですよ。とにかく早い真っすぐに遅れないように練習から意識してやっていくことでしょう。ストレートに対応できるようになれば、「待つ」ことは自然とできてくるようになる」

091006okada_rose_matsunaka左から岡田、ローズ、松中の間を取る形。一見、同じような形に見えるが、岡田だけ前の足が完全に地面についてる。このあたりに下半身の使い方の違いがあるのだろうか

 同じく解説者の本西厚博氏もまたタイミングを指摘した。

「始動がちょっと遅い。タイミングは指導してもなかなかできない部分だから、そこだけ言ってあとは本人が覚えていくしかない。今ならスピードの落ちる真っすぐとか早いカウントの変化球あたりは合うけど、速い真っすぐ、落ちる系の変化球、それも追い込まれるとまだまだ…。ホームランバッターの資質は十分見せてくれたらからここから」

        

★門田博光氏からの熱いメッセージ

 さらに歴代3位の本塁打数を誇る門田博光氏にも聞いた。実は9月上旬、門田氏は京セラドームへ出向いていた。4年前に脳梗塞を煩ってからは解説業からも離れ、滅多に球場へ足を運ぶことがなくなっていたという門田氏の足を向けさせたのは紛れもなく岡田の魅力だった。「素晴らしい体に素晴らしいパワー、本物のホームランを打てるバッター」を、何とも見たくなったのだ。
 その門田氏は岡田の魅力を口にしながら、同時に「アレを停止せなあかん」と言った。「アレ」とは構えた時から見方によってはせわしく動く両腕の動き。その動きでタイミングを取ってはいるのだが「バッティングっていうのは無駄な動きを極力なくさないとゼロコンマ何秒の勝負で負けてしまう。ヒッチもしやすいからストレートにも差し込まれたり空振りしたり。ローズなんかバットを忙しく揺らしてもピタッと止まって打つ準備出来てるでしょ? でも、岡田は止まらない流れのままで打ちにいってる。少々形やフォームの過程が悪くても体の力で飛ばせるんだけど、そこで満足したら終わり。スイングの前には虎が獲物に飛びかかる寸前のようにいつでも振り出せる状態を作らんと」
 また、タイミングの話の中で門田氏はこんな思いで話も聞かせてくれた。

「南海の現役時代にノムさんに言われたことがあるんですよ。『カド、右対右のシュートあるやろ。あれを打つにはずっと早く始動せなアカンと思ってたんや。でも、実際は早く始動するほど打たれへん。体だけが前に行ってヘッドが出てこんからな。自分でバットが出ない体勢を作ったらそら打てんわな』。内角は早く打ちに行くんじゃなくてむしろ詰まるくらいで体を回転させて打つ、あとは腕の使い方なんですよ」

 そして最後にはこうも加えた。

「がめつい向上心を持ってほしいね。今の選手は3割とかホームランでも20本、30本ですぐに満足してしまう。そうじゃなくて40本、50本目指して、それも同じホームランでもバットやボールの力で運んだホームランじゃなく、本物のホームランを目指してほしい。そういう気持ちを持ってやってたら必ず上がっていきますよ」

 元ホームラン王からの熱いメッセージ。岡田に是非伝えたい言葉でもある。

           

091006okada_06崩されての空振りシーン ストレートの対応力を上げることでこんなシーンも減るはずだが…

★失われた藤井コーチの支え

 9月末、最後に向かったのは藤井康雄2軍打撃コーチのもと。岡田が足を上げ始めたという話をすると「去年から何をやってきたんや…」と、少し寂しそうに言った。それは足の上げ下げだけを指してのことではない。まだ信じる形を見つけきれない岡田へのもどかしさのようだった。

「ずっとね、ボールに向かう形をしっかり作ろうとやってきた。軸足にしっかり残しながらボールを待つ“間”を作ってボールを長く見る。そこをやってきてたんだけどねえ…。その形さえ出来たらストレートでも変化球でもこなせるんですよ。僕なんか145キロでもフリーバッティングの時のボールと同じ感覚で捉えられてましたから」

 ただ、最後には「宮崎のフェニックスリーグでもう1回やらんとね」と明るく話していた。
 ところが…。
 10月4日。球団から来季、藤井コーチのフロント入りが発表された。その数日前に噂を耳にし、愕然としていたことが現実となった。昨年まで3年間、ファームでも結果を残せなかった岡田が何とか1軍で戦えるようになり、ここまで来たのは間違いなく藤井コーチと昨秋以来徹底して取り組んだ練習の成果。それでも何とかフェニックスリーグまでは現場に立つようで、岡田も公式戦の日程が終了後、宮崎へ飛ぶ。
 期間は短いが、師弟が交わる最後の場で何とか揺るがないものを身につけてほしい。いろいろ試すことも大事だがひとつのことをやり続けることも大事だ。

      

<追伸>更新早々、記事を読んだ吉澤雅之さん(タイツ先生)から貴重なメッセージが届いた。以前にも吉澤さんが岡田専用に作成したDVDを本人に手渡し、本人も参考にしていたが、このメッセージがまたヒントになれば。岡田読んでる?

   

※本文最後の部分について、一部情報に誤りがあったため修正させていただきました。ご迷惑をおかけいたしました。

   

(取材・文/谷上史朗)

この連載記事は以後、毎月5日近辺の更新いたします。次回は11月5日頃の予定です。お楽しみに。

2009-09-07

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第112回-

090907okada_hr03 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。彼が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだし、4年目となる今年、ウエスタンリーグで好成績を挙げ、ついに5月に1軍昇格を果たしました。このときは残念ながら結果を残すことが出来ず、再び2軍落ちとなりましたが、再び昇格となった8月。ついに…。と、この模様は本文をご覧下さい。

 それでは、スタートです。

         

★プロ入り初本塁打を打った日にスカイマークスタジアムへ

 今回はスケジュールが立て込み、更新予定がずれ込んでしまったが、すでに皆さんご存知の通り、ゴジラパワーも随所に見せつけながら岡田は1軍で奮闘の日々を送っている。振り返ることも多くあるが、やはり今回は8月14日に飛び出した記念すべきプロ第1号にスポットを当てて書いてみたい。

 今思い出してもいいホームランだった。
 個人的なことを言わせてもらえば、ホントによくあの日に打ってくれた。再昇格が決まった朝、父・秀和氏から連絡をもらい、そのことを知った。僕は甲子園取材の真っ最中で、その一報もネット裏の記者席で受けた。
 ただ、当日は第3試合まで取材することになっており、夕方からは大阪で別の取材が入っていた。夜は夜でその日見た戦いの原稿を書かなければならず、当初は観戦を断念するつもりだった。
 しかし、オリックスの試合予定を確認すると、翌日、翌々日は京セラドーム大阪でのデーゲーム。これは甲子園取材と重なるので見られない。さらにそのあとは、千葉、宮城遠征…。となると、当面は今日見ておかないと見られるときがない、ということで思い直し、17時過ぎに大阪での仕事を終えると、あとのことは棚上げにして、電車に飛び乗りスカイマークスタジアムへ向かった。

         

★ついにやってくれた! プロ入り初ホームラン

090907okada_hr01_2 この時を待っていた。低めのボール球だったが、バットを一閃すると、高々と上がった打球はそのままレフトスタンドに吸い込まれていった

 ネット裏にある第2記者席へ駆け込んだ、まさにその時、「7番ファースト岡田」のアナウンスがスカイマークスタジアムの美しい場内の風景に重なって流れた。
 注目の第1打席は、ソフトバンク先発・ジャマーノの外寄りに流れるチェンジアップ系の球に途中でバットを止めるも、これが小飛球となってレフト前に落ちるラッキーなヒット。内容はともかく、打席の雰囲気に「やってくれそうな」予感が走った。さすがにこれだけ見続けてきた効果か、最近は打席からの気配でかなり結果が見えてくるようになった。

〈かなり期待できる!〉

 2打席目は2-2から抜いたカーブにタイミングが合わず空振りの三振。それでも僕の思いは変わらない。

〈コースひとつ甘いところにくれば…〉

 そして3打席目。予感はますます高まり、中段にある第2記者席を離れ、カメラを持ってネット裏スタンドの最前列にまで降りた。なんとか岡田のプロ1号をこの目で見たかったし、できればその瞬間を写真に収め、このブログでも紹介したいと思っていた。
 期待十分にカメラを構えたその時…。
 やってくれた!
 0-1からの真ん中低め、やや内寄りのチェンジアップ。僕の目線の10数メートル先だったが、キャッチャー田上秀則のミットは岡田がスイング直後には地面に着いていたほどの低めだった。それをあそこまで、しかも逆方向に放り込むとは、さすが!
 打球は高々と上がった。ただ、これもここで何回か書いてきたように岡田の持ち味で、一見、上がり過ぎたように見えながら、上空でグンッ、グンッ伸びるのだ。まさに岡田らしい一発が記念すべきプロ1号となった。
 決定的瞬間を何とかカメラに収めると、同時に僕は左手を握っていた。入った瞬間にはホントに全身に震えがきた。いやあ、いいホームランだった。

 試合後、僕が岡田を追いかけていることを知っているサンテレビの湯浅明彦アナウンサーから「見れて良かったですねえ」と声をかけられた。「これだけ追いかけてきて第1号を見れなかったら泣くに泣けないですよね」と。
 まさにその通り。本当にいい日に打ってくれた。来て良かった…。

          

090907okada_interview02_2初ホームランに続いて初のヒーローインタビューに対応する岡田

★初々しいヒーローインタビュー

 その後、スタンドで秀和氏と会いガッチリ握手。この日は「岡田貴弘選手を応援する会」のY氏もスタンドに駆けつけていたが、飛び上って喜んでいたことだろう。そしてもちろん、アーチスト誕生の瞬間を目の当たりにした多くのオリックスファンも。

 試合後の岡田は初のお立ち台へ上がった。
 僕もグラウンドへ出て、カメラマンの中へ交じりシャッターを押した。途中、言葉がもつれる初々しさも見せながら、岡田は「2軍で頑張ってきて4年間、関わってきてくれた人に感謝したいです」と思いを語っていた。
 それから今度はベンチ裏の通路で記者に囲まれ、やはりまだまだ慣れない「囲み取材」に突入。

「1打席目のヒットでホッとしたところはありましたし、2打席目も振れてたんで。完璧にとらえきれてはなかったですけど、自分のスイングは出来たと思います」

「下に落ちてからもすぐ調子もよくなったんで、何とか今回は結果を出したいと思ってました」

「下半身ががっちりしてきて、少々詰まったり、打ち損なっても体の力がボールに伝わってある程度距離は出るようになりました」

「一本ホームランも出てホッとした部分もありあすけど、明日からが大事なんでまた頑張っていきたいです」

 2009年、8月14日、オリックスに待望久しい、日本人アーチストが誕生した。

       

★オリックススカウト陣も笑顔

090907orixscout翌日の甲子園のスタンド。オリックスのスカウト陣の会話にも前夜の岡田の話題が挙がった

 翌日の甲子園球場のネット裏席。
 オリックスの編成担当、スカウトが並ぶ一角へ向かうと宮田隆さんからは「おめでとう」。堀井和人さんからは「やりよったなあ」と、声をかけられた。
 スポーツ新聞を広げながら、どの顔も笑顔だったが、話の中ではみな岡田のパワーに驚いていた。「あの打球で入るか」「打った瞬間はレフトフライかと思ったわ」「いやいや、ショートフライかと思ったで」…。人を見ることを仕事とする人たちが改めて規格外の「飛び」に脱帽していた。
 思い起こせば、今年の1月には熊野輝光編成部長が「大きいのを打てる打者をリストアップしたい」と発言していたこともあった。この話題はここでも触れたが、伸び悩む岡田を刺激するような一言だった。しかし、今年の成長でドラフト戦略もいろんな意味で変わってくるのだろう。

      

★1試合1試合が成長の糧に

 第1号以降の岡田は順調にホームラン数を伸ばし、再昇格から11試合で5本のハイペースで打った。ただ、そのまま突っ走れるほど甘くないのはもちろんのことだ。
 初ホームランの直後、スカイマークのスタンドからサーパスの藤井コーチに連絡を入れると、喜びのコメントの最後に「しばらくは打つと思いますよ」と加えた。プロの厳しさを込めた一言だったが、実際、言葉通りの感じになってきた。

 8月30日に5号を打った試合後、秀和氏から連絡をもらった。「これで5本とも全部違う球団からですよ。1号から5号で、この短期間で5球団から打つって珍記録ですかね」と笑っていたが、それだけ早く各球団に「ゴジラパワー」を見せつけたということ。当然、2カード目からは攻めもより厳しくなってくる。
 これまで見ていても、攻め方とすればストレートは見せ球、ストライクで使うなら内角が基本。勝負球はタテのカーブか落ちる球が多く、それがない右投手はインコース膝元へのスライダー。特にタテのカーブのチェンジアップ効果に崩され、片手で空振りというシーンはたびたび目にした。初ホームランもそうだったように、岡田は低めにツボを持つ。だからなおのことその近辺に手が出る。
 低めを好み、本人も自分の持ち味を十分わかっているだろうから、そこでバットが下から出ていきやすくもなる。ここは課題と言えば課題だが、とにかくその振りは速く、力強い。空振りの迫力、スイングの角度に、かつてのホームラン王で三振王でもある近鉄・ブライアントを思い出すこともあった。ピッチャーにすればいくら穴が多いとは言え、あれだけ振られるとイヤだろう。ここは今のまま続けてほしい。

090907okada_interview01この先、こうした光景を無数に見られるかどうかは、今後予想される厳しい攻めに対しての対処にかかっている。1軍での経験を糧にしてさらなる飛躍を遂げて欲しい

 あとは振りながら、少しづつ低めを見極められるようになれば、確実に率も上がりホームラン数も増えていくはず。課題が多い分、その成長を見る楽しみもある。たとえば、29日の対戦で3三振を喫した岸孝之(西武)などは、ストレートの質が高く、タテのカーブもいい。今の岡田にとっては最も手こずる相手の1人だが、成長を図るには格好の相手でもある。あの低めのカーブを見極め、インコースの真っすぐをファウルできるようにでもなれば…。次の対戦は注目したい。
 そうして1つ、1つ課題をクリアしながら、苦手コースが消え、階段を上っていくのだ。
 ファンの人たちも焦らず、打率が下がろうが、三振が増えようが、当面は温かく、ゴジラの奮闘ぶりを見守ってほしい。そして、もちろん、球団にはシーズン最後まで腹を決めてしっかり使い切ってほしい。

      

(取材・文/谷上史朗)

この連載記事は以後、毎月5日近辺の更新に変更することになりました。次回は10月5日頃の予定です。ご迷惑をおかけしますが、今後とも「ナニワのゴジラ奮闘記」をよろしくお願いいたします。

2009-09-04

「ナニワのゴジラ奮闘記」更新予定のお知らせ

 毎月1日頃に更新予定の「ナニワのゴジラ奮闘記」ですが、諸般の事情により今回の更新を来週初旬に変更致します。

 いつも楽しみにされている読者の方にはこのところ大変ご迷惑をおかけ致しますが、今しばらくお待ち下さい。

 よろしくお願いいたします。

(編集部&谷上史朗)

2009-08-07

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第111回-

090401okada_batting02_4 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。
 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだしており、4年目となる今年、ついに期待されての1軍昇格を果たしました。しかし、残念ながら結果を残すことが出来ず、再び2軍落ち。再度昇格を目指して課題の克服を目指して前に進んでおります。 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。では、スタートです。

         

★突然の1軍昇格指令

 8月7日の夜。岡田家では久しぶりに親子水入らずの食事会が行われるはずだった。8月半ばに岡田の兄にアメリカ行きの予定があり、岡田のゲームがない7日の夜にみんなで食事を…、ということだった。ところが、前日になりこの計画が頓挫した。

「明日行かれへんようになったわ。1軍に行くことになって」

 岡田からそういった連絡が実家に入ったのは前日夜。7日のロッテ戦から今季2度目の1軍生活が始まるはずだった…。ファンの立場からすれば、ファームに降格後も依然、ウエスタンリーグの二冠王(5日現在、19本塁打、55打点)を走るナニゴジに、ようやく…、の思いだが、ともかく再びのチャンス到来だ。
 ただ、この直前までの7月後半、実は岡田は思わぬアクシデントに見舞われていた。
 今回の更新はこちらの都合により月初の予定が遅れたが、3日の夜、長崎にいた僕は岡田に連絡を入れた。まず、前日まで行われた広島3連戦の様子を聞くと「やっと“復帰”です。バッティングの感じはまだまだですけどとりあえず昨日1本(18号)出ましたし、またここからです」。電話口の声は明るかったが、「復帰」とはどういうことかというと…。

      

★実はケガをしていた7月後半

 話は7月14日、あじさいスタジアムで行われた広島戦に遡る。
 僕はその頃、連日の高校野球取材で岡田観戦には向かえず、新聞、ネットで試合結果をチェックしていたが、そこで“異変”に気付いた。14日の広島戦にいつも通り4番で出場していた岡田が、1打席で交代していたのだ。「ん!?」と思いながら、1日様子を見ると、翌日は欠場。
 この翌日、1軍のゲームを取材する機会があり、試合前に関係者に聞いてみたが、「特にケガの報告は聞いてないです」という答え。しかし、岡田はこれまで少々のことで欠場するようなことはなかったはず。気になりその場から岡田の父・秀和氏へ連絡を入れると、事実が判明した。やはりケガだった。

 ことの発端は、14日の広島戦の第1打席。岡田は先発の大島崇行からライト線にツーベースヒットを放ち、6番・迎祐一郎のレフト前ヒットでホーム生還を狙った。ところが、ここでキャッチャー會澤翼と交錯し右足を負傷。幸い骨に異常はなかったが、7針を縫う裂傷を負い、その場で退場となった。当時の様子を本人に語ってもらった。

「右足のくるぶしの内側なんですけど、あの時は滑り込んでいって、でも、相手のスパイクが当たったのか自分の左足のスパイクが当たったのかわからなかったんです。ただ、一瞬、『痛っ』と思ってその場にうずくまってたらみるみる足が真っ赤になってきて…。そんな感じでした」

090807okada_running01走塁中の岡田。7月14日のウエスタンリーグ広島戦、本塁クロスプレーの際に7針を縫うケガをしてしまった

 好調が続いていたのに、当面の欠場を余儀なくされた時はもちろん、相当に悔しかっただろうと思い聞いてみると…。

「実はあの前の日まではメチャクチャ調子が悪かったんです。自分でもビックリするくらい当たらなくて…。でも、その日の試合前のバッティングで久しぶりに感じがよくて1打席目もツーベース。よしっと思った矢先だったんで、やっぱりショックでしたね」

 ちなみに本人が「自分でもビックリするくらい当たらなくて」という言葉は決してオーバーなものではなかった。改めて直近の6試合(社会人との交流戦を含む)を見直してみると、28打数6安打、ホームラン2本の数字はまずまずながら、なんとアウト28のうち、三振が実に16。快調さゆえ、一発への意識が強くなった結果だったのか、確かにちょっとびっくりする数字だ。

      

★周囲も感じ始める「岡田らしさの兆候」

 そんな期間も経ての14日でもあったのだが…。欠場が決まってからはどのように過ごしていたのだろう。

「2日間は安静にしていて、3日目からキャッチボールとティーを徐々に始めてこの広島戦からチームに合流です。復帰の時期的にはだいたい予定通りです」

 オールスター休みもあったため、欠場が6試合のみだったのは不幸中の幸い。7月31日の復帰戦は4打数1安打だったが、翌日の雨天中止を挟んだ3戦目に早々の復帰弾が出た。
 この一発は、土日を利用し広島観戦に向かっていた秀和氏からの連絡で知った。「なんとか最後の5打席目に1本出ました」との一報だったが、ただの1本ではない。8回表のチャンスに梅津智弘から放った一打はライトスタンドへの満塁ホームラン。秀和氏にその時の状況を詳しく教えてもらおうと尋ねると…。

「実は…、疲れて寝てました(笑)」(秀和氏)

 これも去年までとは違う、見る側の余裕の表れか。今年は少なくとも去年までのように1打席、1打席の結果に一喜一憂することはなくなった。父の“居眠り事件”を岡田にも伝えると「去年は5本でしたたからねえ」と笑っていた。
 そこで本塁打の状況については、秀和氏に代わって母・美津子氏に説明してもらった。話を総合すると、ライトへの高く上がった打球がそのままスタンドに入ったそうだ。ネット裏では「あれで入るんか」というファンの驚きの声も聞こえたという。電話取材の際に本人にも確認すると、やはり「最初はちょっと上がりすぎかなと思ったんですけど…」と同様のコメント。ただ、そう思う打球がアレヨ、アレヨと伸びるのが岡田の打球の特徴で、その意味では「らしい」一発だったわけだ。
 電話取材翌日となった4日の阪神戦でも福原からセンターへ19号。5日には球団関係者も観戦に訪れ、状態を確認。翌日の試合後、晴れて1軍昇格が伝えられたようだ。

      

★後半戦への意気込み

 電話で岡田に後半戦の目標を聞くとこう話していた。

「今はウエスタンのホームラン記録を破ることを目標にやってます。その中で1軍から声がかかれば、もちろん次は頑張りたいですけど」

 チームが不調にあえぐ中、なかなか2度目のお呼びがかからない複雑な思いも感じさせながら、城島健司(マリナーズ)がダイエー時代の1996年に作った25本を頭に置き、ひとつのモチベーションとしているようだ。
 ただ、今のペースであれば更新は確実だったが、今回の1軍昇格の結果次第で予定は変わっていくだろう。そのためにも前回からの成長を見せなければならない。前回の1軍話を改めて聞くとやはり投手陣の質の高さを口にした。

「キレ、コントロールとも下とは違いますけど、1番はコントロールですね。やっぱりミスが少ないし、ちょっと打てないってところを見せるとそこを突いてくるし。まずは甘い球がきた時に打ち損じないレベルになっとかないとダメです」

 1打席に1球あるかないかの「好球」をいかに捕らえるか。ただ、結果を求める余り、前回の1軍の最後となったヤクルト戦のようなバッティングはしてほしくない。ひとつ前のカードの巨人戦からヒットが出なくなり、最後は明らかに構えから力感が消え、スイングも鈍く、小さくなっていた。あまりの変わりように、周囲からの指示だったのだろうと思っていたが、今回聞いてみると、そうではなかった。

「自分としては全然変えたつもりはなかったんです」

 この言葉にはかなり驚いたが、やはり結果を求める気持ちが形も雰囲気もすっかり変えてしまっていたのだろう。今回はそんなことだけはないように。7日は昇格即スタメンの起用が濃厚とも耳にした。思い切り振って、岡田らしいスイング、岡田らしい一発を、是非、見せてほしい。

     

090807okada_batting02ケガから復帰後、7日の昇格については急遽取り消されたが、再昇格の日は近い。次のチャンスでは、前回の経験を生かしてひと皮違った姿をファンに見せて欲しい

★ところが

 …、と更新予定だった7日の朝にここまで書き、僕は家を出た。当日は滋賀の堅田で取材があり、そこへ向かうためだ。バックの中には夜には京セラドームで岡田撮影用のカメラをしっかり忍ばせて。
 ところが! その道中、携帯に「岡田貴弘選手を応援する会」のI氏からメールが届いた。なんとそこには「今日の昇格が見送られたそうです」とあった。
 なんということか…。前日の楽天戦での延長12回での敗戦が戦力調整に何らかの狂いを生じさせたのだろう。何とも残念。

 ただ、近いうちにまたチャンスは必ず巡ってくるはず。岡田には、おそらく立ち消えになった話が復活し開催されたであろう家族との食事会で気持ちを切り替え、当面は城島の記録更新に向けて打ちまくってほしい。ちなみに、多少の日程の違いはあるだろうが、城島は96年の8月24日に25本目を放ち、9月初めに1軍昇格。直後にプロ初本塁打も記録し、翌年のレギュラー獲得への足がかりを作っている。
 続け!

     

(取材・文/谷上史朗)

次回は9月1日頃に更新する予定です。

2009-08-03

「ナニワのゴジラ奮闘記」更新予定のお知らせ

 毎月1日頃に更新の「ナニワのゴジラ奮闘記」ですが、諸般の事情により今回の更新予定日を今週末以降に変更致します。

 いつも楽しみにされている読者の方には大変ご迷惑をおかけ致しますが、今しばらくお待ち下さい。

 よろしくお願いいたします。

(編集部&谷上史朗)

2009-07-03

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第110回-

090701okada_top_2  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだしており、4年目となる今年、ついに期待されての1軍昇格を果たしました。しかし、残念ながら結果を残すことが出来ず、再び2軍落ち。再度昇格を目指して課題の克服を目指して前に進んでおります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。では、スタートです。

       

ファームに戻り再び絶好調の岡田

 6月25日、鳴尾浜球場。
 試合前のフリーバッティングで、岡田はこの日も面白いように打球を飛ばしていた。その様子を見ていた某球団の編成担当が「すごいねえ」と言ったあと、ごく素朴な疑問を口にした。
「なんでオリックスは(1軍で)使わないの?」
 承知の通り、岡田は5月19日の昇格から29日の抹消まで1軍でプレーし、7試合連続のスタメンも経験した。そこで後半に打撃を崩したため、再降格となっての“今”ではある。
 しかし、目の前の打球を見れば、そして、ファーム落ちとなってからの成績を見れば、どうこう言わず、1軍で使い続ければいいのに…、と思ってしまう。先の担当者が言った。
「優勝争いでもしてるなら別ですよ。オリックスは“今”使わないでいつ使う? って状態でしょ。迷うことあるのかなあ」
 オリックスにはオリックスの考えがある。しかし、はや完全に1球団だけペナントレースから取り残された状況では何か起爆剤になるものがないと、現状から抜け出すのは無理。ただ、ただ、いつ帰ってくるかわからない“2人”を待ってるだけではあまりに情けない。そもそも足の小指の骨折でいまだ戻れないカブレラには、果たして今のチームの窮状をどこまで感じているのか、もっと言えば戻る気があるのか…、とさえ思えてしまう。
 なら、なおのこと。岡田をもう1度使って欲ししい、使い続けてほしい。

        

090701okada_batting03_21軍では結果を残せなかった岡田。だが、その課題は体に染みこまれた。再度昇格を目指し、現在はファームで春以上に爆進中

無駄ではなかった1軍経験

 ファームに戻ってからの岡田の成績は凄まじいの一言。6月30日までの間に社会人との交流戦も含め20試合に出場し成績は次の通りだ。

84打数30安打(打率.357)、20打点、9本塁打

 6月6日の阪神戦では太陽から延長10回に逆転サヨナラ3ランも放った。1軍昇格前までの量産ペースをさらに加速し現在16号(交流戦分は除く)。シーズン初めに好調ながら上から呼びがかからず「ファームのホームラン記録でも更新しようかな」と、自虐的に話したことがあったが、このままなら更新の可能性は大。
 しかし、そんなことで注目されれば、ある意味でオリックスの株を下げることにもなるだろう。2年前の1軍は最下位ながらファームで迎祐一郎が三冠王に輝いたが、それに続く“珍事”だ。
 それにしても…。1軍に上がる前「今、どれだけやれるか試したいんです」と抑えきれないといった表情で話していたこともあったが、今の打ちっぷりを見ているといかに1軍での経験が大きかったかがわかる。何が足りのいのか。逆に何が通じるかもわかったはず。それが打席で相手投手を見下ろすくらいの余裕も生んでいるのだろう。

       

成長を感じさせるプレーを連発

090701okada_batting01外寄りのボールを拾ってセンター前へ運ぶ。ファームに戻ってから、その打撃は確実に成長の跡を見せている

 25日の阪神戦でも成長の一端が伺える場面があった。
 この日の相手先発は久保田智之。先発転向後、故障から大きく出遅れているとはいえ、バリバリの1軍戦力。この久保田に対し、1打席目、2-2から内角高めのストレートをセンターに弾き返した。「きれいに返した」というところまではいかなかっが、今までなら遅れてどん詰まりになるコースを、上から叩いてバットが間に合ったからこそのヒット。1軍でもその対応の必要性を改めて感じたであろう内角球をひとつ返したのは大きな進歩。
 ここからさらに鋭く、さらに内からのスイングに近づけていけば、まだまだ対応力も上がっていくだろう。

 この日は足でも魅せた。センター前のあと、次打者・一輝の2-3からスタート。ランエンドヒットの形だったが、一輝が空振り三振に倒れるも見事盗塁成功。1軍のセットアッパーとおそらくチーム一の強肩・小宮山慎二から奪った盗塁には価値がある。
 さらに8回の第4打席で今度は太陽から、2-2からやや外寄りの落ちる球を右手で拾いセンター前に左に運ぶ技ありのヒット。すると打球を追った二遊間のベースへの戻りが遅く、この一瞬のすきをついて岡田がセカンドを陥れた。
 走塁への意識が高いからこその素晴らしい状況判断。1軍で活躍すればあちこちから聞こえてくるだろう「岡田って意外と走れますね」という声が浮かんだ。

        

090701okada_running02打撃だけでなく走塁にも意欲見せる岡田だが、ヘッドスライディングするシーンなどでは負傷しないか心配だ(右は阪神・久保田智之)

頭からの帰塁は故障を防止する意味でも控えて欲しい

 高校時代、その体格のイメージから「打つだけ」と思われることを嫌い、積極的に走塁に取り組み、プロに入ってもその姿勢を貫いてきた成果。ここではこれまで何度もその足に触れてきたが、この日も見せたくれた。
 ただ、同時に1つ、こちらも何度も書いてきた小言も言わせてもらう。
 一塁走者で牽制を受けた時の戻り方だ。そう、頭からの帰塁。これも何度も書いたが、チームメイトの濱中治、高校時代のライバルの平田良介(中日)がこの頭からの帰塁がきっかけでのちのちまで響く肩の故障をした。2人は右投げで岡田は左投げ。一塁ベースにタッチするのは右手だから、万が一、ベースで詰まって肩を痛めたとしても2人ほど深刻な状況にはならないかもしれない。ただ、指を突く危険性もある。僕個人としては改めてほしい。それで半歩リードが狭まるなら、その分、スタートを磨くことに頭を向けてほしい。やっとここまでバッティングのレベルが上がってきたのだ。自分の一番の武器は何か。そこをもう1度考えてほしい。

 ともあれ、バッティングに関しては完全に軌道に乗った。細かい技術はまだまだ上げていかなければいけないとしても、もう心配することはない。あとは、どう起用され、どう飛び出していくかだけ。
 来年のレギュラーどころか、ホームラン王どころか、前にも書いた近い将来の「ジャパンの4番」までの期待が僕の中では確実に膨らんでいる。
 さあ、この伸び盛りのスラッガーを使わない手はない。
 繰り返し書いておくが、ここ20試合で84打数30安打、20打点、9本塁打。上位進出を諦めたから上げるのではない。上に上がるために今、岡田の力が必要なのだ。
 1人の活躍でチームを変えられるほど大きな力を持った選手などそうはいない。岡田はその可能性を秘めた数少ない…どころか、今のオリックスでは唯一と言っていい選手。「今は野手より投手」といった発想ではなく、チームの空気を変えられる選手を。岡田に賭けるという選択は首脳陣にはないのだろうか。

090701okada_and_abeファーストの守備位置に阿部真宏(右)とつく

        
 
★25日の試合後、阿部真宏の取材があった。実はこの阿部が野球小僧の読者。今回のインタビューでも「そのあたり」を語ってもらったのだが、うっかり岡田と野球小僧の深い関わりを伝え忘れてしまった。アベちゃんとナニゴジの小僧コンビでオリックスを押し上げてほしい。

      

      

(取材・文/谷上史朗)

次回は8月1日頃に更新する予定です。

2009-06-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第109回-

090601_okadatop 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今年4月から毎月1回に凝縮した形で再スタートいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだしており、4年目となる今年に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

       

思わぬところから舞い込んだ1軍昇格のチャンス

090601_kyoseradome京セラドーム阪神戦で撮影。オリックスファンから期待のこもった声援が飛ぶ

 この1カ月、岡田の周辺は目まぐるしく動いた。5月11日にウエスタンリーグ3・4月の月間MVPを受賞。20試合で打率.300、7本塁打、20打点。ファーム二冠の数字から間違いないと思っていたが、東では同じくリーグ二冠の中田翔が受賞しており、何ともこの先を楽しみにさせた。ただ、この時点でまだ1軍昇格の知らせはなく、受賞の時点ではファームの打率が2割8分台に落ちてくるなど、下降気味に見えていた。
 そんな中、思わぬタイミングでの1軍昇格となったのが5月19日だった。
 「今年は秋までファームで…」というニュアンスの大石大二郎監督の発言も伝え聞いていたし、カブレラ、ローズの相次ぐリタイアや濱中治、後藤光尊らのファーム落ちなど何度も昇格のタイミングがありながら声がかからなかった時点で、やはり1年ファームで実績を積ませるつもりなんだ、と思っていた。あとから考えればフェルナンデスの小指骨折の影響もあったのだろうが、ともかく思わぬタイミングでの3年ぶりの昇格となった。
 前日に父・秀和氏から連絡を受けたが、すでに当日は島根・開星高校で高校野球の取材が決まっており、京セラドームの広島戦には向かえず。同校の夜間練習を見ながら携帯サイトで打席をこまめにチェックした。結果は三振、三振、ショートフライ、三振。見事な抑えられっぷりで4打数ノーヒット。夜のニュースでチラッと映ったスイングをあとからビデオで確認すると、1打席の三振シーンは大竹寛の内角へ切れ込んでくるような146キロの真っすぐに苦しそうにバットを出したスイングだった。大竹の攻めは厳しく、1打席目、2打席目ともインコースのストレートをたっぷり意識させられ、2打席目の最後は外のカーブで完全にタイミングを外され三振。前回のレポートで書いた中田賢一(中日)との対戦で見た1軍の“本気”の攻めだ。
 そして、3打席目では〈追い込まれたら厳しい〉と、初球から遮二無二打ちにいった印象のショートフライ。それでも最終の4打席目、代わった横山竜士のストレートを3つ空振りしたスイングは、助っ人外国人を見るような豪快さで「ひとつ間違えば…」という迫力があった。ファームでもここまで振れてたかな、という迫力のあるスイングで、改めてセンターカメラからの映像に成長と今後の楽しみを感じた。
 この振りを続けていれば…。

       

3年振りとなる1軍でのヒット

 翌日の広島戦も僕は和歌山で取材で観戦には向かえず。夜、大阪に戻ってきたところで秀和氏から携帯へ連絡が入った。明るい声に「もしや…」と尋ねると、「最後に1本出ました」。9回に林昌樹から放ったセンターへのタイムリーを教えてくれた。
 録画した映像で確認すると、1打席目、2打席目は前田健太の緩急に翻弄され、共に空振りの三振。3打席目は前田の真ん中やや低めのスライダーを、甲子園球場で例えるなら一塁側アルプススタンド上段へ放り込むようなド迫力の大ファウルを1本見せたが、最後はフォークでファーストゴロ。しかし、ファウルでも、相手に「おっ」と思わせる打球を放っていれば警戒からコントロールミスも出てくるはず。このあとの4打席目に、右サイドハンドの林の外角高めストレートをセンター前へ弾き返した。1軍での3年ぶりのヒットでプロ初打点。ベース上で見せたホッとした表情が今も目に浮かぶ。

 そして22日、遅まきながら現地・京セラドーム(阪神戦)へ向かった。試合前、ベンチ裏で岡田を捕まえる。

―― 初戦の最後に横山からフルスイングを3つして、ふっきれたような感じもしたけど?
岡田 最初は緊張して、自分の間合いで入れずに振らされてる感じが結構あったんです。でも、思い切り振れるようになってはきました。
―― はじめに今一番いい大竹のボールを見たから、あとは少し楽になったという気も?
岡田 いやあ、でも、みんないいボールなんで。やっぱり1軍のピッチャーはなかなか甘いところにこないし。
―― 今日の相手先発はおそらくは安藤優也。また、インコース来るやろうな。
岡田 来るでしょうね。でも、あんまり、そこばっかり意識しないようにして、甘いところにきたら自分のスイングができるようにしていきたいです。

090601_okada_timery01京セラドームでの岡田は、思いきりのいいスイングを披露。結果も出したのだが…

 実はこの朝、僕はラジオ関西のお昼の番組に呼ばれプロ野球についてアレコレしゃべってきた。その中で、僕が個人的に注目する選手をしゃべっていいということだったので、パーソナリティーのばんばひろふみさん相手に思い切り岡田話をしてきた。
 その最後、「今日あたり一発が出そうな気もします」と初アーチの予言までしてきた。本当に気配を感じていたのだ。

       

地元大阪ではタイムリーツーベース

 京セラドームのネット裏に岡田ファミリーや履正社高校の岡田龍生監督らが見守る中、一発こそ出なかったものの、岡田が魅せた。
 3打席目に安藤のフォークをセンター前に転がすと、7回の第4打席。1死満塁で代わった江草仁貴からセンター右へタイムリーツーベース。ツーナッシングからスライダーをためて、手首を返さず拾った。ライナーで運んだ見事な一打に、高知でのオープン戦で見たシーンを思い出した。(第104回の記事を参照)。今年の岡田の成長をはっきり感じたのが、この江草との対戦だった。

090601_okadatimery第4打席、1死満塁からセンター右にタイムリーツーベースを放つ

 試合後、記者に囲まれた岡田はさすがに喜びの表情で語っていた。
「ピッチャーが代わって、鈴木(郁洋)さんから『思い切りいったらいい』、って言われて。とにかく自分のスイングをしようと思ってました」
「追い込まれて真っすぐならファウルで逃げるつもりで。変化球主体で待って、いい反応ができました」
「下(2軍)で藤井(康生コーチ)さんとずっとやってきて、それがあってここまでこれたと思います」
 …。
 記者とのやり取りがひと段落となったところで少し話を聞いた。

―― 江草とはオープン戦でやってたよね。
岡田 覚えてます。あの時は最後スライダーで空振りだったんですけど、今日も最後は変化球で来るだろうと思って、真っすぐのタイミングで合わせながら変化球も頭に置いて待ってました。ボールは前より今日の方が甘かったですけど、よかったです。
―― ホッとした?
岡田 それもありますけど、それより、これからもっとやるぞっていう気持ちですね。

       

高まる予感に反するフォームの変化

 そして、いよいよ一発の予感が高まる翌日。しかし、昼間のスカイマークスタジアムで試合が行われる時間に僕は取材で京都にいた。またしても携帯でチェックしながらの観戦だ。結果を確認したあと、夜にビデオで打席をチェック。2打席目に能美篤史からきれいなライナーのセンター前ヒットを放っていた。真ん中やや外寄り低めの真っすぐを見事に弾き返した当たりだったが、前日の試合前に大石監督が「ウエスタンの数字を見ていてもむしろ左の方が打率はいいくらい。しばらく左でもいくつもりです」と話していた言葉通りのバッティングを見せた。
 その後の3打席は、阪神の勝利の方程式を形成するリリーフ3本柱と対戦。アッチソンとはセカンド小フライ、ウイリアムスからは背中に死球を受け、最後は藤川球児に対してセカンドフライでゲームセット。しかし、最後の打席でも、藤川の150キロ越えストレートにフルスイングの空振りが2つあり、そのどちらも一歩間違えばどこまで飛んでいくのか? という振りっぷりだった。

090601_okada_timery02翌日の試合でも1安打を放った岡田。しかし、東京での遠征でフォームに変化が出始める
 だから、次の東京での巨人戦では、更に、更に一発の予感を感じていた。まして東京ドームはフレッシュオールスターでも一発を放った球場で、岡田に限らず最もホームランも出やすい。少し角度がつけばどの方向へでも飛びこんでいく気がした。
 僕も行けるものなら東京まで行きたかったが、長崎へ出張。ここでも2日間にわたって携帯でのチェックとなったが、結局巨人戦は2試合とも音無し。戻って映像を見ると、初戦が5打数ノーヒット(エラーでの出塁がひとつ)東野峻、久保裕也、福田聡志、木村正太の右腕4人に抑えられた。この中で、福田から放った二遊間のシュートゴロは真芯でとらえていたが(ショート坂本勇人がファインプレー)、特に前半3人には145キロ前後のストレートと外寄りのチェンジアップ、スライダー、時にフォークを混ぜられ、前日までの豪快な振りが消えていた。同じ空振りでも真ん中からやや高めのボールを振らされた形はあったが、これは苦し紛れの感じがあり、「ひとつ間違えれば…」と思わせる低めの空振りとはかなり印象が違う。
 この時点では力のある右投手より、左の外へ逃げていくボールの方がスイングが合いそうに見えたが、翌日の高橋尚成との対戦は外のワンバウンドのフォークに崩され三振のあと、次の打席で粘ってフォアボールも選んだものの、3打席目には代打・辻俊哉が送られて交代。結果以上に内容面で思わぬブレーキがかかった。
 そして1日間をおいて迎えた27日からのヤクルト2連戦。初戦は録画、2戦目は生観戦ということで力が入ったが、初戦は由規に三振、死球、木田優夫に三振、五十嵐亮太に三振。2戦目は館山昌平にサードファウルフライ、センターフライ、死球で、最後は押本健彦にセンターフライ。結局、この2戦を含む東京遠征の4試合は15打席ノーヒットに終わり、今回の原稿が締め切り目前となった29日、岡田の2軍降格が決まった。

       

体で感じた課題を得て、再び神戸へ

 5月30~31日にスカイマークスタジアムで行われた横浜戦。もし岡田が1軍に残っていれば観戦する予定だった、奇しくもインフルエンザの影響で高校野球の近畿大会が中止になり、心置きなく神戸へ向かう準備をしていただけに残念でならない。
 しかし、最後のヤクルト戦を見たときは、正直、かなりガッカリしていた。結果にではなく、明らかにフォームが変わっていたからだ。簡単にいうと、それまでより背筋が伸び、スッと立っているような感じで、上体の動きも少なくなっていた。
 こう書くと「その方がいいじゃないか」と思われるかもしれないが、昨秋から岡田のリズムで、岡田の体の使い方に合うフォームとして作っていた形はどこへ行ってしまったのか? おそらく「上体の力を抜け」といったことを指摘されたのかもしれないが、同時にスイングから力感がまったく消えていた。これにガッカリしたのだ。

090601_okada_thankyou神宮でのヤクルト2連戦の後、2軍行きが決まった岡田。わずかな期間ではあったが、課題もハッキリした。この経験を生かして再びチャレンジの日々が続く
 ヤクルト2連戦での空振りは、広島戦や阪神戦で見せた「一歩間違えばどこまでいくのか」という怖さは全く消えていた。重心が上に上がってしまったような力のないスイングで、ボールに合わせて振っていた。バットも随分下から回っていて、それまでの形とは違っていた。巨人戦での内容が悪かったための修正だろうが、今回の1軍帯同期間でそれを直すのはちょっと難しいと思った。
 実際、今回の1軍生活では、何より岡田自身が多くの課題を感じたはずだ。今回打ったヒット4本は、左の江草の外へ逃げるスライダー、能実の外寄り低めのストレート、サイドハンド林の外寄り高めのストレート、安藤の外に落ちるフォーク。スイングが外から回ってくる印象が残ったように、外へ逃げていく球に合いやすく、中へ入ってくる球や、内角球をフェアゾーン対していい打球を飛ばそうとするとまだまだ厳しい。よく言われるインサイドアウトの軌道をもう一度身につけることを含め、もう一度、ファームで藤井コーチと続きをやるのみだ。
 僕もまた、北神戸へ向かい、今後のゴジラを追跡することになる。

      

(取材・文/谷上史朗)

次回は7月1日頃に更新する予定です。

2009-05-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第108回-

090501okada_top  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今回から月1回に凝縮した形で再スタートさせることにいたしました。
 今後とも引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては下降して悩む…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだしており、4年目となる今年に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

       

090501okada_watching1軍の試合を観戦する岡田(写真左)。視線の先にはダルビッシュ有投手(日本ハム)が…。球団の考えを理解しながらも、好調時の今、1軍で実力を試したいという気持ちがはやる

1軍に呼ばれぬ理由

 三塁走者だったカブレラが後藤光尊のライナーを右足小指に受け骨折した翌日。4月24日の中日戦の試合前に会った岡田は「昨日の夜はずっと電話待ってたんですけどね……」
と悔しそうに言った。4月28日、調子の上がらない濱中治が1軍登録を抹消された当日の夜に会った時は、溜息でも聞こえてきそうな感じで「上がりたかったです……」。 
 自身はウエスタンリーグの二冠王でファームの月間MVPも獲ろうかという好調ぶり。ましてカブレラの代わりに上がったのが山崎浩司、濱中の代わりが横山徹也。本人とすれば何ともやりきれない思いだっただろう。ただ、2度の絶好期に声がかからないということは、それが岡田に対する今の1軍首脳陣の考えということだ。聞けば、1軍スタッフの中にも岡田昇格を推す人もいたようだが、最終的には、今年はファームでしっかり数字を残し、形を固めて…、という意見が勝ったということ。
 また、最も岡田の成長を身近で見ている藤井康雄コーチも「まだもうちょっと」と慎重な考えを口にしている。今上がったとしてたまの代打起用や、1軍帯同の中で打撃フォームが崩れては元も子もないとの思いがあるからだ。ただ、本人の中には〈これだけ打っているのに…〉という思いがあって当然だろう。
 4月24日の中日戦のあと、スカイマークへ移動し、1軍のゲーム(対日本ハム)を観ていると、試合途中でファームの若手が「勉強のため」揃ってスタンドへ姿を見せた。その中にいた岡田に話かけると、視線をマウンド上のダルビッシュへ向けながら「ここでやりたいですよ…」。1軍でのプレーに今、一番求めているものは何か?
「今これだけ下で打てて、1軍にいったらどうなのか。自分のレベルを試したい、知りたいっていうのが一番です」
 仮に打てなければ、何が必要なのかを考えられる。しかし、今のままでは…。後日「僕なら(ダルビッシュとの対戦で)スライダーを狙ってましたね」と言ったが、実現の日が何とも待ち遠しい。

        

ファームでは月間7本塁打の好調ぶり

090501okada_03ファームでは4月だけで脅威の7本塁打を放った岡田(写真右)。ウエスタンリーグの本塁打記録を本当に更新するくらいの勢いで打ちまくっている

 ファームでは変わらず好調だ。本人は「練習での感じは、自分では普通なんです」と言ったが、それだけ調子の波が小さくなり、高いレベルで安定してきたということ。フリー打撃でも芯で球をとらえる確率は確実に上がった。試合前の調子と試合での結果が一致するようにもなってきた。その結果の打率.300、7本塁打、21打点(4月30日、20試合終了時点)。藤井コーチとの当初の約束「月間5本塁打」もあっさりクリアし、「もう、みんなからはウエスタンの記録でも作れって言われてるんですよ」(岡田)と、軽く自嘲気味に笑った。
 ちなみに「記録」とは96年、プロ2年目の城島健司(マリナーズ)が放った25本塁打。ファームで高い数字を残すことは、1軍に呼ばれなかったということで、選手にとっては決して喜ばしい事でもないのだろうが、その年、9月になり1軍昇格した城島も「この1年はファームで使う」というチーム方針だったのだろう。こうなれば、城島超えで歴史に名を残すのもいい。

         

090501okada_batting034月9日の阪神戦で筒井投手と対戦する岡田。このあと17打席ノーヒットに陥った

上でやっていくための課題

 好調の裏で藤井コーチの慎重な言葉にもつながる明確な課題も見えている。
 開幕からの絶好調の飛び出しのあと、4月9日の阪神戦から15日の阪神戦の第1打席まで17打席ノーヒット、直後に打率が.280まで急降下する不振があった。
 大きな原因となったのが、相手バッテリーの内角攻め。チームによって差もあるが、開幕からの猛打に内角攻めが増え始め「それでちょっと崩れました」。問題は内角を攻められた時の対応で、その頃は「どんどん打ちにいっていた」と振り返る。その結果の17タコ。ただ、「このままいったらまずいという気持ちもありましたけど、原因ははっきりしてたのでそこまで焦ることもなかったです」とも言った。
 この時は藤井コーチのアドバイスから内角を捨てることで対応した。現状ではベターな策で、まずは打てるコースの球を確実に狙うよう専念した。そこからまたバットが火を噴き出し、15日の第2打席で金村暁からライト前ヒットでトンネルを脱出すると、第3打席。「いつも僕との対戦ではスライダーばっかりなんで狙ってました」と、中村泰広の決め球が甘くきたところを捉え、右中間の防御ネットを越える超特大の場外弾。残念ながらこの一発は観れなかったが、後日“目撃者”の1人で、僕の岡田観戦を以前から知る楽天の編成担当・石山一秀氏から「そらえげつなかったわ。あのネットの上をな…」と詳しく説明を受け、その凄まじさに触れることができた。
 この3号で復活すると、19日のソフトバンク戦で4号、5号を連発。21日の広島戦でも6号、さらに観戦した24日の中日戦の初回にも中田賢一から7号。1軍ローテーション投手からの一発は価値もあったし、自信にもなっただろう。「少し内寄りの低めの真っ直ぐ」をあじさいスタジアムの右中間へあわや2度目の場外弾となる会心の一発だった。

         

090501okada_batting02090501okada_batting0124日の中日戦。第1打席で本塁打を打たれた中日・中田投手が1軍の主戦として牙をむいた。初球から厳しく内角を攻められ(写真上)、最後も内角に差し込まれてサードゴロ(写真下)。次の打席では、このときの残像を生かして外で料理された。岡田の1軍での活躍も、この内角攻めをいかにいなすかにかかっている

いい形のファウルを

 しかし、その後の打席では「本気」になった中日バッテリーに力づくで抑え込まれた。ポイントは内角だ。
 2打席目。初球から内角高めの厳しいゾーンで起こされ(ボール)、2球目も内角寄りの球を一塁線へファウル。さらに内角高め(ボール)と続けられた後、外の変化球でカウントを整えられ、最後はこの日最も厳しい内角高めギリギリ、指にかかった真っ直ぐでバットを折られた。まともにスイングさせてもらえずボテボテのサードゴロ。
 さらに徹底して内角を意識させられ迎えた3打席目。初球、2球目と岡田は大きくアウトステップし明らかに内を狙いにいっていたが、一転、外へ抜いたカーブを続けられる配球。3球目の外角ストレートをファウルしたあと、最後も外に落とされ空振りの三振。内には1球もこなかったが、内の残像にやられた完敗だった。
 試合後、本人からも「内を意識させられて狙いに行ったら抜かれました」と、その通りの答え。もちろん、インコースは多くのバッターのとって最後に残る難関とも言われる。
「内はある程度ヤマを張って狙いにいかないと打てないンで」と岡田も言ったが、思い切りアウトステップをして振りにいくような形をとっていると、バッティング自体が崩れないかという心配も出てくる。それほどバッティングとは些細なものということだ。
 自分の形を崩さず、いかに対応していくか。そこで藤井コーチは「次の段階としたら、いいファウルを打てるようになっていければ」と言った。ファウルであっても、ある程度の打球が飛ばせるようになれば、相手も「ひとつ間違えば」と考え、攻めにくくもなる。本人の頭ももちろん、そのあたりの対応へ向いている。
「内角は本当に厳しいコースにきたら打てないんで、そこは割り切って、少しでも甘くきたらもっていけるようになりたい。中日戦のあと4日試合が空いてるんで、練習でも内はポイントを前にしながら打ってみたりいろいろ試しながらやってます」

090501okada_driving01治療院で体のメンテナンスを済ませて帰途につく岡田。今後はファームでより高いレベルの課題を自ら設けながら、来たるべき1軍昇格を目指す
 厳しくきたコースはファウルにし、ボールひとつ甘くくればもっていく――。この対応力が上がれば、その時はひとつまたレベルが上がり、1軍もさらに近付いていることだろう。
 しばらくは相手バッテリーとの内の巡る攻防に注目しながら、高いレベルでの観戦を続けていきたい。

        

4月30日現在ウエスタンリーグ成績
20試合出場 80打数24安打 打率.300 7本塁打 21打点 1盗塁 6四死球 21三振

(取材・文/谷上史朗)

次回は6月1日頃に更新する予定です。

2009-04-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第107回

090401okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。『野球小僧編集部ログ』の看板記事として月3回の更新ペースで3年間続けてきましたが、4年目のスタートをひと区切りとして、今回から月1回に凝縮した形で再スタートさせることにいたしました。
 今後とも引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積んできました。これまで調子が上向いては悩み…の繰り返しでしたが、昨年秋頃からこれまでにないきっかけをつかみだしており、4年目となる今年に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお届けいたします。

         

ウエスタンリーグ開幕戦で岡田をチェック

 107回目となる今回から月1回と更新ペースが変わるため、軽いリニューアル気分で迎えた今回。その出足に何ともいい報告から書き出すことができる。岡田に感謝だ(笑)。
 3月31日、センバツ取材を1日抜け、オリックスファーム(今年からサーパスとの契約が解除となったためチーム名は1軍同様オリックスへ変更)のウエスタンリーグ開幕戦を北神戸の「あじさいスタジアム」で観戦。すると、そこで岡田がこの先の爆発を予感させる素晴らしいスタートを決めてくれたのだ。
 12時半の試合開始を前に10時過ぎに球場へ到着。ちょうど岡田がフリーバッティングを行っていたところだったが、この日も打球はライトスタンド後方にある防御ネット(最も高い位置でおそらく30メートル近くある)を揺らし、時に越えていった。このフリーバッティングを岡田ファンの読者に見せてあげたい。今はライトだけでなく、センターはもちろん、レフト方向にも放り込む数が増えてきた。確実性に比例し、本人も言っていたように飛距離も4年目を迎え更に上がってきた。
 やがてソフトバンクのフリーバッティングの時間となったところで、ネット裏で藤井コーチを捕まえ、前々回のブログでも書いた「4スタンス理論」について改めて話を聞いた。どこかのタイミングでこの理論については詳しく書きたいと思うが、岡田の場合は重心がつま先ではなく踵側、そして内側ではなく外側にある。その体のタイプに合わせたフォーム作りに昨秋から取り組んできたわけだが、例えばこのタイプは、捕手側の足をしっかり意識し、使うフォームが適している。構えた時にも左足の外側のラインから、ひざ、左の股関節、首が直線上になるように揃える。また押し手(岡田の場合なら左手)主導でのスイングや、ベルトのラインと水平な横直線での回転、グリップはやや低め、バットをやや寝かせ気味に構える…。岡田の重心の取り方に合わせた体の使い方からフォームを作っていったのだ。
 藤井コーチは「まだまだ波はあります。でも、やろうとすることは理解できているから迷わない。あとは頭にあることをいかに体を使って表現できるようになるか。でも去年とはまったく違いますし、本人とは月5本以上のホームランをノルマにやっていこうと言ってます」と、十分な手応えを口にした。

           

試合前に岡田本人をつかまえる

090401okada_battingひかえめで慎重なコメントは相変わらずだが、打撃に関する考え方は格段に進歩のあとが見られる岡田

 次に一塁側ベンチで試合前の軽食をとっていた岡田に話を聞いた。実際に見るのは宮古島のキャンプ以来、テレビでも3月頭の阪神とのオープン戦以来。ただ、もう今の岡田に大崩の心配はないので、少し“ご無沙汰”しても僕の側にも気持ちの余裕がある。教育リーグでもホームラン3本に打率も3割超え。ところが、好調キープと思い尋ねると「う~ん、まあまあです。というか、少し悪くなってたのが、ここ2、3日でちょっと上がってきたかなという感じです」と「らしい」と言えば「らしい」答えが返ってきた。ただ、調子うんぬんを語る時の基本ラインが去年までに比べれば格段に上がっている。
 4スタンス理論に取り組むようになって以降の効果について尋ねると、「今は構えもスイングも体にしっくりきてます。だから下半身と上半身も上手く連動して振れてると思うし。何より去年の秋からずっとやってきて、今も続いてますからね。前までだったら少しやって結果が出なかったりするとすぐ変えてましたから」
 だから…、つまり…、岡田の体に合ったフォームであり、スイングを身につけつつあるということなのだ。話していく中でひとつ興味のある話題があった。実は今、藤井コーチが岡田の課題として挙げたのが

①「前に行って打とうとすること」
②「回転して打とうとすること」

の2点だった。
 少し説明がいるのだが、説明すると細かく、長くなる。なので今回は省かせてもらうが、岡田はこの2点についてまだ納得(消化?)しきれていないところがあるようだった。「言われてることはわかるんですけど、そこはまだちょっと…」と自論を口にした。
 2人の主張の違いを聞きながら僕は不安になることはなく、むしろちょっと嬉しくなった。単なる否定や反発ではなく、岡田がしっかり技術を考えるようになり、自分なりの、それも今までより一歩突っ込んだ考えを口にしていたからだ。大いに意見をぶつけ合って、藤井コーチと納得いくまで話をしてほしい。その中でまた岡田の打撃論も作られていくはずだ。

        

090401_orix_lineup オリックス(ファーム)の先発ラインアップ。調整目的で1軍のメンバーが数多く出場する中、岡田が堂々4番に入る

開幕から好調の岡田

 前置きが長くなったが、開幕戦だ。
 この日は1軍入りが予想される野手6人が調整のため降りてきていたため、スタメンは写真の通り。その中で4番に座った岡田はまず第1打席で、ソフトバンクの1軍ローテ入り確実の新外国人ローからレフトへツーベース。当たりとしては「ボコッ」という感じであまりよくなかったが、レフト井出正太郎の前で打球が弾むと躊躇なくファーストベースを蹴ってセカンドへ。最後はヘッドスライディングを決めた。今年に賭ける意気込みをいきなり見せつけるようなハッスルプレーにスタンドも、オリックスベンチも大いに沸いた。
 この打席は、簡単に2ナッシングと追い込まれたあと、3球目のファウルが1つのポイントだったと思う。横から見ていたので不確かだが、外の変化球に崩されながらファウルで逃げた。今は崩されても前のように簡単に、そして不格好な形で空振りをしなくなった。同じ空振りでも相手、自軍の首脳陣へ与える印象がまったく違ってきたはずだ。
 次の2打席目はワンストライクのあとのカーブをゴロで一、二塁間へ引っ張りライト前へ。201センチの長身から低目へ落ち込んでくるカーブを初対決でとらえるのは容易ではない。ローは身長だけでなく腕も長く、本当にバッテリー間が短く見えるうえ、動くストレートが持ち味の投手。オリックスの1軍メンバーも凡打の山を築いていた。事実、ローが7回を投げきってマウンドを降りるまでに、オリックスが放った安打は4本。そのうち2本は岡田だった。
 また、2打席目のヒットの後には単独盗塁も決めた。去年の盗塁は2つしかなく、僕はアウトのシーンを2度見ただけだが、そのどちらもタイミングは間一髪。何度も書いているが岡田の足は「並」よりも間違いなく上なのだ。それにしても積極的で中盤には岡田のユニフォームは真っ黒になっていた。

        

過去最高の「きざし」感じる4年目へ

090401okada_homerun4打席目に3点本塁打を放ち、ハイタッチで迎えられる岡田。このシーンを今年は何回みられるか?

 3打席目は外に逃げる、おそらくツーシーム系の球に空振りの三振。これはなかなか厳しいボールだったが、最大の見せ場は第4打席。走者2人を置いた場面でソフトバンク2番手・内田好治(育成枠)から右中間へ高々と上がる3ランを放ったのだ。かなり高く上がった打球は普通のバッターならスタンドまで届かないと思える角度だったが、岡田の場合はこういう打球が本当に伸びる。バットがボールをとらえた瞬間の衝撃の大きさはもちろん、スイングが良くなったことで打球へのスピンの掛かり方も良くなったのかもしれない。
 最後は1点を追う最終回、1人出ればランナーがたまって5打席目が回ってくるところだったが、スタンドの「岡田に回せ!」の声は届かず途中出場の長田のサードゴロでゲームセット。

 それにしてもこれ以上ない滑り出しだ。こんな開幕戦はもちろん4年目で初。試合前、僕は岡田に「今年は下で実績を作って、来年はスタートから1軍で…」と言った。すると本人は「そんな先のことまで考えてないです」と、返ってきた。当人とすれば1日も早く1軍で、ということなのだ。
 ただ、調子がよく、ファームで結果が出ればでるほど現状にはフラストレーションがたまるだろう。そこでいかに腐らず、自分を磨けるか。鬱憤をパワーに変え、自らに挑戦するシーズンとしてほしい。

      

(取材・文/谷上史朗)

次回は5月1日頃に更新する予定です。

2009-03-23

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第106回

090323okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。この春でひと区切りつけるつもりでしたが、いつのまにやら『野球小僧編集部ログ』の看板となったこの連載をやめるのは惜しいということで、次回からペースを月1回に凝縮した形で再スタートさせることにいたしました。これまで、熱心にご拝読頂いたみなさまへの感謝の気持ちを忘れずに、今後とも一層面白い内容目指して頑張りますので、引き続き応援頂ければと思います。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。仕切り直して4年目となる今年の急成長に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお楽しみ下さい。

    

助っ人の穴埋めによる1軍出場が続く

R_f_l助っ人カルテットの中からローズ(左)、フェルナンデス(中)、ラロッカ(右)。主要なオープン戦では、仲良く元気に出場しているが…

 今回の更新日となった23日、岡田は1軍へ合流し、宮城で楽天との試合を戦っていた。このパターンは前回の記事でも書いた10日に姫路で行われた楽天戦と同様、助っ人4人衆が遠征に帯同しなかったから。寒い宮城を嫌った彼らに代わっての限定出場だ。
 結果は5番ファーストで出場し5打数1安打、2三振。同じく「代役」でサーパスから呼ばれ4番で出場し、逆転満塁アーチを放った濱中治のようにはいかなかった。助っ人の穴埋め出場だけでは、打っても1軍は見えにくく、本人の気分もなかなか上がってこないだろう。
 ただ、ウエスタンリーグの開幕(3月31日、対ソフトバンク北神戸)も迫る中、教育リーグでは依然好調キープのようで、3戦目から6試合連続ヒット中で(4試合連続マルチ安打含む)、その間の打撃成績は23打数10安打、1本塁打、8打点。教育リーグの通算打率も3割に乗った。もっとも、対戦相手の中にはパナソニック、大和高田、茨城GGといった社会人、クラブチームも3つ。
 中にはハイレベルの投手もいるとしても、今の岡田の状態を思えば、どんどん1軍レベルの投手と対戦し1軍の球筋、1軍の配球を味あわせてやりたい。

      

世の状況を反映する寂しい話

 それにしても…。
 最近のオリックスで、話題になるのは助っ人だけ。これでは開幕を前にしながらなかなか気分が盛り上がってこないBsファンも少なくないのではないか。勝つに越したことはないが、「今年限り」「1、2年限り」という姿が見え見えのチームを心の底から熱く応援するのはなかなか難しい。ましてや、その外国人もチームで「育った」という選手ではないのだから。
 少し前、ある場所でオリックスの関係者と一緒になり雑談をしていた時のこと。僕の岡田取材を知っていたその人は「キャンプは行った?」と聞いていきた。そこで岡田の変身ぶりと紅白戦で観た一発を伝えたのだが、その人はキャンプ訪問ができなかったと言った。実はオリックスは今年、経費節減の一環としてスカウトを始め一定の球団関係者のキャンプ訪問を取りやめたそうなのだ。今はプロ野球界のみならず、どこも厳しい経済状況にあるとはいえ、何とも寂しい話だ。
 しかし、その話を聞いてまた思った。
 そういう状況ならなおのこと、助っ人を4人も並べるチーム構成はどうなのか、と。その人は「それだけ今年に賭けてるんでしょう」と寛大な心で話していたが、岡田ならわずか年俸690万! 全員合わせて7億4700万の助っ人カルテットに比べ、どれだけ格安で、しかもファンの期待を膨らませられるか…。
 状態が確実に良くなっているだけに、今は岡田を考えると、つい「そのあたり」への愚痴になってしまう。

       

090323nakata高校時代に投手として強烈なバックスクリーン弾を浴びている中田は、岡田の飛距離を認めるひとり

中田翔がコメントした岡田評

 今いくら言っても仕方ないので話題を少し変える。
 少し前の話になるが、キャンプ取材の中で日本ハムの中田翔に話を聞く機会があった。『野球小僧』4月号の取材で、発売中の雑誌の中でも少し書いたが、インタビューの中で12球団の将来有望なスラッガー候補について中田に聞くという試みがあった。
 事前に用意した資料に12球団から編集部がピックアップした候補30人を並べ、中田に印象や感想を求めたのだ。すると、こと「長距離」という点ではこだわりのある中田からはなかなか「この人は!」という言葉は出てこなかった。
 その中で、唯一口調が変わり、「この人はすごいですよ!」と言ったのが岡田だった。
 大阪桐蔭高校時代に投手としても活躍した中田にとって、夏の大阪府大会準決勝で岡田に打たれたバックスクリーンへの一発が強烈に残っている。

「ピッチャーライナーかと思って手を出しそうになったら、そのままバックスクリーンまで飛んで行ったんです」
「センターの平田さん(良介/中日)が前にきて、慌てて戻ったらそのまま弾丸で入っていったんです」

 さらに昨秋、フェニックスリーグで3年ぶりの再戦を果たした試合で、再び岡田のパワーに触れ「フリーバッティングでも飛ばしてましたよ。この人はマジすごいです、ほんと飛ばしますから」と、横に座っていた日本ハムの広報にまで岡田の凄さを伝えていた。
 いろんな意味で「あの中田」がこれだけ素直にこれだけ認める岡田は、やはりそのクラスの選手なのだ。

     

10年に1人出るかどうかの「本物」

090323okada_batting今年はサーパス(2軍)からの出場が濃厚の岡田。だが、早い段階で1軍に上がりたい

 また、改めてその一覧表を見ながら思ったのは、「これからの若手」とう目線で見れば、本物の長距離砲になれる素材の選手はほとんどいなかったということ。例えば、今、アメリカではWBCが行われているが、小笠原道大、福留孝介、稲葉篤紀、あるいは村田修一まで入れてもいいかもしれないが、その意味でのスラッガー候補は見つけることができる。しかし、松井秀喜や清原和博になれる素材と言えば、本当にこの岡田と中田くらいしか見当たらなかった。
 なかなか生で、それも芯で完璧にとらえた打球を見る機会がないと、「ホントにそこまで?」と思うだろうが、好調時のフリーバッティングを見られれば、必ず納得してもらえるはずなのだ。
 今触れたWBCでは、原稿を書いているこの日に日本がアメリカを下して決勝進出を決めた。日本の戦いは素晴らしいが、ただ、ひとつ物足りないのは、やはりバッティングの迫力。日本のスタイルはスタイルとしても、一方で国際舞台で技とスピードを見せるだけでなく、パワーでも誇れるところを証明してほしい。
 そんな夢を思っていると、やはり岡田の顔が浮かんでくる。過去3年間、1軍でのホームランがゼロの選手に何とも過度な期待かもしれないが、オリックスのレギュラーはまず第一歩として、その先にジャパンの4番といったデッカイ夢も見たくなってきた。

 話が壮大な方向に広がったところで、ひとまず今の形(10日ごとの更新)での最終回としたい。
 リニューアルとなる4月1日の更新では、センバツ取材の合間を縫って観戦レポートを伝える予定。

 これからも、ぜひともご愛読頂けたらと願う次第だ。

      

(取材・文/谷上史朗)

次回は4月1日です。以後、月1回の更新で連載していく予定です。

2009-03-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第105回

090311okada_top  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。この春でひと区切りつける…と、筆者の谷上史朗氏がすでに宣言してる連載ですが、ちょっと展開が変わってきたようです。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。仕切り直して今年の急成長に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお楽しみ下さい。

     

「ナニワのゴジラ奮闘記」4月からも継続が決定!

 まず、初めに今後の「ナニワのゴジラ奮闘記」についてのお知らせがあります。当初、開幕時期をメドに連載を一区切りするつもりにしていましたが、月1回のペースに変更し4月からも継続することになった。
 キャンプからの岡田の好調に影響されたのが一番の理由。ここまで丸3年、100回を超える記事を書いてきて、今が一番の好調期だというのに、このタイミングで終了するのがどうにも惜しくなってきたというわけだ。
 今年が岡田にとって大きなターニングポイントとなるのは今の姿からも間違いなさそうで、その1年を記事に出来ないことは後に大きな後悔を残すと思い、編集部に継続を申し出て了解してもらった。
 ただ、更新回数については減らす予定。その分、内容的にはより中身の濃いものにしていきたいと思う。基本的には毎月1日に更新の予定(土日を挟む場合はその翌日)。今後も気にかけて覗いてもらえれば幸いだ。

         

現在の岡田の状況

 お知らせはここまで。さて、前回更新以降の岡田はと言うと…。チーム方針とすれば当初の予定通りというべきだろうが、現在はサーパスへ降格となり、教育リーグを戦っている。
 高知での阪神2連戦のあとのファーム行きは、去年とまったく同じパターンだが、岡田の状態は大きく違っている。それだけに本人にとってはモヤモヤとしたところもあるかと思うが。
 ただ、今のチーム状況を見るとさすがに厳しい。言わずと知れた助っ人4人衆が揃っているからだ。チーム構成を考えると、「打つ人」である岡田は「彼ら」とタイプ的にどうしても重なる。むしろ僕が今の1軍のメンバー構成や起用に感じる不満は、どうしても過去の実績重視で、そういう選手にチャンスを与え続けていると感じる点だ。

090311rhodes今年のオリックスはローズ(写真)、カブレラ、フェルナンデス、ラロッカと強打者ぞろい。タイプ的にもポジション的にも全員が岡田と被る

 ベテランと若手と同じ力ならこの時期どっちを使うのか。監督の考え方ひとつだが、例えば濱中治にこれだけチャンスを与えるなら、岡田にも…、岡田をもっと…、と思ってしまう。
 ただ、今年は個人的にバッティングを伸ばすことに全精力を傾けてほしいと思っているが、もし岡田に1軍レベルでアピールできる守備力があったなら、今の立場も大きく変わっているだろう、ということは確か。本人も守りの面の課題は感じているし、大石大二郎監督からも外野守備面の指摘を受けた、という話をあるところから伝え聞いている。
 大石監督としても、〈お前がしっかり外野を守れたら…〉という思いだったのでは? と思うが、だとするなら、ひとつ思うのはファームでの起用法だ。この教育リーグでも4番ファーストでの出場が続いているが、1軍でのチャンスを考えるなら、もっと外野での起用を増やしてほしい(途中から外野に回ることはあるが)。やはり実戦に勝る経験はないのだから、試合の中で大いに鍛えていってほしい。

         

今にみとけ! の精神で

 教育リーグでの打撃成績は、次の通り。

 3日、対阪神(鳴尾浜)4打数ノーヒット 1三振。
 7日、対ソフトバンク(雁巣)3打数ノーヒット、2四死球。
 8日、対広島(由宇)4打数2安打3打点、1三振。

 8日の広島戦では、初回に牧野塁からライトへ3ランを放っている。教育リーグとはいえ、早い段階で一発が出ると見ている側も安心する。
 それにしても今年はかなりのペースでホームランが出るのではないか。イメージとすれば3試合の1本以上のペースで量産してほしい。
 教育リーグ第1号の2日後、岡田は急遽1軍のオープン戦(対楽天)に出場した。僕は事情情報を持っておらず、当日、岡田の父・秀和氏からの連絡で知ったが、3番ファーストで出場し、結果は4打数1安打、2三振、1四球。開催が姫路球場ということもあり、助っ人カルテットが不参加。そこでの起用だったが、チャンスをもらえること自体は嬉しく、燃えていかなければいけないが、結果を出しても、おそらく開幕ファームの予定は覆らないことは本人とすれば辛いところだ。
 若手の頃は多かれ少なかれ、こういった起用、昇格を巡るモヤモヤと選手は格闘する。ファームで1年目から首位打者を獲得する図抜けた力を見せながら、初めの2年は1軍に定着できなかったイチローの話はあまりに有名だ。

090311_wbc_2今年のWBC第1ラウンドで打席に入るイチロー。この希有な天才であっても、プロ入り数年は1軍に完全定着とはいかなかった

 昨年のホームランキング、中村剛也も2年目にイースタンで22本塁打を放ちホームラン王を獲得。4年目には1軍でも22ホーマーを放ったが、そこからの2年は途中交代や途中出場を繰り返し、本人的にはかなりストレスのたまる時期だったと聞いたことがある。それが昨年、渡辺久信新監督のもとでの起用がハマり、46本塁打でパ・リーグのホームラン王になった。イチローにしても故仰木彬氏との巡り合わせが何より大きかったが、不遇な時期を経験した悔しさが、飛躍の力になったことも確か。岡田も去年までとはまた違うレベルの悔しさを今は大いに味わい、爆発の力に変えてほしい。今に見とけ! ということだ。

         

実はそういう自分も…

 いつもここで岡田に言葉を送りながら、自分に言い聞かせているような時もある。僕もライター業界ではまだまだ上に多くの人がいる立場でもあり、岡田の状況と似ているところもあるからだ。
 今回の更新日となる11日は、当初、アメリカへ向かっているはずだった。WBCの第2ラウンド、決勝ラウンドを取材する予定があったからだ。ところが、某社が行った取材申請の段階で発行される取材証の枚数に限りが生まれ、結果、僕が「落選」することになった。実績十分のベテランライターは予定通りアメリカへ向かう中、悶々とした気分を味わうことになった。
 岡田のブログには関係のない話だが、僕の岡田への思い入れは、言わばまだ1軍半の自分の立場を重ね合わせているようなところもあるということだ。僕も岡田も誰も文句が言えないくらいの力をつけていくしかない。
 というわけで、この先も思い入れたっぷりに岡田に追っていくので、読者の方々には、引き続きよろしくご愛読頂けたらと思う。

         

(取材・文/谷上史朗)

次回は通常通りの更新ですが土日を挟むため23日(月)となります。そして、4月1日以降、月1回の更新で連載を継続していく予定です。

2009-03-02

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第104回

090302_okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。この春でひと区切りつける…と、筆者の谷上史朗氏がすでに宣言してる連載ですが、それを知ってか知らずか本人の調子がここへきて急激に上昇してきました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。仕切り直して今年の急成長に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお楽しみ下さい。

     

★岡田、まだまだ好調をキープ中

 宣言した3月一杯での終了まで、残すところこのブログも今回を含めてあと3回。岡田の活躍がかなり楽しみになってきたので僕の気持ちも揺れているが、ひとまず目の前の更新に集中――。
 と、言いながら実は今回は更新が僕の都合で遅れてしまい、特別に編集部に日を遡って更新の措置を取ってもらった。21日が日曜日だったので22日から覗いてくれていた岡田ファンのみなさん、すいません。

 また、当初は28日の阪神とのオープン戦初戦を高知まで観戦に向かう予定にもしていたが、こちらも時間確保が難しくなり断念。
 しかし、夜のCS放送で確認したが、センターからのカメラで見ると、その好調ぶりを再確認。去年までとは別人の形だ。2打席目にリーソップからライト線へタイムリーツーベースを放ったが、まずこれが素晴らしかった。148キロの高めの真っすぐをファウルしたあと、追い込まれながらやや外寄りのチェンジアップを上体の突っ込みを下半身で我慢して、粘って、粘ってバットの先で拾って運んだ。
 タイツ先生が岡田の改善ポイントとして股間節の動きを挙げ「そこに問題があるから打ちにいくと我慢できない。体が流れてしまう」と指摘していたが、この一打を見せてあげたかった。
 いやあ、決してオーバーではなく、ああいうボールにあれだけ我慢して対応したバッティングは4年目で初めて見た。この一打で僕の評価もさらに、さらに上がった。この形がキープできれば1軍で使い続けても2割7分、25発は可能じゃないかと贔屓目じゃなく思った。それくらいインパクトがあり、成長を感じる一打だった。

090302_okada_batting_宮古島、高知と好調を維持している岡田。いよいよ開幕一軍の可能性が出てきた

 あとの3打席はライトフライ2つに三振だったが、まったく悪くない。江草仁貴得意の外角低めへのスライダーに対して、振りにいきながら最後に止まって「ボール」。この日、2度目の驚きだ。
 あのコースにきたサウスポーの、ましてキレのある江草のスライダーを見極められるとは。去年までの岡田ならアッサリ三振だったはずだ。最後は、ほぼ同じコースのスライダーにバットは空を切ったが、それでも格段の進歩。使ってくれれば2割8分、3割も可能かもしれない(笑)。
 でも、僕が思っていたより遥かに上のレベルに来てきたことを再確認。いやあ、本当に楽しみになってきた。

       

★ここまで変わった岡田のフォーム

 ここからは、今回のキャンプ取材で仕入れた話をひとつ書かせてもらう。
 岡田の今の好調は、以前のレポートでも触れた通り、昨秋からの取り組みの成果だが、練習量に加え、岡田に合ったフォーム作りが実を結んだ結果である。
 高校時代のバッティングを知っている人が、今のフォームを見たら極端に言えば「別人じゃないか」と思っても不思議ではないくらい変わった。スタンスは広く、ややオープン。重心はグッと下がり、タイミングの取り方も変わった。落合監督ばりの「神主打法」とまでは言わないが、一度バットヘッドをベース上でブルッと振ってサッと構えに入る。そして上体をピッチャー、キャッチャー方向に軽く揺らしながら、クッと一瞬、上体を「クイッ」と軽く屈めるようにバットを引きトップへ。
 ここは前回のレポートで紹介した宮田隆編成部長曰く「ちょっと王さんを思い出した」という形だ。

 そんな形が岡田のリズムにも合っていただろうが、決して表面から作ったのではない。体の使い方に合ったフォームを求めた結果、今の形になったのだ。
 その導き役となったのが藤井コーチだ。岡田のプロ1年目も藤井コーチはバッティングを指導していたが、当時は岡田のレベルもまだまだだっただろうし、理解力の問題もあっただろう。一瞬いい状態が見えてもすぐに消えていた。そして、2年目に期待と思っていた矢先に藤井コーチがスカウトへ配置転換となった。
 しかし、今となってはそこから2年の時間が、2人にとって良かったのだろうと思えてきた。岡田も苦しみながら、バッティングについて深く考えるようになっただろうし、数字的には物足らなくてもレベルが上がったのは確か。

       

★藤井コーチの経験

090302_fuji_岡田を見守る藤井康雄コーチ(写真左)。スカウトや編成時代の経験はコーチ復帰後の指導に確実に生きている

 一方で藤井コーチもこの2年の間、コーチ、スカウト、編成担当と1年ごとに部署が変わり、慣れない仕事と格闘しながら、バッティングの勉強も怠らなかった。
 宮古島で会った時にこんなことを言っていた。

藤井 コーチからスカウトになった時は、いろいろ理由はあったでしょうけど、結果としてはクビですよね。お前じゃダメだと言われたんだ、と僕は取りました。だったら、もう一回、自分なりにバッティングを勉強して、もっと選手の力を引き出してやれる指導を身につけたいと思ったんです。

 そして“勉強”した。
 自分の中に蓄積されてきた打撃論をもう一度整理し、さらに無用なプライドは捨て、人に話を聞き、技術書も読み漁った。中には、首を傾げるものもあったし、自分のこれまでの考えと合うものでも、まとめ方や表現の仕方がスッキリとし「なるほど」と気づかされることがあった。
 そんな中で、これまで感覚的に済ませていた部分を理論的に語っている一冊として興味を持ったのが「キミは松井か、イチローか。」(廣戸聡一著 池田書店)。目にした人もいるかもしれないが、著書の中では「4スタンス理論」という考えの下、人間の体のタイプを重心の取り方によって4つに分類。そのタイプにあった体の使い方をすることでバッティングの結果も大きく変わってくる、と書いている。
 重心の取り方とは「つま先」「踵」「外側」「内側の」をポイントにこれらを組み合わせて4つに分ける。岡田の場合はイチロータイプではなく松井と同じ「踵重心」(外側か内側かは藤井コーチに未確認)のタイプで、それに適したバッティングの中での体の使い方が書かれている。この形を秋から求めていったというわけだ。

        

090302_4stance_logic_3藤井コーチが興味を持った「キミは松井か、イチローか。」

★体の使い方

 キャンプ出発前、岡田に話を聞いた時、「藤井さんが前の時よりも体の使い方とかを凄く言われるようになって、それがわかりやすい」という話をしていたが、まさにこのあたりのことだったのだ。
 それこそ僕も、岡田にDVDをプレゼントしたタイツ先生をはじめ、体の使い方からプレーを考えることへの興味がどんどん広がっている。だからこそ、去年までの岡田を見ていると、もっと滑らかに体が動きくようになれば、確実性もアップし、飛距離も増すのに…といつも思っていた。岡田本人も、たとえば自分の体を知りつくしているイチローとの自主トレで、その「差」を痛感していたはずだ。
 しかし今回、岡田の成長のカギを握っているといっていい核心部分に、藤井コーチが踏み込んできたというわけだ。
 また、藤井コーチが素晴らしいのは、本の中だけでなく、オフには実際に著書の廣戸聡一氏の元を訪ね納得くまでレクチャーを受け、しっかり、自分の中で消化し選手に伝えていることだ。決して上辺をなぞっただけの教えではない。

           

★今後の道筋

090302_okada_difense_ここまで調子が続くと、1軍への希望が現実的に湧いてくる。今後、オープン戦でも結果が残せるか?

 さあ、ここからの実戦でどんな活躍をするかだが、ことバッティングに関しては1軍に入っておかしくないレベルにある。あとは大石監督の考え方、決断次第。ただ、早く1軍で活躍を見たいと思う反面、タマの代打で登場するくらいなら、今の形や動きを自分の体に染み込ませ、頭の中でしっかり理論を理解できるまで、藤井コーチとマンツーマンで作り上げていくのもひとつの手だと思う。
 1軍の水口バッティングコーチ云々ということではなく、岡田に関してはここまでの流れから藤井コーチにできるだけ託したい(現役時代は小さい体ながら、スイングはいい意味で大きく、とらえた時には結構な飛距離も出していた水口コーチの指導にも大いに興味はあるが)。
 なにせ、これだけいい状態で実戦へ入っていけるのは初めてのこと。流れを失いたくない、と僕の頭も慎重にもなる。

 気づけばかなり長くなった。
 またの機会に「4スタンス理論」についてさらに深く、岡田にも藤井コーチにも聞いていきたいが…。そのまたの機会がいつになるか。残りはあと2回。その区切りまでには難しいだろう。
 岡田好調の裏で今後、いかに岡田を追いかけていくか。悩めるところとなってきた。

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は3月11日頃の予定です。

2009-02-23

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第103回

090224okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。この春でひと区切りつける…と、筆者の谷上史朗氏がすでに宣言してる連載ですが、それを知ってか知らずか本人の調子がここへきて急激に上昇してきました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。仕切り直して今年の急成長に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお楽しみ下さい。

        

宮古島へ

 沖縄キャンプ取材中の16日、朝7時過ぎの飛行機で那覇から宮古島へ飛んだ。
 そこでまず、どっちへ向かうか考えた。といういのも、今年からオリックスは1軍は従来のまま宮古島市民球場で、2軍はそこから車で約15分の下地球場でキャンプを行っている。つまり、岡田はどっちにいるのか? ということだ。
 紅白戦では1軍メンバーに入ってはいるが、正直1日の動き方がよくわからない。そこで、ひとまず平良の宮古島市民球場に向かった。
 球場に着いてみると、あまりに到着が早すぎたためにほとんど誰もいなかったが、やがてその日の練習メニューが載ったプリントが到着。岡田は下地からのスタートで、午後の紅白戦から市民球場へ合流することが判明した。となれば、僕も1軍のアップ開始を見終えたところで下地へ移動。こちらはちょうどバッティング練習へ移るところだった。

 グラウンドへ出ると昨秋から現場復帰の藤井コーチが目に入ったので、まず挨拶。早速、岡田の状態について「いいみたいですね」と話を向けると、やや苦笑い気味に「う~ん、まだ安定してないところあってね」と返ってきた。
 紅白戦の2連発など伝わってきていた結果からすると、案外な反応にも思えたが、それだけ周りが求めるものが高まっているということだろう。
 ただ、期待満々で見たフリーバッティングの感じは確かにイマイチ。特にマシンのボールに快音が少なく、もしや調子落ち? と、イヤな予感がよぎったが、その後、昼食時にベンチ裏で捕まえた岡田の言葉を聞いてちょっとホッとした。

        

090224okada_smail宮古島でもいい雰囲気を維持していた岡田。ここまでは、本人も納得のいくアピールができている

少しはアピールできたかなと思います

――フリーバッティングではあんまりタイミングが合ってなかった?
岡田 ここはボールが見にくいんですよ。特にマシンの後ろが見にくいから、いつもこっちではこんなもんなんです。
――ということは好調はキープのまま?
岡田 まああまあですね。
――紅白戦でも2戦連発、「絶好調です!」みたいな感じかと思ったけど。
岡田 ホームランは風にも乗ったところもありましたし、まあまあです。
――報道では豪快な一発! て書いてあったけど。でも、やっぱりホームランが早くに出て、それも続くと気分的にホッとするところも?
岡田 ホッとしたというより、いい出足ができて少しはアピールできたかなと思ってます。
――今日も午後から紅白戦やし、引き続きアピールせんと。
岡田 雨が降りそうでそれが…。できますかねえ。試合のあとも特打のメンバーに入ってるんで降ってほしくないんですけど。

 下地での“不調”はまったく意に介していないようで、“向こうに行けばもっと打ちますよ“とでも言っているかのよう。やはりこれまでとは違う雰囲気を感じる受け答えだった。
 その後、12時半過ぎに迎祐一郎、山崎浩司、相川良太らとワゴン車に乗り、宮古市民球場に向け出発。僕も間もなくタクシーであとを追ったが、出発時にすでに降り出していた雨は、道中で一気に激しさを増し、完全に紅白戦の中止を覚悟した。
 ところが、球場にほど近くなると雨は小雨から霧雨に変わり、地面を見ても少し湿った程度。タクシーの運転手が「このあたりはほとんど降ってないね。沖縄ではよくあることで10分も走ればもう別のところだから」と言った特有の気候に救われ、紅白戦は予定を30分余り早め13時15分過ぎに無事スタートした。

      

紅白戦3発目はセンターへ度肝を抜く当たり

090224okada_batting9番ファーストで出場した岡田はこの日の紅白戦でこのキャンプ3本目となる一発をセンターに叩き込んだ 

 岡田は白組の9番ファーストで出場した。
 5イニング制のため打席はおそらく2回。少なければ1打席かもしれない。なんとかその中でいい形のバッティングを見たいと、期待しての第1打席。紅組先発のボーグルソンにツーナッシングとあっさり追い込まれるが、続く高めストレートを捕らえた打球はセンター前へ。痛烈なライナーで弾む会心のヒットだ。
 この打席は三塁側のベンチ横から見ていたが、高めの真っすぐに対してきれいに上からバットを出していた。元来、岡田は低めに強い。それがボーグルソンの力のあるストレートをしっかり叩いた内容に早くも確かな成長を感じた。
 そして、2打席目にやってくれた。
 マウンドには3年目の成長株、仁藤拓馬。カウント0-3から1球ファウルのあとの5球目。今度はネット裏下の記者、関係者席から見ていたが、外寄りのやはりやや高めのストレート。これをセンター左へ持っていった。打った瞬間は左中間突破のツーベースをイメージしたが、打球はそのままグンッと延びてあっさりフェンスオーバー。僕のすぐ近くには小林晋也編成担当らもいたが「おお…」としばらく見入ったあと「飛ぶねえ」とひと言。
 軽くとらえたように見えて、見た目以上に伸びるのが岡田の打球なのだ。また、センター中心の伸びはやはり岡田の好調時のシグナル。それにしても来た甲斐があった。ナイスバッティングだ。

    

昨秋から取り組んでいる形が好調の要因

 試合後に行われた特打でも午前中の予言通り、下地とは別人のように快音を連発。途中、お気に入りのバットが2本も折れるアンラッキーもあったが、それでも実に気持ちよく飛ばしていた。
 その特打が終わると、今度は「岡田待ち」で残っていた記者に囲まれベンチ裏で取材がスタート。
 記者から好調の理由を尋ねられると「自分でもびっくりするくらいです」。爆発の予感は? には「まだそんな…」と謙虚な受け答え。宮古島から高知へ移っての1軍キャンプに大石監督が帯同の可能性を示唆したと聞くと「ほんとすか?」とちょっと嬉しそうな表情を見せた。
 あとは好調の理由を重ねて尋ねられ、「軸作り」「体幹」といった言葉を交えながら秋からの取り組みを語っていた。その輪が解けたところで、岡田を捕まえ単独取材を開始。

090224okada_intervew練習試合後、囲み取材を受ける岡田。1軍帯同の話を聞くと、思わず頬をゆるめた

――2本ともよかったなあ。打席の中で安定して見えた。
岡田 前とタイミングの取り方が思いきり変わったじゃないですか。今までならいろいろ変えてもちょっと経ったらまた変わったりしてたんですけど、今回はフェニックスからずっと続いているんでやっぱり自分に合ってるんだと思います。
――確かに変わったな。(*足を大きく上げることはなくなり、スタンスを広く、上体を軽く揺らしながらタイミングを取る。そこからトップへの流れもやや上体を丸めるようにした状態から体が割れスムーズに入っていく。この動きを見た宮田隆編成部長は「ちょっと王さんを思い出した」とも)フェニックスの時は今ほど極端ではなかったと思うけど。
岡田 フェニックスの最初はどうだったですかね。でも、今のが自分にすごく合ってると思います。
――高知は行けそうやな?
岡田 どうですかねえ。でも、また(状態が)落ちる時もあると思いますけど、これまでみたいにそこまで極端に落ちることはないと思います。
――今日の2本はどっちも高目やったけど、高めがさばけるようにもなった?
岡田 前は高めがきたら上から叩こう、叩こうって思ってたんですけど、今は前で払うって感じで振ったら体が勝手に回転していくんです。
――勝手に反応する、と。そして、見た目以上に飛ぶよなあ。あのホームランも打った瞬間は抜けたとは思ったけど。
岡田 でも、今日のはこれまで3本の中では一番手応えがありました。押し込めるっていう感覚もちょっとわかるようになってきたところもあって、結構、自分でも飛ぶようにはなったと思います。
――タイツ先生のDVD効果も?
岡田 あのDVDはほんと面白かったですよ。いろいろ参考にもなりましたし。
――今日のバッティングを見てますます楽しみになってきた。
岡田 あとは守備ですね。

       

とにかく打って目立て!

090224okada_batting02水口栄二コーチ(写真左)や番組ロケで訪れたお笑い芸人のたむらけんじ(写真右端)らの前でフリーバッティングをする岡田。「たむけん」も驚きの飛距離!?

 最後の一言はバッティングへの手応えの裏返しでもあったのだろうが、岡田の1軍昇格への課題は常にバッティングだ。特に今年の場合、ここから、スローイングも含め守備面が大きくアップすることは難しい。それよりもとにかく打って、目立って、1軍枠に入る以外にない。
 後日、正式に岡田の高知キャンプへの参加が決まった。22日現在の紅白戦での成績は10試合の出場で16打数8安打9打点、3本塁打。まさに文句なしの数字だ。28日の阪神戦では「4番ファースト」での出場も噂されているが、引き続きバットでアピールし、指揮官の考えを大いに揺さぶってほしい。
 開幕1軍の可能性は極めて少ないとしても、結果を積んでいけば、シーズンのそう遠くないところで必ずチャンスは巡ってくるに違いない。

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は3月2日頃の予定です。

2009-02-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第102回

090211okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。この春でひと区切りつける…と、筆者の谷上史朗氏がすでに宣言してる連載ですが、それを知ってか知らずか本人の調子がここへきて急激に上昇してきました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。仕切り直して今年の急成長に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお楽しみ下さい。

           

予告通りの好調ぶり

 12日の夜から今キャンプ2度目の沖縄入り。今回は楽天、阪神、阪神、日ハムの取材で、オリックスキャンプ取材の話は残念ながらない。しかし、合間に1日でも時間を作って本島から宮古へ飛ぶつもり。今回は行かないわけにはいかないだろう。前回、このブログでも“予言”した通り、岡田がいい感じの爆発を見せているからだ。
 翌日に沖縄出発を控えた11日。日刊スポーツ(大阪版)の一面はオリックスだった。日頃はトラ一色の中、一体何事かと思えばメインは清原。今年から評論家となった清原が12球団のトップを切り、オリックスキャンプを訪問。そこで、紅白戦初登板で好投した小松と揃い、デカデカとしたツーショットが載っていたというわけ。
 しかし、僕の興味は清原の評論家デビューよりも紙面の隅に、ほぼ結果のみで載せられた紅白戦の結果にあった。

 特別ルールの5イニングで行われた一戦に、白組の9番ファースト(野手は両チーム10人出場)で出場の岡田が菊地原毅から2ランを放っていたのだ。それに関する記事もコメントも載っていなかったが、キャンプ出発直前に手応えを口にしていた本人のコメントを思い出させる一発に、「好調キープ、好調キープ」と喜んでいたところ…。
 今度は夜。ネットで各キャンプの速報記事を確認していると、そこに「レスター初登板岡田に被弾」なる見出しを見つけた。
 また打った! 2試合連発だ。
 短い記事は岡田よりも打たれたレスター中心だったが、その中に「岡田に豪快な2ランを許した…」という記述があった。同じ1本でも、首脳陣へ与えるインパクトは大切。「やっとこさ」や「風に乗った」より「豪快」な方がいいに決まっている。
 そこから球団のホームページに飛ぶと、紅白戦の結果を振り返った大石大二郎監督の「打つほうでは、岡田(2試合連続ホームラン)の長打力。すごく魅力がありますね」というコメントがあった。
 紅白戦とはいえ、限られた打席の中での2試合連続弾は見事。こういうところで結果を出せるようになったことに、技術プラス精神面での成長も感じる。ますます、観戦が楽しみになってきた。

         

090211okada_oishiいきなりの2試合連続弾を大石監督(写真右)はどう評価するか? ただ、岡田(写真左)自身は周囲を気にすることなくプレーに集中して欲しい 

あと数日振り分けが遅ければ…

 ただし、この打棒爆発は、大石監督が1、2軍メンバーの振り分けをすでに発表したあとだった。キャンプスタート時25人だった野手は20人(外国人4人を含む)となり、これが当面の1軍メンバーとなるらしい。岡田はスタート時の25人にも入ってなかった。
 今年のオリックスキャンプはターンオーバー制。2軍メンバーも1日交代で1軍キャンプに参加していた。岡田はその流れの中で1軍でプレーしていたに過ぎない。振り分け発表後はしばらく体制が変わらないらしく、岡田の爆発はその中で見せたものだった。振り分けの発表がもう2、3日遅ければ…。それが岡田ファンの正直な気持だろう。
 しかし、ここを嘆いても仕方ない。岡田はとにかく、人の評価ではなく、自分の中に基準を持ち、自分自身と大いに戦ってほしい。そして、この先は教育リーグでもオープン戦でもとにかく実戦の中で結果を残していくのみだ。

        

この機会にぜひ「コレ」というものをつかんで欲しい

 沖縄出発の当日。12日朝の日刊スポーツ(大阪版)には、14行ほどの短い内容ながらしっかり岡田の記事が出ていた。
 「ミニラがゴジラ」という小見出しの中には、大石監督の「ミニラだったのがゴジラのゴの字くらいになったかな。日本人ではケタ外れの飛距離」というコメントも。ちなみにこの試合では、紅組の1番ファーストでの出場。バックスクリーンへの豪快な一発以外に、センターオーバーの3ベースも放っていた。
 24日から高知に移って行われる2次キャンプあたりで、1軍帯同にでもならないか? と思ったりもするが、そういう“瞬発力”は大石監督にはあまり感じないので、なかなか難しいところだろう。
 確かに、今のオリックスの野手陣は粒揃い。現段階で残っている20人からも、開幕時にはさらに4人が減らされる予定で、そこには実績十分のベテランも入ってくる。1軍枠に入るのは容易ではないはずだ。
 ただ、岡田は必要以上にそこにこだわらず、さっきも書いた通り、とにかく今の流れの中でバッティングを磨き、自分の中で「これだ!」というものをつかんでほしい。
 そして、ファームであっても、実戦の中で結果を残していけば、必ずチャンスは巡ってくる。粒揃いといっても、年齢的の高い選手やまだまだ実力的に不安定な若手も多い。誰かが何かあった時に指名されるポジションにいることが、今の岡田にとっては何より大切だ。そうすれば、事が起きた時に、チームの内外から「岡田を使え」「岡田を見たい」という声が上がってくるはずだ。

090211okada_batting10今はとにかくつかみかけているバッティングをものにすることが大事。ライバルは多いが準備をしておけばチャンスは必ずやってくるに違いない

 僕の宮古訪問の可能性が一番高いのは16日だが、どんな岡田が見られるか。1軍への参加日なら場所が平良となり、ファームでの練習なら下地行きとなるが、大事なのはどこにいるかよりも状態がキープできているかどうかだ。
 というわけで突発的な事でも起きない限り、次回は生キャンプレポートとなるだろう。このブログに長らくおつきあい頂いている読者の方には、今まで書いてきた中で一番の朗報となるかもしれない。

 ぜひとも、楽しみにしていてもらいたい。

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は2月23日頃の予定です。

2009-02-03

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第101回

090204okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。この春でひと区切りつける…と、筆者の谷上史朗氏がすでに宣言してる連載ですが、本日は101回目の更新ということで、気持ちも新たに更新していきます。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。現在はつかの間のオフを迎えております。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でお楽しみ下さい。

      

キャンプイン

 いよいよキャンプが始まった。僕は初日の2月1日に名護の日本ハム、2日が久米島で楽天キャンプを取材。宮古島訪問は少し先になりそうだが、当の岡田はどうやらいいスタートを切ったようだ。

Dal_ma_090202プロ野球のキャンプは2月1日一斉にスタート。筆者が取材に行った名護や久米島では、ダルビッシュ有(日本ハム)や田中将大(楽天)らが精力的に調整していた

 プロ1年目以来の2軍スタートとはいえ、今年のオリックスはターンオーバー制(1軍と2軍で指定された8人ずつを、毎日交代させながら練習させるプラン)。1軍首脳陣の目に止まるチャンスは十分あるだろうと思ってはいたが、入れ替え初回の2日、早速、そのバッティングが大石監督の目に止まったようだ。
 フリーバッティングでサク越えを連発し、練習後には横山と並び岡田の名前が指揮官の口から出た。3日の日刊スポーツ(大阪版)には『「アピールできる時にしておかないと。張り切りました」と岡田のコメントも紹介されていた。勝負の4年目。キャンプ序盤での一コマに喜んでばかりはいられないが、今度こそは、と思えるものが僕の中にはあった。

       

キャンプ直前、岡田に会う

 実は宮古島入り前日の1月30日。予定外の流れで岡田に会うことになった。
 当日の昼過ぎ、僕のところにタイツ先生こと吉澤雅之さんから荷物が届いた。箱の品名には「股関節トレーニング器具」。前々回の記事で書いたが、年明けの「野球小僧」新年会で僕と吉澤さんは岡田談義で大いに盛り上がった。
 その中で吉澤さんは「機会があったら岡田君にメッセージを届けないなあ。トレーニングの器具も一緒に…」と話し、僕も「その時は是非」と言っていた。その荷物が到着したのだ。
 写真を見てもらえればわかるが、足を置いて股間節を動かす器具と「谷上さん、岡田選手こんにちは」という呼びかけで始まる特製DVDのセット。DVDの中では岡田のバッティング時の体の動きを指摘しつつ、たっぷり実演入りで解説をしてくれていた。
 せっかくの品だ。何か少しでもヒントになってくれれば、と早速、岡田に連絡を入れた。すると、ちょうどキャンプ直前のコンディショニング調整で僕の家からも近い整体院へ治療へ向かっているところだった。これは絶好のタイミング、と荷物一式を持参し治療院へ向かった。

     

相変わらずマイペース? の岡田

 到着すると岡田は治療中だったが、岡田取材を通じて知り合いになった先生の好意で部屋に入れてもらった。そこからベットの上の岡田も交え、3人であれやこれやの野球談議をスタート。
 イチローの自主トレ話について聞いてみた。すると「あの時は結構調子がよかったんです」と返ってきたので、イチローから何か言葉でも? と聞くと「特に話はしなかったんです」。もったいない! 相変わらずのマイペースぶりか…。
 今度は先生から、同院も訪れるという阪神の関本健太郎の話題が出た。高卒6年目で1軍定着となった関本は、自らの境遇もだぶるのか、岡田のことを気にかけているという。
 そこで「本人にその気があれば一緒に自主トレでも」と誘いがあったそうだ。ところが、岡田に伝えたものの、岡田からのアクションはなし。誘いに乗らなかった理由を尋ねると「後藤さんと一緒にやることにもなっていたんで…」。
 まあ、それはそうとして…、もったいない。貪欲さに欠ける、これまでのイメージがよぎった。ただ…。それはここまで。

     

090204_okadaこれまでにない頼もしいコメントを残してくれた岡田。いよいよ、ブレークのシーズンとなるか? 楽しみになってきた

一転して自信のこもった発言へ

 治療が終わり、岡田の愛車に同乗させてもらいながら話を聞くと、治療中の雰囲気とは一変した。表情もスキッと引き締まり、思いのほか力強い言葉が飛び出してきたのだ。
 まず、「2軍スタートとは思ってなかったんです」と言った。それも悔しさのこもった言葉で。ということは、そう思える状態にあるということだ。

岡田 去年の秋のフェニックスから秋季キャンプに入ってからもすごく良かったんです。飛距離が変わって、左方向にも普通に(スタンドに)入るし、バックスクリーンでも中段くらいにいくようになったんです。だからそれも見てくれてるはずなんで、今回は1軍スタートでいけると思ったんですけど。

 いきなり宮古島行きが楽しみになる言葉。何が変わったのか。

岡田 今まではバットを振るって感じだったのが、今は下半身リードでバットがついてくる。インサイドアウトの感覚も段々わかってきて、とらえるポイントも近くなりました。だから、フォークとかにもだいぶついていけるようになりましたし、見極めでもできるようになってきました。

 いいことだらけではないか。しかし、これほどはっきり変化を実感できるようになるとは。今回は股関節トレーニングの器具を持参していたが、体の使い方といいう部分からバッティングを考えるようにもなってきたと言った。

岡田 藤井さんがそういうことを前より言われるようになったんです。スカウトとか現場を離れている間に体の使い方とかをいろいろ勉強されたみたいで。フェニックスの時は毎日、藤井さんに毎日見てもらえてたんで、常に確認してもらいながら、間違った使い方をせずにできたと思います。

 ここで少し気になったのは、それだけいい状態だったとして、オフを挟んでどうか、ということだ。しかし、そんな心配には「大丈夫です。いい感覚が残ったままです」とキッパリ答え、続けた。
「すぐ忘れないくらい秋に振りましたから」
 こういう言葉を聞きたかった! 少ない日でも800本、多い日は1000を超えるスイングを毎日続けたという。お陰で秋のキャンプ中盤には手の平に炎症を起こし、「痛くて全然力が入らないし、我慢できないくらいになったんです」という症状に襲われた。
 しかし、ここで症状を申告し首脳陣にばれたら…、と休日に飛行機のチケットを買い1人で“極秘帰阪“。今回取材の治療院で治療をし、そのままトンボ帰りをしたという。
 この行動一つからしても、これまでとはちょっと違う岡田の「その気」が伝わってきた。
 明らかに中から出てくる自信だろう、受け答えの雰囲気も落ち着いて感じた。さらに言葉が続いた。

Taghts_goodsタイツ先生から授かった股関節のトレーニング器具と、メッセージの入ったDVD。受け取った岡田からも「吉澤先生気にかけて頂きありがとうございます。結果を出して期待にこたえられるよう頑張ります」というメッセージをもらった

岡田 去年が不甲斐なかったんで、秋のフェニックスからキャンプが今年のスタートと思ってやったんです。だからその2カ月とオフの2カ月の4カ月に賭けてました。今はプロ4年の中で一番いい状態です。

 確かに聞いたゴジラの爆発宣言。これまでにも決意や目標を語り、好調を口にすることはあったが、正直な印象で言うと、言葉程のものは伝わってこなかった。どこか言わされているような感じがあった。しかし、今回は明らかに違う。
 そう思っていた矢先の好調なキャンプスタート。これはキャンプ観戦が楽しみになってきた。疲れた時には特性DVDでも見て気分転換を計り、この好調を保ってほしい。
 残り2カ月を切ったこのブログも、いい区切りを迎えられそうな、そんな予感がしてきた。
 
 

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は2月11日頃の予定です。

2009-01-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第100回-

090121okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。ついに、ついにメモリアルの100回目を迎えました。これまで支えていただきました読者のみなさま、本当にありがとうございます。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。現在はつかの間のオフを迎えております。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。

    

今年は20日に行われたイチローとの自主トレ

Ichro_0801写真は昨年岡田と自主トレを行っていたときのイチロー。今年は場所をスカイマークスタジアムに移して行われた

 去年は1月17日にイチローと行った合同自主トレが、今年は3日遅れの20日に行われたようだ。去年の室内から場所をスカイマークスタジアムへ移し、メンバーには後藤光尊も加わったようだ。
 なぜ「ようだ」という語尾を連呼しているかというと、僕自身、現場にいなかったということ。20日は昼過ぎにスカイマークの横を通り過ぎ、そのまま別件の取材で三田の山奥へ向かった。相変わらず神戸が近くて遠い状態が続いている。
 イチローがらみということもあり、翌21日のスポーツ新聞(関西版)には、久しぶりに岡田の名前が登場した。日刊スポーツにはコメントが2つ紹介されていた。
「イチローさんの飛距離にびっくりしました」
「ボールに全体重を乗せて打っている」
 飛ばすこと、打球が違うことは去年も目の前で見た打球でいやというほどわかっていたはず。なぜあの体でそれほど飛ぶのか。自分と何が違うのか。そこがすべて。その一点を徹底的に考え、感じてほしい。もちろん、新聞には載らなかった「思い」をしっかり胸に持っているはずだが。

        

新人王の資格残す岡田

 さて、新聞報道ではなかなか岡田の名を聞くことがない中、雑誌の中で岡田貴弘の名前を見つけた。「野球小僧2月号」だ。巻頭ページで「小僧スポーツ主催 2009 セパ新人王杯」なる特集があった。要は、今年の両リーグの新人王を当てよう、という企画だが、各チームから新人4人+タイトル資格のある若手1名を挙げ、◎○▲△表記の期待度や寸評が載せられている。
 ここに岡田の名を見つけ、資格がまだあったことを再確認。新人王の資格は、投手なら「支配下登録から5年以内で1軍での登板が30イニング以内」。野手なら同じく支配下登録から5年以内で「1軍での打席が60打席以内」となっている。
 岡田は今年4年目。過去の1軍での打席は1年目の6打席のみ。喜ぶべきでもないだろうが、余裕を持っての有資格者なのだ。
 今の岡田にとってタイトルうんぬんという雰囲気は皆無だと思うが、やるならタイトルを獲るくらいの活躍を見せてほしい。

       

4年目以降の受賞は過去2人だけ

 1950年から両リーグで表彰が始まった新人王受賞者の中に4年目以降で獲得の選手はわずか2人。1971年の関本四十四(巨人)と、98年の小関竜也(西武)でいずれも4年目での受賞だ。
 ちなみに小関は、94年のドラフト2位で国学院栃木から投手として指名され、入団後に野手転向。3年目までの1軍出場はわずか2試合で打席は1打席のみ(結果は三振)だった。それが4年目に当時トップバッターだった松井稼頭央(アストロズ)のあとを打つ2番を中心に大抜擢され、外野の一角に食い込んだ。西武もちょうどチームを作り変えていた時期だったが、見事、起用に応えての新人王だった。
 最近の例で4年目の開花と言えば、僕の中には吉村裕基(横浜)が浮かぶ。以前、どこかの回で吉村について触れたことがあったはずだが、4年目に見せた活躍は見事だった。
 東福岡時代に甲子園に出場し高校通算43本塁打を放ちながら、ドラフト5巡目での入団だった吉村。プロ1年目に6試合、2年目に10試合の1軍出場はあったが、期待の3年目は1軍出場ゼロ。それが4年目に大爆発し、規定打席未満ながら打率.311、26本塁打の好成績。新人王のタイトルこそ1年目からショートのレギュラーを獲った梵英心(広島)に譲ったが、見事な4年目の開花だった。

         

Yoshimura_yb4年目に開花した吉村裕基(横浜)。しかし、それ以前から台頭する気配があったという

4年目に開花した吉村裕基

 吉村については、開花前年の3年目の春季キャンプで取材したことがある。当時から飛ばす力は1軍トップレベルのものを持っていたが、まだ素質で野球をやっていた時期だった。
 しかし、1日密着したキャンプでは、その練習量の多さ、中身の濃さに大いに関心させられた。朝8時過ぎからの特打から始まり、通常メニュー、サードでの特守等々。グラウンドを出たのは一番最後のグループで、そこから取材開始と思っていたら、そのまま1人ウエート場へ直行。さらにトレー二ングが続き、終わった時には夕方6時を回っていた。
 キャンプでの練習は、通常3時から4時には終了することが多く、若手とはいえ、この時刻までウエート場にいたのは吉村だけだった。取材はそのままウエート場で行ったが、あの1日を見せられ、さらに目標を明確に語る取材での姿に「この選手は絶対伸びる」と確信したものだった。

       

高い意識とエネルギーが目につくくらいの雰囲気を

Aoki_sいまや日本を代表する選手となった青木宣親(ヤクルト)も、早くからプロとしての姿勢を示していた一人だった

 そのインタビュー企画では、吉村のほかにブレーク前の青木宣親(ヤクルト)も取材した。この時の青木もまた、全体練習、バント練習、特守のあとに、室内練習場にこもりマシン相手の特打を延々と行っていた。コーチもいない中で、最後まで打っていたのはベテランの鈴木健と青木だけだった。
 そしていよいよ最後の最後まで残ったのは青木。この時も夕暮れの室内練習場の片隅で、練習を終えたばかりの青木を相手に取材となったが、吉村同様、青木からも強く「この選手は…」と感じるものが伝わってきたことを覚えている。
 岡田話からも新人王話からも逸れてしまったが、その他大勢の中から抜け出していく選手はやはり他の選手以上のことをやっているし、意識も高い。ある意味、非常にシンプルな話なのだ。
 その一方で、昨年までの岡田を振り返ってみると、まだまだ見る者に伝わってくるエネルギーも、なりふり構わず目標へむかっていく意志の強さも、やや物足りなかった。何も周りにアピールするためにやるわけではないが、それだけのことをやっていればイヤでも目につく。そして、何かが変わっていくはずなのだ。

 今年のキャンプでは、グラウンドのとこにいても目に飛び込んでくるような、そんな岡田に出会いたいものだ。

          

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は2月1日頃の予定です。

2009-01-12

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第99回-

Oakda_090112top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。ついに今回で99回目を迎えます。いよいよ、節目の100回目にリーチがかかりました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。現在はつかの間のオフを迎えております。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。

        

『野球小僧』の新年会でも何かと話題に挙がった岡田

 今年は年末年始もドタバタの中で過ぎた。その中で、1月9日には東京で『野球小僧』編集部主催の新年会に参加。18時半から始まった会は3次会まで続き、僕は2時過ぎまで楽しんだが、8時間近い間、僕が交わした会話のほとんどは岡田絡み。会う人、会う人から、二、三言しゃべる中で必ず聞かれた。「ところで今年の岡田は…」と。さすがは『野球小僧』の集まりだ。おそらく、この夜、最も多く飛び交ったプロ選手の名前は岡田貴弘だっただろう。それだけ野球小僧の関係者は岡田に興味を持ち、同時にちょっと心配もし始めているということだ。
 ただ、岡田について聞かれた僕も、なかなか景気のいい返答はできなかった。「今年はやります」というのは、去年も一昨年も言ってきたし、去年からの成長はまだ確認できていない。だから「やってくれると思いますが…」と繰り返すのみ。来年の新年会では晴れやかな顔で飲みたいものだ。

         

Tights09実演するタイツ先生。下半身によるタメは、股関節の力を抜くことによる落下によってできるという。それができれば、足のつけ根の「コマネチライン」に沿って股関節が外旋し、大きなシワが発生する

タイツ先生による岡田評

 延々と続いた岡田話の中心にいたのが、前回紹介させてもらった自然身体構造研究所所長こと吉澤雅之さん。通称「タイツ先生」だ。
 前回の約束通り、僕は11月のフェニックスリーグで撮影した岡田の打席の入ったデジタルビデオテープを持参。対して吉澤先生の手には1本のプラスチックバットが…。身振り手振りを交えながら、岡田のバッティングについて語ろう、ということだった。
 すでに「You Tube」で履正社高校時代の岡田のバッティングを見て準備をしてきたという吉澤さんは、フェニックスリーグでの打撃映像を見るや、「根本は同じですよねえ」と話し始めた。そこから続いた言葉をそのまま掲載しようものなら、スペースは足りないし、意味も伝わりにくなってしまうので、僕なりに解釈して一言で言い表すなら、やはり下半身の使い方に問題アリ、ということになる。
 ただ、前にも書いたように、吉澤さんはいわゆる経験に基づいて指導する従来の「コーチ」的な人ではない。フォームの問題点は、体の使い方そのものの問題であり、表面の動きは体の中の動きに問題がある、と考える人だ。
 たっぷり語られた岡田トークの中で繰り返された言葉は、「鼠蹊部(そけいぶ)」「コマネチライン」という言葉。“コマネチ”と聞いて、1980年代に一世を風靡したビートたけしのギャグが浮かんでくれば話は早いが、岡田世代には難しいだろう。要は太ももの付け根部分が重要ということだ。
 上体中心のスイングで、下半身に粘りがないから崩されやすいし、なかなか確率が上がらない…。下半身に粘りをもたせるには股関節の動きが非常に重要で、その見極めのひとつとも言えるのが、コマネチラインに現れるシワなのだという。
 左バッターの岡田なら、まず、構えから足を挙げて打ちにいくところで左側のコマネチラインにシワが現れなければならない。イメージとしては、足を挙げた際に「クッ」と腰が入った状態。
 一般的な打撃の解釈で言えば、この動作は「間」という動きにもつながるのだろうが、「乗せる」というイメージではなく、本当に一瞬、「クッ」と入るイメージ。ひねるというのではなく、股関節を意識し、わずかに「入れる」形だ。
 また、こういう動きの中で大切なのが「力を抜くことを常に意識する」ことだと吉澤さんは言った。

Tights10_2こちらはスイングの後半。踏み出した足のつけ根の「コマネチライン」に沿ってより大きなシワが発生する

「力は意識しなくても入る。人間の体はオンとオフの繰り返しですから、力を抜くことを意識すれば勝手に次は力が入るのです」

 また、タイツ先生は、岡田のビデオを見た印象として、スイング、フォロースルーについて触れ、「腕から手先までで細工して振っている」と指摘する。ただこれも、単に「もっと大きく振ろう」と意識するだけでは、オーバースイングになるだけで、今より確率は下がる。意識の前に体の使い方を変えないといけない。
 一言にまとめると、やはり下半身を使うということ。今のように上体中心で上体が一緒に前へいってしまっているようでは、強く、大きなスイングは望めない、ということだ。 ボールを待つ段階では左のコマネチラインにしっかりシワを刻み、振りきった時には最後まで腰を回しきり右のコマネチラインにしっかりシワを刻む。これが理想形のひとつ。確かにこれまでの岡田を見ていると、いわゆる「フルスイング」という形を見せることが少なかった。しかも、「振ったな」という時は、オーバースイングになっていたイメージが強い。

       

下半身の使い方が変われば岡田の打撃も大きく変わる

 吉澤さんは野球選手のフォームの真似が抜群にうまい。それも構えだけでなく、動き出したあとのスイングやピッチャーなら腕の振りまで見事にやり切ってしまう。この日も、イチロー、福留孝介、バリー・ボンズらの動きを交えながら、岡田の体の使い方と比較をしてくれたが、ビデオでしか見ていないという岡田のスイングがまた似ていたのだ。それも「崩されるとこうなるでしょう」という打ち取られた時のスイングが特に…。
 しかし、それだけ的確に特徴をとらえられるのは、体の使い方、問題個所がわかっているからだ。

「僕には岡田選手のようなパワーがないから打てませんが、ここをこう使えば確率が上がるし、もっと強く、大きなスイングができるというのはわかる。今のスイングで飛ばせてるとしたら、それはほとんど上体の力によるもので、確率も言葉は悪いですけど出会い頭ということになります。でも、ちょっとしたことで劇的に変われるんですよ。岡田選手がそこに気づいて考えるようになったら、それはとんでもない選手になりますよ」

090112okadaタイツ先生の指摘によると、岡田の場合、下半身のタメをキャッチャー方向への横移動で作ろうしており、その動きに抵抗しようとして軸足付け根付近の股関節があまり外旋せず、かえって力が入ってしまうという

 吉澤さんは、可能なら今にも飛んで行って岡田に伝えたいようだったが、実際にはそうもいかない。今の岡田の状態がどうなっているのか、僕も少し見ていないのでわからないが、表面的な形にばかり目を向けていてもなかなか手応え、変化が感じられないのだとしたら、体の中に目を向けて、バッティングを考えるのも一考だろう。

        

少しでもヒントになれば…

「プロの選手は能力がなくて活躍できないわけじゃない。体の使い方がわからない選手が活躍できずに辞めていくんです。それも、できる選手は意識して体を使うのではなくて、反射で体が動く。そこまで持っていけるかどうか。それが分かれ道です」

 コマネチラインの話で言えば、単純にその動きを体に覚え込ませるために、暇さえあれば「その動き」を繰り返せばいいという。つまり、左のラインにしわが入るように股関節を意識しクッと体を入れる。そして、右のラインにしわを刻むように、回転につながる動きを行う。これをバットを持たず、リズミカルに繰り返す。それだけで、十分効果はあるという。

 段々、岡田への手紙のような内容になってきたが、いよいよ本当に勝負の4年目。いろいろ話す中で少しでもヒントになるものがあれば…という思いだ。
 先の新年会に参加していた多くの人も岡田の活躍を心待ちにしている。そんな応援の気持ちを力にして、ぜひ大爆発を見せてほしい。

           

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は1月21日頃の予定です。

2008-12-22

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第98回-

 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。98回目は2008年最後の更新となります。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。現在はつかの間のオフを迎えております。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。なにやら意外な方から電話が来たそうですよ。

            

 

『野球小僧』ではおなじみとなった「あの人」から電話が

081222mr_tights01全身タイツ(正確にはスパッツ?)姿で、体のラインが見やすいようにして指導するタイツ先生

 年末年始は1回休みをもらうので、今年の更新はこれが最後になる。そこで何を書こうかと考えながら、まったく身動きの取れない状況に陥っていたところ、ある人から電話をもらった。
「こんにちは、ヨシザワです!」と、なんとも元気のいい声に一瞬、顔が浮かばなかったが、すぐに「あっ!」となった。「ヨシザワさん」とは、「中学野球小僧」などでお馴染みの「タイツ先生」こと吉澤雅之さんだった。こう書いても、誌面で目にしたことのない人には「???」だろう。少し説明すると、吉澤さんの肩書は「自然身体構造研究所所長」。体の構造に基づいた自然な動きを研究し、それを野球の動きにも応用。今では中学、高校から大学、さらには某日本人メジャーリーガーが指導を請うなど、各球界から密かに注目を集めている人でもある。(ちなみに「タイツ先生」の愛称は中学球児らに指導をする際、動きをわかりやすく伝えるため黒タイツで全身を包みながら投げる、打つといった動作を実践するところから)
 さて、説明が長くなったが、その吉澤さんから突然の連絡が入った。その理由が一言で言えば「岡田選手のブログを見て、居ても立ってもられなくなったから」。

           

「岡田選手の場合…」

 このブログの内容や掲載された写真などを見ながら、「ちょっとした体の使い方がわかれば変われるのに」と思って仕方なかったという。吉澤さんにすれば、変化球でスイングが大きく崩れるのも、芯で捉える確率が低いのも、「体の使い方、動かし方」に原因がある、ということなのだ。電話口の吉澤さんは「岡田選手の場合は…」と一気に話始めた。フレーズを要約するとこんな感じだ。
「軸足に乗るってよく言いますけど思い違いしている人が多い。キャッチャー方向に体重を直線的に移動すると、キャッチャー寄りに倒れないように軸足の前側で我慢し、無駄な力が入って股関節の外旋も起こりにくくなる。力が入っちゃダメなんです」
「人間は力を抜く、そして入れるという動作でそこ、大きな力を発揮できる。ポイントはいかに抜くか、それも股関節の力を抜くことが大事」
「足を上げるというのも意識して上げるのではなく、軸足の動きにつれて勝手に上がる。ここにももちろん股関節の動きが関係してます」
「左バッターなら右の腰、腹筋から振り出すイメージを持つこと。軸足で回ろうと意識し過ぎるのではなく、反対側の腹筋を使って上体を引っ張って回転していくんです」

      

081222mr_tights02タイツ先生は「ここをこうする」というような部分部分のパーツでとらえるのではなく、一連の動きの中で感覚的なイメージを大事にしながら指導する

体の深部の感覚に迫って指導するタイツ先生

 断片的な言葉だけを並べても真意が伝わるとは思っていないが、ひとつ言えることは目に見える体の表面ではなく、体の深部の感覚に注目し語っているということ。野球小僧に登場の際の全身黒タイツの姿は見た目にちょっと怪しいが、研究、指導している内容は「本物」。
 とかく野球に限らず、スポーツ指導というものは感覚的になり、指導者の経験に頼るところが多くなる。その中で体のどこを、どう意識すれば、どういう動きが可能になるのか。スイングはどう変わるのかと、別角度からのアプローチだ。指導に同行したことのある編集部のT氏も「選手に感覚の変化を感じさせることが抜群にうまいんです」と太鼓判を推していた。これはコーチとして最も必要な技術でもある。

          

不安定なところでしっかり振れるスイングを

 で、吉澤さんの話から具体的にすぐ生かせるものはあるのか、ということだ。僕が聞きたかったのもその点で、雰囲気を察知してくれたのだろう、電話口の吉澤さんの声に力がこもった。
「今話したようなことをすぐ理解し、実践するのは難しいでしょう。そこでひとまず岡田選手にやってほしいのは砂場でのスイングです。そこでグラつかずしっかりしたスイングをするには、軸足の粘りも、股関節の使い方も理にかなっていなければできません。理屈の前に下が不安定な場所でしっかり振れるスイングを目指してほしい。それができるようになるだけでも必ず変わるはずです」
 そう言えば…。年末年始の岡田は砂地がったっぷりあるところにいるという情報も聞いている。そこで実践するもよし、あるいはトレーニングマットやバランスディスク(バランシングクッション)などをうまく利用しながらスイングするのも一つだろう。
 以前、中村紀洋(楽天)の自宅に行った時、広い広いリビングの一角にはバランス系の器具が並べられ、傍らにバットが置いてあったことを思い出した。おそらく「不安定な場所でのスイング」を実践していたのだろう。プロの選手相手に迂闊なことは言えないが、今回は野球小僧でお馴染み吉澤先生からのアドバイスとして岡田に伝えておく。

            

岡田にこの話を伝えたい

081222mr_tights03いずれ、タイツ先生が岡田を指導する日が実現するか? タイツ先生は「もったいない。いち早く気付かせたい」と切望している

 最近は本人の話を聞く機会がなかなか持てずにいるが、取材先で「いい話」を聞くとなんでも岡田に伝えたくなる。「アレもコレも」になってはマイナスもあるだろうが、求め続ける中でこそ見つけられるもの、出会えるものもある。何を信じ、何を捨てるか、という判断も、必死に考え続けることで養われていくはずだ。
 来年1月初旬に野球小僧の忘年会が東京で行われる。僕も参加予定だが、吉澤さんから「その時に岡田選手のバッティングのビデオを見たい」とのリクエストを受けた。というわけで、これまで撮っていたテープを持参する。そこでまた、何かヒントになりそうな「いい話」が聞ければ、ここでも紹介したい。
 来年一発目の更新は1月13日の予定。自主トレの様子も含め、レポートできればと思っているのでお楽しみに。

       

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は年末のため1週お休みして1月13日頃の予定です。

2008-12-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第97回-

 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今日でなんと97回目を迎えております。待望の100回まであとわずかです。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半途中からの急失速がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。現在はつかの間のオフを迎えております。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。本日は谷上さんの「脳内思い出アルバム」が全開なのです(笑)。

            

ナニゴジ2008年10大ニュース

 12月も残り20日となり、テレビや雑誌などを見ていても1年を振り返る企画が出始めてきた。そこで今回はこのブログでも岡田の1年を振り返り、独断と偏見で「2008年岡田貴弘10大ニュース」を選んでみた。
 期待の大きかった3年目だったが、思うような結果は残せず、本人も悶々とした中での1年だったはず。思うにならなかった今年の姿、そして来年への期待を込めながら読んでほしい。
 順位に基準があってないようなものだが、それでは発表!

Ichiro_and_okada_011位はなんといってもコレ。「世界のイチロー」と一緒に自主トレで汗を流した
 
1位 夢の競演(1)! イチローと2人自主トレ
2位 夢の競演(2)! KO砲登場にあじさいパニック
3位 驚異の飛び出しに爆発の予感
4位 喜べぬ3年連続リーグトップ
5位 コリンズ監督突然辞任の余波受ける

6位 視力矯正の効果は!?
7位 ミスターツーベース襲名!
8位 2年ぶりの再会

9位 3年ぶりの再会
10位 秋季キャンプ抜擢 

 思いつくままに上げてみたがどうだろう? コアな岡田ファンにはマニア度が低いかもしれないが、とりあえず、順に振り返ってみる。

      

1位 夢の競演(1)! イチローと2人自主トレ

 1位はやっぱりこれだろう。
 1月17日、阪神淡路大震災から13年目の日に、夢の組み合わせが実現した。この出会いによって岡田が大きな変身を見せてくれればなお良かったが、今年もイチローはやってくるはず。今度はもう一歩踏み込んで、世界の技も究極の意識も貪欲に吸収してほしい。

      

2位 夢の競演(2)! KO砲登場にあじさいパニック

 2位はもちろん、5月3日にファームで戦列復帰を果たし、しばらく同じユニフォームを着てプレーした清原のこと。「4番岡田、5番清原」の並びが数試合続き、僕も見せてもらったがスコアボードを見ながら、やはり特別な思いを抱いた。
 イチロー同様、清原の姿に岡田は何を感じたのか。どちらかというと、他人への興味があまり高くないように思うが、やはりあれだけの選手。一緒のグラウンドでプレーできた経験を何か生かしてほしい。

       

3位 驚異の飛び出しに爆発の予感

 3位は絶好調だった今年の出足のこと。
 開幕3試合目に金村曉(阪神)から3年目で最も早い第1号を放つと、5試合目にサウスポー小島心二郎(広島)から最も早い第2号。3月22日から3月末までの7試合で、なんと29打数12安打8打点、2ホーマーの大暴れだった。
 「今年は違う!」と僕だけでなく、本人も思ったはずだが、結果的には右下がりのシーズンに…。7試合で2本打ったホームランは以降、66試合で3本。わからないものだ。

        

081211okada044位の「3年連続ファームの三振王」は、数より内容が問われる。投手が冷や汗を流すような空振りができるかどうか。来年以降も引き続き課題となるだろう

4位 喜べぬ3年連続リーグトップ

 4位は何のことかわるだろうか。残念ながらいい数字ではなく三振数だ。1年目は75個、2年目は69個、そして今年が71個で3年連続リーグトップ。長距離法なのだから三振の数自体は気にしなくてもいいが、問題は中身。相手に「安全パイ」と思わせるような崩れた形は来年からなくしていきたい。そして同じ空振りでも例えるなら小笠原道大(巨人)のようなフルスイングを見せてほしい。     

5位 コリンズ監督突然辞任の余波受ける

 続けて5位。コリンズ監督辞任の余波で岡田が受けた影響といえば、ファームで指導を受けていた小川博文コーチが配置転換で急遽1軍へ異動したことだ。これは岡田にとって密かに大きかったと思っている。
 小川氏が抜けたあとの岡田はフォームチェックの主を失い、低空飛行が続いた。しかも、その小川氏はシーズンが終わるとフロント入り。コリンズ体制があのまま続いていれば、チームにとっては良くなかったかもしれないが、岡田にとってはどうだったのだろう。
 その方が…。思わぬコリンズ余波だった。

6位 視力矯正の効果は!?
 6位はこのブログの第64回レポートでも書いたが、近視矯正のために受けたレーシック手術のことだ。
 しかし、改めて「だいたい0.6くらい」だったという視力でありながら裸眼でプレーし続けていたとは…。眼は野球選手の命である。大事にするとともに今後は落とさない、鍛える意識も持ってほしい。
 眼についてはイチローもしっかりトレー二ングしているはず。そういう話を聞いてみるのもいいだろう。

7位 ミスターツーベース襲名!
 4位で3年連続三振王の喜べぬタイトルについて書いたが、7位ではこちらもひっそりトップの少し喜べるものを。実はツーベースのシーズン19本は新井良太と並びリーグトップだったのだ。
 1年目の10本、2年目8本から3年目19本という急増の理由はわからないが、悪い傾向ではないだろう。ちなみに1軍のリーグトップはフェルナンデス(楽天)の40本だが打席数が606.岡田は301打席で19本だから、二塁打率を計算すると15.1打席で1本のフェルナンデスに対し、岡田は15.8打席に1本。見事な「ミスターツーベース」ぶりだ!?

8位 2年ぶりの再会
 8位の「2年ぶり再会」の相手は、秋からファームコーチに復帰の藤井康雄氏。1年目に指導を受けた時は、理解する手前で藤井氏がグラウンドを去った格好だったが、今度はその教えにしっかり結果で応えてほしい。

081013okada_and_nakataフェニックスリーグで久々に再会した「ナニワの怪物」たち。2人が1軍の4番として打ち合う日は、果たしていつになるか?

9位 3年ぶりの再会
 9位の再会の相手は中田翔(日本ハム)。91回目のレポートでも書いたが、フェニックスリーグで3年ぶりの対戦。高校時代は投手・中田vs打者・岡田でもあったが、今は共にチーム期待のスラッガー候補。当日は、練習中にもちろん、中田から岡田のもとへ挨拶に走り、近い将来の1軍での再会を誓っていた!?

10位 秋季キャンプ抜擢 
 そして最後は、1軍未出場ながら参加した秋季キャンプの話。まあ、この程度で記事になるようでは寂しい限りだが、最後は僕もネタが思いつかず、ひとまずこれで。

        

 いつかまたこういう企画をする時があれば、その時はどれを10個選ぶか迷うようなシーズンであってほしいと思う。

 以上!

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は12月21日頃の予定です。

2008-12-02

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第96回-

 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。96回目の更新でございます。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半の不調がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。11月からの高知秋季練習も終了し、つかの間のオフを迎えております。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。

            

金本知憲・3日連続6時間打ち込みの伝説

081202_nakai_manager広島・広陵高校・中井監督。筆者が取材に訪れた際、同校出身の金本知憲選手(阪神)の高校時代のエピソードを語ってくれた

 先日、広島の広陵高校へ取材に行ってきた。
 取材がひと段落したところで中井哲之監督が同校OBである金本知憲にまつわるエピソードを語り始めた。それは広島のスカウトから聞いたという若かりし頃のエピソードだった。

 1991年にドラフト4位で入団した金本は、1年目はファーム、そして、2年目は1軍と2軍を行ったり来たりの生活をしていた。ある時、ファームの遠征に帯同せず広島に残った金本は、本隊が不在の3日間、連日バッティングマシンを相手に、なんと1日6時間の打ち込みを続けたのだという。
 3日連続6時間だ!
 その様子を見たスカウトは「活躍するかどうかはわからないけど、活躍してほしいと思った」と当時を思い出し語ったそうだ。

 この話を聞かせてくれた中井監督は、改めて感心した様子でこう続けた。

「6時間打ち続けられる体力も凄いけど、1人で打ち続けられる心のスタミナも凄い。どっちも真似できんでしょう。でも、その両方があったから今の姿もあるんでしょう。高校時代も確かにバッティングは良かったけど、細かったし、守備も…。それがこれだけの選手になるんですからね。当たり前ですけど、人並み外れた努力があったから。そしてそれを可能にしたのが人並み外れた体の強さと心の強さなんですよね」

 まさに桁外れのエピソードだが、40歳を超えても衰え知らずの活躍を続ける今の姿に納得させられるものがある。

      

通算本塁打歴代3位門田博光氏・渾身の素振り1日100本

 そして、もうひとつ取材現場でのエピソードを。
 しばらく前になるが、門田博光氏に話を聞く機会があった。門田氏といえば、王貞治氏、野村克也氏に続く通算567本塁打(歴代3位)を放った歴史に名を残すホームランバッターだが、ここでも若かりし頃のエピソードに、大いに関心させられた。

 プロの世界で600本近いホームランを放った門田氏だが、天理高校時代のホームランは練習試合も含めて実はゼロだった。3年時には4番を打っていたものの、最後まで柵越えは打てなかったという。
 いかに金属バットではない時代だったとは言え、この話を聞いた時は驚いた。繰り返すがプロで王、野村に次ぐホームランを打った人なのだ。

 しかし、さらに驚くのはそんな門田氏が「とにかくホームランを打ちたかったし、練習を積めば打てるようになると思った」と、ホームランへの思いも、プロ入りの夢を諦めず、信じ続けたことだ。やはりここに並はずれた心の強さを感じた。
 その結果、社会人のクラレ岡山を経て、1970年にドラフト2位指名を受け、南海ホークス(現・ソフトバンクホークス)へ入団。夢だったプロ野球人生をスタートさせたのだ。
 門田氏は、高校を出る時に「4年間思いきりやって、ダメなら野球を諦めよう」と時間を区切った。そして、その間はとにかく野球に没頭。チーム練習以外で自らに課したノルマは「1日素振り100本」。ただ、これは、終わった時にヘトヘトになるくらいのフルスイングの100本。何があっても毎日欠かさず続けた。
 やはり思いの強さが心を作り、支えていたのだろう。

       

のちにエピソードとなるような努力を

081202_okada_batting金本選手や門田選手は、今の岡田の年齢の頃に猛練習してきっかけをつかんでいる。岡田もこれからの取り組みが今後を左右するだけに、練習に励んで欲しい

 ちなみにプロ入団時の金本は、今とは比べ物にならないほど細い体をしており、門田氏は170センチに満たない上背しかなかった。門田氏とはたまたま今年現役を引退した清原和博の話にもなったが、門田氏は「もったいない」を繰り返した。

「入団してきた時の彼は本当にほれぼれとする素材だった。本当にナンバーワン(王貞治氏のことを門田氏はこう呼ぶ)の記録に近いところまで行くと思いましたから。それが500本ちょっとでしょう。もったい、としか…」

 よく成功者を表し「彼には努力できる才能があった」といった言い方をする時がある。確かに金本や門田氏の話を聞くと、この言葉に頷かされる。

 以上、偉大なる2人の大先輩のエピソードを紹介させてもらった。
 やはり大選手には、その実績を裏付けする納得の逸話が一つや二つは存在するもの。岡田にも、のちに語り継がれるようなエピソードが生まれるよう、「努力できる才能」が備わっていることを信じたい。
 金本のプロ入り時は23歳、門田は22歳。岡田に当てはめればちょうどこれからの時期でもあり、ここからの時間でまだ何とでもなる。
 岡田よ、伝説のスラッガーに続け!

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は12月11日頃の予定です。

2008-11-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第95回-

06okada02_2【岡田メモリアル写真01】甲子園球場で阪神戦に挑む[2006年7月]

 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。ついに95回目。ずいぶん積み重なりました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半の不調がたたって不本意な成績のままシーズンを終えました。11月から高知で秋季練習に参加していましたが、それも本日で終了。いよいよオフを迎えます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回は、谷上氏の大きな宣言があるようです。

       

オリックス秋季キャンプが終了

 更新日の21日、オリックスの秋季キャンプが終了した。野茂英雄の登場が一番の話題になった高知から岡田のニュースが大きく伝わってくることはなかった。
 もちろん、秋のキャンプは春に比べ、個々のレベルアップや、課題克服に集中して取り組む時期。なかなか新聞の見出しになるようなニュースは生まれにくいもの。じっくり、たっぷり、水口栄二、藤井康雄両コーチらの指導の下、中身の濃い時間を過ごしたことと信じている。バッティングだけでなく、前回ここでも触れたスローイングや、精神面も含めて――。
 本当なら、その成長ぶりをこの目で確かめたかったが、前回の更新以降も、東京、岐阜、広島、近畿周辺と取材が続き、高知へ飛ぶことができなかった。
 レポートを期待してもらっていたみなさん、すいません。

       

新しく入ってくる人たち

06okada01【岡田メモリアル写真02】デビューしたばかりの頃。球場の外で少年ファンにサインする[2006年4月]

 そうした奔走の中、東京へ行ったのは神宮大会の取材が目的だったが、ネット裏の席には今年も各球団のスカウト、編成担当者が並んでいた。
 同大会を最後にプロの世界へ進む大学4年生の姿もあったが、関係者の多くの目は来年の候補生たちへと向いている。
 当り前だが、選手は次から次へとプロの世界へ入ってくる。そんな光景を見ると、改めて停滞している時間はない、と痛感する。 
 新入団といえば、オリックスにはドラフト以外で、元楽天の高波文一、元日本ハムの金澤健人のテスト入団がほぼ決まったようだ。中継ぎと守りのいい外野手を求めた結果だろうが、この2人が本当に必要な戦力かどうか。結果は見てみないとわからないが、今の段階では微妙な加入に思える。
 それにしても…。
 トレードも含め、元阪神が好きだなあ、と思うのは僕だけか。中村GMの顔もチラチラ浮かぶが、岡田に直接関係するような加入はドラフトも含め今のところなし。ただ、ただ、自らのレベルアップに集中するのみだ。

        

07okada【岡田メモリアル写真03】北京オリンピックに先立って開催されたプレ大会で全日本メンバーに選ばれる(右から2番目)[2007年8月]

来年の開幕でこの連載を一区切りすると決心

 ところで今回は、このレポートを読んでくれている人たちに大きなお知らせをお伝えしたい。
 3年前の4月1日からスタートした「ナニワのゴジラ奮闘記」を、ひとまず、来年の開幕時点で一区切りさせてもらうことにした。今回、東京へ出向いた際、『野球小僧』の編集者とも話し合い、最終的には僕の意思でそう宣言したのだ。
 もちろん、これは発展的な意味での一区切り。そもそも、このレポートをスタートさせた当初は「1軍に定着するまで追っかける」という思いだった。1軍に定着すれば、テレビ、新聞のニュースでその活躍は全国に伝えられるから、このブログの役目も「そこまで」と考えていたのだ。その意味で、僕にとっては3年続けてきたのは「予定外」であった。
 今回の決定は、「来年の春には何が何でも1軍に入ってくれ!」という僕なりの叱咤のつもりでもある。来シーズンは僕も1軍の球場で、家のテレビでゆっくりその活躍を見たい。そして、『野球小僧』をはじめ、各誌の誌面で、また改めてたっぷり取材をしたい。
 ただ、まだ来季の開幕までは5か月近くある。「一区切り」は、まだまだ先の話。みなさん、これからもこのレポートをぜひよろしくお願いしたい、と切実に思っている。

      

オフのどこかで岡田を捕まえる

08okada_2【岡田メモリアル写真04】同期のライバルの一人、陽仲壽(日本ハム)とのツーショット[2008年10月]

 さて、キャンプも終われば、いよいよ「オフ」に突入する。どの選手も、個人練習を継続する一方で、球団行事などに参加する機会も増えるだろう。特に若手はいろいろと駆り出されるものだ。
 しかし、そういう中でも、空いた時間をどう使うか、1日をどう過ごすか。極端に言えば、目の前野1分、1秒の積み重ねがすべて来シーズンにかかってくる。岡田もキャンプ終了で「ホッ」とならず、引き続き、意識を高く課題克服に臨んでほしい。
 行事と言えば、24日の日中にはオリックスのファン感謝デーが行われる。そして、夜には昨年に続き応援者による「岡田貴弘選手を応援する会」が大阪の某所で開催される。昨年は岡田相手にインタビュアーを務めた僕だったが、今回は残念ながら先約があり不参加となった。近況を聞けるチャンスだったが、動かせない用事がありどうしようもない。代わりに…、年内のどこかのタイミングで岡田の言葉を聞き、この場で伝えたいとは思っている。
 いつになるか確約はできないが、ネタ薄からの脱出と、来季へ向けた状況の確認のため、自主トレに励む「ナニワのゴジラ」を捕まえるつもりだ。

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は12月1日頃の予定です。

2008-11-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第94回-

081111okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で94回目を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目は、前半の不調がたたって不本意な成績のままシーズンを終了。11月から高知で秋季練習に参加しています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

ピッチングの矯正目的でバットスイング

 今回はキャンプレポートを届けたいと思っていたが、高知行きの時間が取れないまま更新日がやってきた。秋は秋でアレコレある…。
 というわけでネタ薄の今回、何を書こうかと考えていたところ、ソフトバンクの秋季キャンプに関するある新聞記事が目が止まった。記事の見出しは「久米がブルペンで素振り」。今季中継ぎとして活躍した久米のピッチングを見た秋山新監督が、投球練習後にバットを持たせて素振りをさせたという内容で、一部引用するとこんな感じだ。

秋山監督は久米がセットポジションで右足に体重が乗りすぎ、下半身を効果的に使えていないフォームを指摘。体の回転を指導し、感覚を把握させるため、最後は「バッティングの時と下半身の使い方は同じだ」とブルペンでバットをスイングさせた。

 さて、この話題と岡田の何が関係するのかということだが、言いたいポイントは、やはり「ボールを投げるのも打つのも大切な体の動きは同じ」ということ。つまり、スローイングを見直すことでバッティングの成長につながるのではないか、ということだ。

      

岡田の「打つ以外」

081111_okada02ファーストからの送球で流れるような動きをみせる岡田

 岡田の「打つ以外」の部分についてはこれまでも何度か書いてきたが、走塁は“あの体格“を思えば悪くない。セカンドランナーとしてなら通常のワンヒットで十分帰ってこれるし、スライディング姿も様になっている。意外に思えるかもしれないが、相手投手のモーションを盗んだり、スキを突くことにも興味を持っており、あわよくば盗塁の意欲も持っている。
 一方の守りは、ファーストでも外野でもキャッチングに関しては問題ない。特にショートバウンド捕球の際に見せるミット使いの柔らかさはなかなかだ。ただ、高校時代から見てきて、ずっと改善の余地を感じ続けているのがスローイング。以前のレポートでも軽く触れたことがあるが、ファーストゴロを裁き、アンダーハンドから投げる二塁送球の時は体の流れもスムーズで「ピッ」と指にかかったボールを投げる。
 しかし、ボール回しやファースト、外野からのバックホーム時の送球では、なかなか回転のいいボールがいかない。当然、上から投げているが、お辞儀するような球道をよく見かける。回転の悪いボールは受けての野手も取りにくく、目に見えないマイナスもある。

       

オリックス・坂口智隆の例

 近鉄時代の坂口智隆がやはりスローイングで苦労していたことを思い出す。
 当時、ファームの守備コーチだった人とそのことについて話したことがある。坂口は高校3年までピッチャーとセンターを兼ねており、確か肩かヒジを痛めたのがきっかけだったと思うが、最後の方のマウンドではスリークオーターで投げていた。コーチはそのあたりを指摘し、「外野手としての体の使い方、腕の振りが崩れてしまった。これを直すのは相当難しい」と話していた。坂口は高3の時にはピッチャーとして140キロ前後のボールを投げていたのだから肩自体は強かった。しかし、外野からの返球は、スライスしたり、シュート回転したり、というケースが確かに多かった。ただ、その点も今はきっちり修正され、同時にバッティングの質もグングンと上がってきた。そこで岡田も…、と思うのだ。

081111sakaguchi 今年1軍の外野に定着した坂口智隆。難のあるスローイングを克服するにしたがって、全体のレベルが上がっていった
 バッティング指導でよく言われるのが「間」、「体重移動」、「体の回転」。用語としても「トップ」「開き」「軸」「インパクト」…。スローイングも同じことなのだ。ピッチャーにモーションの話を聞けば、だいたいこのあたりのフレーズが返ってくる。「打つ」「投げる」さらに言えば「走る」にも、体の使い方は大いに共通するのだ。
 なら、スローイングを改善することでバッティングの向上につなげようと考えることは、ごく自然なことと言えるだろう。

         

腕は勝手に振れるもの

 岡田のスローイングを見ていると、上半身と下半身のタイミングが1点で合って回っている感じがしない。本人もしっくりきていないのだろう、ボール回しの時でも、ボールを捕ってからすぐ投げずに、ワンクッション置き態勢を整えてから投げることが多い。こういった“無駄な動き”が消え、流れの中でスムーズに投げられるようになれば、おそらくバッティングにも好影響が出てくるはずだ。
 以前、あるトレーナーを取材した際、繰り返し聞いたフレーズがあった。それは「腕は振ろうと思って振るのではなく、勝手に振れるもの。バットは振ろうと思って振るものではなく勝手に振れるもの」。そのためにもポイントになるのが下半身の使い方。
 坂口には僕自身が一度、バッティングとスローイングの関係について聞いてみたいと思っているが、機会があれば岡田も軽く聞いてみればいい。経験者かだからこそ語れることがあるかもしれない。

           

スローイングの安定がバッティングの安定につながる

081111_okada03本業のバッティング向上のバロメーターとして、今後は岡田の外野からのスローイングにも注目したい

 スローイングのいい選手が必ずしもいいバッティングをするかと言われれば「?」だが、バッティングのいい選手はほぼ例外なくいいスローイングをする。それは何も強肩という意味ではなく、球筋、コントロールの安定を指してのことだ。阪神の金本知憲なども決して肩は強くないが、しっかりしたコントロールと捕ってからの早さがある。早く動いても腕を振って投げられる体のタイミングがあるから、送球も安定するし、自分なりの強いボールを投げることもできる。
 逆に岡田を見ていると、送球のばらつきは、バッティングの確実性のなさにつながって見えるし、送球の弱さはバッティングでのパワーロスにつながって見える。今でもファームではナンバーワンを誇る飛距離でも、もっと飛ばせるようになるはずなのだ。
 フェニックスリーグを観戦した時、試合前のシートノックでセンターを守っていた岡田からの送球が以前よりも強くなっているように見えた。本人に確認したところ、「少し前はもっとよかったんですが…」ということだったが、その後どうなったか。
 キャンプも残り少なくなったが、終了後もバッティングを上げるために、スローイングをとことん考えてほしい。
 “ここ”が変わった時が爆発の時になる可能性は十分あるはずなのだから。

        

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は11月21日頃の予定です。

2008-11-03

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第93回-

081103okada02 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で93回目となっております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。復調の兆しを見せはじめたところでファームのシーズンが終了。11月からは高知で秋季練習に参加しています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

         

秋季キャンプに突入

081103okada03高知で行われている秋季キャンプでチームの強化指定選手に指名された岡田

 日本シリーズの一方で、契約更改やトレードのニュースも聞こえ、まさに秋を実感する毎日だ。
 その中、岡田は11月1日から21日まで行われる秋季キャンプに参加中で、チラチラとニュースも聞こえてくる。すっかり身内のような気分になっており、まだ、マスコミ的な注目が残っているのだ、とちょっと嬉しくもなる。

 初日の練習を伝える翌日のスポーツ新聞にも岡田のニュースが載った。「“なにわのゴジラ”岡田をスパルタ教育」(日刊スポーツ・関西版)の見出しに続き、記事には初日から1000を超えるスイングを行ったとあった。今キャンプでは「強化指定選手」にも指名され、首脳陣の期待も伝わってくる。岡田にとっては相当にきついキャンプにはなるだろうが、前々からいわゆる「猛練習」で、一度とことんまで自分を追い込んでほしいと、思っていたので、今回のキャンプはその絶好期だと思っている。

 逆に言えば、ここで変わり身を見せられなければ、来季への光明も見えてこないということになる。まさに勝負のキャンプだ。
 1軍キャンプへの参加が決まった時、一部スポーツ新聞に「岡田抜擢」という文字を見つけた。参加メンバー中唯一、今シーズン1軍出場経験がなかった岡田だから「抜擢」。しかし、キャッチャーで高卒ルーキーながら参加の伊藤あたりの方がはるかに「抜擢」であり、岡田の場合は「抜擢」よりむしろ「見極め」。本当にここで1軍首脳陣に訴えかけるものを見せられなければ、今後の岡田に対する「見る目」も決まってしまう、そういう意味だ。
 僕もどこかのタイミングで観戦に向かいたいと思っているが、現段階では未定。また、実現すればたっぷりとキャンプレポートを書かせてもらう。

        

来る人、去る人…

 岡田たちが秋季キャンプへ出発した先月31日。球団にとっての一大イベントであるドラフト会議が行われた。
 僕は当日、ソフトバンクから、3年前の岡田と同じく「外れ1位指名」を受けた近畿大の巽真悟投手を取材。合間、合間には会見場に設置のモニターや携帯電話の速報ページでオリックスの指名もチェックしていた。

080811kira01戦力外となった吉良俊則。肩の故障に泣いたオリックス時代だった。トライアウトでその打力をアピールできるか?
 結果は5人の指名で、うち4人がピッチャー。個人的には2位の伊原正樹(関西国際大)、3位の西勇輝(菰野)、5位の西川雅人(愛媛マンダリンパイレーツ)と、これまで取材したことのある選手が揃い、ちょっと嬉しくもあったが、野手は4位の高島毅(青山学院)のみ。もう1人、2人は野手も獲るだろうと思っていたので、ちょっと意外だった。
 というのも、このオフにオリックスは吉良俊則、裕次郎(筧裕次郎)、平下晃司、牧田勝吾と4人の野手に戦力外通告をしていたからだ。
 しかし、ドラフトで「補充」しなかったということは、球団は野手に対して現有戦力の底上げを見込んでいるということである。
 期待の若手筆頭がやはり岡田だろう。なんとか、カブレラの後釜として育ってほしい、早くその片鱗を見せてほしい、という思いだろう。
 近い将来、岡田が中軸に座れるかどうかで、メンバー構成にも大きな影響が出てくる。脇を固める選手はすぐに補充できても、日本人で中軸を打てる選手は、そうそういないのだ。

           

岡田は鍛えに鍛えるのみ

 他でオリックス周辺の大きなニュースといえば、村松有人と大村直之のトレードが発表された。
 同じ外野手、ベテランで共に古巣への復帰という極めて珍しいケース。両球団の思惑がどこにあるのか、誰の意向が強く反映されたのか、よくわからないが、岡田に影響を及ぼすトレードではない。
 あちらこちらで秋を実感する動きが続いており、11日には横須賀で12球団合同トライアウトが開催される。

081103okada01オフシーズンの戦力補強の話はまだあるだろうが、岡田は自己のレベルアップに励むだけだ
 時間が取れれば観に行きたいと思っているが、元オリックスのメンバーでは吉良あたりも参加予定のようだ。あるいは、その場からオリックスのユニフォームを着る選手が出てくるかもしれない。また、今後トレードを含めた動きもまだ十分ありえるだろう。
 しかし、今の岡田は、周囲の動きを気にする立場にはない。
 来季以降、不安の秋ではなく、充実の秋を迎えられるよう、今はとにかく鍛えに鍛えるのみ。
 野球人生の後年に振り返り「あの時のキャンプがあったから」と思い出すような日々を送ってほしい。

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は11月11日頃の予定です。

2008-10-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第92回-

081021okada01 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。92回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。復調の兆しを見せはじめたところでファームのシーズンが終了。現在は若手育成を目的とするフェニックスリーグに参戦中です。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

         

「おかわりくん」こと中村剛也

081021okawari今シーズン46本塁打を放ち、西武のリーグ優勝に貢献した中村剛也は4年目に1軍定着のきっかけをつかんだ

 前回のレポートの最後にこう書いた。
「今回の宮崎観戦については、書ききれなかった内容もあるので、次回以降の更新でまた触れていきたいと思う。ぜひ、楽しみにしていてもらいたい」
 そのつもりだったが、ちょっと事情があり予定を変更。「書ききれなかった内容」は、またの機会に紹介させてもらう。というわけで…。
 引き続き岡田が南国の地・宮崎でフェニックスリーグで戦っている頃、僕はクライマックスシリーズと高校野球の近畿大会をはしごしながら各球場を回っていた。その中で、16日にクライマックスシリーズ初戦を翌日に控えた西武の中村剛也を取材。今回はその時の話から入ってみようと思う。
 中村といえば、大阪桐蔭高時代、高校通算本塁打歴代3位の83本を放ったスラッガーとして、関西圏では知られていた。
 甲子園出場はなかったが、2001年のドラフト2巡目で西武へ入団。1年目はファームで満塁本塁打3本を含む7本塁打を放ち、2年目にはイースタンリーグ22本塁打でホームラン王を獲得した。3年目の05年も1軍出場の傍らファームでは20本塁打を放ち、4年目の05年には1軍に抜擢され22ホーマー。「おかわりくん」の愛称と共に一気にブレイクした。
 ところが、そこからの2年はやや停滞期で、昨年は98試合に出場するもホームランは7本止まり。それが今年、一気に46本塁打を放つ大きな成長を見せ二冠を達成したのだ。

           

081021fujiiフェニックスリーグで臨時コーチを務める藤井康雄氏

中村と岡田の共通点

 この中村と岡田とは、まず同じ大阪出身で高卒の長距離砲であることが共通している。そして、高校時代に中村を取材した経験もあったが、改めて今回感じたこととして、話をする感じや雰囲気が岡田に重なるところがある。ここで取り上げたのは、そうした理由によるものだ。
 上背では岡田、横幅では中村だが、共に“大型”で“色白”。細い目の感じも似ているし、「口数は多くないけど実は頑固」という内面的な周囲の評判にも通じるものがある。
 そんな中村の今年の成長には、新しくバッティングコーチとなった大久保博元コーチとの出会いが大きく関わっている。頑固者の中村が大久保コーチの指導の元、新しく取り入れた技術が合った、と今回の取材でも話していた。
 やはり選手にとっては、自分を伸ばしてくれるコーチとの出会いは本当に大きいのだ。
岡田にとっては、まだ正式発表にはなっていないが、来季から現場復帰の可能性が高そうな藤井康雄氏に第二の大久保コーチになってもらいたい。

       

自分のアピールポイントにこだわりを

 さらに中村話を続けると、46本塁打、101打点の一方で、打率はリーグ27位の.244、143試合で喫した162三振はリーグトップ。ついでに言えば、守っての22失策もリーグワーストだった。
 実は失敗も誰よりも重ねていたのだが、本人の語りからも、ある意味の割り切りが感じられた。つまり、自分の持ち味は何なのか、という点をしっかり理解し、まずはそこをアピールしようという姿勢だ。
 一流が集まるプロでは、若いうちから「あれもこれも」を求めてしまうと、結局、自分の一番の長所まで消してしまうことがある。以前、中村紀洋に話を聞いた時も、やはり大阪出身で高卒の長距離砲として近鉄へ入団した直後の頃を振り返り、「3、4年目までは守備はほっといて、とにかく朝から晩までバッティングだけやってました」と言っていた。
 さらに「打てんかったら3年で終わりくらいの覚悟でした」とも。守りを疎かにしていいというのではなく、岡田にも、もう一度、自分の魅力をしっかり確認し、そこへ大いにこだわってほしいということだ。

       

瀬戸際の4年目へ

081021okada02現在、岡田はフェニックスリーグで奮闘中。その後は、11月から高知で秋季練習が予定されている(参加メンバーは現時点では未定)

 クライマックスシリーズなど、秋の戦いがまだ続く一方、ドラフトを前に戦力外通告の知らせもあちこちから伝わってくる。オリックスの日本人選手では吉川勝成、筧裕次郎、平下晃司、吉良俊則の4人の解雇が発表された。
 吉良は、入団時から悩まされていたヒジの故障が最後まで響き、高卒5年での解雇。打撃ではいいものを見せ始めていただけに、本人としてもショックだっただろう。ロッテでは岡田の同期で、同じく高校生ドラフト1巡目で入団の柳田将利が3年で解雇された。こちらも左ひじの故障が引き金となり、今シーズン終盤には野手へ転向。ある意味で「これから」という中での通告だったようだ。
 柳田の3年はいかにも早いが、逆に3年を過ぎれば、いつ“そういう事”になってもさほど驚かなくなってくる。
 中村が1軍で華々しいデビューを見せたのは4年目。今シーズンの初め頃、このブログで岡田のについて「勝負の3年目」と言い続けてきたが、ここからは「瀬戸際の4年目」という気持ちで取り組んでもらい、中村同様、高卒4年目でのブレイクに期待したい。

 最後に前回以降の岡田のフェニックスリーグでの成績を記しておく。

14日(対ロッテ)2打数1安打 1四球 1三振
16日(対日本ハム)4打数1安打 1三振
17日(対巨人)4打数1安打 1三振
18日(楽天)、 19日(西武)は雨のため中止

 更新日の時点でフェニックスリーグも残り2試合。一連の戦いの中で何か掴むものはあったのか。掴みかけるものはあったのか。
 まだまだ鍛錬の秋は続く。

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は11月1日頃の予定です。

2008-10-13

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第91回-

081013okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で91回。いよいよ大台まで2ケタを切りました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。復調の兆しを見せはじめたところでファームのシーズンが終了。現在は若手育成を目的とするフェニックスリーグに参戦中です。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

      

クライマックスシリーズ開幕! その時、岡田は…

081013okada_running毎年フェニックスリーグの時期は好調の岡田。今年も11日に1試合2本塁打を放つ

 パ・リーグのクライマックスシリーズ第1ステージが開幕となった11日の午後、僕は京セラドームにいた。
 ちょうど、その一戦が始まった14時半あたりだったはずだ。宮崎でフェニックスリーグ(7日開幕)に参加中の岡田が、その日、2本目のホームランを打ったのは。
 サーパスは12時半から生目の杜第2球場でロッテと戦っていた。
 岡田はまず3回にリーグ戦初アーチを放ち、7回にもう一発。それまでの3試合では7番か8番だった打順も3番に上がり、そこで4打数3安打、2打点。しっかり結果を出した。
 それにしても…。

 この時期になると俄然、打ち始める理由は何だろう。
 去年もシーズン中4本だったホームランをフェニックスリーグだけでまとめて打った。1年目もシーズンで5本だったのが短いフェニックスリーグ期間中に2本。そして、今年もまた…。
 さらに、この原稿を書いていた13日にも第3号が飛び出したという一報が入ってきた。ここまでのフェニックスリーグの結果は次の通りだ。

7日(対ヤクルト)4打数2安打、1四球、1三振
8日(対巨人)3打数1安打、1四球、1三振
9日(対日本ハム)4打数1安打、1打点、1三振
11日(対ロッテ)4打数3安打、2打点、2本塁打
12日(対楽天)2打数0安打、2四球
13日(対湘南)4打数1安打、3打点、1本塁打

 今季はシーズン出足も好調だったが、ここまで3年の印象は間違いなく「秋男」。
 発売中の「野球小僧」の中で「秋男 選出ランキング」なる企画があったが、これは1軍のシーズン後半に活躍した選手の成績によるクライマックスシリーズ、日本シリーズへ向けた内容だ。今の岡田の立場で「秋男」という称号は早く返上したいところだが、もちろん、打つにこしたことはない。

      

081013okada_home_in「だいぶよくなってきた」臨時コーチを務める藤井康雄編成担当も岡田の今後に期待を寄せる

師弟関係復活!?

 上記の期間中、僕は9日の日本ハムと対戦した試合を観戦してきた。
 爆発した試合に出くわせなかったのは結果的に残念ではあったが、この日はこの日でいろいろとネタを拾うことができた。

 朝一番で大阪を経ち、宮崎空港から車で約20分のところにある清武町総合運動公園野球場へは9時半前に到着。ネット裏の関係者席に荷物を置き、グラウンドへ目をやると、すでにサーパスの練習が始まっていた。
 すると、ガラス越しに「おう!」と手を挙げてきてくれたのが藤井康雄編成担当。いつもの背広姿ではなく、上はTシャツながらユニフォーム姿で指導をしていた。
 早速表に出て聞いてみると、フェニックススリーグ期間中の臨時コーチとしてバッティングを見ることになったのだという。いきなりの嬉しいニュースだ。というのも、育成担当という立場ながら昨シーズン半ばから岡田のバッティングを見ていた小川博文氏がこの5月から1軍へ異動。そこから、岡田のバッティングをしっかり見る人がいないように感じていたからだ。

 シーズン中も球場を訪ね、岡田の状態も気にかけていた藤井氏は「夏頃はどん底だったけど、だいぶよくなってきた。昨日(8日)も1本だったけど、センター右にいいヒットがあったし。とりあえず戻して、そこからまた作っていってる段階です」と話してくれた。
 ぜひとも、よろしくお願いします!

     

カギは軸足

081013okada_batting01軸足に乗せてしっかり残す。言葉で言うのは簡単だが、打者にとっては永遠の課題であり、会得した者だけが次のレベルへ進むことができる

 そして、当の岡田本人には、試合前の軽食の時間に少し話を聞くことができた。
 今の取り組みを尋ねると、軸足を中心とした動きを挙げた。
 「こうなったときに、こうなって、こうして…」と説明してくれたが、僕なりの理解でいうと、テークバックの時に、右足を軸足側にしっかりひいて体重を移動させる。そこから今度、ステップをする時に左足は前に向かいながら、上体もつられてついていくのではなく、軸足側にしっかり体重を残す。そこで“割れ”の形を作ってスイングに入る…、という解釈だ。
 取り組みの成果がどのくらい出ているかを問うと、「また作っていってるところなんで、タイミングが合いにくくて…」という返事。確かにフリーバッティングでも、打ち損じの打球がチラチラ見られた。それでも藤井氏は「今の形をしっかりやってものにしていけば、必ず上がっていけます」と胸を張る。秋の間に、自分の中で自信になる、拠り所になる技術を身につけてほしい。

      

岡田貴弘 対 中田翔

 さて、観戦の試合には、もう1つの楽しみがあった。
 それは岡田と中田翔(日本ハム)のプロ初対決だ。岡田が履正社高校3年の夏に、1年だった中田と大阪大会の決勝で対戦した話はこれまでに何度も書いてきたが、それ以来の再戦である。
 今度はお互いバッターとして、何より戦いの場をプロへ移しての対決。ここから先、この2人にはリーグを代表するスラッガーに育ち、大いに競っていってほしいと願っている僕とすれば、公式戦でないとはいえ、ぜひ見ておきたい試合だった。

081013nakata昨秋の今頃は時の人だった中田翔(日本ハム)。並はずれたスイングスピードはフェニックスリーグでもトップクラスを誇る

 練習中には中田が岡田のもとへかけ寄り挨拶を交わし、サーパスのフリーバッティングが始まると、外野でアップ中だった中田の目もしっかり岡田を捕らえているようだった。
 逆に、日本ハムの打撃練習の時間になり、中田がバットを持って現れると一塁側ベンチにいたサーパスナインの視線が“噂のルーキー”へ集中。ところが、中では岡田の視線が一番「よそ」を向いていた。無意識の意識なのか、それとも中田のスイングの向こうに僕のカメラレンズを見つけ〈「熱心に見入る岡田」なんて書かれたらたまらんわ〉とでも思ったのか…(笑)。意識的に別のところを向いているようにも思えた。

 それはともかく、中田のスイングはさすが。少し離れたところで見ていても「ブンッ」という音が響いてきた。
 スイングの速さは両チームの中でもおそらくトップで、フリーバッティングではライナー系の「ガツン」という強い打球を左方向へ連発していた。
 対する岡田のスイングは、一見するとそこまでの力感は感じない。まだまだ下半身のパワーをスイングに伝えきれていない感じも受けた。
 ただ、打球でいえば、いい感じで上がる当たりが増えており、飛距離でいってもこの日を見る限り中田以上。タイミングが合った時、自分のスイングができた時の打球は本当に軽々と両翼100メートルの清武球場のフェンスを超えていた。

       

引き続きの爆発を!

081013okada_and_nakata一塁ベースで相対する岡田と中田。この2人が1軍で打ち合う姿を早く見たい

 試合では“2人のアーチ共演”という期待もあったが、結果は岡田が4打数1安打、中田が3打数1安打。共に三振も1つずつでプロ初対決は終了。
 惜しかったのが岡田の1打席目、ライトへ高々と打ち上げたフライだ。打球としては完全に上がり過ぎの当たりだったが、ライトの鵜久森淳志がファウルグラウンドでキャッチした時にはフェンスのすぐ手前。サードのポジションから見ていた中田も〈あの当たりであそこまで飛ぶか…〉と思ったのではないか。
 高々と上がることと大アーチは紙一重。試合後に聞いた岡田本人も「あの打球は悪くなかったです」と、〈惜しかった〉という顔で振り返っていた。

 そして、岡田は3打席目に左腕・豊島明好からセンター前へタイムリー。追い込まれた後のおそらく「抜いたボール」を右手で拾ってセンター・村田和哉の前に落とした。
 この1本について、岡田は「監督から軽打、軽打って言われてたんで」と話していたが、2打席目には先発・植村祐介のフォークに空振りの三振を喫していた。これまで何度も見た崩されてのスイングには〈う~ん〉と思ってしまったが、次の打席でしっかり修正して拾ったことになる。
 ただ、最終打席は金森敬之の初球のインハイ、ボール気味のまっすぐに詰まらされセカンドフライ。初球を狙いにいってあの当たり、というのはいかにももったいなかった。
 それでも、ベンチの藤井氏からは終始「悪くないよ、悪くないよ」という声が岡田の打席に飛んでいた。この試合だけしか見ていない僕にとっては何とも判断が難しかったが、「以降」の爆発を見ると、藤井氏の見立て通りだったのか、と思えてくる。まだ試合は半分残っているが、クライマックスシリーズでの敗戦が決まった試合後、大石監督も「3、4日後から宮崎に行きます」と話しており、一昨年にサーパスの監督を務めていた指揮官に「変わったな」と思わせるバッティングを見せてほしい。

081013score9日の出場メンバー。サーパスの一部1軍クラスの選手がいるが、基本的には両チームとも将来楽しみな面々が揃う。フェニックスリーグは23日まで行われる

 今回の宮崎観戦については、書ききれなかった内容もあるので、次回以降の更新でまた触れていきたいと思う。ぜひ、楽しみにしていてもらいたい。

      

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は10月21日頃の予定です。

2008-10-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第90回-

081001okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で90回目です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。復調の兆しを見せはじめたところでファームのシーズンが終了。1軍がクライマックスシリーズ出場で盛り上がる中、来年に向けて秋季練習に入ります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

      

2008年シーズン終了

 前回の更新日に雁ノ巣で行なわれたサーパスの今季最終戦は5対1でソフトバンクが勝利。ラストを締めた格好となったが、7番ファーストで出場した岡田は4打数ノーヒット、1三振だった。
 相手先発は前回の対戦でセンターバックスクリーンへ放り込む一発を放った大場翔太だったが、スカッとしない1年を象徴するようなフィニッシュとなってしまった。今年の成績は下の欄外に示したとおりで、1年目からほぼ横ばい状態。数字から判断する限り、厳しい状態と言わざるを得ない。
 とはいえ、うしろを向いている暇はない。10月7日からは宮崎でフェニックスリーグが始まる。ヤクルト、巨人、日本ハム、ロッテ、楽天、西武、湘南相手に計14戦。故障でもない限り選ばれるだろうが、岡田にとっては3度目のフェニックスリーグとなる。今後は宮崎から高知キャンプへと続いていく流れだが、今年こそ秋の時季に確固たる技術を掴んでほしい。

 そのフェニックスリーグ開幕までの期間、ファームでは通常の練習、そして合間には練習試合が組まれている。9月27日には鳴尾浜で阪神との一戦が行なわれた。結果は金村曉、ボーグルソン、杉山直久という準1軍メンバーの継投の前にサーパス打線は散発5安打。1対5での敗戦だった。
 この日は7番ライトで出場の岡田だったが、2打数ノーヒット、2三振で途中交代…。シーズンの後半には長打も多く出て、少し安定してきたように見えていたが、安定しない。
 しかし、そうかと思うと、30日に神戸サブグラウンドで行われた四国独立リーグ・徳島インディゴソックス戦では7番レフトでスタメン出場し4打数2安打を記録した。うまく行けば、この試合を観戦して今回のブログネタにしよう…と思っていのだが、都合がつかずに泣く泣く断念した。

         

1軍はクライマックスシリーズへ

081001crimax_serease京セラドーム大阪での今シーズン最終戦が引退試合となる清原和博

 サーパスがいつもの秋を迎えようとしている一方で、クライマックスシリーズ進出を決めた1軍は盛り上がっている。
 この更新日の1日は、清原和博の引退試合が行なわれ、僕も観戦に行ってくる。しかし、秋のオリックスがこれほど盛り上がるのは、本当に日本一に輝いた1996年以来。前にも書いたが、小瀬浩之や再び1軍に昇格した一輝、森山周、近藤一樹ら、サーパス組のハツラツとしたプレーを見るたび、岡田よ…、と思ってしまう。
 今や不動のセンターとなった坂口智隆にしても、昨年までは多くをファームで過ごしていた選手。例えば、岡田にとって1年目にあたる一昨年時の坂口の1軍出場数は28試合で、打撃成績も22打数2安打の打率.091。岡田と同じ高卒ドラフト1位で入団した坂口にとって、一昨年と言えば4年目のシーズンである。ファームで3割を打っていたとはいえ、心境としては追い詰められつつあったのではなかったか。

       

081001sakaguchi1番打者として6年目の今年1軍に定着した坂口。早くから期待されていたが、2、3年目は今の岡田と同様に伸び悩んでいた

思えば坂口智隆も…

 坂口のことは神戸国際大附属高時代から兵庫大会や甲子園で見ていて、当時から3拍子揃った魅力的な選手だった。2年時からエース番号をつけていたが、将来性は完全に野手の方にあり、近鉄入団後は野手としてスタートしている。
 ただ、1年目にファームで3割近くを打つ好スタートを切ったものの、2、3年目は苦しんでいた印象が強い。「イチロー二世」と呼ばれ、高校時代から特徴だったハイフィニッシュを決める振り抜きのいいスイングはドンドン小さくなり、打球も見るたびに弱くなっていた。
 それが、僕が岡田観戦に通うようになった一昨年から明らかに何かをふっきったようなバッティングとなり、その年にファームで3割。そして、昨年もファームで3割を打ち、再昇格となった終盤の1軍戦で結果を出した。このシーズン最後の活躍が今年の台頭につながっているはずだ。
 2、3年目の頃は、「高校時代はいい選手だったのになあ…」という感じてしまうまでに落ち込んでいた坂口だったが、本当に一昨年からプレーがイキイキし始めたのだ。きっと、苦しんで、苦しんで、どこかのタイミングで何かを掴んだのだろう。そして、苦しんでモノにしたものは簡単には離れていかないもの。今の坂口を見ていると本当にそう感じる。

      

飛躍の4年目へ向けて

081001okada_batting今年も秋は宮崎→高知と野球漬けの日が続く。この間に岡田は何かしらきっかけをつかめるだろうか?

 そこで、その流れを岡田にも…だ。坂口がそうだったであろうように、1年目より2年目、2年目より3年目、そして3年目より4年目…と、年々、1年、1年が重くなっているはず。この重圧を払いのけるには結果を残すしかなく、何度も書いているが、同時に自分自身で「これだ」と思える技術を掴むしかない。
 そのためには、やはりバットを振るしかない。3度目の秋、とにかく1日、1日を無駄にせず、アレもコレもではなく、何かひとつをやりこんで自分のものにしてほしい。

        

■2008年ファーム成績 
83試合 264打数57安打 5本塁打 28打点 34四死球 71三振 打率.216

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は10月13日頃の予定です。

2008-09-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第89回-

080922okada_top_2 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日、89回目の更新をいたしました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。ここへ来てようやく復調の兆しを見せはじめています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

      

京セラドームでサーパス情報流れる

080922kyocera_dome_osaka_2熱気あふれる京セラドーム大阪。オリックスの現在の快進撃を開幕前に予想した人は多くはいなかったはずだ

「本日、雁ノ巣球場で行なわれましたサーパス対ソフトバンクの試合は3対0でソフトバンクが勝ちしました。サーパスでは高木(康成)投手と光原投手(逸裕)が3回ずつを投げ無失点。平野(佳寿)投手が先発し、木元(邦之)選手が2安打を放ちました」
 20日(土)に京セラドームで行なわれた日本ハム戦の8回裏の攻撃前。場内に「サーパスインフォメーション」が流れた。
 岡田のホームラン情報でも聞ければよかったが、完封負けではどうしようもない。また、ちょうどこの時、ネクストバッターサークルに清原和博が登場してきたため、サーパス情報に耳を傾けるファンもほとんどいなかった…。
 僕もこのところスカイマークスタジアムと京セラドームへ行く日が増えたが、クライマックスシリーズ出場が目前の1軍は連日熱のこもった戦いを見せている。
 一方、その頃ファームでは、今シーズンの公式戦の日程が終わろうとしていた。21日のゲームが雨で中止となったため、22日に雁ノ巣で行なわれるソフトバンク戦がサーパスの今季最終戦となる。

        

080922okada_batting0418日のウエスタン中日戦第1打席。1死二、三塁でタイムリーツーベースを放つ

本拠地最終戦を観戦

 次回の更新で改めて今シーズンの岡田を振り返るとして、今回はひとまず近況について報告する。結果から書くとこんな感じだ。

 11日 対中日 4打数0安打 
 13日 対広島 4打数2安打 1打点
 14日 対広島 4打数1安打 2打点
 15日 対広島 4打数2安打 2打点 
 18日 対中日 3打数1安打 2打点
 20日 対ソフトバンク 3打数 0安打

 パッと見て6試合で挙げた7打点が目を引く。ランナーを還すバッティングは岡田に求められる大きな要素でもあり、この点は評価したい。
 また、一発は出なかったが、ツーベースやスリーベースといった長打が出ており、バッティングの状態も悪くはないのだろう。ちなみに19本の二塁打は、この時点で新井良太(中日)と並びリーグトップの数字だ。
 ただ、厳しく言わせてもらうと、「悪くない」というのは、あくまで岡田の今のレベルの中での話である。

 この日程の中で、本拠地の最終戦となった18日の中日戦を観に行ってきた。
 岡田はこの試合でも、2回の1死二、三塁のチャンスに右中間へタイムリーツーベースを放った。中日の先発はファームの勝ち頭、佐藤充だったが、外寄りのストレートを叩き、打球は二塁手の横をゴロで抜けていった。ただ、真芯ではなく、おそらく少し先。パワーで持っていった当たりに見えた。

       

甘い球をいかに捉えるか

080922okada_batting02第2打席でセンターフライに倒れた岡田。打者有利のカウントで打ちにいったが捉えきれず、表情がゆがむ

 ただ、この日の残りの打席には少し不満が残った。8番レフトでの登場だっため、全部で3打席しか回ってこなかった中、4回1死で回ってきた2打席目。1-3からのボールを打ち上げセンターフライに倒れた場面。
 カメラを構えながら一塁側から見ていたので球種やコースははっきりわからなかったが、おそらくスライダー系で真ん中近辺の甘い球だったはず。スイングの瞬間、「しまった!」という気持ちが顔に表れている(写真参照)。バッティングカウントで、自分では「もらった!」という感じがあったのだろう。こういうボールを一発で仕留められるかどうか。前回の記事の中でカブレラやローズのカウント別の打率について書いたが、いいバッターとの大きな差は甘いボールをどれだけ確実に捉えられるか、なのだ。

 続く3打席目。この内容も頂けなかった。空振りの三振に打ち取られたのだが、結果以上に内容が不満だった。
 相手投手はこれまで何度も対戦を繰り返している金剛弘樹。初球ボールのあと、内角のストレート2つで追い込まれ、最後は外のストレートに手だけで追いかけた空振り。ベンチもそうだろうが、見ている側からすれば印象の悪い三振だった。

     

080922okada_scoreboad本拠地の日程が全て終了したサーパス。22日に福岡・雁ノ巣球場で行われているソフトバンク戦で今季の公式戦が全て終了する

中身のある三振を

 残り1試合の段階で70三振はリーグトップ。ある程度の数は仕方ないとして、同じ三振でも一年一年成長した三振を見たい。
 それは何か言えば、自分の形で振っているかどうか。自分の形で見逃しているかどうか。まだまだこの点が物足りないと感じた。

 また前回の記事の話になるが、カブレラを例に取り、追い込まれるまでの打率がいかに高いかを書いた。岡田にもファーストストライクから積極的に手を出す姿は見え始めてはいる。観戦した試合も、1、2打席目はファーストストライクから振っていた。ただ、そこで甘い球を捉える技術が低いので、どうしてもファウルや空振りで追い込まれるケースが増えるのだ。
 では、その後はどうするか。追い込まれた段階で、頭を軽打に切り替えるのも一つだろう。2ストライクまではフルスイング、以後は逆方向を意識しミートに徹し打席に立つという選手は1軍でも多くいるはず。そのあたりの意識が外からでは見えにくく、来た球に漠然と対応し三振…、という形がなかなか消えない。

080922okada_batting03上昇の兆しは見せたものの、今季は結果を出し切れなかった岡田。この秋は、また一から出直しを図ることになる

 逆に、かつてのブライアント(元近鉄)らのように、追い込まれてもとにかくフルスイングに徹するというのも手だろう。ファームで見ていると、中日の新井良太あたりは、場面にもよるが少々の時は追い込まれていても目一杯のスイングを続けている。そういう振りを見せることで相手投手に恐怖を感じさせることもできるだろう。
 しかし、中途半端な形での三振をしていれば、相手投手に余裕を持たれてしまう。こういう心理の差は次の対戦にも影響してくる。
 同じ三振でも次につながる三振を。3年目の成長を感じる三振を、ということだ。
 毎回いろいろ書かせてもらっているが、やるべきこと、考えるべきことはまだまだ多い。体だけでなく、頭もパンクしないよう、しかし、ギリギリのところまでは使い切って、ここから実りの多い秋を送ってほしい。

       
 
■2008年ファーム成績(9月21日現在)
82試合 260打数57安打 5本塁打 28打点 34四死球 70三振 打率.219

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は10月1日頃の予定です。

2008-09-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第88回-

Okada_080911top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で88回目を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。ここへ来てようやく復調の兆しを見せはじめています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

      

5試合で3発! 大噴火の予感

080911okada_toss持ち味の本塁打を連発し、登り調子を迎えた岡田

 前回は、久しぶりに明るいレポートになったが、続きがまだあった。
 1日遅れの更新となった翌日の3日夜。岡田の父・秀和氏から再び連絡が入った。
 僕はその日、1日外出でサーパス戦(対阪神、甲子園)の結果をチェックできずにいたが、連絡が来るということは…。そう、また打ったのだ。
 その時点で詳細はわからなかったが、あとで調べると、8回に現在阪神のファーム投手陣で最も調子のいい石川俊介からセンターへ第5号。これまでの低空飛行がウソのように、これで直近5試合で3発目。突如、お目覚めのゴジラである。

 〈どうせなら、もう少し早く目覚めてくれれば…〉という言葉はなし。シーズン終了間際でもなんでも、今の好調を素直に喜びたい。
 こうなってくると、やはりこの目で確認したくなるが、4日からの5日間はサーパスの試合がなく、関西圏では13日の広島戦まで試合が組まれていない。しかし、そこまでは待っていられないということで9日、ナゴヤ球場へ行って来た。

 思えば、今年のシーズンはこのナゴヤから始まった。僕も観戦した開幕戦は4打数1安打、3三振、1四球だったが、直後から爆発し、3月中の5試合で2発。ここ3年で最高の出だしに「今年は違う!」と僕も岡田ファンも、岡田本人も思ったはずだった。
 そんな懐かしくも、ちょっと苦い思い出が蘇るナゴヤ球場で、自己最多となる第6号は飛び出すのか。

      

080911_furuyaサーパスの古屋英夫監督。現役時代は日本ハムでシーズンを通して4番を打ったこともある強打者だった

試合前に聞いた岡田評

「いやあ、ほんとに開幕の頃は良かったんですよねえ」と試合前のベンチで岡田について口にしたのは、古屋英夫監督。コリンズ監督の退任に伴い急遽、バッティングコーチから立場を変え、サーパスの指揮を執っている。
 その指揮官に現在の好調の原因について聞いてみると「何がよくなったのか…」と、少し考えてから続けた。

「本人に聞くとタイミングをゆっくり取るようになったというのと、開かなくなったと、言ってましたね。それで持ち味のホームランが出るようになってきましたからね。ただ、まだヒットは1本ずつで、もうちょっとあとの打席の内容が上がってくればいいんですけど。とにかく彼の場合は打って、打って、打っていくしかないんだから、まだまだここから。ただ、確かにこうなっては来てますよ」

 最後は右手を斜め45度に向けながらグラウンドへ出て行った。

 すると今度は、翌日から新外国人調査のため韓国へ向かうことになっていた宮田隆調査渉外グループ部長とバッタリ。僕の岡田取材を知っている宮田氏は「まだ続いてるの? 粘り強いねえ」と妙な関心のあと、「上がってきてるのは聞いてます。その調子で行ってくれたらいいけど」と、期待を込めた。
 試合前のフリーバッティングでも、芯で捉えた打球は軽々とライト上段へ飛び込んでいた。この当たりを見せられたら、やっぱり夢を見たくなるのだ。そして、夢を夢で終わらせないためにも、ここからだ。

      

追い込まれる前に勝負を

080911_okada_and_hirata_29月7日の1軍の試合(阪神戦)でサヨナラ本塁打を打った平田良介(左)とのツーショット。高校時代「ナニワの四天王」と称された同期だけにお互いの意識は強い

 さて、試合である。
 相手先発は佐藤充。岡田の第1打席は2回、1死一、二塁の絶好機で回ってきた。
 しかし、ここはファウル、ファウルで追い込まれたあと、3球目は完全に態勢を崩されての空振りの三振。僕は突然の爆発の一因として、まず、これまでファウルになっていた甘い球を確実にとらえられるようになったのでは、と予測していた。2日にCS放送で中継した阪神戦を録画して見た時も、ストライクを取りに来た好球を確実に捕らえ右中間を割っていた。しかし、この打席では甘い球を捉えきれなかった。
 続く2打席目は4回1死の場面。
 初球ボールのあとの2球目。スライダーかカット系のボールだった。真ん中内寄り高目に見えたが、ややタイミングが早く、バットの上っ面に当たったライトフライ。いわゆるこすったような当たりで、打った瞬間スタンドからも「ああ~」とため息が漏れた。それでも打球はライトの定位置より飛んでいた。

      

080911okada_batting中日の快速球右腕・中里篤史と対戦する岡田

ライト前タイムリーも…

 3打席目は5回2死一、二塁。この初球、2打席目に打ち損じたのと同じような133キロのスライダー(あるいはカットボール)が高めに来た。2打席目よりやや中寄りではあったが、これを叩いてライト右へライナーのタイムリー。前の打席で打ち損じたボールをしっかり捕えた。狙っていたのだろうか。
 もっとも、この時点でサーパスのヒットは10本目。チーム全体で佐藤を打ち込んでいたので、1本くらいでは喜べないが、ともかくタイムリーが出た。
 出来れば続けてもう1本、そして見たいのは何より一発…と残り打席に期待した7回の第4打席。
 相手投手は金剛弘樹に代わったところだったが、この初球がなんと右足つま先をかすめるデットボール。スライダーだったと思うが、正直、当たってほしくなかった。
 それでもここから味方打線がつながり、最終回に5打席目が回ってきた。ランナー一塁でマウンドは速球派の中里篤史に変わっていた。中里はこの日も140キロ後半を連発しており、楽しみな勝負である。
 まず、初球が外にボール。2球目も外に外れた、と思いきやコールは「ストライク」。一瞬「えっ」という表情を浮かべた岡田だったが、次の真ん中やや外寄りのボールをファウル。残念ながらここで結果が見えた。
 最後は外で目をつけられていたところへ、力のある真っ直ぐをインコース一杯に決められ空振りの三振。完全に手が出ず苦し紛れのスイングに終わった。

      

カウント球を捉える技術を!

 いい内容ならば、試合後、少し話を聞きに行こうかと思っていた。振り返って3本のホームランの話も聞きたかった。
 しかし、この日の感じ、特に最後の形では、本人の口も相当重いだろう、と思い断念。今の岡田にとっては、終わった3発より今日の反省だろう。まだまだ一進一退が続く。
 この日の打席を見ながら、改めて思ったことがある。それは、当たり前のことだが、追い込まれると苦しいということだ。ホームラン量産の一因について、僕は先に〈これまでファウルになっていた甘い球を確実にとらえられるようになったのでは?〉と書いた。逆にそこで捉えられないと、今日のような結果になってしまうということだ。これは岡田に限ったことではない。

 例えば、今、1軍で打ちまくっている岡田の“ライバル”カブレラも同じこと。下記にカブレラのカウント別の打率を記してみる。
 9日の試合終了時点での打率は.320。それでも、追い込まれたときの数字は、見てのとおりかなり打率が下がっている。

■カブレラ(オリックス)のカウント別打撃成績
 (YAHOO! スポーツより)

080911_cabrera今季オリックスに移籍。シーズン後半の快進撃に貢献するカブレラ(写真は西武時代)

 0-0 62打数29安打 .468
 0-1 26打数11安打 .423
 0-2 18打数6安打 .333
 0-3 3打数1安打 .333
 
 1-0 21打数11安打 .524
 1-1 44打数18安打 .409
 1-2 24打数10安打 .417
 1-3 9打数2安打 .222
 
 2-0 31打数6安打 .194
 2-1 67打数14安打 .209
 2-2 97打数24安打 .247
 2-3 48打数12安打 .250

 これを見ると、追い込まれるといかに打者不利になるかがよくわかる。
 この傾向はほぼどの選手にも当てはまり、チームメイトのローズなどはさらに顕著で、2-0(.136)、2-1(.228)、2-2(.148)、2-3(.155)となる。逆に言えば、カウントを取りにくる時は甘い球が多いということなのだ。
 まして、岡田は彼らほどの技術は持っていないのだから、追い込まれるとさらに苦しいのは当たり前。だからこそ、早めの勝負で、まずは甘いボールを確実に捉える確率を上げていきたい。

 この日の最終打席でも、三振に取られた最後のボールは中里のベストピッチ。あれは1軍の打者でもそうは打てないだろう。
 それより、反省すべきは甘いボールをファウルにした3球目。他の打席で言えば、1打席目の2つのファウルもそうだし、2打席目もファーストストライクを打ち損じた。
 甘いボールを捉えるためにはどうしたらいいか? もちろん、技術的なこともあるだろうし、好球に「来た!」と体に力が入ってしまうとしたら、気持ちのコントロールも必要かもしれない。
 とにかく「そこ」を求めて必死に考えて欲しい。

080911_okada_running「追い込まれる前の甘い球を捉える」は全ての打者に共通するテーマ。岡田にも当然意識してほしい課題だ

       

■2008年ファーム成績(9月10日現在)
76試合 238打数51安打 5本塁打 21打点 33四死球 63三振 打率.214

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は9月21日頃の予定です。

2008-09-02

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第87回-

Okada_080902top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回が87回目です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

      

喜びのあまり、まずは筆者の「デスマス」調あいさつから…

 先に書いておきますが、今回は久しぶりにいい報告が出来ます!
 前回の更新以降、少ない出番の中で岡田選手のバットから3月以来となる3号、4号が飛び出しました。ほんとに久しぶりです。
 早速、その話に行きたいところですが、僕が観戦したのはその2発が出る前の24日の中日戦(あじさいスタジアム)。まずは、そこから振り返り、最後に「2発」の話を書きたいと思います。

        

開幕直後に近い感じ

Okada_first080902「開幕直後に近い感じがあった」という阪神戦以降、復調に向きはじめた岡田

 ナイトゲームで行われた中日戦の試合前。フリーバッティングのあと、ベンチ裏で軽食中(確か冷やしうどん)だった岡田をつかまえた。
 顔が会うと一瞬バツの悪そうにニヤッと笑った岡田。こちらもそんな感じだ。会いには来たものの、いざ会ってみると、さて改めて何を聞こうか、という感じだからだ。本人にしても何を話したらいいか…、という気分だろう。5月頃からは本当に長い、長い低迷が続いている。この日はどんな話になったのか…。

谷上 8月も終わりになってきたけど、最近は?
岡田 ちょっといい感じはあったんですけど。
谷上 それは?
岡田 高松の阪神戦の時に開幕直後に近い感じがあったんです。
谷上 スタメンで3打数1安打(1四球)の時(20日)。
岡田 そのへんですね。どういう感じっていうのは、上手く言えないですけど、感じは良かったんです。
谷上 で、そこから…。
岡田 今も悪くないですけど、なかなか出番が…。今、野手の人がすごく多いんです。
谷上 そんなレベルじゃ困るんやけど。野手が多くても、少なくても一番は自分の調子の問題やから。でも、シーズンもあと少しやで。
岡田 20試合くらいですね。気分的にはかなり焦ってますけど。ここからはもうあんまり入れ替えもしないように聞いてるし…。
谷上 1軍も3位争いの真っ最中やからなあ。でも、もうホームランの感触なんか忘れたんちゃう?
岡田 忘れましたねえ。かなり前すねえ。
谷上 3月やもんなあ。でも、感じが悪くないなら、今日楽しみにしとくわ。
岡田 でも、今日も出ないと思いますよ。
谷上 あっ……。ま、とりあえず見て帰るわ。

     

Okada_centre080902センターでシートノックを受ける岡田(右は相川良太)

スタメンに岡田の名前はなし

 試合前のシートノックでは相川良太と2人でセンターの守備に入っていた岡田。ただ、センターの守りを勉強させようというより、他の選手との絡みでセンターに回されたという印象だ。
 そして、発表されたスタメンメンバーの中に、やはり岡田の名前はなし。大引啓次、一輝、古木克明、相川、牧田勝吾、そして迎祐一郎…。並ぶ顔ぶれは完全に1軍予備軍だ。
 何かあった時に、クライマックスシリーズ進出をかけて戦う1軍の戦力となれそうな面々をスタンバイさせている感じ。残念ながら、今の岡田に、その役割を期待されることはない。だから出番も少なくなる…。
 さて、オルティズ、佐藤亮太の両先発で始まった試合は快調なテンポで進んだ。その中で2回にサーパスが牧田の2ランで先制し、中日が4回に新井良太の2ランで同点。5回に再びサーパスが6安打を集中し5点を追加して突き放すと、投げてはオルティズ、ヤング、コロンカの「豪華リレー」で相手打線を封じた。そして8回にダメ押しの3点を奪い勝負あり。
 その8回に岡田が代打で打席に立った。

      

打席での雰囲気は悪くない

 先頭の5番相川がライト前ヒットを放ったあと、牧田に代わり登場した岡田。
 とにかく1打席でも立ってくれれば、来た甲斐もあったというもの。今の感じはどうなのか。打席でどう見えるのか、と注目した。
 相手のマウンドには6回から中日3番手で登板の吉見一起。ところが、この吉見がストライクが入らない。初球ワイルドピッチのあと、内外に投げ分けるもベースの上を通らず、結果はストレートのフォアボール。せめて振るところを見たかったが、それでもネット裏最前列からかぶりついて見た印象は〈悪くない〉。

Okada_batting080902吉見一起と対戦する岡田。いい雰囲気の四球を選んだ
 今書くと、あとに飛び出す「2発」を受けての後出しジャンケンみたいになるが、確かに〈打つんじゃないか〉という雰囲気を感じた。雰囲気としかいいようがないが、悪い時は下半身が軽く感じられ、上体に力も意識もいっている感じを受ける。
 しかし、この日は上体の力が抜け、重心が落ち、下半身の安定感を感じた。ストレートのフォアボールの結果は、吉見がそんな気配を感じたからだったかもしれない…、と勝手に解釈しておいた。

       

待望の3号、そして4号

 その夜はこの1打席のみの観戦で終わったが、2日後、由宇で行なわれた広島戦で待望の一発が出た。3月23日以来の第3号だ。
 僕が結果を知ったのは翌朝のこと。朝一番の便で高知へ向かっていた機内のスポーツ新聞で確認した。
 スコアと打撃成績のみが小さく載っている記事の中に「岡田3号(7回、長谷川)」。それを見た時、一気に目が覚め、そして、1週間前の打席が蘇った。あの雰囲気で待っていたところに甘い球がきた。そして飛んでいったのだろう、と。
 さらに…。今度は31日の午後。
 所用で近くの不動産屋にいて、店員の話を聞いていたところに、岡田の父・秀和氏から連絡が入った。携帯の表示で「岡田秀和」の名前と同時に時刻も確認。13時47分…その日は13時から淡路島でソフトバンク戦が行なわれており、これはいい報告と確信した。
 電話に出ると同時に「打ちました?」と尋ねると「はい。センターに」と、喜びの声。聞けば相手は大場翔太で、スコアボード直撃の当たりだったそうだ。センターに大きい当たりが出るのは好調のサインで、いいイメージがとんどん膨らんだ。
 実は、僕も前日の夜まで大阪から淡路行きの高速バスの時間を調べ、観戦に向かう可能性があった。しかし、原稿が片づかず、結局断念。久しぶりに見たかったなあ…、と悔やみつつ、しかし、それよりも中6日での第4号に気持ちが昂ぶった。

      

Okada_running080902好調になると、ボールの見極めもよくなるし、相手投手も必要以上に警戒する。四球が増えているのは好循環のきざしだ

四球の多さからも復調を実感

 おそらく、これまでなら手は出すもののとらえきれず、多くがファウルになっていた打球が、確実にミートされ始めたように思う。
 改めて、24日に話を聞いた時、本人が「開幕直後に近い感じがあった」という高松での阪神戦以降の数字を見直してみた。
 その阪神との2連戦が3打数1安打(1四球)、1打数0安打。23、24日の中日戦が出番なしと代打で1四球。26日の広島戦が4打数2安打、1本塁打。日程が空いて30日からのソフトバンク2連戦が3打数0安打(1四球)、3打数1安打、1本塁打(1四球)。限られた出番の中で、結果を残している。
 そして、数字から見える特徴がもうひとつ。四球の数だ。
 20日以降、18打席に立ち4つの四球を選んでいる。高松での試合前、つまり19日時点での岡田のフォアボールは66試合、240打席で27個。つまり8.9打席に1つだった。それがこの10日では4.5打席に1つと“急増中”だ。
 原因として考えられるのは

 ①好調でボールがよく見えている
 ②フォームの中でしっかり“間”が取れているから最後までボールの見極めが出来る
 ③そんな打席での雰囲気を感じ相手ピッチャーの攻めが慎重になる

 こういうことだろう。やはり、四球の数からも好調が伝わってくる。何かが変わってきている。

Okada_080902end  この「何か」を確認しようと、31日夜に本人に電話をかけてみたが、更新までに連絡がつかなかった。ここは次回取材時に確認するとして、シーズンの終盤にようやく楽しみが出てきた。
 〈もっと早く打っておけば…〉という声も〈ここから打っても、もう1軍は…〉という声もなしだ。とにかく今はバッティングレベルを上げて、自分の形をつかんでいくのみ。遅いも早いもない。久しぶりの2発が、変身、大きな成長の前兆であることを信じ、引き続き終盤戦の岡田を追い続けたい。

       

■2008年ファーム成績(9月1日現在)
72試合 223打数47安打 4本塁打 18打点 32四死球 58三振 打率.211

    

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は9月11日頃の予定です。

2008-08-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第86回-

080822okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で86回目の更新となりました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

      

住友平コーチの岡田評

080822okada01円陣を組んでミーティングのサーパス選手たち。中央やや右側に岡田が真剣に聞いている姿が確認できる

 夏の甲子園も終わった8月20日。サーパスが高松で阪神相手にナイトゲームを戦っていた頃、僕はスカイマークスタジアムにいた。楽天戦の試合前に本柳和也の取材があり、そのまま残ってゲームを見ることにしたのだ。
 試合前の練習をグラウンドレベルで見ていると、住友平ヘッドコーチと話す時間があった。クライマックスシリーズ進出の芽が十分見えてきたチームの話を聞いたあと、コリンズ監督辞任の5月半ばまで、2軍監督として見ていた若手の頑張りに話が向いた。
 その話も一段落となったところで、こちらから岡田の名前を出した。すると、住友ヘッドの顔がちょっと渋くなり…。
「そうなんや。そこなんやなあ。こっち(1軍)に上がってきてからも気になってるんやけど、どうしたもんかなあ。普通は1年目より2年目、2年目より3年目と上がってくるんやけどなあ…。う~ん…」
 前にも書いたが、昨秋の段階では、当時2軍監督だった住友氏の口から「このオフは55番と65番(近藤一樹)や」と、期待の若手野手筆頭として岡田の名前が上がっていた。それだけ昨シーズン終盤は好調だった。
「そうなんやなあ、あそこから行ってくれたらよかったんやけど。どうしたら上がってくるか、もういっぺん考えなアカンわ」

        

080822okada02マシンを相手に打撃練習中の岡田。今は何よりも浮上のきっかけが欲しい

「ナニクソ!」よりも「これだ!」タイプの岡田

 また、ある球団関係者とも岡田の話になった。僕が岡田の取材をしていることも知っているその人からは「どうですか?」と逆取材を受けたが、今度は僕がうなった。「う~ん、なかなか…」のあと、言葉が続かなかった。
 するとその人がこんなことを言った。
「それぞれ性格があって、岡田もそこを言われたりしてるんでしょうけど、基本的に性格は変わらない。岡田みたいなタイプは、周りを見て『アイツもやってるからから俺も!』『アイツにだけは負けたくないから俺も!』と、なりにくいタイプじゃないですかね。そういう刺激より、どこかでポッと自信を持てる一打とかプレーがあれば、そこからグッと伸びるんじゃないですか」
 聞きながら、確かに、という気になった。

 僕もこれまでこのブログで、同じサーパスで戦ってきた選手が1軍で頑張っているとか、他球団の3年目の選手がどうだとか、名選手の多くは3年目に1軍で結果を出しているとか…、アレコレ書いてきた。本人がこの記事を目にしているかどうかはともかくとして、もっと頑張れ! まだまだ練習しないと! という、意味を込めていた。
 しかし、岡田は確かに、―もちろん持ってはいるのだが―必要以上に他の選手の活躍をエネルギーに変えて「ナニクソ!」となるタイプではない。僕もそこは感じながら、それでも何とか刺激になれば、と書いてきたが、岡田の浮上に必要なのは、そういうことよりも小さな自信のようだ。
 必然でも偶然でも、何か本人が「これだ!」「これかもしれない!」と思える自信を持つことができれば、そこからグッと上がってくるのではないか。

 そんな話になり、先の人とも「そうですね」とはなったのだが、では、どうすれば岡田が自信を持てるのか。最後は「僕らではどうにも…」ということになり、結局、何ということのない話なのだが、他の選手の名前を無闇に出して煽るのは止めようか、という気になった。
 もちろん、時と場合にはよるが…。

      

Kiyohara01今シーズン限りの引退を決めた清原和博。最終打席に向け、その一挙手一投足に視線が集まる

清原の存在感

 さて、この日観戦した試合はオリックスが5対4で勝利を収めた。
 だが、球場が一番沸いたのは、勝利の瞬間でも、史上最速となるカブレラの300号が出た時でもなく、やはり…。8回裏に清原和博の名前が代打でコールされた場面だった。
 この日の観衆は15,287人で、大入りというわけではなかったが、「おおっー!」という喜びと驚きと期待が入り混じった大歓声は相当なものだった。
 結果はフォアボール。それが貴重な5点目につながったのだが、それはここではいい。清原登場に沸いたスタンドを見て思ったのは、当たり前のことだが、ファンはスターを見たがっているということだ。
 今のスタメンで言えば、坂口智隆に対する歓声が一番大きい。坂口は全力プレーのスタイルが好感を持てるし、見ていて楽しい。もちろん、1番打者としての安定感も出てきて、まだまだ伸びていくだろう。そこに小瀬浩之や、ようやくファームで実戦復帰した大引啓次らが絡めば、楽しみな顔ぶれも揃ってくる。

Kiyohara02 「代打・清原」が告げられ歓声が沸き上がるスタンド。手前の座席に人がいないのは、清原を間近に見ようとネット付近に人が移動してしまったためだ
 ただ、その中を見渡してみて決定的に欠けているのが、日本人で中軸を打てる主砲だ。これは今のオリックスをどこからどう見ても、岡田意外に候補者が見当たらない。
 なんとか、近い将来、この夜の清原のように、ファンの大きな声援をバックに打席に立つ岡田を見たいものだ。

      

今後への期待

 前回の更新以降、サーパスの公式戦は元々3試合しか組まれておらず、そのうち雨で2試合が中止。行なわれたのは20日の阪神戦と、12、13日の九州社会人連合チームとのプロアマ交流戦の計3試合のみだった。
 まず、交流戦の2試合はどちらもサーパスが大勝の中、岡田は5打数3安打、6打数1安打。こういうところでまとめてホームランでも出れば、岡田本人も、また僕らファンもちょっとは元気が出るのだろうが、残念ながら一発はなし。
 そして、高松のサーパススタジアムで行なわれた阪神戦は3打数1安打、1四球。完封負けの中で2度の出塁。無理やりにでもこの一点を好材料ととらえ、また次に期待したいところだ。
 次回は雨などで予定が狂わなければ、観戦レポートをお届けする予定なのでそちらもまた期待していてもらいたい。

        

■2008年ファーム成績(8月21日現在)
67試合 212打数44安打 2本塁打 16打点 29四死球 55三振 打率.208

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は9月1日頃の予定です。

2008-08-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第85回-

080811okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日85回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

         

フレッシュオールスター出場

 8月17日の決勝戦までは甲子園にほぼ缶詰状態のため、岡田“生”観戦はしばらくお預け。そんな中、テレビを通し、プレーを見ることができたのが8月2日に山形で行なわれたフレッシュオールスターだ。
 前回の更新日となった1日の午後、取材先に岡田の父・秀和さんから連絡が入り、今回の出場を知った。当初、出場が予定されていたチームメイトの柴田亮輔が、7月30日の阪神戦で足を故障。そこで急遽、代役として岡田が指名されたというわけだ。フレッシュオールスターなので素直には喜べないが、2年ぶり2度目の出場だ。
 一報を聞いた時に、まず思ったのは、今の岡田の調子と1年目にも出場しているという状況からみて、おそらくベンチスタートになるだろうということだ。となれば、打席に立つチャンスは1打席が濃厚。そこで、久しぶりに岡田に連絡を入れ、「3つ空振りでいいから、とにかくフルスイングを!」と伝えようかと思った。
 しかし、もうちょっと気の効いたアドバイスや激励ならともかく、わざわざ電話するほどでもないかと思い直し、結局断念。わざわざ言わなくとも、岡田も出番があればホームランか三振のつもりで思い切り振るだろう、と思い直した。

            

3打数ノーヒット…

080811okada022度目の出場となったフレッシュオールスターでは3打席立ってノーヒット。今年の調子を象徴する結果となった

 試合当日、僕は甲子園で開幕した高校野球の取材だったため、家に戻ったのは夜の8時過ぎ。そこからTV中継を見ても中途半端になるので、ビデオの録画終了を待って、10時前から腰をすえて見た。
 そこで驚いたのが「5番・ファースト」での先発出場だったことだ。これはチャンス。俄然、僕の気持ちも盛り上がり、東京ドームで一発を放った2年前の再現を期待した。
 第1打席は1回、2死一、二塁の先制機(打席の間にダブルスチールで二、三塁)で回ってきた。イースタンリーグの先発は唐川侑己(ロッテ)。打てば自信にも話題にもなる相手だ。
 しかし、オールストレート勝負で、1-2からのボールは真ん中近辺にきていながら、結果はファーストゴロ。当たりは悪くなかったが残念…。
 第2打席は4回の先頭打者として登場。相手はルーキー阿斗里(シーレックス)。ここもオールストレート勝負で挑んできた中の5球目、141キロの外寄り高目の球を打ってセンターフライ。バットを合わせたといった感じの平凡な当たりだった。
 残念ながらこのあたりで交代だろう、と思っていたが、実際にはそうはならず、6回表に3打席目が巡ってきた。マウンドは2年目の木村文和(西武)。ここで1球だけスライダーがあったが、最後は2-1から5球目となる外のストレートをすくい上げレフトフライに終わった。
 ということで、結果は3打数ノーヒット。全14球中、13球がストレート。しかも、甘いコースもあったが、とらえられなかった。
 特に2、3打席目はボールに合わせるような形。フルスイングでなかったことが何より物足りない。中途半端な打球に終わるなら、空振りでいいから自分の形で思い切り振ってほしかった。
 振ることで相手投手もプレッシャーを感じ、その結果、甘いコースに来る確率が高まるかもしれないのだ。

        

下半身の重要性

 ただ、振りたくても振れない、あるいは、振っているつもりでも、もうひとつ鋭さや力強さがスイングに出てこないのかもしれない。だとすれば、気持ちだけでなく、やはりフォームが問題だろう。ずっと見ている感想だが、打席に入る前の素振りから、どうしても岡田の場合は上体の強さが目立ってしまう。
「バッティングは下半身。下半身をしっかり使えば、バットは振るものではなく、勝手についてくる」
 この種の言葉はどの段階の指導者からもよく聞くが、僕が見てもここまでの岡田は上半身で振っている印象が強い。  

 以前、PL学園の元監督で現在、名古屋商科大の監督を務める中村順司氏からこんな話を聞いた。中村氏は高校へ入学した選手たちに下半身でバットを振る大切さを実感させるため、あることをさせていたという。何かと言うと、腕立て伏せの姿勢のまま10分、20分と時間を取らせるのだ。すると、選手の腕が震え出し、やがては支えられなくなったダウンする。そこで中村監督はこう言ったそうだ。
「腕がどれだけ弱いかわかったか?逆に足は1時間でも2時間でも体の重さを支えて立ってられるじゃないか。じゃあ、どっちを使ってバットを振れば力強い打球が飛ぶか、わかるよな」
 あくまで一例だが、下半身の大切さを伝えるわかりやすい話ではないか。

 岡田も「下半身を使うことが大切」ということは十分わかっているだろう。しかし、そこを徹底的に考えてほしい。
 上半身の意識を捨て「下半身の回転につられてバットはついてくるもの」、という感覚を感じてほしい。下が上手く使えるようになり、持っている力が足から腰、胴、そして腕からバットへ伝わり、最後にインパクトに集約されれば、それは凄まじい打球を飛ばせるのだから。

      

ウエスタンリーグは後半戦が開幕

 イースタンリーグの大勝に終わった試合の中で、ウエスタンではサーパスの吉良俊則が一発を放ち優秀選手賞を獲得した。
 吉良は実働年数としては今回のウエスタンで最長となる5年目。岡田以上にあとがない状態だけに、お祭りとはいえ、必死にボールに食らい突いた結果だろう。
 試合終了後、その吉良も登場した表彰式を、ベンチからぼんやりと眺める岡田の姿が一瞬、画面に映った。この夜もきっかけを見つけることはできず、さすがに晴れない顔をしていた。

080811kira01 フレッシュオールスターで優秀選手賞を受賞した吉良俊則。岡田と同じく打撃で1軍昇格への活路を見出したい選手だ

 フレッシュオールスター後、5日からは公式戦が再開された。後半戦初戦のソフトバンク戦(あじさい)は3打数ノーヒット、1四球、1三振。8日、9日は出番がなく、10日の中日戦(ナゴヤ)は途中出場で2打数1安打、1四球、1三振。残念ながら、今回も明るいニュースは届けられなかった。
 このブログに関し、編集部内や一部読者から、今度のあり方についての意見をチラチラと聞くようになってきた。まとめると「一度、どこかで一区切りをつけるか、何かニュースがあった時の不定期更新にしては?」といったものが多い。当然の反応だろう。
 しかし、僕の中ででは、区切りをつけるとしたら、やはり、それは岡田が1軍に定着した時。僕の中にも、内容の詰まった記事を伝えられないもどかしさはあるが、そう遠くない時期に必ずいいニュースが伝えられると信じ、極力、“その時”まで続けていきたいと思う。
 今の1軍メンバーを見ても、本当にちょっとしたきっかけで浮上のチャンスをつかめる可能性はあるのだから。

        

■2008年ファーム成績(8月11日現在)
66試合 209打数43安打 2本塁打 16打点 28四死球 55三振 打率.206

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は8月21日頃の予定です。

2008-08-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第84回-

080801_okada_fealding2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日84回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、途中から急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

        

なんとも寂しい初球エンドラン

080801_okada_top7月30日のウエスタンリーグ阪神戦。途中出場の岡田の打席の初球は、なんとヒットエンドラン。結果はセカンドフライだった

〈エンドランって…、古屋さん(英夫・サーパス監督)…〉
 力なくセカンド上空に上がった打球に、ネット裏で前屈みになりながら見入っていた体から一瞬にして力が抜けた(左上写真)。
 7月30日の鳴尾浜球場で行なわれた阪神戦の7回表。得点は0対0、1死一塁の場面で、6回裏の守備から途中出場していた岡田の初打席だった。岡田の中でもMAXに達しているだろう、焦り、苛立ち、不安…、そんなモヤモヤを晴らすチャンス。試合の均衡を破る一発、浮上のきっかけとなる一打を本当に期待した。それが、わずか1球で終わりとは…。
 その回からマウンドに上がった橋本健太郎は制球が安定せず、1死を取ったあと、2番・柴田亮輔にフォアボールを出し、ここで岡田だった。狙い球を絞ってじっくり、という場面。
 ところがその初球、いきなり柴田がスタートを切った。そして、岡田が手を出したのは外角寄り低めにきた落ちるボール。非常に難しく、見送ればおそらくボールになる球を右手1本で拾った打球は力なく二塁ベース付近に上がり、期待の打席はあっけなく終わった。
 コントロールが定まっていない橋本に対する初球の仕掛けには、冷静になったあとも疑問が残る。実際、橋本は岡田のあとの古木克明にもフォアボールを出すなど、間違いなく荒れていた。
 しかし、何より残念なのは、同点の終盤、1死一塁という場面で、ベンチが岡田にエンドランのサインを出したということだ。今の岡田に〈じっくり打たせよう〉という信頼はベンチにない。長打より、最悪でもランナーを進めてくれれば…、と思われている実情を見て、成績を見れば仕方ないと思いつつ、何とも寂しい気持ちになった。

        

1軍クラスがずらり並ぶサーパス

 調子が上がらない中では、制約つきの打席が増えてくる。この日のように何らかの策を授けられたり、途中出場の中で結果を求められたり…。前回の更新以降、岡田は4試合中3試合が途中出場で合計でたった5打席、しかもノーヒットという成績だった。

080801_okada_starting_lineup この日のサーパスのスタメン。3番後藤光尊から6番の木元邦之まで、1軍経験豊富なメンバーが並ぶ
 最近のサーパスのスタメンには、1軍クラスがズラリと並んでいる。濱中治がレフトに入り、故障から復帰の後藤光尊がセカンドに入っているため、木元邦之がファースト。結果、岡田の先発出場の機会は減ったわけだが、状態が上がってこない現状では、起用についてどうこう言えるものではないだろう。
 1軍ではサーパス組が次々に活躍し、プレーオフ進出の可能性も感じさせる好調ぶりだが、そんな一方で、岡田の置かれた状況は日に日に厳しさを増すばかり。この中でどう存在感を出していくのか…。
 観戦日は家を出る前にイチローが日米通算3000本安打を達成。今年はイチローを見るたびに、岡田との自主トレ風景を思い出すが、「ペタジー二みたいだよね」と岡田を評した声が今も耳に残っている。
 そのイチローは今の岡田と同じプロ3年目に日本プロ野球史上初の200本安打を達成した。まさにこの時期は日本列島にイチローフィーバーを起こしていたのだ。
 う~ん…。

       

「死に物狂い」の姿勢を再び

 さて、試合の方は8回表に濱中のセンター前タイムリーで挙げた1点をオルティズー岸田護の豪華リレーで守り切り、サーパスが勝利した。
 実は9回裏、阪神の先頭バッター坂克彦がツーベースで出塁する場面があった。同点になれば10回表にもう1度、岡田に打席が回ってくるはずで、この時ばかりは、思わず阪神の粘りに期待してしまった。
 が、そうそう都合も良くは進まず、ゲームセット。

 勝利の瞬間、一塁を守っていた岡田の顔にも喜びの表情が浮かんだ。
 マウンド付近に集まると、他のナインと笑顔でハイタッチも交わしている。しかし、その心は何一つ晴れていなかっただろうし、悶々とする中でまた1日が過ぎただけだ。
 試合前の練習、そして、試合中もベンチ前列に座る岡田を見ていた。声は他の選手に比べよく出していたと思うが、まだ、伝わってくるガムシャラさが弱い。
 元来の性格もあり、岡田は調子が出ないと「もっと元気を出せ!」と言わてしまうタイプだ。しかし、そんな先入観を差し引いても、もっとなりふり構わず、今年の目標に自身で口にした「死に物狂い」という姿勢をもっと見たい。そういう中から何か変わるきっかけも生まれてくるはずだ。 

080801_okada_in_benchベンチで声を出す岡田。闘志を内に秘めるタイプだが、少しでも死に物狂いの姿勢を表に見せて欲しい

 8月2日からは夏の甲子園が始まる。その取材のため僕の岡田観戦も次は甲子園後で、下手をすると8月後半となるだろう。
 閉幕が早いファームでは、すっかり終盤戦だが、次に会った時には、何か変化を見たい。

※このブログ更新のあと、故障の柴田亮輔の代役として、岡田にとって2度目となるフレッシュオールスター出場が決定した(8月2日山形)。過去、本塁打を放って優秀選手賞を獲得した場に再び登場することで、復調のきっかけをつかむことを期待したい。

        

■2008年ファーム成績(7月31日現在)
64試合 204打数42安打 2本塁打 16打点 26四死球 53三振 打率.206

   

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は8月11日頃の予定です。

2008-07-22

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第83回-

Okada080722top  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日83回目の更新です(更新が送れまして大変ご迷惑をおかけいたしました)。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

        

小瀬浩之の活躍

 早いもので岡田がプロの世界に入って3度目の夏がやってきた。
 気温は上がる一方だが、ゴジラのバットはなかなか上昇気運に乗ってこない。状況は厳しいままだ。
 このところ連日高校野球の取材で出回っていたため、サーパス戦が観戦できないでいるが、残念ながら状況に大きな変化はなさそうだ。

Oze_in_kinkiuv080722俊足巧打を武器に1軍昇格を果たした小瀬浩之(写真は近畿大時代)

 そんな中、現在のオリックスではサーパスからの昇格組の頑張りが目立っている。
 先日はルーキーの小瀬浩之がお立ち台に立った。濱中治と入れ替わりで15日に1軍初昇格を果たすと即スタメンに抜擢され、4試合連続先発で出場した。19日の日本ハム戦では走者一掃のツーベースを放つなど攻守に活躍したことで、初のヒーローインタビューとなったのだ。
 そんな小瀬を近畿大時代に取材した際、岡田の話をしたことがある。
 というのも、高校時代、55本のホームランを放った岡田の第1号の相手は、小瀬がいた当時の尽誠学園だったからだ。履正社が香川にある尽誠学園のグラウンドに遠征した時に飛び出したもので、打球はライト後方にある高い木のところまで飛んでいった。この一発に尽誠の関係者が「あそこまで飛ばしたのは佐伯(貴弘、現横浜)以来」と言ったという特大弾だ。
 当時、小瀬は3年で岡田は1年。小瀬の中に「岡田貴弘」の名前がインプットされることはなかったそうだが「ああ、デッカイの打ったヤツいましたね」と、その弾道は頭に残っているようだった。
 些細なエピソードだが、小瀬と言えば、この話を思い出す。

 この小瀬が昇格する直前、共にサーパス戦に出場した清原が「デビュー当時のイチローみたいや」と小瀬を評し、そのコメントが関西圏の新聞にも載っていた。
 思えば岡田も昨年のキャンプでドラフトの注目だった中田翔(当時、大阪桐蔭)と絡め、清原が「ウチにもすごいのがおる。2人でON砲や」と宣伝していたものだった。
 今の岡田は清原の目にどう映っているのだろう。何もその評価が大事なわけではないが、思わずコメントしたくなるような、記者が聞きたくなるような活躍を見せてほしい。

       

Makita080722小瀬の他、一輝や森山周、牧田勝吾(写真)らも次々と昇格。岡田も調子さえ上向けばチャンスはあるはずだ

動き始めた「サーパス世代」

 その小瀬の4試合連続先発出場後、代わってレフトでスタメンに起用されたのが相川良太だ。
 迎祐一郎に代わって1軍昇格すると、相手先発が左ということで20、21日と即スタメン出場。このあたりは大石監督代行流の積極的な起用法という感じだが、ファームでは岡田と2人、規定打席に達していたのが相川だ。その成績は打率.270で本塁打が8本。投手陣も含めファームとの入れ替えが徐々に活発になっている今、岡田も状態さえ上がってくればすぐチャンスは巡ってくるはずだが、なかなかそこまでいけていないのが現状だ。

 今回の小瀬や一輝、森山周、牧田勝吾らの活躍の一方で、18日に田中彰がトレードで広島に移籍することが決まった。田中は法政大4年の東京六大学秋季リーグ戦で7本塁打を放ちシーズン本塁打記録を更新。右の長距離砲として期待され2004年にドラフト5巡目で入団した選手だ。
 年齢的には岡田より5つ上になるが入団4年目。今回のトレードは岡田にとっても大いに刺激されるものだっただろう。結果が出なければ、明日は我が身である。
 前回の更新以降、サーパスでの岡田の成績は、4-0、出場なし、1-0(代打)、5-2、3-0、2-2、4-0、3-0。8戦で22打数4安打。
 観戦できていないので状態については言えないが、サーパスは残り22試合。大きな好調の波が早く来てほしい。

           

「考えること」のススメ

 岡田には、技術を求める一方、同時に鍛えてほしいのが頭だ。一流選手は例外なく野球を考える頭に優れている。
 11日に昨年まで日本ハムのピッチングコーチを務めていた佐藤義則氏を取材した時のこと。話がひと段落したところから「二流と一流のバッターの違い」という話になった。元ピッチャーの佐藤氏なので、もちろんピッチャー目線からの話だが、いくつかの技術的な話のあとで頭の話になった。
 噛み砕いて言えば、状況を頭に入れて打席に立っているかどうか。相手バッテリーの心理に立って配球を考えられるかどうか、それが一流のバッターの条件だそうだ。このあたりの観察力や読みが欠けていると、「いいもの」を持っていても間違いなくバッティングの確率は下がるという。

080722saatoyoshinori投手として、またコーチとしても輝かしい実績を持つ佐藤義則氏

 昨年、39歳で本塁打と打点の二冠王に輝いた山崎武司(楽天)が野村克也監督によるID野球のもとで開眼した話は広く知られるようになったが、それがまさにいい例である。一流のバッターになるには、技術の一方で頭も磨かなければならないということだ。
 ただ、身近に野村監督のような人物がいない場合は、自分で鍛えるしかない。「プロだから…」という妙なプライドは捨てて、本を読むなり語れる人を探して聞くなり、思いつくことをすればいい。
 日本の場合、球団数も少なく、対戦する投手(捕手)も決まってくる。配球を考えることでのプラスは小さくないはずだ。
 「決め打ち」「ヤマを張る」というのではなく、野球を深く考える入り口としての配球。打者目線、自分本位ではなく、逆の立場、投手目線に立っての配球。岡田も技術を磨く一方で頭も鍛えて、何とか上昇の兆しを見せてほしい。

■2008年ファーム成績(7月21日現在)
60試合 199打数42安打 2本塁打 16打点 26四死球 50三振 打率.211

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は8月1日頃の予定です。

2008-07-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第82回-

080711maishima_bbs 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で82回目を迎えています。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

        

髪を切り、スッキリと

 更新日となる11日夜。東京から戻る新幹線の中で携帯サイトを見ていると、雁ノ巣でのソフトバンク戦で清原が一発を放ったという記事があった。
 前日の復帰戦の姿を夜のニュースで見ても、前回の復帰時よりしっかり振れていた印象で、故障の再発さえなければそう遠くない時期に1軍に上がるのではないか。清原に関しては扱いが違っても仕方ない。

 そんなニュースの一方で岡田だ。
 前回更新で書いた1日、京セラドームでの親子ゲームに続き、2日の阪神戦も観戦した。
 場所は岡田にとっての思い出の地「舞洲ベースボールスタジアム」。履正社時代のラストゲームで中田翔から高校通算55号を放った場所で、浮上のきっかけをつかんでほしいと思い、連日の観戦に向かった。
 到着してすぐサーパスのシートノックが始まったが、ファーストの守備についた岡田を見て「オッ」となった。髪を切っていたのだ。鼻下のヒゲはなくなり、顎ヒゲは残したものの形はスッキリ。随分とサッパリした印象を受けた。
 たかが髪型、たかがヒゲだが、そうばかりでもないこともある。

080711okada_fielding髪を切り、ヒゲもコンパクトに整え、だいぶスッキリした印象でプレーする岡田

 少し前になるが、あるチームの編成担当者とサーパス戦を観たことがある。
 僕が岡田を追いかけているという話になると、その人は岡田の「見た目」について話し出した。端的に書けば、ヒゲもよくない、陽射しよけにかけることのあるサングラスもよくない。まず、そういうところから改めていかないと、ということだった。
 それ相応の年齢の人なので、今時のスタイルに馴染まないということはある。しかし、チームの監督やコーチとしている人はだいたい40、50代、あるいはもっと上の人なのだ。なら、その人たちが好まないスタイルをしていても、選手にとって何の得もない。
 それは、そんな見た目なんか関係ないくらいに結果を残せるなら、何も問題ない。そのまま1軍に行って、好きなスタイルでやればいい。
 しかし、ファームにいるということは、まだ力が足りない、言えば半人前なのだ。一人前になるまでは、俗に言う「見た目を気にする暇があったら、素振りのひとつもしたらどうなんだ?」と言われても仕方ないだろう。
 ともかく、スッキリした岡田には僕も素直に好感を持った。僕もオッサン世代ということだが、いずれにしても損はないはずだ。

       

久しぶりにいい打球が出た

 さて、試合だ。
 阪神の先発は杉山直久で、岡田は8番ファーストでの出場。いくら調子が出ていないとは言え、8番とは…、と思ったが、ぼやいても仕方ない。2死三塁の先制のチャンスに回ってきた1打席目は1-1からのスライダーにファーストゴロ。杉山の決め球とはいえ、このときは内を狙ったボールがやや甘く入ってきたのだが、とらえ切れなかった。
 残念ながら昨日の続きを見ているような1打席目だったが、続く2打席目。一塁側に移動して見ていたところ、ライト線へ久しぶりにいい打球が飛んだ。
 フェンスの奥までいったので打球がどこで落下した瞬間はよく見えなかったが、ワンバウンドかツーバウンドでフェンスに達するツーベース。横からのためコース、球種共に不明だが、初球を積極的にとらえた一打だった。
 このノリのままもう1本いってほしかったが、3打席目はストライク(内スライダー)、ファウル(真ん中高目ストレート)、ボール(外ストレート)のあと、真ん中低めに沈んだボールを引っ掛けセカンドゴロ。思い出の地で一気に…、とはいかなかった。
 それでも「0」より「1」。浮上のきっかけになってくれれば。

        

080711okada_batting高校時代の思い出の地・舞洲ベースボールスタジアムで行われたウエスタンリーグ阪神戦。岡田は第2打席でライト線に二塁打を放つ

1軍も好調ぶりに若手の活躍アリ

 その後、5日のプロアマ交流戦(対NTT西日本)は6打数1安打、8日からの広島戦(あじさいスタジアム)では、3連戦の全てで4打数1安打だった岡田。これで上昇とはまだ言えないだろうが、わずかずつでも上向いてきたとみたい。
 岡田を気にしつつ、1軍の方にも目を向けると、かなり状態が上がってきた。何より投手陣の踏ん張りが顕著で、6月以降のチーム防御率はリーグトップ。3位圏内を十分狙える状況になってきた。
 岡田目線で言えば、この状況を喜んでいいのかどうか微妙なところだが、そういう中で一輝や迎祐一郎、そして後藤光尊の故障で上がった牧田勝吾もスタメンで使われるなど、サーパスで一緒にプレーしていた選手も戦力になっている。
 中でも、一輝は見るたびにプレーぶりが堂々としてきた。スイングに思い切りがあるし、際どい場面での見極めも実にしっかりしてきた。1軍に上がると何か余裕がなく、自信なさげに見えた以前の姿がウソのようだ。
 本当にアッという間の成長ぶりだだが、ついこの間まで一緒にやっていた岡田がいつこうなっても不思議はないはずだ。

          

楽天・片山博視の急成長

 9日の楽天戦。岡田に関係する選手が楽天にもいた。先発した片山博視だ。
 岡田とは同期で、報徳学園から同じくドラフト1位で入団した3年目のサウスポー。ちなみに、岡田はこの片山から高校時代、そしてプロ1年目の秋のフェニックスリーグでも一発を放っている。1、2年目は岡田以上にファームで苦労していた片山が、3年目に今のような成長を見せるとは正直想像していなかった。

080711okada03サーパスでともにプレーした一輝や、同級生の片山博視(楽天)らの急成長を見ても、なにかのきっかけと自信さえあれば…。岡田にもその機会が来ることを願うのみだ

 僕は片山については、高校時代からずっと投手としてより、打者として魅力を感じていたので、〈野手でやっていれば…〉と思いながらずっと見ていた。
 実は今もその思いは消えないが、まさかこの時期に1軍で先発して、しかも完封勝利まで挙げるようになるとは…。今年のキャンプでも紅白戦のピッチングを見たが、その時点では想像もできなかった。
 確かにストレートは高校時代に比べれば力がつき、コントロールの精度も上がった。本当に低めに球が集まるようになった。右打者の外へのシュートを修得したのも飛躍のきっかけになった要素だろう。
 しかし、何よりも大きいのは自信だ。どのタイミングで、何をつかめたのかはわからないが、気持ちの変化がマウンド上の姿に現れている。
 まさに一輝と同じ。1本のヒット、1つのアウトで若い選手は劇的に変われるということだ。

 岡田はそれをいつつかむことができるのか。
 今は信じて待つしかない。

       

■2008年ファーム成績(7月10日現在)
53試合 177打数38安打 2本塁打 15打点 24四死球 43三振 打率215(打撃成績12位)

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月23日頃の予定です。 

2008-07-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第81回-

Okada_top080701_2 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が第81回となりました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

1・2軍親子ゲームで本人を直撃

Osaka_dome朝8時頃の大阪ドームの外観。澄み切った青い空の下、歩道には通勤者の人影もちらつく

 更新日の1日は朝から京セラドームへ向かった。
 この日は1軍と2軍の親子ゲームが行なわれることになっており、サーパスは阪神と10時45分から試合が組まれていたのだ。練習は8時前から始まっていて、僕が着いた8時半にはサーパスの打撃練習の真っ最中。柴田と組んでティーを打っていた岡田は間もなくゲージに入った。フリーバッティングを見るのは久しぶりで、復調の気配を少し感じたい、と目を凝らして見たが…。う~ん、微妙。これは本人に確認するしかない、とバッティング練習に続き、外野でのダッシュを終え一塁側ベンチへ戻ってきたところで岡田を捕まえ話を聞いた。

谷上 どん底は脱しつつある?
岡田 いや、全然です…。
谷上 どないなったんや?
岡田 どうなってるんですかねえ…。土日の遠征(名古屋)には行かずにこっちに残ってやってて、その感じは悪くなかったんですけど。
谷上 さっきのバッティングの感じは?
岡田 あんまりです。なんかバラバラで、捕えられる感じがしないっていうか…。
谷上 出足の好調から何がどうなってそうなるんかなあ。
岡田 ちょっと調子が落ちて、いろいろ考えてるうちに、どんどんおかしくなったっていったっていうか…。
谷上 今は状態を上げるためにどういうことを意識してる?
岡田 小川さんに言われたことを思い出して。1つは割る形です。この形さえちゃんとできたら7割はできたと同じって言われてたんで。もう1つは、そこから打ちに行く時に右肩が突っ込まないというか、肩は残してバットを出していくということです。
谷上 小川さんが1軍へいったことも大きい?
岡田 あるのはありますけど…。でも、もう自分がやっていかないといけないんで。
谷上 そらそうや。今日は出番あり?
岡田 わかんないです。(親子ゲームのため)上から手伝いにきてる人もいるんで…。
谷上 でも、気持ちを切らさんとやっていかんと。まだシーズンは半分あるから。
岡田 やるしかないですよね。
谷上 でも、正直、焦ってる?
岡田 やばいです。この3年の中で一番やばいです。

       

1軍首脳の前でアピールしたかったが…

Startingmamber080701この日のウエスタンリーグ公式戦のスタメン。岡田は6番ファーストで出場した

 前回の更新以降、サーパスの試合は6月28、29日の中日戦だけだった(29日は雨で中止)。しかし、岡田は不振から神戸に残り練習をしたので、この日は10日ぶりの試合はだったわけだ。
 スタメンが発表されると「6番ファースト」で出場。この日は1軍首脳陣も姿を見せており、復調気配を見せたいところだったが…。
 試合は阪神の先発がボーグルソン、オリックスは梶本達哉でスタートした。岡田の第1打席は2回裏、5番・古木克明のゲッツーで走者なしとなった場面で回ってきた。
 その初球。岡田は真ん中高めの140キロ台半ばのストレートをセンターへ弾き返した。しかし、ライナーで飛んでいった打球をセンター庄田隆弘が背走しキャッチ。岡田本来の2段階に加速しながら伸びるような迫力がなかった。
 ただ、初球から手が出たことも、当たり自体も悪くはない。希望を持って2打席目以降を待つことにした。
 その第2打席は2点を追う4回、2死満塁の場面で回ってきた。アピールには絶好の場面だったが、ここがいけなかった。
 初球、外のストレートを見逃し。2球目、外のストレートをファウル。簡単に追い込まれると最後は外の146キロのストレートに空振り。3球三振の結果に、ネット裏を中心に集まったオリックスファンからもため息が漏れた。
 ゲッツーで2死走者なしとなった直後に対した1打席目と、一打同点の場面で立った2打席目ではボーグルソンのボールも気持ちの入り方が違って見えた。まさに1軍のボールで、残念ながら現状の岡田ではついていけなかった。

       

Okada_game080701_2第2打席では2死満塁のチャンス。しかし、阪神先発・ボーグルソン1軍クラスの投球に3球三振。この試合の2打席を見る限り復調にはまだ時間がかかりそうだった

不調の原因は気持ちの問題か?

 快調なテンポで進んでいた試合は阪神が4回に2点、5回に3点と得点を重ね一気にペースダウン。この日は親子ゲームのため2時間半を超えて新しいイニングに入らないという決まりがあったが、それとは別に僕は時間が気になっていた。というのも実は、12時45分からドーム内の一室で水口栄二バッティングコーチに別件の取材をすることになっていて、試合途中で席を離れなければならなかったからだ。
 前半の快調な進行から3打席は確実に見れる、と踏んでいたが、得点が0対7となり、6回裏のサーパスの攻撃が始まるところで広報から携帯に連絡が入った。ここで僕の観戦は終了となり、今回の岡田観戦の2打席のみ。3打席目の結果は確認できなったが、その日の感じでは大きな期待は出来なかったように思えた。残念ながら…。
 試合途中、スタンドにいた編成部の藤井康雄氏に少し話を聞くと、岡田のバッティングについてこんな感想を口にしていた。
「テークバックで左肩が背中側に入ってるなあ。ああなると、打ちに行く時に反動で開きやすくなるんですよ。いろいろあるけど、その点がひとつ気になりました」
 一方、ある球団関係者からは、若手全体に言えることとして、こんな厳しい声も聞こえた。
「なかなか殻を破れない選手というのは技術より気持ちの方なんじゃないですか。3年、4年ファームにいるということは1軍から見れば補欠。高校や大学で3年も4年も補欠なら恥ずかしいと思うでしょう。でも、プロの世界にいることで安心してしまうようなところがあるんですよね。本人はもちろん一生懸命やってます、と言うけど、どこまで本気で1軍の9つのポジションを狙ってるのか。ひとつ思うのは、若手で私生活が充実してたらダメですよ。1軍に上がるまではすべての時間を野球に使うくらいでないと、本気でレギュラーを狙ってるヤツには勝てない」

       

思い出の地・舞洲で蘇るか

 結果が出ないと、当然、いろんな声が出てくる。それがプロの世界だ。岡田に関しても、日々、向けられる視線が厳しくなっているのは当然で、そこは誰より本人が感じているはず。その評価をどこで変えられるか…。何かきっかけがほしい。
 観戦した翌日の阪神戦は舞洲ベースボールスタジアムで行なわれることになっていた。舞洲と言えば、大阪の高校野球のメイン会場。岡田にとって履正社時代の思い出が詰まった場所だ。前にも書いたが3年夏の準決勝で、大阪桐蔭に敗れた一戦の最終回、バックスクリーンへ意地の一発(通算55号)を見せたのもの“ここ”だった。打った相手は1年生当時の中田翔だった…。
 試合前のベンチでの別れ際、『明日は思い出の球場やな」と言うと、岡田も表情を緩め「はい」。
 何かを思い出すきっかけになってくれれば・・・。

080701okada当人たちはもちろん日々一生懸命練習に励んでいるだろうが、その中でさらに抜出さなくてはならないのがプロの世界。岡田にも技術的、精神的なきっかけが求められる

 試練の毎日が続く。

      
 
■2008年ファーム成績(6月30日現在)
48試合 159打数34安打 2本塁打 14打点 24四死球 37三振 打率.214(打撃成績14位)

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月11日頃の予定です。 

2008-06-24

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第80回-

Okada_top080624 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が80回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

複雑な気持ちで更新する第80回

 このレポートもついに80回目を迎えた。しかし、これは決してメデタイことではない。レポートをスタートさせた時点では、「岡田が1軍に定着するまで」をひと区切りの目安にしていたからだ。
 1軍に定着すれば毎日の活躍は新聞やテレビのニュースで報じられるようになり、ここで伝えなければならない理由も少なくなる。そう思っていたのだが…。
 だから、80回目を迎えて書き続けていることにちょっと複雑な気分でもある。ただ、こうなれば、岡田が本物になるまでトコトン追いかけるつもりだ。

 さて、依然、岡田の不調は続いているようだ。「ようだ」というのは、過去2回に続いて今回も僕が観戦には向かえなかったのだ。
 手元のスケジュール帳には6月14、15日のソフトバンク戦(あじさい)も、17、18日の阪神戦(鳴尾浜)も、20日からの広島3連戦(あじさい、2試合目は雨で中止)も、しっかり書き込んでいたが、残念ながら時間が取れなかった。
 前回更新日以降の僕は、京セラドームから京都、熊取、梅田、加古川、鳥取、淡路島…と、近場をグルグル回っていた。
 その中で京セラドームには2度取材で訪ねた。どちらも試合前の取材が目的だったが15日の中日戦は残って試合も観戦。グラウンドの戦いを眺めながら、合間合間に浮かんできたのは岡田のことだった。

        

Kondo080624今季、1軍でローテーション入りした近藤一樹。昨年までは岡田と同様、ファームでの生活がほとんどだった

近藤一樹の成長

 その日、オリックスの先発は近藤一樹だった。すっかりローテーション投手となった近藤だが、岡田を追い始めた一昨年、そして去年はほとんどファームで投げていた。
 岡田観戦の中で最もよく見たサーパスの先発投手がこの近藤と今年から阪神に移った阿部健太。僕の中では完全にサーパスのイメージが定着してしまっていたが、近藤は今年一気にチャンスをつかんだ。
 この試合でも、中日先発の中田賢一を向こうに回し、5回までは速球でぐいぐい押す力投で無失点。6回につかまり4失点でマウンドを降りたが、投げっぷりには自信が漲っていた。
 昨年ファームで最多勝と最高勝率の二冠を取るなど「兆し」は見せていたが、いい意味で僕の知っている近藤とは、もはや別人である。
 近藤が背中を向けるたびに背番号の「65」がネット裏の席にいた僕の方へ向いた。この背番号に去年の秋を思い出した。
「この秋は55と65。この2人を一人前にせなアカン」
 そう言ったのは当時の住友平2軍監督(現・1軍ヘッド)。夏場から調子を上げていた岡田について話を聞いた時
「今の状態なら1軍にはいつでもどうぞって推薦してるんですよ」
と話したあとに先程の言葉が続いた。
 “強化指定選手”に近藤と岡田を指名した形だったが、今、1軍にいるのは近藤のみ…。
 中日戦の試合後、帰ろうとしていると、球場出口のところで私服に着替えた住友ヘッドの姿を見かけた。一瞬、岡田の話題を出そうかと思ったが、思い直し、挨拶だけしてその場を立ち去った。
 チームが負けた直後ということもあったが、何より今の岡田の状態を思えば「1軍ヘッドコーチ」に聞くべきことが思いつかなかった。

       

続々と上に昇格する「サーパスな選手たち」

Okada080624ファームにいた選手がぞくぞくと1軍に昇格をしていく中、岡田も早期復調が望まれる

 この日観戦した試合では、9番ショートで森山周もスタメン出場していた。守備でひとつ「?」というプレーはあったが、打ではヒットも放ち、1軍の中で「普通」にプレーしていた。
 また、その日は出番がなかったが、3回前のレポートで書いた一輝は、18日の巨人戦で今季第1号を放った。3日に1軍昇格を果たした由田慎太郎も出場機会にはなかなか恵まれないが1軍帯同を続けている。「サーパスな選手たち」の姿が目に入ってくるたび岡田を思ったが、果たしてオリックスのユニフォームを着て、当たり前のようにプレーする日はいつになるのだろうか。

 23日現在、ウエスタンリーグでの岡田の打率は.214まで下がった。
 打撃成績13位。これは規定打席到達者の中では最下位となる数字だ。
 選手にとっては、ファームで規定打席に達するということ自体、決して嬉しいものではない。しかも、数字が残っていないとなればなおのこと。リーグトップの48試合出場や186打席も岡田の置かれた状況を示している。

 21日、移動中にメールが届いた。
 岡田貴弘選手を応援する会のY氏からだった。あじさいスタジアムへ観戦に行っていたそうで、メールを開くととこう書いてあった。
『球場へ着いたら1打席目は終わってたんですけどヒットだったようです。また打ったら報告します』
 しかし、その後のメールが届くことはなく、その日は5打数1安打。前回の更新以降の成績も18打数2安打…。光はまだ見えてこない。

        

岡田に伝えたい下山真二のひと言

 とまあこんな感じで、書いている僕の気分もなかなか上がってこない状況なのだが、最後に1軍で活躍中の下山真二の話を少し書かせてもらう。
 実は2度の京セラドーム取材の目的は下山に話を聞くためのものだった。じっくり話を聞くのは初めてだったが、前向きでガッツ溢れるプレースタイルの裏に、数々の壁を乗り越えてきた苦労があったことを知った。
 プロ野球選手になることは子供の頃からの憧れだったが、プロ入りは27歳の誕生日を目前に控えた秋。「ダメならプロは諦めるつもりだった」という日本生命での5年目、覚悟のシーズンにラストチャンスをつかんだ。近鉄の8巡目指名だった。
 プロ入り後も1軍と2軍を何度となく往復しながら、常に前向きな姿勢だけは失わないように心がけてきたという。

Shimoyama080624アマチュア時代からの苦労を経て、現在1軍で活躍中の下山真二

 2年前、下山は1軍の出番に恵まれず、サーパスで姿を見かけることも少なくなかったが、ある時こんなことがあった。雨のため試合途中でコールドゲームになった試合終了後、下山だけがグラウンドに現れ、小雨の中、ティーバッティングを始めたのだ。
 他の選手や首脳陣はバスに乗って帰る支度をしていた時で、時間的にそれほど長いものではなかったが、1軍経験も豊富な下山のそんな姿は僕の中に強い印象を残した。
「やったもん勝ちですからね」
 今回の取材の中で下山から聞いたひと言を最後に岡田にも伝えたくなった。
 今の取り組みが必ずこの先につながると信じ、今はとにかく練習の虫となってほしい。

           

■2008年ファーム成績(6月23日現在)
48試合 159打数34安打 2本塁打 14打点 24四死球 37三振 打率.214(打撃成績13位)

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月1日頃の予定です。 

2008-06-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第79回-

Okada_top080611 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が79回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

        

長いトンネル…

 このブログ更新予定日の11日、名古屋ウエルネスとのプロ・アマ交流戦で岡田に一発が出た。実戦では3月28日広島戦以来の一発だ。アマチュアチーム相手の一発とは言え、何とか浮上のきっかけにしてほしい。

 とは言え、まだまだ深刻な状況が続いている。
 公式戦では5月28日以来ヒットが出ておらず、打率は.227にまで落ち込んだ。
 前回の更新以降、サーパスの試合は1度地元開催に戻ったため、このブログで紹介したデータを寄りどころに岡田の復調を期待したが、中日3連戦のうち2つが雨で流れ、4日に行なわれた試合では4打数ノーヒット。犠飛が1本あったが2三振を喫した。
 そして、6日からは相性の悪い由宇の広島戦となり、その初戦が5の0。ここで、4番での起用を続けていた首脳陣もついに断を下し、7日は今季初のスタメン落ち。試合終盤で守りに着いたのみで、8日も代打の出場で三振…。
 本人も相当滅入っているだろうが、ここで腐ったり、逃げたり、ごまかしたりしたら今シーズンは終わってしまう。今はとにかく、前を向いて、やるべきことをやるしかない。こういった状態が悪いときの過ごし方が後半戦の結果を分けると信じて、気持ちを切らすな、岡田!

       

Ochiai080611 中日ドラゴンズ、落合博満監督。現役時代は独自の打撃理論で3度の三冠王を獲得

落合流に学ぶ 

 気持ちの一方で、やはり技術的につかみきれていない岡田にはそこを求めてほしい。75回目のレポートで股間節の話を書いたりもしたが、今回、ネタを探しながら目に止まったのは「軸足」。
 なかなか観戦に向かえない中で頭の中で岡田のバッティングを巡らせていると、中日・落合博満監督著の「超野球学①」(ベースボール・マガジン社)のことを思い出した。その中で落合監督が「打撃の基本」として書いているのが軸足の話だった。僕が初めて読んだのは4、5年前になるが、軽い衝撃を受けたことを覚えている。案外というか、バッティングを考える中で軸足にはあまり注目をしていなかったからだ。
 一部抜粋するとこんな感じだ。

「私が現役時代からバッティングにおいて技術的にどこかが崩れた場合、その原因はすべて軸足の使い方が悪くなっているからだと分析していた。私の現役当時から現在まで、周囲が期待する成績に届かず苦労している選手というのは、99%が軸足に問題を抱えている。軸足の使い方が悪いと、あるいは悪くなると、下半身の使い方も崩れ、結果として上半身の動きも崩れていく。だから、グリップの位置やタイミングのとり方を修正しても、応急処置にしからないのだ。バッティングにおいて最も大切であり、それなのにあまり注目されないのが軸足の使い方なのだ」

       

軸足に注目

Okada_batting080611_2 岡田選手の連続写真。体の中心線の移動距離に注目して欲しい

 本の中では、このあと図を入れながら解説が進んでいくのだが、最も大事なことは「構えの時点からスイングまで中心線が動いてはいけない」ということ。構えた時の体中央に線を引き、その中心線の位置がステップから、スイングするまで投手寄りに動いてはいけないということだ。
 中心線を動かさないためには、「構えた時の位置から軸足を動かさず、我慢しておくこと」。さらに「回転は軸足や投手寄りの足ではなく、あくまで体の中心線で行なう。体の中心を軸にしなければ、自然ないい回転はできない。これお打撃の基本と考えたい」とある。
 打ちにいく中で体が投手寄りに移動する、いわゆる「スウェーする」状態になると、体と一緒に腕も出てしまい100%の力でボールを叩くことができない。パワーのロスが起きる。ボールに近づくことで詰まりやすくなるなどのマイナス点が生まれるという。
 そこで大切なのが軸足だと落合監督は記している。

「大切なのは常に軸足を意識し、足場をしっかり慣らし、両足を安定させて立つこと。また、両足とも親指のつけ根の内側で地面に接して立つ感覚を持つこと。ベタ足やつま先立ちでも、踵に重心を置いた立ち方でもない。親指の付け根の内側にタコができるのが、いい打者の条件なのである」

 このあたりのイメージを持ちやすくするため、過去の岡田のバッティング写真を掲載しておく。現実にはどの選手もまったく中心線が動かないということはないが、大きく前に動くのはよくない。右の写真では右側の方が中心線の移動が小さい(頭を基準に見ればよくわかる)。ちなみに、このときはフリーバッティングで柵超えを連発していた時のもの。非常に気持ちよくスイングしていたことを覚えている。

        

空いた時間をどう使うか

 僕は普段の仕事で高校生や大学生のドラフト候補の選手を取材することがある。
 その時、ピッチャーからは「(プロの)○○投手の連続写真を見て勉強しています」とか「テレビで見て参考にしています」と聞くことがある。
 ところが、不思議とバッターからこの手の話を聞くことは少ない。「バッティングは感覚」という思いが強いからなのか、肉眼ではわかりにくいからなのか…。せいぜい参考にするとしても、構えやタイミングの取り方までで、細部まで観察する選手は少ないのではないか。これはプロの若手選手にも言えることだろう。
 しかし、単純な話として、打つ人(打ってきた人)には、やはり技術的な裏づけがある。なら、これだけ情報が出ている時代、雑誌でも本でもビデオでも、学ぶことはできる。活用しない手はないと思うのだが…。そんなことをよく思う。
 落合監督の本にしても、かなり本人の言葉で書かれた打撃論で、アマチュアの指導者やプロのコーチなどで参考にしている人は少なくないはず。しかし、選手は案外目を通していない。
 グラウンドでの練習はみんなやっている。あとはユニフォームを脱いだあとの時間をどれだけ野球のために使うか。情報を集め、頭を鍛えることも努力のひとつで、これも先々の結果を決める大きな要素になるだろう。
 例えば、中村紀洋選手は、落合監督を師事していたこともあり、「超野球学」を早々に読んでいた。これは以前、本人から直接聞いている。
 また、前にも書いたが、ナイターが終わって家に戻ると毎晩、録画しておいたCS放送を必ず見返し、自分の打席のチェックをしていた。飲んで帰った日も、必ず見ていたという。
 結局、やったもの勝ちと言うのはどの世界でも同じことなのだ。そして成功者に学ぶというのも、どの世界にも共通する話である。

 話はかなり広がったが、とにかく岡田に浮上のキッカケを掴んでほしい、と思い長々書いてしまった。
 次回の更新までにはどこかで観戦に向かう予定。そこでいい形を見ることができればいいが…。

     
 
■2008年ファーム成績(6月11日現在)
43試合 141打数32安打 2本塁打 14打点 24四死球 35三振 打率.227(打撃成績13位)

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は6月21日の予定です。 

2008-06-02

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第78回-

080602okada_top_2  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で78回目を迎えました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。しかし、コリンズ体制から大石体制に新たにチェンジとなり、今度どうなっていくのでしょう?
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

新体制スタートも…

Oishi080602_3就任後、新しい色を出し始めている大石大二郎監督代行

 先日、「岡田貴弘選手を応援する会」のある人から連絡をもらった。
「何か新しい情報はありますか?」
 誰もが気になるところで僕も気になる。新体制になって岡田はどうなるのか? 1軍昇格は? 起用は? 出番は? …、ということだ。
 しかし、残念ながらとっておきの新情報はない。夏を前にしたこの時期は高校野球の取材が集中し、今回は岡田観戦に向かうこともできなかった。
 ただ、1軍の話からすれば、やはり大石大二郎ヘッドコーチが監督代行となり1、2軍の入れ替えは活発になった。もちろん、大石代行自身の考えもあるが、前にも書いた通り、新監督というのは前任者とは違うカラーを出してくるもの。就任早々から、先発投手の球数制限の撤廃や、試合のない日の練習についても実施を決めた。また、27日には早速2軍視察などを行うなど脱コリンズ色を明確に打ち出している。

      

080602okada_01_2開幕から好調だった岡田の打撃もここへ来て急降下。なんともタイミングが悪い

痛い、勝負どころでの不振

 1、2軍の入れ替えでは、投手陣は別にして、野手陣では次のような形で行なわれている。25日に森山周、28日に相川良太、1日には前田大輔、由田慎太郎が昇格。(相川は1日に降格)。活発なことはいいことだが、その中で、岡田に声がかからないのが何とも寂しい。バッターとしてのタイプ、ポジションとの兼ね合いもあるので必ずしも成績とも一致しないが、今上がれないのはそういうことより、岡田自身の問題のようだ。
 前回の更新以降のバッティング成績を見ればそれがはっきりと見える。

 ・5月23日 対広島 (由宇) 3打数0安打
 ・5月25日 対広島 (由宇) 3打数1安打 1犠飛 1打点
 ・5月27日 対中日(ナゴヤ) 3打数0安打 1四球
 ・5月28日 対中日(ナゴヤ) 1打数1安打 3四死球
 ・5月30日 対ソフトバンク(雁ノ巣) 3打数0安打 2三振 2四球
 ・5月31日 対ソフトバンク(ヤフードーム) 4打数0安打
 ・6月1日 対ソフトバンク(雁ノ巣) 5打数0安打 1三振

 トータルで22打数2安打。四死球が6つあるはとはいえ、はっきり状態はよくないのだろう。前回の更新時は1本ずつながら6試合連続ヒット中だった。
 それに比べ今回は、不調の波にどっぷりハマってしまったかのようだ。古木克明がサーパスに落ち、濱中治も一向に状態が上がらない現状を思えば、岡田の調子さえ上向けばすぐにでも入れ替われると思うのだが…。もどかしい。

     

驚きの数字を発見!

Ogawa080602_3小川博文育成担当は1軍の内野守備走塁コーチに昇格。このあたりも影響しているのだろうか?

 コリンズ監督の辞任を受け、サーパスからは住友平2軍監督がヘッドコーチ、小川博文育成担当が内野守備走塁コーチとして、それぞれ1軍に昇格した。岡田について言えば、バッティングをずっと見ていた小川コーチの移動も今の不振に多少なりとも影響しているのかもしれない。
 この話とも関係するが、もう1つ、今回の不振に思い当たることがある。それは今回行なわれた7試合がすべて遠征でのものだったということだ。
 どういうことかと言えば、これは前々から感じていたことだが、岡田は遠征での成績があまりよくないのだ。
 そこで今回調べてみた。まず、北神戸、京セラドーム、鳴尾浜、甲子園、丹波で行なわれた近畿圏の試合での成績は81打数26安打で打率.321。ここまでのホームラン2本も北神戸で打っている。
 対してナゴヤ、由宇、雁ノ巣、ヤフー、高知で行なわれた遠征試合の数字を見ると、これがなんと51打数5安打。打率にすると.098。確かに、去年までの公式戦においても遠征ではあまり打っているイメージがなかったが、これほど極端な数字とは、調べてみて改めて驚いた。

※NPBの公式サイトにあるウエスタンリーグ打撃成績の岡田の成績は131打数32安打(6/1現在)。しかし、同じく球団の公式サイト上にあるファームの試合結果から1試合ごとに集計すると132打数31安打。何度やっても+1打席、-1安打の差が出てしまった。今回は後者の数字をもとに集計した点をご了承頂きたい。

      

遠征での不振の原因は?

 球場によっての相性はどの選手にも多かれ少なかれあるが、ここまで数字が分かれるとなると、そこに何があるのか、と考えてしまう。今度、本人にも聞いてみたいが、グラウンド上の問題なのか、それとも試合に入るまでのサイクルや前日の過ごし方の問題なのか、はたまたコンディションや気分の問題なのか…。

080602okada_03_2古木克明選手がファーム落ちし、似たタイプの選手は1軍にいなくなった。岡田にチャンスは到来するだろうか?

 可能性としてひとつ思い当たることがある。それは、やはり小川コーチのことだ。なぜかというと、サーパスでの小川コーチの肩書きは育成担当だったため、遠征時には居残り組の指導にまわり、チームに帯同していなかったのだ。これまで岡田に話を聞く中で、遠征から戻ってきた時に「試合前に小川さんにも見てもらったんで少し良くなりました」といった言葉を聞いたことがある。このあたりも遠征での不振に関係しているのかもしれない。
 ただ、この仮説が当たっているとすれば、岡田自身がまだ自分の中で技術的な裏づけを持てていない、ということでもある。もう、「これ」をいうものを持たないといけない3年目。小川コーチの異動をプラスに変えて、一本立ちのきっかけにしてほしい。
 …と書いたが、これはあくまで僕の推測。遠征での不振には別の理由があるのかもしれない。しかし、それならそれで、岡田にはこの原因を思いつく限り考え、可能性を1つ1つ潰していってほしい。
 これだけ極端な数字が出たとなれば、ここを上げていかないことには1軍も近づいてこないのだから。

      

■2008年ファーム成績(6月1日現在)
39試合 131打数32安打 2本塁打 13打点 24四死球 32三振 打率.244(打撃成績12位)

        

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は6月11日の予定です。

2008-05-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第77回-

080521_okadatop 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で77回目です。縁起のいい数字ですね。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。明らかに風の向きが変わり始めています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

      

コリンズ監督、電撃辞任

 5月21日の夜、遅い取材が終わりタクシーに乗っていると、ラジオからのニュースに驚いた。
「プロ野球オリックスバファローズのテリー・コリンズ監督が辞任することが21日、オリックス球団から発表されました。コリンズ監督は…」

Collins5月21日の阪神戦を最後に辞任することを発表したコリンズ監督

 後半部分は電波状態が悪くなりよく聞こえなかったが、とにかくコリンズ監督が辞めるというのだ。その瞬間、僕の頭には、「なぜ?」「何があった?」「この時期になぜ?」と「?」「?」「?」がグルグルと回った。辞任というからにはコリンズ監督からの申し出なのだろう。しかし、よくある体裁を繕っての「辞任発表」ではないのか、と思ったり、辞任せざる得ない状況に持っていったのかも…、とか。あるいは、何かのきっかけでコリンズが爆発しての突発的な辞任では…と、想像は膨らんだ。

 しかし、とにもかくにもコリンズ監督が辞める。
 辞任の背景に頭を巡らせたあとに浮かんだのはやはり岡田のことだ。この一件で岡田はどうなるのか。原稿を書き始めた段階ではスポーツニュースも見ていないので「その後」の状況がわかっていないが、どうやら当面は大石大二郎ヘッドコーチが監督代行という形をとるようだ。
 大石ヘッドは岡田のプロ1年目にサーパスの監督を務めていた人で、ルーキー岡田を先発で起用し続けた“実績”もある。ただ、その後の岡田を大石ヘッドがどう見ていたかはわからない。それでも、昨年に続き今年もここまで1軍出場がなかった岡田にとって、今回の監督交代が状況を今より悪くさせることはないだろう。同じく今回の一件に目を輝かせている若手は多いだろう。次はそこからどう抜け出すかだ。
 ひとまず、コリンズ監督辞任に関する話はここまで。ここからは、元々頭から書く予定だった原稿をお届けしたい。

      

一輝が1軍で見せた姿を岡田はどう見たか

Ikki20日に行われた1軍の阪神戦で逆転タイムリーを放ち、お立ち台に立った一輝(写真はサーパスでプレー中のもの)

〈この表情はファームでは出ない…〉と、思った。
 5月20日、サーパスは高知ファイテンドッグスと交流戦を行なうことになっていた。
 当初、この試合を観戦する予定にしていたのだが、前日の夜に別件取材が決まり、観戦を断念。その取材を終えて夜、家に戻ってつけたテレビで、今年5年目を迎えた一輝の渾身の表情を見た。
 1軍が交流戦をスタートした初戦の阪神戦。試合は8回表に入るところだったが、そこで試合を振り返ってのVTRが流れ、一輝の活躍を知った。2-3と追い上げて、なお2死満塁のチャンス。ここで6番サードで今季初先発の一輝がウイリアムスからセンター前へ逆転タイムリーを放ったのだ。
 決して会心の当たりではなかった。しかし、ピッチャーの足元から二遊間のちょうど真ん中を抜けていった打球に一輝のこれまでの4年間を思った。
 〈抜けろ!〉画面からも伝わる必死の形相で一塁へ駆け出し、打球が抜けたことを確認すると「ヨッシャー!」の雄たけびと共にガッツポーズ。VTRを見ながら僕もジワッときた。
 入団以来、ファームで一輝と多くの時間を共に過ごしてきた岡田は、この活躍をどこで見たのだろう。そして、どう見たのだろう。1軍でのスタメン出場、お立ち台でのヒーローインタビュー、そしてあの表情を…。

       

平田良介(中日)の1軍起用にみる落合監督の期待

 もう1人、一輝の直後に1軍昇格を果たした選手にも、岡田のことが重なってきた。中日の平田良介だ。一輝から遅れること3日、16日にこの昇格を聞いた時、僕は驚いた。そしてまた、「やっぱり落合監督は違う」と思った。

Hirata昨年の日本シリーズなどで活躍した平田良介。今年は出遅れたが、ようやく1軍に昇格してきた

 平田はここまでウエスタンリーグで打率.181、規定打席到達者としては最低の打撃成績となる23位だった。それが1軍昇格で、即「7番センター」でスタメン出場なのだから、それは驚くというものだ。
 チーム事情はそれぞれにある。平田には昨年ポストシーズンでの活躍という実績もある。肩もかなり復調し、守れる強みがある。中日の投手陣を考えれば確かにこれは大きいだろう。一方で平田より成績を残しながら1軍に上がれない若手もいるわけで、そのあたりはどうなのか、という考えもあるだろう。
 ただ、落合監督の起用にひとつ思うのは、ファームでの実績と1軍での働きはイコールではないという点だ。また、〈プロに入って来たヤツはそれなりの力はみんな持ってる。力を出せる環境を作って起用するのが俺の仕事〉といわんばかりの面も感じる。
 そしてもうひとつ。落合監督は平田に対して、相当の期待を持っているということだ。〈こいつを一人前にしたい〉〈このチャンスをモノにして上がって来い!〉という思いを感じる。

 対して、これまでの岡田にはそういう期待を強く感じる場面がなかった。
 今季も出足から好調で、一時の高打率からは落ちたものの現在2割7分台をキープ。他のチームの若手の状況を見ていれば、1軍でチャンスをもらってもまったく不思議はない位置にいるのだ。ましてや、オリックスはリーグ最低打率は脱したとはいえ、名ばかりの実力者が揃う打線が一向に火を噴かないままなのだから。ローズはともかく、カブレラ、濱中あたりの使い方は考える時期にきているだろう。
 このあたりが新首脳陣となってどうなるか。是非、大石監督代行にはチームを作り直してほしい。まだまだ勝負にはこだわりつつも、一方では来年を見据え、若手をどんどん使ってほしい。

       

#54の次は#55だ!

 そして、当の岡田本人はというと、前回更新以降の成績は下記の通り。

13日 対阪神(鳴尾浜)5打数1安打 1三振
14日 対阪神(鳴尾浜)3打数1安打 1三振
15日 対阪神(鳴尾浜)3打数1安打 1三振 1四球
16日 対ソフトバンク(北神戸)3打数1安打 2三振
17日 対ソフトバンク(北神戸)3打数1安打 1三振 1四球 
18日 対ソフトバンク(丹波)2打数1安打 1四球
20日 対高知ファイティングドッグス 出場なし

Oishidaijiro監督代行の任に着いた大石大二郎氏。2軍監督時代は岡田をファームで辛抱強く起用し続けた

 13、14日は5番、15日は3番で16日からは7番。爆発といった数字ではないが、しぶとくヒット1本、四球1つを選んでいる印象だ。ここまでの17四球は桜井広大(阪神)と並びリーグトップ。出塁率の.375も新井良太(中日)に次ぐ2位。
 また、18日の1安打は前回の対戦で抑えられた新垣渚から放ったレフト前ヒット。一報をメールで知らせてくれた「岡田貴弘選手を応援する会」のYさんに、僕は「これも成長!」と書いて返信したが、地味ではあっても小さなこと1つ1つに成長を感じる場面が多くなった。
 打率もグッと落ち込んだ前回更新時より持ち直した。しっかり力を蓄え、さあ、仕切り直しだ。
 54(一輝の背番号)の次は55、今度こその爆発に期待したい。

       

■2008年ファーム成績(5月21日現在)
32試合 109打数30安打 2本塁打 12打点 15四死球 27三振 打率.275(打撃成績6位)

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は6月2日の予定です。

2008-05-12

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第76回-

080512okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で76回目を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。明らかに風の向きが変わり始めています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

         

成長の跡

 「最近の岡田はどうですか?」と、尋ねてきたのは履正社高校の岡田監督。
 開催中の高校野球春季大阪大会でベスト4に勝ち上がった11日の試合直後に顔を合わせると、こう逆取材された。
 そこで岡田の近況について、簡単に書けば「悪くないし、確実に成長はしています。あとは試合でどう結果を出すか」と返しておいた。

 ひいき目かも、地味なものかもしれないが、「確実な成長」を感じたのは5月7日に京セラドームで行なわれた広島戦。この日はナイターで1軍のオリックス対ロッテ戦が行なわれるため、その前、朝の10時45分開始の親子ゲームだった。
 通常12時半からの試合開始なら10時過ぎからサーパスのバッティング練習が始まるが、この日はすべてが繰上げの短縮バージョン。8時半にグラウンドへ着くとすでにサーパスのバッティング中で、ちょうど岡田が打っていた。
 じっくりは見られなかったが、フリーバッティングでの感じは悪くはない。
 全体のバッティングが終わると、岡田にはベンチ前でケーブルテレビのインタビューが待っていた。

「さあ、今日は我らが期待のナニワのゴジラ、岡田選手に登場してもらいます!」

 ハイテンションな女性レポーターの前でやや押され気味の岡田。
 その様子を僕と一緒に見ていた1軍の佐藤広報は「いろいろイベントにも引っ張り出してトークも鍛えていかないとねえ」と笑っていた。そんな機会を増やすためにも1軍だ!
 インタビューが終わり、ベンチへ戻ってきたところで軽く声をかけた。
 「絶不調は脱した?」と聞くと、ニヤッとしたあと「まあ、そんな悪くはないんですけど」。「この間の関西メディカル戦のあとの特打ちは凄かったけどなあ」と続けると、「あの時は自分でもよかったです。でも、何が良かったんかは…」。
 このところ話を聞くと、だいたいこういう感じになるのだが、打ってみないとその日の状態がわからない。何がどうなるといいのか、何がどうなると悪いのか、がまだ掴めていないのだ。
 もちろん、自分でのその点は自覚していて「なかなかいい時が定着しないんですよね」。

         

080512score「4番岡田、5番清原」と並んだこの日のサーパスのオーダー

4番岡田、5番清原

 この日のサーパスのスタメンには3日に復帰した清原も登場した。
「4番岡田、5番清原」の並びには、やはり特別なものを感じたが、岡田にそのあたりの感想を求めると、しばらくあってこう返って来た。

「切れないですよね」

 瞬時に意味が理解できず、ちょっと考えた。そして、清原自身のことを指しているのかと思った。故障続きの中でも気持ちを切らさずにやっていると…。
 しかし、そうではなかった。真意は「イニングの最後とかで僕で攻撃が終われないってことです」。
 な~るほど。確かに、ここ数日はスタンドもマスコミも注目は清原一色。2死で岡田に打席が回ってこようものなら、それも最終回にでも回ってこようものなら、〈自分では終われない〉ということだったのだ。
 「それはいろいろ気を遣います」と言った言葉に、岡田らしいなあ、と思いながら、それもひとつの経験。プレッシャーや刺激がある中でプレーできることは、恵まれているのだ。
 最後に「今日はコリンズも来るんやんな?」と聞くと「だと思います」。「一発いきたいな」の誘いに「はい」と表情を引き締めベンチ裏へ消えていった。

        

四球の急増

 さて、そんな中で試合は始まった。
 広島先発は今井啓介。結果を先に言うとこの日の岡田は2打数1安打、1四球。
 まず第1打席は2死二塁で回ってきたが、フォアボールで歩いた。
 次がまだ万全の状態には程遠い清原ということもあったのか、勝負にはきていたが結果はストレートのフォアボール。2席目は2死一、三塁のチャンスにセカンドゴロ。初球、真ん中近辺の真っすぐに見えた球でタイミングも合っていた。が、ちょっと力が入ったのか。もったいない当たりだった。
 3打席目は再びフォアボール。広島先発の今井啓介は明らかに岡田には投げにくそうだった。今井は岡田と同じ高卒3年目。やはり同期の中で「岡田貴弘」の名は特別な響きがあるのだろうと思う一方、この2つで今季14個目となったフォアボールの数に岡田の成長を感じた。

080512okada_batting_2岡田の成長の跡は、四球の数にも見られる。昨年までのもろさが減り、相手に与えるプレッシャーも増した

 1年目は82試合、319打席で17個(18.76打席で1個)、2年目は68試合、256打席で14個(18.28打席で1個)。それが今シーズンはこの試合が終わった時点で25試合、103打席で14個。7.36打席に1個の割合で選んでいることになる。
 この“急増”の裏には、まずバッティング技術の向上があるはずだ。追い込まれたあとのストライクからボールになる変化球を見極められるようになり、簡単にバットも空を切らなくなった。打席の中でもこれまでより余裕が生まれ、ボールもよく見えるようになっているはずだ(加えてレーシック手術の効果も!?)。
 そうなると、この日のように相手投手も〈簡単にストライクを取りにいくと持っていかれるんじゃないか〉と、感じるのだろう。その思いがピッチングを慎重にさせボール球を多くさせる。この日の2四球にそんな成長を感じながら見た。

   

清原の持つ勝負強さ

 ここで5番清原の話題にも少し触れておく。
 岡田の2つ目の四球でチャンスを広げた5回2死満塁の場面で、見事、右中間へ走者一掃のタイムリーツーベース。1000人弱のスタンドの期待に応えるバッティングで、清原はその日の主役になった。
 この試合の打撃成績は、3打数1安打で前の2打席は連続三振。その中では今井の130キロ台後半のストレートにバットが合わず、真っすぐは4球すべて空振りだった。

080512kiyoharaこれまでにも多くの修羅場で勝負強さを示してきた清原和博。故障からの復帰を目指す姿を間近で見て、岡田はどう感じたか?

 本人が「まだまだリハビリの一環。(1軍)どうこういうレベルじゃない」と言っている通り、ようやく7、8分の力で振れるところまで来たというのが現状だ。
 試合前のフリーバッティングも目慣らし程度で、打席に立ってもフルスイングはせず、ほとんどが当てるだけ。まだまだ時間はかかりそうだ。
 しかし、そんな中での第3打席。
 この試合5回目となる空振りのあと、1-1からの外寄りの真っすぐに初めてバットが当たった。すると打球はセカンドの頭もフラッと超えて右中間をゴロで転々…。3人のランナーを全てホームに迎え入れた。決して痛烈な当たりではなかったが、こういうチャンスで結果を出すのが清原。この勝負強さは岡田も継いでいってほしい。

       

甘い球をひと振りで捉えよ!

 話を戻して岡田の第4打席。ここでは左腕・広池からセンター前にヒットを放った。
 この1本にも、先の四球の話にもつながる成長を感じた。
 打ったのは2-2からの真ん中低めのスライダーか、少し抜いたボール。サウスポーのそんな決め球に、去年までの岡田なら態勢を崩して空振り三振となってもおかしくなかった。それが体を何とか残して最後は右手で拾ってセンター前へ落とす。こういうバッティングをされると、相手投手には「手強いな」という印象が残るだろうし、サーパスベンチの信頼感は徐々に増していくはずだ。
 豪快な一発は見られなかったが、2つのフォアボールに渋い1本のヒットは、僕の気分を明るくしてくれるものだった。
 確実に成長中。一塁側の記者席から試合を見ていたコリンズの目にもきっとそう映ったことだろう(?)。
 これからは、いかにミスショットをなくすことができるか。相手が警戒してくるということは、当然、甘いボールがくる確率は減るということ。1打席の中で1球あるかないかの好球をいかに捉えるか。この日も、第2打席にセカンドゴロに倒れた真っすぐや、第4打席にもファウルにした甘いスライダーがあった。これらを捉える確率が上がれば、1軍もグッと近づいてくるはずだ。

 岡田ファンのみなさん、爆発の日までもう少し、お待ち下さい!

080512okada_kiyohara左に清原、右に岡田。この姿をぜひ、オリックスのユニホーム姿で今年中に見てみたい

        

★更新前日の11日、ヤフードームで行なわれたソフトバンク戦は3打数ノーヒットで3三振。最後は代打を送られていたが、ソフトバンクの投手リレーを見ると新垣→森福→ニコースキー→高橋秀。1軍さながらの顔ぶれで、まして新垣のスライダー、フォークは、初対決の岡田にとっては「とんでもないボール」に見えたはず。〈いいものを見た〉と思って、次に生かしてほしい。

        

■2008年ファーム成績(5月11日現在)
26試合 90打数24安打 2本塁打 12打点 15四死球 21三振 打率.267(打撃成績18位)

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は5月21日の予定です。

2008-05-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第75回-

Okada_stretching 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で75回目の更新です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調です。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

         

Okada_batting02本人曰く「絶好調から絶不調」も、試合後の打撃練習では柵越えを連発

今の岡田の調子のほどは?

「絶好調から絶不調です」
 岡田からこんなセリフを聞いたのは4月30日の神戸サブ球場。関西メディカルスポーツ学院との交流戦が行なわれた試合前だった。バッティング練習を終え、ベンチ裏の通路で軽食を取っていた岡田に話を聞けたので「どう?」と向けたところ、自嘲気味にこう返ってきた。
 言葉通り、前回の更新以降の岡田は、4試合で12打数1安打。四死球4つに、三振も1つと少なめだったが打率は急降下で一気に3割を割ってしまった。そこで状態を確認すべく30日に観戦に向かったのだが、残念ながらこの日は欠場。ただ、アクシデントがあったわけではなく、ファームでも出番の少ない選手に経験を積ませようという首脳陣の考えによるものだ。
 しかし、この日は僕の到着が遅く、試合前のフリーバッティングを見ることもできなかった。そこでちょっと困っていたところ、まず本人に少し話を聞くことができた。冒頭のひと言以降はこんな感じで続いた。

谷上 絶好調からいきなり絶不調って。ちょっと早いなあ。
岡田 いや、(好調が)持った方ですよ。
谷上 自分でそんなこと言うて…。でも、開幕から1カ月。確かにこれまで2年にない出足ではあったよな。
岡田 そうですね。
谷上 でも、好調だっただけに、その間に1軍に上がりたかったという気持ちも強かった?
岡田 それはありました。(1軍の首脳陣が)見てる前でも打ったんですけどね、なかなか…。このまま今年は上がられへんのちゃうかって思ったこともありました。
谷上 見てる方も期待してたけど。でも、まだ始まったばっかりやから、またここから。
岡田 今日の試合前に小川さん(博文・育成兼野手コーチ補佐)にいろいろ見てもらって、ちょっといい感じになったかなというのはあったんです。だから試合でどうかです。
谷上 再浮上の兆しは感じてる、と。1軍の選手も状態がいいわけじゃないんやから頼むで。
岡田 そのつもりで頑張ります。

           

小川コーチの力強い岡田評

Ogawa_coach_3岡田を指導する小川博文コーチ。現役時代は小柄ながら一発もある勝負強い打者としてオリックス黄金時代に活躍

 実はこの前日にラロッカ、北川博敏と共に長田昌浩が1軍へ上がっていた。成績的に見れば、規定打席不足で打率も.241の長田を上げるなら岡田を…、と思いたくなるが、セカンドというポジションとの絡みはあったのだろう。ただ、こういう昇格はやはり岡田にとって面白いはずもない。その心中は理解できる。
 しかし、ちょっと元気のなかった本人のセリフとは逆に、小川コーチからは力強い言葉も聞いた。

小川 絶対、1軍に上がる時が来ます。僕が決めることじゃないですけど、必ず来るし、僕は早く勝負させてやりたいと思ってます。

 さらにこんな言葉も。

小川 長いシーズンでは調子のいい時も悪い時もある。その結果に一喜一憂するんじゃなくて、1日1日やるべきことをしっかりやっていくこと。でも、一方でファームとはいえ4番も打ってるんだから、成績が出ていれば余計相手の攻めも厳しくなる。その中で結果を求めていかないといけない。自分に求められているもの、期待の大きさをしっかり感じてやってほしい。

        

試合後の特打ちでは絶好調

 サーパスの大勝(9対0)で終わった試合への出場はなかったが、試合後の特打ちに岡田が現れた。これは僕にとってラッキーで木元邦之、小瀬浩之と3人で回った打ち込みをじっくり見ることができた。そしてこの時の内容が不振などどこの話? というくらいに良かった。
 数えていなかったが、かなりの割合で打球はオーバーフェンスし、その飛び方がまた良かった。あっけに取られて見ていると、小川コーチも
「スゴイ! 今日は完璧です!」
と嬉しそうに歩み寄ってきてそう言った。

 そこから2人で快音連発のバッティングを見ながら、再び小川コーチに話を聞いた。
 試合前に岡田が「小川さんにいろいろ見てもらって」と話していた部分について聞くと、小川コーチは「アイツの“ここ”を見て下さい」と、自らの左股間節部分を指した。

Okada_and_kimoto打者のタイプにもよるが、今の岡田(右)は股関節に体が乗っかっているため、左足の付け根にシワが寄っているのが分かる(左は木元邦之)

「投げるのも打つのも一緒。大事なのは股間節で、岡田の場合なら左の股間節。テークバックの時に軽くねじってギュッと体を入れて、左の股間節に乗せてから打ちに行く。この形ができれば間も持てるし、自分の形でスイングできるようになる」

 股間節の重要性については昨秋、岡田本人から小川コーチの指導について尋ねた時に耳にしていた。そういう意味では継続的に取り組んでいるのだが、「何回も言って、体で覚えていかないといけない」(小川コーチ)ということだ。
 ちなみに小川コーチは現在「育成コーチ」という肩書きになっており、チームの遠征には同行しない。岡田にとっては常に小川コーチが同行することが望ましいと思うが、こればかりは仕方がない。小川コーチの教えをしっかり頭に叩き込み、「いい形」を身につけていくしかない。
 特打ちで並んで打っていた木元の形と比べると小川コーチの指摘がよくわかった。木元には木元の形があるとして、木元の1本足は右足を上げて、すぐ下りる感覚があった。グッと入る形がないのだ。
 一方、足上げの幅はかなり小さくなった岡田だが、上げた時に左股間節部分のユニフォームに深いシワが刻まれていた。見た目には微妙だが、それだけ体が絞られ、股間節に体重も乗っていることがよく分かった。

        

浮上のバロメーターは股関節

 股間節ということで思い出すのは1月に神戸で合同自主トレを行なったイチローだ。あの時、イチローはアップで1本ダッシュをするたびに入念にストレッチを繰り返していた、そして、そのほとんどが股間節の柔軟性を意識したものだった。似た動きをした時の岡田と比べると柔軟性の違いは歴然だった。
 イチローも決して体自体は柔らかくなく、むしろ硬いと言われている。しかし、こと股間節に限れば柔軟性は抜群で、股間節を十分に使い切っているからあのキレもパワーも生まれるのだ。
 比べて岡田はストレッチの動きなどを見てもまだまだ股間節が硬い。この柔軟性がバッティングに大きな影響を及ぼすとしたら…グラウンドでも寮でも時と場所を選ばず徹底して柔軟性を高める動きを繰り返してほしい。本人の目に止まるかどうかわからないが、もし、目にすることがあれば“あの時”を思い出してほしいという願いも込め、イチローとの自主トレ風景を掲載しておく。
 浮上のポイント、バッティング安定のひとつのカギは股間節にアリ! あくまで僕の個人的意見に過ぎないが、遠からずという気はしている。

Ichiro_and_okada股関節のストレッチの際にはイチロー(左)と行った自主トレの時を思い出してほしい。ダッシュのたびにストレッチを行っていた姿は印象的だった

 今後も股間節の絞り、滑り、乗せに注目していきたい。

■2008年ファーム成績(4月30日現在)
20試合 71打数21安打 2本塁打 9打点 10四死球 15三振 打率.296(打撃成績10位)

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は5月12日の予定です。

2008-04-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第74回-

080421okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で74回目の更新です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調です。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

         

080421okada_batting開幕当初の好調の波は一度過ぎ去った。しかし、今年の岡田は悪いなりに結果を残している

岡田は4番でしぶとく結果をつなぐ

 まず、前回更新以降の岡田の成績から書いておくと以下の通り。

12日 阪神(甲子園)3打数1安打 1四球
13日 阪神(甲子園)3打数1安打
15日 ソフトバンク(京セラドーム)3打数2安打 1三振
16日 ソフトバンク(北神戸)3打数1安打 1四球 1三振

 この間のサーパスは1勝3敗1分けと振るわなかったが、4番で出場を続ける岡田は決して好調ではないであろう中でもしぶとく数字を残している。
 前回の更新でも書いたが、こういう状態の中で1本のヒットが出るかどうか、1つのフォアボールが選べるかどうかが大きいのだ。

 それにしても、これだけ1軍が打てなくて、ファームに打っている選手がいるのだから、もっと積極的な入れ替えがあっていいと思うのだが…。
 17日にラロッカのファーム落ちのニュースを聞いた時にも〈もしや…〉と思ったが、翌日に上がったのは牧田勝吾だった(21日には再び抹消)。ポジションの絡みで岡田が上がる時は外野かファーストを守る選手と入れ替わる可能性は高いのだろう。となれば突発的な故障者でも出ない限り“ライバル”は絞られてくる。彼らの成績を見ていくと、開幕から不振が続く濱中治(打率.185)、起用は増えながらもなかなか数字を出せない迎祐一郎(.143)、昇格初戦の2安打以降、音なしの古木克明(.182)、ポジションは異なるが同じ左バッターで結果の出ない木元邦之(.100)…と、不振者がズラリ。

 もっとも、チーム打率が.218と上昇の気配が見えない1軍打撃陣を見ればほとんどのバッターが低打率であえいでいる。少しは当たり出したと言ってもカブレラの打率もまだ.202、結構頑張っている印象のあった下山真二でも.238。さらに内野陣に目を移せば、大引啓次.143、後藤光尊.177、阿部真宏.118…、と深刻な状況が浮き彫りになる。二遊間の選手は簡単に入れ替えることもできないのだろうが、坂口智隆、ローズ、日高剛にサブで村松有人、塩崎真を含めた5人以外、1軍の打撃陣はまったく打てていないのが現実だ。

        

オリックスの積極的若手起用化の声にはやや疑問

080421okada_running021軍では極度の打撃不振が続いている。ファームには岡田はもちろんのこと、一輝、吉良なども好成績を挙げているのだが…

 一方、サーパスに目を移せば、チーム打率の.270はリーグトップ。この高打率を支えているのが21日現在、打率339で打撃成績リーグ5位の岡田と、同8位で.321の一輝。あるいは規定打席不足ながら.350と、ここへ来てようやくバッティングが安定してきた吉良俊則といったところだ。
 しかし、そういう結果を出している選手が極度の打撃不振に陥っている1軍に呼ばれることがない。「今年のオリックスは若手を使うようになった」という声をよく聞くが、僕はいつも首を捻る。
 野手でいえば坂口、投手陣でいえば金子千尋、近藤一樹らの活躍がそう思わせるのだろうが、例えば坂口は去年も開幕スタメンに登場していた「1軍でやって当たり前のレベル」にあった選手で、プロとしては今年6年目。見方によっては中堅どころと言ってもいいほどだ。
 また、近藤やその前後にあった高木康成や香月良太の先発起用も故障者続出でやむなくの処置だった。今のような状況の中、チームの起爆剤となるべく期待を込め岡田や一輝あたりをスタメン起用でもして初めて積極的な若手起用と言えるはずだ。他チームでは1軍昇格即スタメン、なんていう話を聞くが、オリックスはそういう起用がまずない。仰木さんの時代が懐かしい。

         

080421okada_running打撃主体のタイプとしては、岡田は走って守れる選手。1軍でもその効果に期待が持てる

岡田の早期昇格を願う日々はまだまだ続く?

 嘆いてばかりいても仕方ないので、気分を変えて岡田に関する数字を出してみた。
 最近はメジャーの影響を受け、打率やホームラン、打点といった項目以外に打者を評価する向きが出てきた。その代表格が日本球界でも徐々にポピュラーになりつつあるOPSだ。
 OPSとは出塁率と長打率を足した数値で、総合的な打者の評価の指針となると見られているものだ。岡田の場合、出塁率が.394(リーグ8位)で、長打率.508(5位)。一般的に1軍でこの数値が9割を超えると一流打者と言われるが、岡田はファームとは言え.902でリーグ4位。ちなみに上の3人は順に打率も3割を超え、この時期にして異例の8死球も効いている上村和裕に山本芳彦、松山竜平とオール広島勢だ。
 岡田のOPS.902を強引にもパ・リーグのリーグ成績に当てはめると山崎武司(楽天)の1.185、ローズの1.074、ブラゼル(西武)の.920に次ぐ4位。1軍と2軍を比べてどうする、という声はもちろんだが、ファームとはいえ、これだけの数字を残しているということ。そして、そんな選手が、何度も書くが打撃不振にあえぐ1軍に上がれないことには、やはり、なんだかな…、と嘆きたくなる。

 また、こういう数字とは別に、数字に見えない部分も強調しておきたい。
 13日の甲子園のゲームがCS放送で中継されていたので録画して見た。すると、その中でこんなシーンがあった。
 1点を追うサーパス8回表の攻撃。
 先頭で打席に入った岡田は正田樹(阪神)からライト戦へ痛烈なライナーのツーベースで出塁すると、2死後、吉良の渋く1、2塁間を抜けるライト前ヒットでホームインしたのだ。1点差で前進守備を敷いていた阪神のライト・庄田隆弘が捕ったのは、通常ならセカンドの定位置の数メートルうしろといった場所だった。そこから強肩の庄田がワンバウンドでバックホーム。まさにホーム上は間一髪のクロスプレーとなったが、岡田の足が一瞬早く、さらに岡田の勢いで返球を弾き飛ばし同点のホームインを決めた。岡田の「足」が試合を引き分けに持ち込ませたわけだが、濱中や古木にカブレラ、ローズではあの当たりで1点は取れなかっただろう。

080421okada_batting02今年はまだ披露していない1軍のユニホーム。岡田がこの姿で登場する日を待っている

 ここでは何度も書いてきたが、少なくとも一発を売りにするようなタイプの中では岡田は足がある方だし、走ろうとする意欲も持っている。一塁での守りも含め、数値に表れない面でもチームに貢献できる選手なのだ。

 16日の試合では北川が「3番ファースト」でファームの戦列に復帰し、また1人“ライバル”が増えた格好だ。こちらは早々に1軍へ上がっていくのだろうが、名前や過去の実績にとらわれず、コリンズには思い切った、そして先も見据えた起用を切に願うばかりだ。

               
 
■2008年ファーム成績(4月21日現在)
16試合 59打数20安打 2本塁打 9打点 6四球 14三振 打率.339

 
              

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は4月28日の予定です。

2008-04-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第73回-

Top_okada080411 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で73回目の更新です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、どうやら事態は良い方へ向かい始めたようです。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

           

9日のウエスタン中日戦を観戦

Okada080411試合前に話を聞いたときの岡田選手。好調なスタートに対しては相変わらずマイペースな反応だった

 前回、久しぶりに絶好調を伝えるレポートを書くことができ、さあ、今回。前回更新日の4月1日と2日に雁ノ巣でソフトバンクと2連戦が行なわれた。
 ここでもうひと暴れしていれば、その頃貧打に喘いでいた1軍から呼びがかかったかもしれないが、福岡遠征から戻り、5日から1軍に合流したのは古木克彦だった。
 この時点で古木もウエスタンリーグで3割5分を超える高打率を残し、打撃成績でも岡田のすぐ下にいた。好調を保っていた上に1日のソフトバンク戦で一発も放ち、今回はこちらが選ばれた格好だ。おそらく、岡田と古木のどちらを上げるか、という選択になったのだと思う。
 しかし、好調をキープしていけば、近いうちに昇格のチャンスは必ず巡ってくる。そこで“その後”の状態を確認すべく9日に「あじさいスタジアム」で行なわれた中日戦を取材してきた。

 試合開始1時間前に到着すると、球場入口で岡田が携帯電話をかけていた。治療院か何かに予約を入れているようだったが、電話が終わったところで一声かけた。

谷上 出だし好調やな。
岡田 う~ん、広島戦は良かったんですけど、最近ちょっと落ち気味ですね。
谷上 早いな(笑)。でも、とにかく滑り出しとしてはここ2年にない好調。その広島戦あたりは自分でも“この感じ!“っていうものがあった?
岡田 いや、特に何か違ったっていうのはなかったんですけど。
谷上 じゃあ、そこからちょっと調子が下ってきいるっていう今は何かが違ってきてる?
岡田 それも特になくて。今も小川さん(博文・オリックスコーチ)には形は悪くないって言われてるんで。
谷上 そういう中で爆発する日もあれば、そうでない日もある…、と。なら、今日はとにかく期待してるから、頼むで。
岡田 はい。

    
崩されたヒットも大切

 福岡から戻って以降のサーパスは、5日、6日と神戸サブグラウンドで社会人の三菱重工神戸、新日鉄広畑と交流戦を行い、8日は中日との3連戦初戦を戦っていた。
 この間の岡田は、5日が出番なし。6日は2打数ノーヒットで、三振、四球が1つずつあり、犠牲フライによる打点が1。そして、8日は4打数1安打、1三振という成績だった。
 5日の欠場はその日、1軍が京セラドームで試合を行なっていたため、もしかすると試合前の練習に参加し、首脳陣が古木と2人の状態を確認したのかも…という気もしていたが、それは聞きそびれてしまった。

Okada_swing080411「4番・ファースト」で出場した9日の試合。岡田は決していい状態ではなかったが、その中で1安打1四球。しぶとく結果を残した

 とにかく、名古屋での開幕戦以来の観戦に気合を入れてネット裏に座ってじっくり観た。公式戦では僕も初めて「4番ファースト岡田」のアナウンスを聞いた。
 で…、結果からいうと3打数1安打、1四球、1三振。順にセカンドライナー、センター前ヒット、空振り三振、フォアボールという内容だった。
 3打席目までの相手投手は右腕の清水昭信で、4打席目はサウスポーの菊地正法。ヒットもセカンドライナーも芯でとらえた打球ではなく、三振はワンバウンドの変化球に完全に崩されてのもの。この日に限ってはボールの見極めも含め、試合前の本人の言葉通りもうひとつだったようだ。
 しかし、そういう中でもヒットを打ち、フォアボールを選んだことは評価できる。調子のいい時はみんなある程度は打つ。調子の落ちてきた時、打席で崩された時にどれだけしぶとくヒットを打ち、フォアボールを選べるか。ここで打率も大きく変わってくるのだ。

             

藤井康雄氏の岡田評

 この日のネット裏には、今年からオリックスの編成担当となった藤井康雄さんが来ていた。岡田の1年目にはコーチとして、2年目にはスカウトとなり、今年は編成担当。今は立場上、選手に関しあまり込み入った意見を口にすることはできないが、岡田の状態を見ての率直な感想を聞いた。

「去年までと比べて良くなったのはタイミングの取り方でしょうね。タイミングが取れるようになったから、今年は初球から手が出てる。1年目、2年目はなかなか最初から振れなかったからね」

 前にここでも書いたが、高校時代の姿を思い出しても、岡田は本来初球から手が出るバッターだ。プロに入ってからも調子のいい時は初球からバットが出ている。そのいい形が今年はスタートから続いているため目立つのだろう。いい傾向だ。
 一方で藤井さんはこうも言った。

「まだバットが少し外から出てくるんですよね。これがスパッと内か出るようになれば、もっと良くなってくるんですけどねえ…」

 この点は1年目から藤井さんが指摘し、いろいろと練習でも取り組んできていた点だ。

 確かに1軍で活躍している、例えば小笠原道大(巨人)やメジャーへ渡った福留孝介(カブス)のスイングなどを思い出してもらうと、読者にも「内から出る」という形が浮かびやすいと思う。前のヒジもそうだが、うしろのヒジを締めて、絞って内から外へ振り抜くスイング、あのイメージだ。
 以前、やはり内からバットの出る印象の強い西岡剛(ロッテ)に話を聞いた時は「(左打席の)左ひじに意識を置いて脇を締めて、体の前にヒジを持ってくるイメージで振っている」と話していた。そういう選手の意識はやはり、後ろ手のヒジに対して強いようだ。果たして岡田は…。

Okada_running080411岡田は決して打つだけの選手ではない。今シーズン、まだウエスタンリーグで盗塁は決められないでいるが、積極的にスタートを切っている

 内からバットが出ればヘッドも遅れてしなって出てくるようになりヘッドが効く。振り出しも遅くなるのでわずかでもボールを長く見ることができる。当然、ヒットゾーンも広くなる…。と、まあ、いいことだらけというワケだ。
 岡田の打撃レベルがもうワンランク上がり、1軍でバリバリ活躍するようになるのは、このインサイドアウトのスイングを完全に身につけた時なのかもしれない。

 

打って、守って、走って、1軍昇格を待つ

 また、もうひとつ。この日の試合のことで加えておきたいことがある。それは、4回にヒットで出たあとの走塁だ。
 二塁盗塁を試みてアウトになったのだが、おそらくは単独盗塁だったはず。このアウトで盗塁死は3つ目となり、目下リーグトップ(成功0)を独走中ではあるが、走ろうとする姿勢、意識はこの先も絶対に忘れてほしくない。
 実際、この日の失敗や、開幕戦でタッチアウトとなったシーンを見たときも、タイミング的にはかなり際どいものだった。岡田は盗塁に関して悪くない感覚を持っていると思う。

 以前、本西厚博氏(元オリックスほか)に走塁の取材をした時、城島健司(マリナーズ)の走塁をかなり褒めていたことがあった。
 本西氏はロッテのコーチとして対戦し、今はBS放送の解説者として城島を見ているわけだが、状況判断の良さや、スキがあれば盗塁も仕掛けていく姿勢を大いに評価していた。岡田の魅力はもちろんバッティングだが、走塁に関しては目指せ城島! だ。

 そして、走塁と同様に守備についても磨いていってほしい。
 8日に行われた1軍の対ソフトバンク戦でのこと。この日スタメン出場した古木は、2安打を放つなどバットでは期待通りの活躍でアピールしていた。
 しかし、ライトの守備では平凡なフライに対して右往左往しながらやっとのことで捕球すること2回。1度は尻餅までついたため、一塁ランナーにタッチアップを許してしまった(この日試合が行われた熊本・藤崎台球場は風もあったようだが)。
 元々は三塁手だったとはいえ、この外野守備のマズさが横浜での出番を少なくした面は間違いなくあった。
 結局、8日に2本打っていながら、古木は以降11日までの3試合でスタメン出場はなし(9日の先発はサウスポーの大隣だったがあとの2試合はいずれも右投手が先発)。やはり、打つだけではダメなのだ。

First_okada080411プロ入り後、年々ファーストを守ることが多くなっていた岡田だが、1軍に昇格したら外野での出場もありそうな気配だ

 そんなことを思っていると、11日の更新日に鳴尾浜での阪神戦を観戦していた知人からメールが届いた。
 そこには「今日は4番ライトで出場です」とある。
 今季初となるスタメンライトの報を聞いた僕は、

〈これは濱中治、古木と守備に大きな不安のある2人に代わる1軍起用を想定したものでは?〉 

と、勝手に嬉しい想像を膨らませてしまった。
 ちなみにバッティングの方は3打数1安打、1四球、1三振。レフト線へいい打球のヒットがあったそうで、この日もしっかり1安打、1四球。繰り返すがこれが大事なのだ。
 そして、次に好調の波がきた時にはまた派手に爆発して、今度こそは…、だ。

 という訳で、今回は長くなったが今年は滑り出しから好調なので、ついつい文章も長くなってしまうということで…。
 岡田の「3年目の飛躍」に向け、その期待はますます高まる一方だ。

          

■2008年ファーム成績(4月11日現在)
12試合 46打数16安打 2本塁打 9打点 4四球 11三振 打率.348

 
              

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は4月21日の予定です。

2008-04-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第72回-

080401okada_top  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で第72回目を迎えております。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、どうやら事態は良い方へ向かい始めたようです。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

           

突如の目覚め

「早く、ゴジラの派手な大爆発が見たい」
 前回の開幕戦レポートの最後をそう締めたが、ちょっといい感じになってきた。岡田貴弘ファンなら、もうチェック済みかもしれないが、前回の更新以降、突如、打ち始めたのだ。
 開幕戦で見た印象は、良くもなく悪くもなし、という感じだったが、あれから何かが変わったのか、それとも僕が状態を見誤っていたのか。とにかくいきなりの急発進だ。

Okada_up開幕直後のロケットスタートに成功した岡田。現在ウエスタンのタイトルを独占
 まず25日の阪神戦(北神戸)で、今季第1号を含む4打数3安打2打点の爆発。ちなみにホームランは、2回裏に今年日本ハムから移籍の金村暁から放ったもの。1軍通算88勝、元日本ハムのエースから打ったのだから本人の気分も良かっただろう。4回にも同じく金村からライトオーバーのタイムリーツーベースを記録。
 1日空いて27日の同じく阪神戦は4打数1安打(1三振)も、次の爆発は28日の広島戦(北神戸)。プロ入り初の4安打(5打数)に早くも2号が飛び出した。今度は長身サウスポーの小島心二郎からで、加えて初回にはマルテ、8回には今井啓介からタイムリーを放ち3打点という活躍ぶりだ。

 この結果は甲子園でセンバツの取材中に知った。
 その日はちょうど23日に甲子園出場3度目で初勝利を飾った岡田の母校・履正社の2回戦が行なわれた日だった。残念ながら第2試合で聖望学園と戦い5対7で敗れたが、続いて行なわれていた第3試合(平安対鹿児島工業)の試合途中に携帯が鳴り、久しぶりに岡田の父・秀和氏から連絡が入った。
 連絡が来る時は間違いなくいいニュースの時。予感たっぷりに電話に出るとやはりそうだった。
「3月に2本も出るなんて初めてですよ」
 抑え気味ながら喜びを伝えてきてくれた秀和氏。この日は平日のため仕事中だったそうだが、観戦に行った知人から一報を受け、僕にも連絡をくれたのだ。
 この日の一発は「センターオーバー」だったとのこと。センター方向に大きい打球が出る時は岡田の好調時のサインである。

   
タイトル独占!?

 しかし、3試合9打席目の第1号から、この時点で早くも5試合で2発とは、本当に上々の滑り出しだ。ちなみに1年目の第1号は4月6日、5試合目17打席目のもので、出だしに苦しんだ昨年の1号は5月20日、実に24試合目、87打席目でのものだった。
 そして、29日の広島戦(北神戸)でも、5打数2安打(1三振)。そしてこの日は今シーズン初の4番(ファースト)に座った。続いて「4番レフト」で登場の30日の広島戦(北神戸)では、4打数1安打(2三振)ながら、その1本はタイムリーと4番の仕事で勝利に貢献。ホームランと打点が求められるバッターだけに、数字が積み重なっていくのは嬉しい限りだ。
 この時点で岡田の成績を改めて確認してみると、打率はリーグ4位の.414で、打点8は松山竜平(広島)と並びリーグトップ、まだ2本とはいえ、ホームランも同僚の相川良太と並びトップ。さらに言えば、12安打も20塁打も1犠飛も7三振も2盗塁死もトップ(笑)。三振や盗塁死の数は愛嬌として、とにかく打撃成績の上位に「岡田、岡田、岡田」と並んでいるのは眺めていても何とも気持ちがいいものだ。本人もどこかでこの数字を確認しているのだろうか。

             

080401okada_defense1軍は極度の打撃不振に早くも苦戦を始めている。岡田が呼ばれる日も遠くはない?

さあ、コリンズどうする!

 さて、こうなると一気に1軍で活躍の姿がチラつき始める。
 西武との開幕3連戦こそ勝ち越したものの、その後は黒星が先行(4勝5敗)し、あっという間に指定席(最下位)が近づいている状況のオリックス。中でもなんとかしないといけないのが低調が続く打線だ。チーム打率は12球団唯一の1割台(.179)で長打率の.256も5位日本ハムの.340から大きく離されて最下位である。
 期待の「ビッグボーイズ」こと、ラロッカ、ローズ、カブレラの外国人選手3人衆や、阪神からの移籍で心機一転、期待の大きい濱中治もまったく機能していない。
 特にカブレラがこれほど深刻な崩れ方をするのは初めて見る。妙に体が痩せて、頬がこけて見えるのも気になるところだ。
 昨年オフに一部で話題になった薬物疑惑の話を思い出させるほどの絶不調ぶりに不安は募るばかり。ローズ、ラロッカは故障さえなければそれなりに打つだろうが、カブレラはちょっとわからない。
 一方の濱中も、28日のロッテ戦ではタイムリーを含む2安打を放ち、少しは乗っていくかと思ったが、3月31日までの7試合で23打数3安打(.130)。30日にはついにスタメン落ちしてしまった。
 濱中もテレビで見ている限り、数字以上に内容が悪い。今の状態を見ていると、トレードの際に阪神の岡田彰布監督が残したという一言がずっと頭から消えない。
「ボールが飛ばんようになった」
 確かにオープン戦で2度ほど濱中を見た時は、試合前のフリーバッティングからボールの飛びにかつての勢いを感じなかった。岡田監督は「練習をせんからなあ」とも言ったそうだが、数字以上に不安を感じさせる今の状態だ。
 上がそんな状況なのだから、「まだ開幕したばかり」とか何とか言わずに、岡田を上げて使うのもひとつの手ではないだろうか。
 コリンズ監督には、今年はもっと大胆に動いてほしい。積極的に若手を使ってほしい。
 それにしても、今の好調な姿を早く確認したいが、センバツが終わるまでは甲子園から動けない。これがどうにも歯がゆい。
 何とかセンバツが終わるまで好調をキープしていてほしいが、僕が向かう頃にはもうその姿は「あじさいスタジアム」にはないかもしれない。2日からは福岡・雁ノ巣でソフトバンクとの3連戦。ここでもうひと暴れ、ふた暴れすれば可能性はある。
 こちらが浮き足立ってはいけないが、一気に今シーズンが楽しくなりそうな、そんな予感がしてきた。

080401okada_meeting田中彰(写真中央)らと談笑する岡田。明日からの福岡遠征以後も好調を維持できるかが今後のカギを握る

           

■2008年ファーム成績(3月31日現在)
7試合 29打数12安打 2本塁打 8打点 1四球 7三振 打率.414

 
              

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は4月11日の予定です。

2008-03-24

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第71回-

080324okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は第71回です。連載が始まってから3度目の球春を迎えました。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。そして、期待がかかった3年目。しかし、序盤は振るわず、今季も開幕は2軍スタートとなりました。今後の巻き返しが期待されます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

           

ウエスタン・リーグ開幕

080324okada_batting左手1本でディーバッティングをする岡田。ウエスタン教育リーグでは、終了直前に調子を上げてきた

 前回ここで「取材予定」と書いた3月19日の阪神との練習試合が雨で中止になった。
 そこで今回は22日がウエスタン・リーグの開幕戦ということで更新日(通常21日)を遅らせてもらった(22、23日が土日のため24日更新)。
 22日と言えば、ちょうど高校野球のセンバツ大会が開幕する日でもあったが、甲子園に背を向け、朝の新幹線で向かったのは名古屋。岡田にとって勝負の3年目は名古屋球場での中日戦から始まった。

 球場に着くと、中日のバッティング練習の最中。終了後、間もなくサーパスの選手がグラウンドに登場した。
 今年からファームのマネージャーとなる岸田光二、町豪将の両氏に挨拶をしているとベンチ裏の岡田とバッタリ顔を合わせた。
 「調子は?」と尋ねると、いきなり「昨日の練習は全然でした」。
 「“全然”じゃアカンやろ」と返すも、岡田の表情は明るい。教育リーグ後半の3試合では13打数5安打、実戦での今季初アーチも飛び出すなど、開幕を前に上り調子を感じさせていたことも関係しているのか。
 そのあたりに話を向けると
「あのへんの感じは良かったですよ。長打も結構出てましたし」
と、ストレートな反応が返ってきた。
 その後、スタンドで仕入れた情報によると、15日のソフトバンク戦では和田毅からもいいヒットを打っていたそうで、開幕前日の感触はともかく岡田流に言えば「感じは悪くない」ということか。最後に「スタートから勢い出していけよ」と声をかけると「はい」とグラウンドへ飛び出していった。

         

080324okada_and_furuya試合前の打撃練習も好調。だが、精度が上がればもっとスゴイ弾道となるはずだ

突き刺さるような弾道を!

 グラウンドでの岡田は、長田昌浩と組んでのティーバッティングを終えると、フリーバッティングに入った。昨年までのバッティング担当から守備走塁担当となった大島公一コーチの投げるボールを気持ち良さそうにポンポンとスタンドへ運んでいく。2つのゲージを使って行われたバッティングで、僕の勘定では2度の3連発に、1度は6連発もあった。
 ただ、まだ本当に芯を食った当たりは少ない。フリーバッティングのボールなら持ち前のパワーで楽々スタンドまで運べるが、1軍の生きた140キロ、150キロを弾き返すには、パワー+理に叶ったフォームで、より強い打球を求めていかなければならない。
 僕の頭にある理想は、松井秀喜(ヤンキース)が巨人の後半に見せていた〈東京ドームの天井を突き破ってしまうんじゃないか!?〉と思わせるような、あの強力な弾道。
 岡田も本来ライナー性の伸びる打球に凄みを持つ。フリーバッティングの時からスタンドに突き刺さっていく打球を求めていってほしい。

       

初打席ヒットのスタートも…

080324westan_gameウエスタンリーグ開幕戦の中日戦では初打席でライト前ヒット。だが、この日の安打はこれだけだった

 試合は12時半に開始となり、岡田は6番ファーストで出場した。
 中日の先発マウンドは吉見一起。27日から始まる1軍の試合に向けた先発テストを兼ねていたようだが、岡田にとっては一昨年のフレッシュオールスターで一発を放つなど、いいイメージを持った相手だ。スタートから乗っていきたい。
 注目の第1打席は2回1死の場面。三塁側スタンドの最前列に備えたハンディビデオにスイッチを入れてから、バックネット裏へ回りカメラを構えた。すると、いきなり初球を打ちライト前ヒット。シャッターチャンスを逃したが、ワンバウンドで一、二塁間を抜けていく当たりで幸先のいいスタートを切った。
 続く2打席目はストレートのフォアボール。
 やはり、吉見に投げにくそうな雰囲気を感じた。しかし、6回の第3打席はカウント2-1から真ん中高めのストレートに空振りの三振。「アレッ」という感じでスイングのあと、キャッチャーミットに収まったボールを見つめる岡田だったが、ここからがいけなかった。
 第4打席はサウスポー菊地正法の外のストレートに空振り三振。さらに延長10回。2死から5番・一輝のレフトへの決勝アーチが飛び出した直後の第5打席も、金剛弘樹の外のストレートに空振り三振。関東ではプロデビューとなった中田翔も3三振を喫したようだが、3年目のスタートとしては正直物足りない結果となった。

        

080324surpas_win試合は延長戦ののち、サーパスが勝利。この日のスコアボードに表示されている「6番・岡田」がもっと左に移動していく日はいつか?

気になったヘッドと下半身

 この日の3つの三振はすべて振ってのものだったが、僕が見た限りいずれも最後の球はストレート。少しバットが下から出ているために、高めのストレートに空振りするか、ヘッドが負けて左方向へのファウルになる、という形が気になった。フリーバッティングの遅い球なら問題はないのだが…。
 例えば、この試合の5回に代打で登場した吉良俊則が吉見の高めのストレートをパチーン! とセンター右へライナーで弾き返した当たりは、バットのヘッドが立ったままキレイに走っていた。岡田にもあの感じがほしい。
 キャンプで話を聞いた時には、本人も「今はバットのヘッドを立ったまま振れるように意識してます」と話していた。簡単に身につくものでもないのかもしれないが、岡田のパワーでヘッドが立って走れば、それこそスタンドに「落ちる」ではなく「突き刺さる」打球がどんどん増えていくはずだ。
 さらに言わせてもらえれば、今よりももっと下半身を使い切ったフォームをものにしたい。
 足裏から吸収したパワーが、腿の内側を通り、股間節の乗せとねじれによって、最後にインパクトに集約されるスイング。一緒に自主トレを行ったイチローの体が、下からねじれあがるように振っていたあのスイングを思い出して欲しい。
 とにかく「下から、下から」…。
 上体の力があるがゆえに、まだ上手く体を使いきれていないところがある。このあたりがさらに変わっていけば、結果はおのずとついてくるはずだ。

080324okada_running試合後のダッシュのインターバルでも打撃を気にする岡田。母校の履正社高校も甲子園で初勝利を挙げた。先輩の岡田も早く爆発したいところだ

 試合はサーパスが2対1で延長戦を制し白星発進。しかし、心中穏やかではなかっただろう岡田は、試合後に行われた外野でのダッシュの合間にもバッティングの動作を繰り返していた。
 そして、その練習が終わったところで僕は岡田より一足早く球場を出た。ベンチ裏で簡単な話を聞くことも可能だったと思うが、この日の結果を受けて、特に本人も何かを話す気分ではなかっただろう。やるしかないことも、結果を出すしかないことも、誰よりも本人がわかっているのだから。
 というわけで、ひとまず今年も開幕。1軍で当たり前に見られる日が1日も早くやってくることを願いつつ、今年もまた岡田貴弘を追いかけていくつもりだ。

       

後日、甲子園にて

 観戦の翌日、高校野球のセンバツ大会では岡田の母校・履正社高校が下関商業を延長の末、3対2で甲子園初勝利を飾った。
 試合後、先制点が4番・山本優太のスクイズだったことに触れ質問をすると「これがウチの野球です。ウチの4番でバントをさせなかったのは過去に岡田だけです」と言って、岡田龍生監督はニヤッと笑った。
 そんな勝利インタビューが行われている頃、開幕2戦目を戦っていた岡田は3打数ノーヒットと沈黙。犠牲フライにより今季初打点はあったようだが、ノーアウト満塁の場面での打席と知り、まだまだ物足りないと感じた。

 早く、ゴジラの派手な大爆発が見たい。

              

■2008年ファーム成績(3月23日現在)
2試合 7打数1安打 1打点 1四球 3三振 打率.143 

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は4月1日の予定です。

2008-03-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第70回-

Okada_face 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回、節目の70回を迎えました。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に好調を維持したままオフに突入。3年目の飛躍に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

   

岡田の試合になかなか行けず

Surpass_okadaウエスタンでデビューした当初の岡田。あれからすでに2年の時が経とうとしている

 いよいよシーズンの開幕が近づいてきた。1軍では仕上げの調整と20日の開幕ベンチ入りを狙う最後の競争が続いている。一方、ファームでは3月4日から始まった教育リーグが行われており、22日からスタートのシーズンを前にしている。振り返れば、1年目の岡田はこの教育リーグで3割超えの高打率でプロのスタートを切ったものだった。
 そして、昨年は開幕1軍を最後の最後まで競い、奮闘していた。3年目の今年はスタートの時点では厳しいものとなっている。
 前回の更新以降、教育リーグの観戦に向かいたかったのだが、どうにも時間的な調整がつかず、断念。岡田の現状を知りたい読者には申し訳ないが、「今の岡田」を伝えるレポートは次回更新までお待ちいただきたい。

        

教育リーグでの現状

 さて、3月の教育リーグでの岡田の成績を並べると次の通り。

 4日 NOMOクラブ 出番なし
 6日 中日 1打数0安打(代打)
 7日 中日 4打数1安打 3三振 (6番レフト)
 8日 ソフトバンク 4打数1安打 (6番レフト)
 9日ソフトバンク 2打数0安打 1打点 1四球 (6番レフト)
 11日 阪神ベースボールクラブクラブ 3打数0安打(6番ファースト)

 トータルで14打数2安打、1打点。これだけで判断はできないが、いい数字でないことは誰の目にも明らかだ。長打も出ておらず、ファーム行きとなった悔しさをぶつけて爆発…、という形にはなっていない。
 11日の試合から1軍のオープン戦に帯同していた平下晃司や一輝が合流し、クリーンアップに入ってきたが、それまでは3番・相川良太、4番・吉良俊則、5番・田中彰の並びが続いていた。

Okada_orixカブレラなど、越えなくてはならないカベが多数ある岡田だが、ファームでは1軍に推薦されるようなプレーを見せてアピールして欲しい

 吉良や田中といったこれまで故障もあって伸び悩んでいた若手の状態が上がっているのは、オリックスファンとすれば楽しみなところ。しかし、そこに岡田が乗っていけていないのが何とも寂しい限りだ。
 去年までのサーパスの4番・迎がいよいよ1軍開幕の座を掴みそうで、本来なら空いた4番の場所には岡田がアッサリ座るくらいであってほしい。右、左の並びの問題はともかく、バッターのタイプからすれば3番・吉良、4番・岡田、5番・田中という並びがしっくりくるし、ファンの期待感もより大きくなるだろう。
 しかし、ファームであっても、まだクリーンアップに定着でないのが現状。サーパスの6番、7番あたりでは、くどいようだがいかにも寂しい…。

       

可能性を信じて前向きに

 そうはいっても、前回も書いたとおり、とにかく前を向いて結果を積んでいくしかない。当然、1年目より、2年目、2年目よりも3年目と、周囲の見る目は厳しくなり、課されるハードルも高くなっていく。その中でまずはサーパスの首脳陣に「4番を打たせたい」、あるいは「1軍へ推薦したい」…、と思わせるだけのものを見せていけるか。
 今の1軍メンバーがそのまま順調な活躍を続ければ、実際のところなかなか出番が回ってくるのは難しいだろう。しかし、カブレラにしろ、ローズにしろどこで何があるかわからない。故障のリスクは常に背負っている。
 去年の年末に「岡田貴弘選手を応援する会」の席で話を聞いた時、岡田自身も「カブレラだっていつ怪我をするかわからないんで、そういう時がきた時にしっかり活躍できりように準備しておきたい」と言っていた。
 さらに言えば、まだオープン戦の段階とは言え、濱中治、古木克明の移籍組も揃って2割台前半と低空飛行を続けている。岡田の状態さえ上がっていけば、必ずシーズンの中で大きなチャンスも巡ってくるはず。とにかく今は、その時に備え、もう1度、バッティングを固めていくしかない。

        

センバツもウエスタンも開幕間近

Senbatsu駅などにも貼られ出したセンバツ大会のポスター。これを合図にいよいよ野球シーズン開幕という雰囲気になりつつある

 岡田の話題から少し逸れるが、ファームが開幕する22日はセンバツ高校野球の開幕日でもある。そのセンバツには岡田の母校である履正社が出場する。
 僕の自宅から歩いていける距離にあり、97年の夏に甲子園へ初出場した当時から馴染みだった学校だ。そのチームから岡田が出てきたお陰で、僕と履正社の距離もさらに縮まった。
 もちろん、今回も注目し、3度目の甲子園での初勝利を願っているが、後輩たちの活躍に刺激され、岡田の調子もシーズンのスタートと共に上向いていって欲しいものだ。

 そのウエスタンの開幕はナゴヤ球場での中日戦からとなる。
 それまでに教育リーグがあと5試合。12日が日本生命戦(日本生命グラウンド)、14、15日がソフトバンク戦(雁ノ巣)、16日が広島戦(由宇)、そして19日の阪神戦(北神戸)がラストだ。
 この中で観戦に行ける可能性があるのは19日のみ。何とかここで見て、次回の更新では岡田の「今」を伝えたい。
 

                  

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は3月21日の予定です。

2008-03-03

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第69回-

Okada080303top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回が69回目。もうすぐ丸2年です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に好調を維持したままオフに突入。3年目の飛躍に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

   

無念の降格

 悪い予感が当たってしまった…。
 3月1日、京セラドームでは今季初となる本拠地でのオープン戦が行われた(対阪神)。当初、観戦を予定していたが、別の取材が入り断念。CS放送を録画しておいたものを夜に見た。
 しかし、肝心の岡田は試合に出ておらず、たまに映るベンチにも姿がない。しばらくすると〈これはもしかして…〉と予感が走った。

 そして翌朝、スポーツ新聞を広げると、由田慎太郎、康介、小林賢司と共にサーパス行きの記事を発見。予感が当たってしまった。
 結局、オープン戦の出場は2月23日、阪神との初戦のみ。わずか3打席(1安打)で終わってしまった。
 去年は最後まで1軍に帯同し3割も打った。今年は「死のもの狂いでやっていきます」と語っていただけに、この時期でのファーム落ちは本人も相当堪えているはずだ。
 僕の中にも、もっと使ってくれよ、という思いはある。ただ、首脳陣に「もっと使いたい」と思わせるだけのものを岡田が見せられなかったことも確かだったのだろう。

        

Okada_batting_in_surpassサーパスのユニフォームでプレーする岡田(昨年の試合より)。できれば、このユニホーム姿を長期間披露するのは避けたい

評価を下されたオープン戦初戦

 唯一の出場(7番ファースト)となった阪神戦も、当日夜のビデオ観戦だった。3打席を振り返るとこんな感じだった。
 1打席目。サウスポー岩田稔にキャッチャーファウルフライ。内寄りのストレートにヘッドが出てこず、三塁ベンチ前への力ないフライだった。
 「ヘッドを立てて、鋭いスイングを」とキャンプで取り組んでいたはずの成果は見られなかった。

 2打席目。太陽からセンター前へヒット。ただ、外寄り低目に抜いたチェンジアップをバットの先で拾ったもので「ボコッ」という音が聞こえてきそうな当たりだった。
 追い込まれたあとなら「良く拾った」ということにもなるが、岡田が打ったのは初球。厳しいが、あのヒットならフルスイングで空振りの方が…、と思ってしまった。

 3打席目。玉置隆の前にピッチャーゴロ。内寄り低目にきた玉置特有のドロップ気味のカーブに中途半端なスイングで、これも力ない打球だった。
 ヒザ元へ曲がり込んでくるボールは、左バッターにとって最も扱いが厄介な球なのは確か。この時は追い込まれてもいた。
 しかし、バットを出そうか、出すまいか迷ったような結果の中途半端なスイングではなく、思い切り引っ張ってファウルにするか、あるいは、フルスイングでの三振の方がはるかによかった…。

       

絵になる場面で屈辱の代打

 そして、第4打席となるはずだった7回の攻撃で代打・吉良俊則を送られた。
 場面はオリックスが2点を返し、2対5としたあとに続いた二死満塁のチャンス。一発出れば逆転という、本来なら岡田の長打力に最も期待したい場面だった。
 そんな絶好機での代打。しかも、その時、マウンドにいたのは「ナニワの四天王」の1人、鶴直人。まさに岡田のために用意されたような場面だったのだ。それが…。

 今になって振り返れば、あの交代がすべてだったように思う。あそこで、「もう1打席、岡田の打席を見たい。岡田に賭けてみたい」とコリンズ監督が思っていれば、もちろん、そのまま打席に立っていただろう。しかし、そうはならなかった。
 翌日の阪神戦も出番はなく、それ以来となる1日のゲームから岡田の姿は1軍ベンチから消えた。

       

渾身のフルスイングを!

Nakata_batting連日話題の中田翔(日本ハム)は結果の良否によらずフルスイングする姿が印象的だ

 「勝負の3年目」と僕も去年からずっと言ってきていただけに、正直、どう書いていいか迷うが、とにかく前を向いてやるしかない。落ち込んでる場合でも、腐ってる場合でもない。首脳陣に「使いたい」と思わせ、1軍の打席に立たないことには、何も始まらないのだから。
「使いたい」と思わせるためにも、岡田にはもっと振ってほしい。空振りでもいいからもっと思い切って振ってほしい。
 こういう時に、こういう例えは本人が最も嫌がることだとは思うが、岡田のスイングを見ながら中田翔の振りが浮かんだ。
 中田はとにかく振っている。バッティング練習から、紅白戦から練習試合、オープン戦でも、空振りをしても、三振をしても、とにかくフルスイングだ。
 名護で2度観戦した時も、空振りにスタンドが沸いていた。振り続ける中で3本のホームランが飛び出し、ボールへの対応力も高校時代の姿を思えば格段にアップしてきた。
 打率自体は2割前半でも、スタンド、ベンチに期待させ、相手投手を怖れさせる雰囲気がある。それもあれだけ振っているから。

 もちろん、ひたすらガムシャラにいける1年目の中田と3年目の岡田の立場は違う。2人はスイングのタイプも違う。
 しかし、岡田の一番の長所はやはり誰もが羨むパワーであり、一発なのだ。その長所をもっと生かすためにも、もっと振ってほしい。それも同じ空振りでもボールに合わせるのではなく、自分の形でのフルスイングだ。それが相手投手への怖さを与え、指先を狂わせ甘いボールを呼び込むことにもなる。
 相手に余裕を持たせてはいけない。〈あのスイングでまともに当たればもっていかれる…〉という怖さを感じさせるスイングをしてほしい。もっと、自分の長所、パワーに自信を持ってほしい。そして打席の中では、はったりでもいいからもっと自信を持った表情を出して欲しい。
 この悔しさから逃げず、ごまかさず、とにかくやるしかない。ファームで誰もが認める結果を残して、もう1度1軍へのチャレンジあるのみ。
         

 気持ちを切らすな!

                  

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は3月11日の予定です。

2008-02-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第68回-

Okada080221 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で68回目を迎えました。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に好調を維持したままオフに突入。3年目の飛躍に大きな期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

   

ナニワのゴジラ、まだ目覚めず

 2月19日から高知へ場所を移して行われているオッリックスキャンプからは、まだ「岡田爆発」のニュースが伝わってこない。その状態が気になりながら、どうにも見に行く時間が取れず、そうこうしている間に更新日。
 正直なところ今回は、周辺ネタを集めている時間もなく、「臨時休業」も考えたが、とりあえず更新だけはすることにした。
 キャンプも第4クールに入ったが、何といっても宮古島での1次キャンプが雨続き。ほとんどが室内練習場での練習だったので、キャンプ終盤と言われても、そういう気がしない。おそらく選手たちもそうではないか。
 今、行われている紅白戦では、20日の一戦で岡田はヒットを1本を打っていたが、数字を見る限り、まだ首脳陣にインパクトを与える活躍は見せられていないようだ。

       

稲葉のコメント→岡田への期待

Inaba080221稲葉選手のインタビュー記事は3月10日発売の『野球小僧』4月号に登場の予定

 というわけで、状態は想像するしかないのだが、僕の中には、ちょっとしたことにも岡田が絡んで浮かんでくる。
 15日に名護の日本ハムキャンプを取材した時もそうだった。僕は担当ではなかったのだが、先日、稲葉篤紀にインタビューした野球小僧でお馴染みのライター・服部健太郎氏から、稲葉がヤクルト時代にレーシック手術を受けたことを聞いた。

〈それで劇的にバッティングが向上したのか〉

と、安易に結び付けようとした僕の想像ほど事は単純ではなかったが、「目を気にすることがなくなったのは大きかった(それまでの稲葉はコンタクト)」と、打席での集中力アップにつながったことについては認めていたそうだ。
 もちろん、この話に僕が岡田の爆発を浮かべながら聞いていたのは言うまでもない。

      

長谷部、平田の話題→岡田への期待

 また、16、17日に久米島で楽天キャンプを取材した時のこと。
 2日目に紅白戦が行われ、先発で田中将大と投げ合ったルーキー・長谷部康平を見ながら、また岡田が頭をよぎった。
 昨夏のプレ五輪で岡田と共にジャパンのメンバーだったのが長谷部。それが今や「ローテーション確実」「新人王の最右翼」といった期待を集め、その日も安定したピッチングを見せていた。
 この長谷部や田中との対戦を早く見たい…、と、頭にはやはり岡田の打席が浮かんでいた。

Hirata大阪桐蔭高時代、岡田と並び「ナニワの四天王」の1人として注目された平田良介(中日)も今年は勝負の年だ
 どこへ行っても、何を見ても岡田、岡田、岡田。
 20日に愛知へ社会人・三菱重工名古屋の取材に行った時は、名古屋駅の売店で目にした中日スポーツの一面に刺激された。

『「開幕一軍狙ってます」平田デモ弾』

 19日に宜野湾で行われた横浜対中日の練習試合。9回にライトへ2ランを放った平田良介(中日)の活躍を伝えた見出しだった。
 昨年のシーズン終盤、1軍に抜擢され、そのままクライマックスシリーズ、日本シリーズでも出場を続けた平田は、改めて言うまでもなく岡田の中学時代からのライバル。このキャンプでは2軍中心の読谷スタートとなっていたが、岡田同様、生き残りを賭けた競争の中で一足早く結果を出したというわけだ。
 負けてはいられない。

       

田中、中田への注目→岡田への期待

 ほかにも、このキャンプで話題を独占している中田翔(日本ハム)や、先にも触れた田中を見ても、岡田が重なってきた。
 岡田に田中に中田。
 しりとりのようなパ・リーグの若手3人衆が揃って活躍する日を僕は今から楽しみにしている。
 スター選手にはライバルが必要で、その対決の中で互いに輝きを増していくものだ。この3人は、岡田が3年目、田中が2年目、中田が1年目とキャリアも微妙に違うが、性格も僕が知る限り実に三者三様。このコントラストがまた魅力的で引かれるものがある。
 実はこの年明け、僕は野球小僧に3人を1つの記事に並べた原稿の企画も出した。残念ながら今回は見送りとなったが、岡田が爆発した暁には是非とも実現させたいと思っているので、実現する日を楽しみにしていて欲しい。

Nakata080216今年のキャンプで話題沸騰の大型ルーキー・中田翔(日本ハム)。05年夏の大阪大会準決勝で、岡田は当時1年生投手として真っ向勝負してきた中田からバックスクリーンへ特大本塁打を放ったことがある

 と、まあ、話は広がったが、アチコチ動き回りながら、アレコレ考えながら、常に頭の片隅には岡田がある、ということ。
 関西圏で連日報じられている清原和博や濱中治の話題にもそろそろ飽きてきたので、ここらで岡田には派手な活躍を見せてほしいが、ともかく、本当に勝負はこれから。23、24日の阪神とのオープン戦を皮切りにサバイバルマッチも佳境へと向かう。
 序盤は静かだったが、尻すぼみよりも尻上がり。気温の上昇と共にゴジラの季節がやってくることを願うばかりだ。
           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は1~2日が土日のため、3月3日の更新予定となりますのでご了承ください。

2008-02-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第67回-

Okada_batting080210 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。67回目は宮古島からキャンプレポートです。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で活躍以降、帰国後も好調を維持したままオフに突入。3年目の今季が大変楽しみになってきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

   

雨、雨、雨の宮古島キャンプ

Rainy_miyako080210オリックスのキャンプ地・宮古島は連日雨が続く

 2月9日、宮古島キャンプを取材してきた。前日の最終便で大阪から那覇へ飛び、翌日の朝一番で宮古島入り。さらに1日でまた那覇へ戻るという落ち着かないスケジュールだったが、よりにもよって、その1日が雨・・・。ついてない、とぼやきたいところだが、今年の沖縄はどこも雨だらけ。特に宮古島は9日の時点で終日外を使えたのは1日だけという悲惨なことになっている。オリックスが宮古島でキャンプを張って16年になるが、古い新聞記者によれば、初年度以来の悪天候だという。
 お陰で当日はメイングラウンドのレフト後方にある屋内練習場を使っての練習。僕は朝の9時前に球場へ着いたが、練習は10時から。晴れていれば岡田の早出特打ちが「その日のメニュー」に載っていたが、それももちろん流れ、さらに野手は投手陣との室内練習場のスペースの調整もあり、時差スタートで11時からの練習開始となった。アップのあとは6班に分かれてのグループ練習。岡田は迎祐一郎、木元邦之、一輝と一緒の班で、片手ティー、バント練習、マシン打撃(鳥かご)、インナートレーニング、ティー、マシン打撃を順に行う。
 やはり、注目はバッティングだが、鳥カゴ、打撃投手を相手にした2回のバッティングを見る限り、まだ本調子にはないよう。5、6本いい当たりが続いたな、と思うと、芯を外した当たりが2本、3本…。ただ、どのバッターも屋内での練習続きでボールを捉える勘がなかなか冴えてこないように見えた。どうこう言う段階ではない。

      

祝・20歳!

 13時前になったところで軽食の時間が入った。ここで選手たちは一端、本球場へ戻り食事をとる。室内練習場から本球場までは200メートルちょっとの距離だが、選手が移動するこの区間が辛うじて話を聞ける場所だ。そこで室内練習場を出ようとした岡田に話かけようとすると…。「ちょっと歩きながら話そうか」と、一足早く水口栄二打撃コーチが岡田を捕まえ歩き始めた。一瞬「うっ!」となったが、この好機を逃すまいと水口コーチにこう言った。「野球小僧という雑誌で岡田の追跡取材をしています。歩きながら2人のやり取りを聞かせてもらってもいいですか」と。すると水口コーチは軽く手を振りながら「ダメ、ダメ」。残念だが、バッティングに関する大事な話だったのだろう、仕方ない。
 ならば今度は、食事から戻るところを捕まえようと本球場の近くで「出待ち」をしていると、バッティングピッチャーの杉本と岡田が一緒に出てきた。何やら話をしをしていたが、ここを逃すと次はいつになるかわからない。話の腰を折るのは気が引けたが、割って入らせてもらった。

Oishi_okada080210取材した日は岡田の誕生日。だが、今年の岡田はそれを気にすることもなく練習に集中する

谷上 水口さんとの話は内緒?
岡田 内緒です。
谷上 そうか…。でも、これだけ雨が続くと、調子うんぬんという感じでもないんかな?
岡田 そうですね。いい加減外で打ちたいですけど…。中ばっかりだとストレスもたまるんで。
谷上 そういう状況でもバッティングの感触は?
岡田 感じは悪くないです。(横の杉本へ話しかけるように)外のボールはいい感じで捕えてますよね? 内はまだもうちょっとですけど。差し込まれてないと思ってるんですけど、ちょっと差し込まれてたり。捉えたと思ったのに、捉えきれてなかったり。ちょっとバットが出てこないっていうか。水口さんからそこもちょっと言われたんですけど。
谷上 バットが出ない?
岡田 そうですねえ…。それとバット自体にもちょっと問題があるっていうか。なんかしっくりこない。ひとつは軽すぎるんですかね。
谷上 何グラム? 
岡田 900です。

 軽すぎてバットが出てこない? 差し込まれてないようで差し込まれる? 捉えたようで捉えきれていない? 小雨の降る続く空模様同様、モヤモヤとした疑問が浮かんだが、室内練習場は目の前に迫っていた。詳しく聞いている時間はない。そこで今日の岡田には、必ず触れておきたい話題があったので昼休み最後の質問は「それ」にした。

谷上 今日、誕生日やんな? 20歳!
岡田 はい(苦笑い?)
谷上 今年は報道陣からのケーキのプレゼントは?(去年はあった)
岡田 いや、ないっすよ。全然注目されてないですから。

 「注目されるように頑張れ!」と、言ってる間に室内練習場へ到着し、昼休みの質問タイムは終了した。

       

濃密な4時間半

Deffense_okada080210一塁を守る岡田。1軍では外野よりもこちらの姿の方が多く見られるかもしれない

 後半のメニューはキャッチボールから、内野ノックへ進み、岡田は塩崎真と共に一塁守備へ就いた。雨の止んだサブグラウンドでは外野陣が強風吹き荒れる中でフライノックを受けていたが、岡田はずっと室内。つまり、1軍では一塁手として見ているということだ。
 打撃への集中、守りでのチームへの貢献を考えれば、間違いなくそれが正しい選択。前から何度も書いてきたように岡田の一塁守備はまずまず高いレベルにある。さらにこれから練習を積んでいけば、近い将来ゴールデングラブ賞を狙えるくらいの一塁手になれるはずだ。
 ノックの間、うしろから見ていた米村埋コーチ(現役時代はファースト)から何度も「ゴジ、ナイスプレー!」の声が飛び、さらにはポツリと「ホンマに上手なってきよったなあ」。
 結構な数のノックを受けたあと、今度はおよそ塁間距離のダッシュを一気に20本。どの選手もバテバテの表情になる。岡田もきつそうだった。
 ここで全体練習のメニューは終了。小1時間の休みを含めての約4時間半だったが、外の4時間半よりはメニューが地味な分、また、場所が狭く休む時間がない分、選手にとってはきついように見えた。外で実戦練習をできないマイナス面は確かにあるだろうが、今、しっかり体をいじめておけば、それがシーズンでプラスとなって返ってくることもあるだろう。
 このあと岡田はさらに、居残り練習で迎と庭球を使った軽いバッティング練習と、さらにウエートをこなし、すべてのメニューが終わったのは16時半。なかなかいい感じの内容だった。

         

水口コーチの岡田評

 練習終了後、水口コーチが1人で室内練習場を出ていくのを確認し、あとを迫い、声をかけた。すると今度は「ああ、さっきの」となり、とりあえず話を聞けた。

谷上 去年の秋から見ていてこの春の岡田はどう映りますか?
水口 まだ、ここからだけど、秋よりは良くなってますよ。
谷上 どのあたりが?
水口 う~ん、細かいところより、一言で言えば練習で見える姿勢かな。何かを変えよう、何かをやってやろう、やらないといけない、っていう姿勢が見えるようになってきた。そこが出てくれば、こっちも指導しやすくなるんですよ。
谷上 岡田も高卒3年目で、今年こそ、という気持ちも高まっていると思います。
水口 そう思ってもらわないとね。姿勢が見えるから、これからもっとよくなっていくんじゃないかな。素材として見たら、本当に球界を代表するバッターになるものを持っていますから。
谷上 やはりそのレベルで期待していい選手ですか?
水口 だってあのパワーにあの体を見たらね。本当に親に感謝ですよ。

Collins_okada080210コリンズ監督が見守る中、ダッシュをこなす岡田。水口コーチのコメントからも首脳陣の岡田への期待がうかがえる

 小雨が落ち、強風が吹き付ける中、最後に水口コーチから力強い岡田評をもらった。
 そして、最後は再び岡田本人を直撃。出待ちをしていた子供からサインをせがまれ、女性ファンから誕生日プレゼントももらっていたところ、まずは右手に巻いていたテーピングのことから聞いた。
「手のマメがつぶれて。それでです」
 やはり。マメが破れて、皮ができて、また破れて、強打者のゴツイ手は出来上がっていく。どんどんバットを振って手のひらを硬くしていってほしい。次は少し技術的な話を聞いた。

谷上 今、打席で一番意識にあるのは?
岡田 そうですね、ヘッドを立てて、鋭く振るってことと、バットの軌道を安定させることです。
谷上 バットの軌道がいい形で安定すれば、打球の質も安定していくやろうしな。その軌道にも関係すると思うけど、キャンプの出発前に聞いた時は、イチローのバッティングを見て「構えたところからそのままバットを落とすように出す」と言ってたけど。そこは?
岡田 それはまたちょっと変えました。
谷上 やって合わんかったっていうこと?
岡田 合わなかったというか、水口さんともそのあたりを少し話して、そのまま落とすというよりも、もっとボールを呼び込む形を作るっていう感じですね。
谷上 確かに現役時代の水口さんは、テークバックで1回ヘッドを入れるような形を作って、そこでボールを呼んで込んでるっていう打ち方やった。
岡田 そうですね、体はそんなに大きくないのに京セラドームの3階席に放り込んだりしたのも、そういうところもあるのかと思って。
谷上 ツボに来たら飛ばすバッターやった。そういう意味では去年途中から教えてもらってた小川(博文・元オリックスほか)さんも共通するタイプと思うし、あと…。

Collins080210連日の雨にコリンズ監督の表情も硬い。天気の回復とともに景気のいいコメントが待たれる

と言い掛けたところで、選手を迎えにきた車が到着。雨がひどくなってきたので、室内練習場の出口前まで車が来たのだ。何とも恨めしい雨だ。というわけで、ちょっと不完全燃焼ながら、今回のキャンプレポートはとりあえずここまで。
 しかし改めて、バッティングは難しい。何かヒントを得たかと思えば、また迷い、気がつけばまた元へ戻り…、この繰り返しなのだろう。岡田が最後に語った「ボールを呼び込む形」も、思えば、プロ1年目にコーチだった藤井康雄氏(現・編成担当)から繰り返し言われていたことだ。ただ、同じことへ取り組んでいるように見えて、初めとは違う、一歩進んだものになっていることもまた確かなのだろう。
 とにかくこのキャンプはバットを振って、その中から何かを生まれてくる何かを掴んでほしい。

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は2月21日の予定です。

2008-02-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第66回-

Okadatop_080201  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今日で66回目となっております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で活躍以降、帰国後も好調を維持したままオフに突入。3年目の今季が大変楽しみになってきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

            

生き残りを賭け、キャンプスタート

 オリックスの1軍メンバーは1月31日、神戸空港からキャンプ地宮古島へと渡った。これまで岡田本人も繰り返してきた「勝負の3年目」が、いよいよ始まった。
 今年のオリックスのキャンプメンバーを見ると、宮古島組が投手23人、野手22人の45人。一方、高知組は投手7人、野手12人の19人。大半が宮古島へ集まったように、1軍ベンチ入りを賭けた戦いは当然ハードなものになる。
 もちろん、上の1軍メンバーの中にはローズ、ラロッカ、カブレラに、話題の人・パウエルの名もない。ここにあと4人が加わるとなると投手24人、野手25人の49人で1軍登録の28人を競うことになる。通常、投手は11~12人となるので、野手は16~17人。このメンバーから9~10人があふれることになる。1軍キャンプに参加の野手の顔ぶれを並べておくと次の通り。

捕手 日高剛、前田大輔、辻俊哉、鈴木郁洋
内野手 森山周、木元邦之、阿部真宏、大引啓次、北川博敏、後藤光尊、塩崎真、一輝、牧田勝吾、(ラロッカ、カブレラは遅れて合流の予定)
外野手 村松有人、濱中治、迎祐一郎、下山真二、小瀬浩之、古木克明、坂口智隆、岡田貴弘、由田慎太郎、(ローズは遅れて合流の予定)

Okada080201b岡田にとって勝負となる3年目のキャンプがいよいよ始まった(写真は昨年のキャンプより)

 捕手は通常3人が1軍枠に入るのでここから1人が落選。残り21人からほぼ8~9人がサーパス行きとなるわけだ。その厳しい生き残り合戦の中で、岡田がどれだけアピールし、首脳陣が岡田をどう見るか。
 岡田がどのポジションで使われるのかはわからないが、守りよりも、何よりもとにかく打って目立つしかない。1軍候補メンバーのタイプとして見れば、古木克明には勝たないと1軍入りは厳しい、というくらいに思ってやってほしい(やっているはず)。
 古木は5年前には1軍で22ホーマーの実績を持つ左の長距離砲で、球団が「左で長打を打てる選手がほしい」と獲得した選手。この古木を負かさないと、少々打っても「同じタイプは2人要らない」という安易な結論になりかねない。逆に古木の存在を霞(かす)ませるくらいのアピールが出来れば、1軍入りのチャンスもはっきり見えてくるはずだ。とにかくフリーバッティングから、打って、飛ばして、目立っていってほしい。

          

出発前日にゴジラを直撃

 さて、その宮古島への出発前日、夕方から岡田に会って話を聞く時間があった。オフの間に通い詰めた自動車教習所での教習が終わり、学生時代から通っている豊中の治療院へやってきたのだ。
 「いよいよやけど…」と話を向けると、まず「オフは早いですねえ」と、ため息でも聞こえてきそうな顔で一言。明日の出発を控え、決意の一言から始まるのかと思いきや、何とも岡田らしい切り出しだ。
 聞けば、年末年始は家族とハワイで過ごしたらしく、今、ハマりかけているゴルフやショッピングを楽しんだそうだ。さらに、念願だった車の免許の取得も間近と言うことで、まさにオフを満喫したよう。
 こう書くと「大丈夫か、岡田~」という声も聞こえてきそうだが、もちろん、本人もわかっている。リラックスタイムはここまでで、ここからは戦闘モードに切り替え、長い、長い戦いへ突入する。
 キャンプインを目前にした状態を尋ねると「まあ、まあですね」。これも岡田のいつもの反応だが、実際、まだ室内でのバッティングしかしておらず、調子を計りかねてもいるのだろう。ただ、去年の同時期との比較を聞くと「それは違いますね」と言って、続けた。

Ichiroイチローと自主トレを行ったことは、色々な面で岡田にプラスとなった

岡田 やっぱり大きかったのはイチローさんと自主トレが出来たことです。学ぶことはありましたし、一緒にさせてもらったというだけでもプラスがあったと思います。
谷上 具体的に得たものは?
岡田 イチローさんのバッティングを見ていて、自分はバッティングを難しく考え過ぎてたんかな、と思ったんです。
谷上 というと?
岡田 イチローさんは初めからトップの位置を作って、そこからボールがきたところにバットを落とすだけなんです。無駄な動きが全然なくて、すごくシンプル。これはアベレージヒッターでも長距離タイプでも共通するものだと思うんで、今はそこを意識してやってます。
谷上 自分にはまだまだ無駄があった?
岡田 そうですね。去年、小川さん(博文、サーパス育成担当)から『テークバックの時にグリップが上がらないように』って言われたのと同じことを、イチローさんの自主トレで打撃投手として来ていた方にも言われたんです。それも無駄な動きのひとつだと思うんですけど、通じる部分もあったと思います。

 芯に当たる確率が上がれば、岡田の場合はそれがイコール長打、柵超えアップに直結する。捉えた時の打球の強さ、飛距離は今でも1軍トップクラスのものがあるのだから、イチローの確率に一歩でも半歩でも近づいてほしい。

         

「死のもの狂いでやります!」…

Okada080201a視力も手術によって改善され、表情も明るい。今年こそ1軍での活躍を期待したい

 前回も書いた視力についても聞くと「今は左右とも1.5。全然問題いです」と明るい表情。しかし、改めて手術前は右が0.9、左が0.4だったと聞かされると「よくそれでやてったなあ…」と、また言ってしまった。ただ、まだ打席の中で視力アップの効果を感じる場面は少ないらしく、「一番、効果がわかったのは車の教習の時です。表示とかがはっきり見えるようになったんで」…。
 この日は結局、2時間近く一緒にいたが、キャンプインを目前に気負うこちらを尻目に、“岡田らしい”受け答が続いた。それでも最後に改めて3年目の決意を聞くと。
「死にもの狂いでやります」
 それでこそ! と、言いたいところだが、“決意の一言!”という雰囲気より、僕に無理やり言わされたような感じがアリアリ。
 そもそも「死にもの狂い」といったセリフが似合うのは高知でキャンプをスタートさせた清原くらいで、岡田の雰囲気にはまだちょっと馴染まなかったか。
 しかし、その言葉はともかく、強い思いは持ってキャンプに入っていったはず。まずは勝負の宮古島で周囲の目を変えるような、インパクトのある活躍を期待したい。

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は2月11日の予定です。

2008-01-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第65回-

Ichiro_and_okada_03 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で65回目を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で活躍以降、帰国後も好調を維持したままオフに突入。3年目の今季が大変楽しみになってきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
     

初自主トレ、イチロー&ゴジラ!

 新聞報道を通じ目にした人も多いだろうが、1月17日にイチローと岡田、2人だけの自主トレが実現した。岡田本人には既にその2日前に連絡が取れていて、17日に取材へ行くことが決まっていた。ただ、その時点ではイチローと練習する予定は入ってはおらず、10時から2時間、他の若手らと行うはずだった。
 ところが16日の夕方、「ちょっと時間が4時からに変更になって…」と電話が入った。そこで〈イチロー関係かも〉とピンときた。17日と言えば13年前に阪神淡路大震災が起きた日である。イチローはいつもこの日は神戸で練習をしているからだ。そこで、「イチローの関係?」と聞いてみると「はい、一緒にやることになって…」と言うことだった。
 去年もイチローは何度も神戸で自主トレを行っていたが、岡田が一緒にやることはなく、特に熱心にイチローの練習を見たという話も聞かなかった。逆に〈イチローさんはイチローさんなんで…〉というニュアンスの言葉を聞いたことがあったほど。それが驚きの初タッグである。
 どういう流れで実現したのかと言えば、イチローの練習パートナーを務めている元オリックスの藤本博史の都合がつかず、パートナーを探していたところ、オリックスの広報を通じ岡田に声がかかったのだった。

       

イチロー登場

Ichiro_and_okada_05イチローが練習場に登場。岡田が駆け寄り、まずは挨拶する

 当日は大半の選手が練習を終えたあとの午後4時から開始が予定されていた。球団寮の「青濤館」横にある室内練習場で待機していると、まず開始予定時刻の30分前に岡田が登場した。この時点で主役を待つ室内練習場中の空気はピリッと締まる。岡田の表情も少し緊張して見えた。
 そして午後3時57分、スタッフ3人と共にイチローが登場。すかさず岡田が駆け寄り「岡田です、よろしくお願いします」と挨拶した。すると「無理やりじゃなかった? 大丈夫?」と明るい声のイチロー。そのまま2人はロッカールームで着替え、再登場は16時10分。いよいよ練習が始まった。
 先に言ってしまうと、約2時間の練習中、岡田とイチローが言葉を交わしたのはほんとに数えるほどだった。
 1度目はキャッチボールを始める時。
「俺は離れるから無理しないで。自分のペースで投げてくれたらいいから」と言ったイチローに岡田が「はい」。
 2度目は、イチローの返球の強さに散々驚かされたあと。イチローの「このあとティーやってバッティングね」という声に、おそらく「わかりました」。
 3度目はそのティーの合間に「打っていいよ」とイチロー…。ともかく、その程度の“会話”のみだった。
 何より楽しみだった2人のフリーバッティングは、打撃投手の球を交代に打ち約1時間続いた。
 出だしから芯で「カン」「カン」と捉えるイチローに対し、岡田のスタートは「ガキッ」「ボコッ」「グシャ」という感じが多かった。しかし、3回目あたりから岡田にも快音が響き出し、真後ろで見ていたイチローからも「オッ」「ホーッ」という声が何度か聞こえた。見応えのある、贅沢な競演を途中からは2人の真後ろからじっくり見せてもらった。
 こうして約2時間のトレーニングは終了。その後、まず岡田が記者に囲まれた。

Okada080121練習後、囲み取材に応じる岡田。イチローのバットの出方に関心を示した

記者 どうでした?
岡田 なんていうか、言葉では言い表せないですね。
記者 どこが凄かった、と?
岡田 あのキャッチボールのボールが全然違いました。全然球が落ちないんです。あれがすごいですね。
記者 清原選手は(去年)イチローのボールを受けて手が真っ赤になったと言ってました。
岡田 僕は(グラブの)先で取って痛く無いようにしてたんで大丈夫でした(笑)。
谷上 気持ちも張って疲れたんじゃない?
岡田 あっという間でした。でも、2時間くらいでしたけど結構、アドレナリンが出てたと思います。
記者 イチローのバッティングを見て自分でも取り入れていきたいな、というような点は?
岡田 体の使い方が違いますし、バットの出方も全然違います。アベレージバッターでもパワーヒッターでも関係なく、やっぱりボールを捕える確率を高めないとダメだと思うんで、少しでも近づけていきたいと思います。(イチローは)最短距離でインサイドアウトに出てますよね。
記者 バッティング練習ではいい当たりも多かったと思うけど?
岡田 そうですね。マシン以外で打つのは今年初めてだったんですけど、予想以上にましな打球がありました。
記者 今年はどんなシーズンに?
岡田 去年もオープン戦までは上に帯同させてもらったんですけど、そこまでで…。今年はオープン戦でも結果にこだわって、必死にくらいついていきたいです。
谷上 イチローも高卒3年目210本安打。今年は岡田もその3年目。
岡田 そういう意味でも勝負の年になると思います。
記者 オリックスはこのオフにいろいろ補強をしたけど?
岡田 カブレラがケガをすることだってあると思うし、いつでも出れるように準備しておきたいと思います。

        

気になるイチローの岡田評

Ichiro_and_okada_04岡田の打撃を後ろで見つめるイチロー。帰り際の囲み取材で「ペタジーニみたい」と評した

 岡田の取材が終わってしばらく、着替えを終えて出てきたイチローは足早に出口に向かうと、そのまま表の駐車場へ。そのまま車に乗り込むのか…、と思いきや、そこでストップ。3分足らずの短い時間だったか囲み取材が始まった。
 気になるその内容は…。

記者 岡田選手についての印象は?。
イチロー ペタジー二(元ヤクルトほか)、ペタジー二みたい。
記者 岡田選手は将来の4番候補と期待されて、パワーがあるバッターです。
イチロー それは見てすぐにわかった。でも、(打撃投手相手に打つのは)今日が初めてっていうのにすぐに対応していってたからセンスもあるよね。
谷上 岡田はイチローさんのバットの出方に一番関心をしていましたが、イチローさんから見て、岡田のバッティングがどう見えたのか、気になる点などありましたか?
イチロー それはわかんないよ。だって見たのは今日が始めてだから。だけど2時間でも一緒にやるとやっぱり情もわくし、頑張ってほしいよね。
記者 オリックスの若手とまたやってみようという思いはありますか?
イチロー こっちからお願いします、ですよ(笑)

 このあとももう少しあったが、ザッとこんな言葉を残しイチローは迎えの車へ乗り込み、足早に去っていった。イチローの岡田を語る言葉からは“好意”を感じたが、練習中の2人の間には距離があった。岡田がイチローに積極的に近づくことはなく、記者から「次も機会があったらパートナーに立候補したい?」と聞かれ時は「勘弁して下さい」と冗談っぽく返していた。そんな反応も含め、岡田らしいと言えば岡田らしいと見ていたが、その後、展開があった。

         

イチローの指摘に気になったのは…

Ichiro_and_okada_02この日以後も、岡田はイチローと練習。貴重な日が続いた

 実はこの翌日からもイチローと岡田は一緒に練習することになり、新聞ではいきなり「塾生」なんて書かれていた。その3回目の20日、フリー打撃の合間に岡田がついにイチローへアドバイスを求めに行ったと言う。デイリースポーツの記事をまとめるとこんな感じだ。
 「僕のバッティングの悪いところは…」と意を決して近づいた岡田に対しイチローは「悪いところは誰にでもある」と前置きした上でこう言ったそうだ。

「一番悪いのは打ちに行く時に左肩が前に突っ込むところ。下と上のバランスがバラバラになっている。それがない時はいいスイングだよ」

 左バッター岡田の左肩が突っ込むとは、開きが早くなり、バットも外回りするという指摘だろう。岡田がイチローに関心していたインサイドアウトの軌道も左肩が先行しては無理なスイング。事実、イチローと交互に打っていた岡田のスイングを真後ろから見ていると、イチローのように内から絞り込んでいくような形は感じなかった。
 この左肩の突っ込み、早い開きについてひとつ思ったのが前回書いた目のことだ。その時にも登場してもらった田村智則先生から聞いた話を思い出した。「例えば、左バッターで左目でボールを見よう、見ようとする意識が強いと、顔が回りやすく、それが体の開きにつながることがある。体をいくら開かないようにしようと頭で思っても、見ようと思えば思うほど、顔は正面を向きやすくなる」という話だ。

Ichiro_and_okada_01イチローは岡田のスイングが時折左肩が突っ込むことを指摘。3年目の台頭に向け、大いなるきっかけとなってほしい
 これには効き目がどっちかという問題や、右と左の視力のバランス、あるいは個人による目の使い方の特徴も大いに関係してくる。例えば、現役時代の落合博満(中日監督)に代表されるように、足の置き方をオープンにし、構えた時から顔を投手へ向けておくのは、両目でボールを見ようとする意識の高いバッター心理と関係するのかもしれない。
 技術そのものの問題もあるだろうが、目の機能がこれまでの岡田のバッティングフォームに少しでも関係していたとすれば…。今度のレーシック手術(近視矯正)によって、これまで身についてしまっていた悪癖が出にくくなるなるかもしれない。改めて一度、本人に目の話をじっくり聞いてみたい。
 また、もうひとつ。今回のイチローとの自主トレで僕が感じ、岡田に見習ってほしい点も書いておきたいが…。分量がおそらく過去最多になってきたので、この続きは次回以降のお楽しみに。
 ひとまず、イチローと接点を持ったことは、何かしらの形で岡田の中にプラスを生んだはず。3年目の爆発にますます期待は膨らむばかりだ。

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は2月1日の予定です。

2008-01-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第64回-

Okada_top080111 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。2008年も元気に突入、今回で64回を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、宮崎フェニックスリーグでも打棒が爆発し、良い状態のままオフに突入。3年目の今季が大変楽しみになってきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
     

自主トレ取材のはずが…

 元旦はこのブログを始めて以来、初めての休みをもらったので今回が2008年初の更新となる。ひとまず、岡田ファンのみなさん、明けましておめでとうございます。
 このブログは基本的に岡田が1軍に定着するまで続ける予定で、そのあとはどういう形で追っかけるかは未定。ということは、今の形で続けるのはこの春までになる可能性も十分。08年の岡田には、それだけの期待をしていいはずで「使ってさえくれれば」というところまで来ている。
 ただ、そんな中、濱中治、古木克明に続き、9日にはカブレラの入団も決定。こんな補強を喜んでいるのは中村GMと一部のファンだけではないのか、とつい冷めた目で見てしまう。岡田の心境はいかに…。そのあたりも聞こうと母校・履正社高校のグラウンドで行っている自主トレ中の岡田を訪ねることにした。
 8、9日の午後に時間があったので、7日の夕方に岡田に連絡を入れ、練習予定を確認。すると8日は午後から練習するということだったので「じゃあ明日よろしく」と、電話を切った。ところが――。

       

衝撃! 実は視力が0.6!       

Okada_up080111岡田の視力は0.6程度。それほど良くはない状態で今までプレーをしていた。果たして手術後の効果はどう出るか?

 翌8日、まさに今から家を出ようとしていたその時、携帯に岡田から連絡がきた。
 出てみると「もう出ましたか?」のあと「今日はちょっと練習にいかないことになって…」と少し申し訳なさそうな声。昨日の今日なのでてっきり風邪でも引いたか、コンディションの問題だと思ったら、そうではなかった。
「レーシックってあるじゃないですか。あの手術を受けようと思って、とりあえす今日検査に行くことになったんです」
 まったく予想していなかった話に驚いたが、レーシックとは最近スポーツ選手や芸能人の間でもはやっている近視矯正手術のこと。松坂大輔(レッドソックス)、高津臣吾(元ヤクルト他)らが受けたことでプロ野球界でも有名になり、オリックスでは後藤光尊らも体験者。手術時間は片眼なら約5分で、安全性も確認されており、今後はますます一般的にも広がっていくのだろう。
 それはそうと、何より僕が驚いたのは岡田の目が悪かったという事実だ。振り返れば、高校時代からこれだけ取材を重ねてきながら、視力については聞いたことがなかった。高校時代にあれだけ打って、高校生ドラフト1巡目でプロに入るような選手、ましてバッターの目が悪いはずがないと思っていた。
 しかし、実は悪かったのだ。

谷上 眼、悪かったんやったっけ?
岡田 はい、ちょっと。だいたい0.6くらいです。
谷上 0.6!? コンタクトは?
岡田 入れてないです。コンタクトはちょっと合わないっていうか…。
谷上 それで今までやってたんか。何よりそれにビックリや。
岡田 一応大丈夫だったんで…。

            

何故、この時期に?

 次に僕が驚いたのは、この時期に手術をするということに、だ。
 あと3週間もすればキャンプインの時期。安全性の問題は大丈夫とはいっても眼である。
 特に岡田の場合は松坂や高津らと違い、バッターである。視力検査的な能力よりも、ピント調整能力など、他の周辺機能も含め、わずかでも違和感が生まれると困る。まして、岡田にとっては0.6が1.5にでもなるということは、メガネやコンタクトを入れるようなもの。新しい見え方に慣れる期間も多少でも必要かもしれない。手術をするならもっと早く、秋季キャンプが終わったあとにでもしていれば…、と思ってしまった。

岡田 今日、病院に電話を入れたら今度(手術を)できるのが18か、19日って言われたんです。でも、手術のあとは1週間くらい運動制限がされるって聞いて、そうなるとちょっと困るなあ、と思って。
谷上 そら困るやろ、キャンプ直前やから。
岡田 それで、今日検査してもらって、問題なければ、すぐに出来そうってことだったんで、とりあえず今日行くことにしたんです。
谷上 それはその方がいいけど…。もっと早くやっとけばよかったのに。
岡田 はい…。
谷上 プロ入り前にやっといても…。
岡田 ……。だから今日はちょっと行けなくなったんですいません。
谷上 でも、これでボールがしっかり見えるようになれば結果も変わってくるかも。またその後の報告を聞かせてな。
岡田 はい。

 どういう経緯で急に手術を受けようと思ったのかわからないが、このマイペースな感じはある意味で岡田らしい。

         

次は目指せ、イチローの眼!

Dr_tamura視覚情報センターの田村氏。スポーツ選手へのビジョントレーニングの指導などで知られる

 しかし、これでキャンプ、オープン戦から岡田がガンガン打ち出したらスポーツ新聞には「視力矯正効果!」と見出しが並ぶのだろう。間違いない(笑)
 ただ、上にも書いたが、0.6だったものが1.5にでもなれば、打席での感覚に差が出る可能性もある。
 以前、大阪の江坂で視覚情報センターの代表を務める田村知則氏に話を聞いたことがある。オリックス時代のイチローがビジョントレーニングに同所を訪れたことで広く知られるようにもなった人でもあるが、昨年はイチローつながりで清原和博も田村氏の元を訪れている。そして何より岡田自身も履正社高校時代に岡田龍生監督に連れられ、様々な検査を受けたことがある。単に視力だけでなく、あらゆる角度から眼の機能を調べたであろう、その時に何らかの指摘は受けなかったのだろうか。今回の「0.6の衝撃」に改めてそんなことも思ったが、ともあれ、その田村氏がこんな話をしていた。

 視力矯正手術を受けたプロ野球のあるバッターについて「手術のお陰でいわゆる視力は飛躍的に上がったけど、お陰でボールの見え方が変わってしまった。それまでとの感覚のズレに悩まされて、手術以降の彼は逆に思うように打てなくなってしまったんです」と。
 ただ、その選手は強度の近視で長年メガネをかけてプレーを続けていた。手術を受けたのはプロ生活の後半で現時点でも裸眼でプレーできていた岡田とはかなりケースが違うことはつけ加えておきたい。

 それにしても、岡田には今回の手術をきかっけに眼に対する意識も高く持ってもらいたい。かつての落合博満(中日監督)や門田博光(元南海)など、多くの選手たちが引退を決意するのは肉体よりも眼の衰えによるところが大きい。バッターにとって眼は命なのだ。そして眼の機能とは単に視力だけの問題ではない。
 田村氏に話を聞いた際、イチローの目のトレーニング風景を撮ったビデオを見せてもらったことがある。それは軽い衝撃だった。画面の中のイチローの眼は左右、上下、斜めと顔は正面を向いたまま自在に、実に素早く動いていたのだ。他のサンプル選手の映像と比べるとその違いは一目瞭然。まるでひっかかることも波打つこともなく四方八方に動いていた。この眼があるから、落差大きく、あるいは鋭く落ち込んでくるボールにも、背中の方から入り込んでくるボールにも則座に反応できるのだ、と確信した。
 人の目というのは動き方にクセがあり、動きづらい方向がある。そこをなくして滑らかな動きを手に入れることは好打者には必要不可欠な要素のはず。昨年末は「本家のゴジラを目指せ!」と書いたが、今回の手術で視力を取り戻した(はず)岡田には、今度はイチローの目を目指してほしい。

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は1月21日の予定です。

2007-12-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第63回-

Okada_top071221 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。63回目を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、宮崎フェニックスリーグでも打棒が爆発し、良い状態のままオフに突入。3年目の来年がますます楽しみになってきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
     

濱中に続き、今度は古木

「今回はコレといったネタがなく、何を書こうか、と思っていたところにトレードのニュースが舞い込んできた」
 こう書き出したのは前々回の記事だった。そして今回、再びネタに困っていると、またもやトレード話が! 前回は阪神から濱中治で、今回は横浜から古木克明。ともに長打力を売りにする選手で、岡田本人も岡田ファンをも大いに刺激するトレードが続く。

Furuki大西宏明とのトレードで獲得が決まった古木克明

 しかし、まあ…。
 右の大砲が欲しいと濱中を獲り、カブレラにも交渉中だと思ったら、次は「左の大砲が欲しかった」と中村GM。それは今シーズン、楽天にも抜かれて最下位に沈んだオリックスなのだから、右の大砲も左の大砲も、盗塁の出来る選手も、左の中継ぎもセットアッパーも…、優秀な監督もコーチも、何でも欲しいのだろうが、それにしても、相変わらずどんなチームを作りたいのかがまるで見えてこない。「夢の200発打線」なんて書いてあった新聞もあったが、どこに夢があるのか?
 オリックスのトレードを見ていると、「ウチのA選手とヨソのB選手なら、B選手の方が実績もある。これで交換できるなら多分もうけもん」そんなレベルのものにしか見えない。古木も4年前には22本塁打を打ったこともあり、確かに飛ばす魅力は持っているが、今のオリックスに必要な選手か? と聞かれれば大いにクエスチョンだ。
 しかも、交換で出したのが大西宏明。阪神に移った平野恵一もそうだが、それぞれの高い能力をオリックスで使い切っていただろうか? 特に大西は10本塁打した近鉄の最終年(2004年)には立て続けに満塁弾など印象的な一発を放ち、中村紀洋から「いてまえ魂を継げるのは大西しかおらん」と言われたこともあった選手。思い切りの良さに、勝負強さ。さらにあの守りに足。ほんと、使い切れればいい選手なのだ。横浜へ移り、活躍する姿が今から見えてくる。
         

目指すは第2の巨人か!?

 それにしても、ローズにラロッカがいて、そこへ濱中、古木ときて、カブレラも欲しい。
 中村GMは、第2の巨人を目指しているのだろうか。資金的にそれほどのスケールはないが、安易に長距離砲を並べたがるイメージは、そこにしか重なってこない。しかも、濱中や古木が少々活躍しようと、それがチームの再建につながっていくのか? オリックスファンが心底喜ぶ結果になるのか?
 これだけ低迷が続いているんだから、そろそろ腹を決めて、ファームから中心選手を鍛え上げ、育てていこうという発想にはならないのだろうか。自前の選手を育てる、という球団の姿勢が、結局、チーム作りへの意欲だと思うのだが、その欠片も見えてこない。
 中村GMには、今の岡田を見てくれ! と言いたい。

Okada_071221_02岡田には周辺の状況に惑わされず、上だけを向いて進して欲しい
 今季の終盤の感じからすれば、使いさえすれば1軍で20発くらい打っても驚かないくらいの成長を感じた。後半戦の飛び方は半端じゃなかった。どうしてその可能性に賭けようとしないのか? 競争相手の出現による刺激は刺激として、若手の芽を摘むような補強は勘弁してほしい。今年、リーグ優勝したとはいえ、ここ数年巨人に充満していた閉塞感がまさにそうだったではないか。
 ウエスタンリーグの三冠王に輝いた迎祐一郎を筆頭に、サーパスの主力組がオフの契約更改で揃って出場機会の少なさに対する不満を口にしたそうだが、オフの補強でまたチームの空気は悪くなっていくだろう。それがまたシーズンの結果にもつながっていくのは目に見えている…。
           

目標は元祖・ゴジラ!

 しかし、嘆いてばかりでも仕方がない。
 一連のトレード報道には岡田ファンもイラッと来る所があっただろうが、結局、岡田に頑張ってもらうしかない。岡田には、濱中や古木が来たといっても、仮にここへカブレラまで加わったとしても、そこを見て欲しくない。
 もっと上、もっと先を見ろ、ということ。力さえつけていけば、そして、限られたチャンスの中であっても結果さえ出していけば、必ず風は吹いてくる。相手が誰であっても、ポジションがどうであろうと、使わざる得ないところまでもっていけばいいだけのことだ。
 あくまで目標は海の向こうのゴジラ。目線を落とさず、これくらいの障害はアッサリと超えていってほしい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回の更新は『野球小僧編集部ログ』が年末年始の期間中お休みとなるため、翌2008年1月11日に変更となりました。楽しみにされていた方には大変恐縮ですが、どうかご了承ください。

2007-12-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第62回-

Okada_top071211 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で62回目となりました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、宮崎フェニックスリーグでも打棒が爆発し、良い状態のままオフに突入。3年目の来年がますます楽しみになってきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか? 
       

「岡田貴弘を応援する会」に出席

 星野ジャパンが北京五輪の代表権を賭けてフィリピンと戦っていた12月2日の夜。僕は大阪、箕面市にあるとあるイタリアンレストランにいた。
 「第1回 岡田貴弘選手を応援する会」に出席のためだ。「応援する会」の話はこれまでに何度も書いてきたが、シーズンオフ企画として、今回は岡田を囲んで食事をしよう、ということになったのだ。

Okada_talk03「岡田貴弘選手を応援する会」のトークショーでのひと幕。岡田(右側)は筆者(左側)の質問に照れ笑いを浮かべながらも受け答えした
 夕方からの食事会の前に参加希望者は岡田を混じえゴルフも楽しんだという豪華版。岡田のナイスショット写真もここで掲載したかったが、僕は当日朝から京都の亀岡で取材があり、食事会のみの参加だったのでやむなし。
 それはともかく、17時30分にスタートした会の中で僕には1つ“仕事”が待っていた。半ばで岡田にインタビューをしてほしい、という話を応援する会のYさんから頼まれていたのだ。
 そこで会が始まる直前に簡単な打ち合わせを…と思い、店に入ってきたばかりの岡田をつかまえた。ところが「あとでインタビューさせてもらうから…」と言うと「聞いてないですよ~」という顔。続けて「簡単に答えられる質問でお願いします」と来た。もとより、会場には家族連れも多く、子供や女性の姿も目立った。そこで『野球小僧』的に「スイングの形が…」「足の上げ方が…」「軸が…」と、やるつもりはなかった。ただ、集まった人が聞きたいのは岡田の生声。「これもプロの務め! しっかりしゃべってや!」と背中を叩いて席へ戻った。
 そこから20分くらいのイメージで、ざっと質問・流れを考えていた。するとそこへYさんが岡田からの伝言を持ってやってきた。「ゴジラが5分くらいにしてほしいって言ってるんですけど…」。何という弱気! 会場の期待はもちろん、当初考えていた台湾行きを断念し参加させてもらった僕としても、それはちょっと…、だ。ということで、岡田の要望は独断で却下させてもらい、インタビューに突入した。
     

Okada_talk01「カラオケ握り」とヤジが飛んだマイクの握り方に注目

即席トークショー

 〈ついに来たか…〉という感じの岡田をステージへ促し、いざ、スタート。
 僕も慣れないインタビュアー役で何を聞いたか記憶がかなり曖昧ながら、覚えている範囲で一部紹介させてもらうと、こんな感じだ。

谷上 まず、プロ2年が終わったわけやけど振り返っての感想を。
岡田 う~ん、そうすねえ…。自分が思っていたよりも成績も全然だったんですけど…、後半に手応えを感じることができたのでそれはよかった、と思っています。
谷上 後半はかなりいい感じやったな。
岡田 そうですね。

 岡田が前に立った早々、会場からは「カラオケ握り!」とマイクの持ち方に“ヤジ”が飛び笑いも起きた。が、予想通り岡田の口は重い。ここで補足説明の意味も兼ね、僕から会場へ向け、去年と今年の成績を知らせた。数字だけ見ると、ほとんど変わっていないが、中身がまるで違うんです! と力説。「後半には20試合連続ヒット」「ラスト20試合弱で打率が4分近く上昇」等々、後半の好調ぶりを岡田に変わってアピールさせてもらった。

谷上 後半浮上のきっかけは?
岡田 そうですねえ…。いろいろ試していく中でこれまでにない感じを掴むことをできて、それが結果にもつながっていったんだと思います。

 1つ、2つ質問のあと、再び会場へ補足説明。岡田という選手は非常に発言が控えめで、通常の取材の際もめったに「好調宣言」は出てこないし、決して多くを語りたがらないタイプだ、と。
 だから――。今の「手応えを感じている」「これまでにない感じ」という言葉も、相当なことなのだ、と。

Okada_talk02バッティングのことについて、マイクをバット代わりにして話す岡田

谷上 オフには濱中も入ってきて、カブレラ獲りというニュースも聞こえてるけど、そのあたりは?
岡田 やっぱり、それは気になります。
谷上 でも、自分さえ結果を出せるようになれば…、使ってさえくれば…、という気持ち?
岡田 そうですね…。今年は1度も1軍に上がれなかったんで、来年は何とか1軍で結果を出せるようにやっていきたいです。
谷上 ところで夏にはプレ五輪にも参加したけど、星野監督の印象はどうやった?
岡田 やっぱりオーラがありましたし、怖いって印象もあったんですけど、いるとチームが引き締まる感じがありました。
谷上 実際に怒られたりは?
岡田 それはなかったです。
谷上 バッティング担当の田淵さんからはいろいろ教えてもらった?
岡田 技術的なことは特になかったですけど、いろいろ声をかけてもらいました。
谷上 ジャパンのユニフォームを着た経験も生きた?
岡田 そうですね。いい経験をさせてもらいましたし、それが後半にもつながったと思います。
谷上 そういえば、明日(3日)は契約更改らしいな。感触は?
岡田 ダウンでしょうね。
谷上 そう?
岡田 多分、だから少しでも粘って下がり幅を少なくしてきたいと思ってるんですけど。
谷上 まあ、来年打ったらすぐ取り返せるわ。
(翌日の更改では本人の予想通り推定10万ダウンの710万でサイン)

 トークが弾む!という感じになるまでにはまだまだ時間がかかりそうだったので(笑)、後半は会場の人からの質問を受け付けることにした。

       

Calendar筆者が抽選会で当選したオリジナルカレンダー
的中!2008年オリジナルカレンダー!

 ここからようやく岡田の表情もほぐれ、多少口も滑らかになってきた。
 子供たちからは「足のサイズは何センチですか?」といった素朴なものから「どうしたらホームランが打てますか」「アッパースイングを直すにはどうしたらいいですか」といった技術的なものまでいろいろと飛び出した。
 ちなみに1つ目の答は「28センチ」。2つ目は「わかれば僕が教えてほしい」と笑いを取っていた。さらに技術的な話については、マイクをバットに見立てての実戦指導なども行い、少年ファンの視線をひきつけていた。一方で岡田と年齢も近そうな青年からは「ところで彼女の方は?」という“軟派”な質問も。
 こちらの答えは…。個人情報に配慮し、いつかのお楽しみさせてもらいます(笑)。

 その後も会は続き、後半には岡田グッズ満載の抽選会も開催。数々の“お宝”がプレゼントされ、会場は盛り上がったが、中には岡田が使っているものと同じマスコットバットのプレゼントもあった。もし、当たれば僕もその夜から振り込みを始めようかと思っていたが、残念ながらハズレ。それでも〈もうなさそうやなあ〉と思っていた終盤、こちらも貴重な岡田母作成のオリジナル2008年カレンダーが当たった。
 これで来年も岡田を眺めながら1年を過ごせることになった。感謝。

        
課題はトークの上達か?

 盛況の中で2時間あまりの会は終了。岡田は最後もサインや記念撮影に応じ、忙しそうにしていたが、去り際に今後のスケジュールを聞いた。しばらくは合宿所でウエートやバッティングなどを続け、20日前後からは母校・履正社へも練習で顔を出す予定とのこと。
 それを聞いた後「あっ、22日には尼崎でシンポジウムに出ます」と言ってきた。これはプロとアマの隔たりを低くし、野球の底辺を拡大していこうと、2003年から開催されている「夢の向こうに」というシンポジウム。各球団の選手たちが、会場に集まった高校球児からの技術的な質問に答えながら、壇上で実際に指導するというものだ。

Q_and_a質問タイムでは子供たちから素朴な疑問が岡田に飛んだ(岡田は写真左側

 僕も過去に見たことがあるが、その時は初回で工藤公康や古田敦也らベテラン選手が多く登場していた。それが開催地区が拡大される中で、若手選手も借り出されるようになってきて、今回、岡田にも出番が回ってきたというわけだ。
 当日は岡田にとって試練の時間(?)になるかもしれないが、これもプロの務め。上手くしゃべろうと思わず、何か1つ、集まってきた高校生たちの頭に残る岡田ならではの言葉を伝えてほしい。
 …なんて、今回の一件でしゃべりの勉強の必要性をヒシヒシ感じている僕がアドバイスすることでもないのだが。ともあれ野球トークの上達も目指して、頑張れゴジラ!(笑)。1軍で活躍すれば取材も、ヒーローインタビューの機会も、野球教室の指導もどんどん待っているのだから。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は12月21日の予定です。

2007-12-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第61回-

Okada_top071201  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は61回目です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、宮崎フェニックスリーグでも打棒が爆発し、良い状態のまま1軍の秋季練習に参加。来季の飛躍に期待がかかります。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

   

濱中の加入に思うこと

 今回はコレといったネタがなく、何を書こうか、と思っていたところに阪神とオリックスの間で成立したトレードのニュースが舞い込んできた。阪神・濱中治、吉野誠とオリックス・平野恵一、阿部健太による2対2の交換トレード。この話題に何故、関心が向いたかと言えば…。
 もちろん、主軸を期待され、場合によっては外野で岡田と競うことになる濱中の加入に、ライバル出現! という見方もある。これまでの実績だけで言えば比べるまでもないが、今季後半戦の状態からすれば、来季は1軍での活躍が大いに期待できる岡田である。1軍の、しかもスタメン定着を本気で狙うなら、濱中もライバルの1人に違いない。

Hamanaka来シーズンからオリックスでプレーすることになった濱中治
 しかし、そういう見方とは別に、今回のトレードに関して岡田に感じてほしいことがある。なぜ、ミスタータイガースの後継者とも言われ、高い人気を誇っていた濱中がトレードとなったのか、という点だ。
 今から4年前の2003年、濱中は開幕から4番に座り、先のプレ五輪で岡田も指導を仰いだ田淵幸一氏(当時は阪神チーフ打撃コーチ)の下、長距離砲としての素質を着実に開花させつつあった。
 しかし、その矢先、突然のアクシデントが濱中を襲った。5月の広島戦で一塁へ帰塁した際、右肩を突いて負傷。すぐに復帰したものの、6月の巨人戦でライトから返球する際に再び右肩に激痛が走った。残りのシーズンを棒に振り手術を行うも、翌年再び右肩を痛め2度目の手術…。05年は代打として復帰し、昨年は結果として自己最高の20本塁打、打率.302を残したが、守備の不安は常について回った。
 結局、そのことに加えて、今季は打撃も不振もあって起用が減っていき、最後は球団にトレードを決断させたということだろう。よくテレビなどでは、右肩に決定的なダメージを与えた巨人戦での返球シーンが流されるが、濱中の野球人生を大きく狂わせたのはむしろ広島戦での帰塁である。パ・リーグにはDHがあるため、バッティング次第で復活の可能性は十分ある濱中ではあるが、あのときのワンプレーは生涯忘れられないものとして残っていくだろう。
 

気になる頭からの帰塁

Okada_sliding071201ヘッドスライディングで帰塁する岡田。故障の危険性を考慮すると、見ている側からすればできるだけ控えて欲しいところだが…

 以前の回で触れたことがあるが、今季8月末に故障で戦列を離脱した北川博敏も原因は右肩だった。致命的なダメージを負ったのは5月末に行われた中日戦。一塁守備についていた際、小飛球に頭から飛び込み右肩を強打したのだ。だが、実際にはそれ以前の巨人戦で、やはり一塁走者として頭から帰塁した際に右肩を突いたことが大きく響いていた。
 そして、高校時代の岡田のライバル平田良介(中日)がドラフト前のアジアAAA選手権(韓国)で痛めたのも同じパターン。最近、密かにこの帰塁に絡む故障が目立っている。
 そこで岡田である。岡田もまた“彼ら”と同様、頭から一塁へ帰塁することがある。これも昨年の早い段階からこの連載の中で指摘していたこと。僕としては、やはり頭からの帰塁はやめてほしい。
 活躍する前から故障の心配とは気の早い話で…、と思われるかもしれないが、選手生活が一瞬にして暗転する故障のことなのだから、高い意識を早く持つにこしたことはない。
 濱中や北川など決して足は速くないが、一生懸命プレーする選手。それだけに頭から帰塁するようなリードを取っていたのだろう、とも考えられる。その意識の点では岡田にも通じるものがある。
 もちろん、ハッスルプレーや少しでも先の塁を盗む意欲が大切なのは当たり前ではあるが、その一生懸命さが結果として故障につながってしまっては何にもならない。そのことは肝に命じておいてほしいのだ。
  

ハッスルプレートは紙一重も…

 しつこいようだがもうひとつ。この先、本当に故障だけは注意してほしいので、故障続きで書かせてもらう。それは、今回のトレードで阪神へ移ることになった平野のことだ。

Hirano濱中とのトレードで阪神に移籍する平野恵一。ユニホームを泥だらけにするガッツあふれるプレースタイルが魅力だが、それゆえに故障の危険がつきまとう。新天地ではどうなるか
 この選手も毎年、期待されながらレギュラーの座をしっかりつかむことができなかった。やはり故障が足を引っ張った。
 平野を一躍全国区にしたのは昨年5月、千葉マリンスタジアムでのプレー(二塁で出場していた平野は一塁後方へのファウルフライにダイビングキャッチを試みフェンスに激突。そのまま担架で退場)だが、それでシーズンを棒に振り、前年にせっかくつかんだかに見えたポジションを手放すことになった。
 今回のトレード報道の中でも、平野の闘志あふれるプレーをマスコミは賞賛し伝えているが、あのプレーをきっかけに平野がレギュラーを逃したこともまた確かなこと。ハッスルプレーは平野の真骨頂ではあるので、濱中や北川の例とは少し意味合いは違うが、ひとつ言えることは、大きな故障をせずにフルシーズンを戦い、その中で最高のプレーを見せるのが本当のプロフェッショナルだということだ。
 平野はその故障からの復帰直前、サーパスのゲームで外野を守り、今度は「あじさいスタジアム」の左中間フェンスに激しくぶつかり、退場したことがあった。それにより1軍復帰も遅れたのだが、僕はそのプレーを目の前で見て
〈さすが平野! あんな故障のあとなのにフェンスを怖がらないなんて〉
とは思わなかった。1日も早い1軍への復帰を期待されている選手がファームの秋のゲームで故障も辞さず、とばかりにフェンスにぶつかっていった姿に、言葉はきついがプロ意識の低さを感じてしまったのだ。その衝突シーンをネット裏の部屋で僕と並んで見ていたある球団の関係者はクビを捻ってこう言った。
「僕も彼に言ったことがあるんですよ。『ハッスルプレーも大事だけどケガをしたらなんにもならんぞ』って。そしたら彼は『頭ではわかってるんですけど、体がいってしまうんです。どうしようもないんです』って。でも、どうしようもないって言われても、アマチュアじゃないんだからねえ…」
 そう、アマチュアじゃないのだ。プロの選手は1軍のゲームに出てこその価値、ということをしっかり頭に叩き込んでプレーしなければならない。
   

故障を防ぐのもプロ意識から

Okada_batting071201故障を恐れぬプレーも大切だが、一流選手の条件は何を差し置いても「故障しない」こと。岡田には防げる故障は防いで欲しい

 選手生命を一瞬にして狂わせる故障。岡田にはその怖さを今のうちに十分に感じてほしい。リードを狭めることでアウトになるプレーがあるならそれは仕方がない。ギリギリのリードを取ったがために故障をしたとしたら、それこそが球団にとっての損失、ファンにとっての失望、何より自分自身への悔いを残すことになるのだ。 まして、岡田の一番の持ち味であるバッティングで生じた故障ならまだしも、そうでないならやはり悔いは大きいだろう。
 野球選手に故障はつきものだが、防げる故障を防ぐのがプロ。出来る範囲の中で全力プレーを見せるのがプロである。来季の岡田がいよいよ楽しみになってきただけに今回は長々書かせてもらった。
 せっかく巡ってきたチャンスを逃さないためにも、そして、一流選手への階段を昇っていくためにも、この先、故障だけには十分注意してもらいたい。
 それだけに――。
 あくまで僕の希望としては、頭からの帰塁は考え直してもらいたい。

     

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は12月11日の予定です。

2007-11-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第60回-

Okada_top071121 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回はついに60回目の掲載です。すごいことです。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、宮崎フェニックスリーグでも打棒が爆発し、良い状態のまま現在は1軍の秋季練習を打ち上げました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

    

高知キャンプ観戦

Okada_batting071121高知の秋季キャンプでも岡田は好調を維持していた

 オリックスの高知キャンプは19日で打ち上げとなったが、終了間際の17日にトンボ返りで観戦してきた。朝一番の飛行機で大阪を発ち、9時半過ぎには高知市内にある高知東部球場へ到着。10時のアップから明るい表情の岡田を眺めていたところ、知り合いのカメラマンに声をかけられた。「昨日来たらよかったのに」と。というのも、16日に行われた韓国・SKワイバーンズとの練習試合で岡田が一発を放っていたからだ。聞くところによると、フォークを拾いライトポール寄りへ持っていったようで、変わらずの好調キープを感じた。
 ただ、試合前のバッティング練習は、ちょっとぎこちなかった。打撃投手が課題の1つでもあるサウスポーだったことも関係したのか、サブグラウンドでの別メニューから移動してきて即バッティングという班だったため準備不足もあったのか、本人も不本意そうだった。
 試合前はそんな岡田とは軽く挨拶だけで済ませ、12時半から2日続きで行われたSKワイバーンズとの練習試合を観戦。フェニックスリーグ以来、約1カ月ぶりに見る実戦でのバッティングはどう映るのか――。

      

Debus_okadaディーバスコーチが見守る中打撃練習を行う岡田。韓国・SKとの練習試合では犠飛、左前安打の2打席で退いた

犠牲フライで好調キープを確認

 ちなみにオリックスの打順はトップから坂口智隆、大引啓次、後藤光尊、下山真二、日高剛、一輝、岡田、迎祐一郎、鈴木郁洋。1軍キャンプでの実戦とは言え、助っ人と北川博敏、村松有人あたりが抜けると、サーパスで馴染みの顔も多く、その意味でのワクワク感はなし。このメンバーなら4番で使ってもいいのに…、と思いながら始まった試合の第1打席は2回裏1死一、三塁の場面で回ってきた。
 相手先発は上体の強そうなガッチリ系の右オーバーハンドの投手。初球はインローへのスライダーを空振り、2球目は外に落ちるボールが外れ、そのあとの3球目。インコースへのストレートに反応しバットを出した打球は高く上がったライトへの犠牲フライとなった。
 打席の雰囲気が非常によく、いきなり一発も…と真剣に期待した結果にはならなかったが悪い内容ではない。スピードはさほどないが、きっちりインコースにコントロールされたボールに体をうまく回転させている。詰まらされることも、打球が切れることもなく、うまく捕らえていた。バットの上っ面にボールが当たったため上がりすぎたが、きっちりした形での凡打が増えれば当然、結果もついてくる。
 しかし、シーズン後半からそうだったが、打球が上がるようになってきた。去年や今年の前半と比べると、ここが大きく違う。もちろん、フライがすべていいわけではないが、岡田のような長距離砲にとって打球が上がるのは歓迎だ。バットがボールに当たる角度がよくなってきたのだろう。ひっかけるような打球も減ってきている。一発に結びつく要素が着々と増えてきているようで、この1打席を見ただけでまた楽しみが膨らんだ。
 続く2打席目は4回に回ってきた。相手はSK3番手のやはり右上手投げの投手。その初球、外を狙ったストレートが逆球となって内にきたところを捉えてレフト前へヒット。ちょっと詰まった打球でもあったが、もう、ヒットではもったいない感じを受けるようになった。
 犠牲フライにレフト前ヒットと続き、後半の打席に期待! と思っていた矢先、6回の守りから岡田がベンチに退いてしまった…。先発メンバー中7人がここで一気に交代となったので、やむを得ないと言えばやむを得ないのだが、続けて見たかった。

       

金廣鉉との対決は幻に

Kimアジアシリーズ予選ラウンドで中日相手に勝利投手となったSK・金廣鉉(キム・グァンヒョン)。岡田との対戦はなかったが、この日もオリックスを相手に好投した

 ちなみにこの試合は後半にオリックスの清水章夫、宮本大輔が打たれ、SKが5対2で逆転勝ちしたのだが、逆転した直後の7回裏からSKのマウンドには金廣鉉(キム・グァンヒョン)が上がった。先のアジアシリーズで3年目にして日本のチャンピオンチームに初の黒星をつけた19歳の大型サウスポーだ。そのときの登板では、親指の血まめにより7回途中で交代したものの、中日打線を3安打でピシャリ。187センチから投げ下ろす140キロ台のストレートとスライダーのコンビネーションで、実にイキのいいピッチングだったのが印象的だった。そんな好投手相手に岡田がどんなバッティングをするのかも見てみたかったのだが…。だからなおのこと今回の途中交代は残念だった。
 ただ、僕がこの日、ひとつツイていたのは、試合後の居残り特打メンバー2人のうちの1人に岡田が入っていたことだ。お陰で試合後にもう1度、たっぷりとそのバッティングを見ることができた。
 そして、そこでのバッティングでまた魅せてくれた。両翼94メートル、中堅120メートルの東部球場には、わずかな外野芝生席の後ろにスコアボードと同じ高さ(約20メートル相当)のネットが張られているのだが、その上段にバンバン当てていたのだ。
 ちなみに55スイング中フェンスオーバーが15本。芯を食えば当然軽々とフェンスを越えていたが、明らかにバットの上っ面に当たった打球でもフェンス際まで飛んでいくことがしばしば。これにまた驚かされた。
 前回も少し書いたが、ヘッドが効き出し、本来持っている岡田のパワーがインパクトに正しく伝わるようになってきたことで、ハッキリ打球の飛びが変わってきたのだ。そんなド迫力のバッティング練習を堪能させてもらった直後、ベンチ裏へ着替えに戻ってきたところで岡田に聞いた。

        

ベンチ裏で本人に直撃!

谷上 変わらず良さそうやなあ。フォームも固まってきた?
岡田 まだまだですけど。でも、練習試合の初めの2つくらいは結果が出てなかったんですけど、昨日一発も出て感じとしては悪くないです。
谷上 でも、今の特打ちなんかでも打球が飛び出したよなあ。ちょっと凄いよなあ。
岡田 自分でもこっち(高知)にきてからまた飛び出した感じがしてます。
谷上 水口(栄二)コーチからヘッドを立てて振れ、っていうことを言われてるみたいやけど。
岡田 僕だけじゃなく、どの選手も言われてることなんですけど、そこは意識してやってます。

Mizuguchi_okada今年からコーチに就任した水口栄二の指導を真剣な表情で受ける岡田
谷上 ティーを見ていたら、スイングのあと軸足を残さずに動かして打ってたけど狙いは?
岡田 あれは少し前のポイントで捉えることを意識して振るようにということで、水口さんから教えてもらってやってるんです。変化球を打つタイミングや形は今のままでいいと言われてるんですけど、真っ直ぐに差し込まれないように、ということです。
谷上 水口コーチの指導自体はどんな感じ?
岡田 難しいけど、わかりやすい、そんな感じです。
谷上 ここが大事! と言ってた秋季キャンプも終わりに近いけど、やり切ったって感じ?
岡田 充実はしてましたね。
谷上 あとは神戸に戻って自主練習?
岡田 そうですね。
谷上 また、そこで形を固めて、やな。
岡田 はい、頑張ります。

 宮崎からの明るい表情が続いていた。これが何よりの好調の証。何ならあと1、2週間キャンプを延長してやってほしいくらいだが、あとは神戸に戻ってしっかり打ち込みながらフォームを固めていくのみ。ちなみにオリックスの寮「青濤館」にいた頃のイチローが、夜中に1人でマシン相手に打ち込んでいたという話は有名だ。
 岡田にもマシンを独占するくらいに打ち込んで、今のいい感じをさらに高め、体に記憶させていってほしい。とにかくここまでは極めて順調だ。
 岡田ファンのみなさん、来年は大いに期待して下さい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は12月1日の予定です。

2007-11-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第59回-

Okada071111top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は59回目の掲載です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、宮崎フェニックスリーグでも打棒が爆発し、良い状態のまま現在は1軍の秋季練習に参加しています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

    
戦いの秋、別れの秋

Ina_ryuya_1昨秋、ドラフト3巡目指名でソフトバンクに入団した伊奈龍哉。だが、今シーズン限りで戦力外通告を受けた(写真は近江高時代)

 秋季キャンプも後半戦に突入。10日には阪神との練習試合も行われていたが、僕は9日から東京で中日・中村紀洋の取材と明治神宮大会の取材。高知には11月15日前後に行くつもりなので、まだフェニックスリーグ以降の岡田は確認できていない。相当ハードなことになっていると思うが、シーズンが終わっても若手選手たちの戦いはまだまだ続いている。一方でオフを感じるニュースが多いのもこの時期である。
 各球団から戦力外となった選手たちの話題もそのひとつ。オリックスでは吉田修司、勝、軒作、柴田誠也、松村豊次、町豪将が自由契約になったが、その後、他球団から声がかかる者、トライアウトで結果を待つ者、球団職員としての再就職が決まった者、野球界から離れ新たな道へ進む者…、と様々だ。
 そんなニュースを聞きながら、解雇されるまでの年数が年々早まっていると改めて感じる。例えば、このブログ(第9回)でも紹介したことのある伊奈龍哉がなんと1年でソフトバンクから戦力外通告を受けた。
 近江高時代は高校通算74本塁打で「湖国のゴジラ」と呼ばれていた選手。技術的には粗削りながら、大柄な体型から他の選手とはレベルの違う打球を放っていたスラッガーで〈上手く育てば…〉と期待を感じていた。それが…。
 解雇の理由に球団関係者は肩の故障を挙げ、「リハビリをしたが回復が難しい、と判断した」と語っていたが、回復に時間がかかることはドラフト時からわかっていたこと。それだけが原因とは思えないのだが…。直接、岡田に関係はないが、ゴジラつながりということで「伊奈解雇」の一報に目が止まった。
 

Okada_firstbaseman_defense現在岡田は高知の秋季キャンプで奮闘中。今年のチームの方針もあり、かなりハードな練習に明け暮れているはずだ

カブ、ラミ、セギよりも…

 オフを感じるニュースをオリックス関連でもうひとつ。
 「カブレラ獲りも視野に」。数日前の新聞でこんな小見出しの記事を見つけた。他にもラミレス、セギノールの名も挙がっていて、宮内オーナーが「金はいくらでも出す」と言ったとか言わないとか…。
 しかし、このニュースを目にした時に高鳴るものは何もなかった。清原和博、中村、ローズ、ラロッカ…に続き、まだその路線を行きますか? という感じだ。
 カブレラやラミレスを獲り、彼らが活躍したとしても…、それだけの話だ。寄せ集めで凌ごうとするのではなく、根本からチームを作り変えないと今の流れは止まらない。
 中村、谷佳知(巨人)、早川大輔(ロッテ)らの活躍を指し、シーズン中に宮内オーナーが「今年のトレードは失敗だった」という趣旨の発言をしていた。しかし、3人があのままオリックスに残っていても、決して今年の活躍はなかった。断言できる。
 逆に他チームからトレードでオリックスへ移ってきた選手は一向に働いてくれない。これは何なのか? ということを考えないといけない。長年Bクラス続きで沈滞する今のムードを変え、選手の力を引き出す空気を作っていかなければならない。
 チームを変えるのは、やはり外国人ではなく、日本人であり、それも活きのいい若手だ。若手の出現こそチームを活性化し、今の沈滞ムードを消してくれるはずだ。
 中日の平田良介がクライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズと、すっかり普通にプレーしている姿に「経験」がどれだけ選手を成長させるのかを改めて感じた。それに比べ、チームが低迷する中、ファームの三冠王・迎祐一郎さえ活用しきれないオリックスはやはり問題だろう。
 TSUYOSHI、今江敏晃らの台頭で今やすっかり優勝争いの常連となったロッテも、森本稀哲、ダルビッシュ有らの活躍でリーグ連覇の日本ハムも、少し前までは共にBクラスの常連だった。イチロー、田口壮という若手が出てオリックスが大きく変わった1990年代当時もそうだった。とにかく来季のコリンズには若手を大胆に起用をしてほしい。つまり、何がなんでも岡田を使え、ということだ。
    

丹羽将弥との「ON砲」

Niwa今年の高校生ドラフトでオリックスから1巡目で指名された岐阜城北・丹羽将弥。将来は岡田との「ON砲」となるべく、期待がかかる

 活きのいい若手と言えば…。先日、来年から岡田のチームメイトとなる丹羽将弥(岐阜城北、高校生ドラフト1巡目指名)の取材へ行ってきた。思っていたほど体の大きさはなかったが、無駄肉のない「アスリート系」の体が印象的だった。
 丹羽が注目を集めたのは、5月に行われたブラジル選抜との対戦で出た一発。岐阜選抜の4番として登場すると長良川球場場外へ140メートル弾を放ち、一気に株が上昇した。
 ただ、プロで一発を売りにするタイプにはならないだろう。「140メートル」、「場外弾」の話題ばかりが取り上げられたために誤解された部分があったようだが、イメージとすれば中島裕之(西武)につながっていきそうなタイプだ。なかなか快活でおそらく好青年(笑)。今は選手名鑑を見ながらオリックスについて勉強しているそうで、岡田の名前を出すと「はい、知ってます!」。岡田の凄さと来季の爆発予想を軽く説明もしておいた。中田翔(大阪桐蔭、高校生ドラフト日本ハム1巡指名)とではなくなったが、丹羽と組む「ON砲」にいやでも期待したくなる。
 また、丹羽は本来は外野ながら、三塁へのコンバートプランも挙がっており、一塁・岡田、三塁・丹羽というのも本家・ONに同じく、で悪くない。順調に育ち、岡田と共にオリックスを変えていってほしい。
 今回は周辺ネタで書かせてもらったが、次回は高知キャンプレポートを届けられる予定。岡田の状況をしっかり確認し、本人の生の声も伝えるつもりなのでしばしお待ちいただきたい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は11月21日の予定です。

2007-11-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第58回-

071101okada_rest 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。これで58回目を数えます。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでは、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で日本代表の中軸として活躍。帰国後も好調を維持しました。
 その後、シーズン終盤での1軍昇格見えたところで痛恨の故障に見舞われたものの、経過は良好。宮崎フェニックスリーグで打棒が爆発し、良い状態のまま一軍の秋季練習に参加しています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
      

秋季キャンプスタート

071101okadabatting10月30日から高知で秋季キャンプがスタート。岡田は1軍メンバーとして参加

 スカイマークで始まったオリックスの秋季キャンプは、10月30日から場所を高知に移し、高知市東部野球場で行われている。(11月19日まで。休日は4、9、15日)。もちろん、岡田も1軍メンバーに選ばれたわけだが、何やらハードなことになっているようだ。
 報道によれば「去年の倍の8時間練習」。新聞には岡田の「スイングは去年の倍。キツイと聞いてたけど予想通りだった」というコメントも載っていた。
 シーズンのことや体調を気にせず思い切り練習できるのは秋。ここで体力を高め、技術を求めていくのは当然のことで、ましてオリックスには伸びきれない中堅、若手がゴロゴロといる。そう思えば、去年からもっとやっとけば…、とも言いたくなるが、一応、コリンズはこんなコメントを残している。
「昨年の秋季キャンプは、私自身が選手個々の能力や特徴を把握したかったので、紅白戦を多く取り入れた。今年は選手達の能力は把握できているので、今回は選手個々に課題を与え、異なった練習をしてもらう。それぞれに課題を与えてやってもらうので、当然練習時間も長くなる」(球団HPより)
 ともかく、このハードな練習を聞き、ますます来年の岡田が楽しみになったことは確かだ。
 

071101okada_nextハードな練習が待ち受ける秋季キャンプだが、岡田のような若い選手にとっては徹底して量をこなせる絶好の機会だ

体力強化よりも…

 さて、この長時間練習に一役買っているのがドジャースのストレングス・コンディショニング担当で臨時コーチとしてやってきたダグ・ジャロー氏の参加だ。フェニックスリーグの最中に参加が決まり、前日の観戦日には記者から岡田へ質問も出ていた。

――秋季キャンプには臨時コーチがくるけど。
岡田 どういう練習をするのかわからないんで、なんとも言えないですけど。
――体を鍛えるのは好き?
岡田 好きっていうか、どういう練習をするのか興味はあります。
――かなり厳しい練習になりそうで、監督は夕食の時間(18時)までに宿舎に戻れればいいと言ってたけど。
岡田 (苦笑い)

 「興味はあります」という答とは裏腹(?)にいつも通り淡々と答えていた姿を思い出す。まあ、岡田にとっては体を鍛えることも必要だが、それより何よりバッティングだ。技術だ。体はバットを振り込む中で鍛えていけばいい。

       

小川博文育成担当に聞く

Ogawa 小川育成担当は主に1990年代にオリックスで活躍。勝負強い打撃が売り物だった

 コリンズ監督はこのキャンプの課題に「個々のレベルアップ」と「攻撃力のアップ」を大きな柱に掲げている。早出特打に始まり、30球連続のフリー打撃など「体が元気なうちにやってもらう」(コリンズ)と、バッティング練習は主に午前中に集中しているようだ。さて、そのバッティングについて、前回のフェニックスリーグ観戦の際に聞いた小川博文育成担当の話を少し紹介しておく。
 なぜ、育成担当が岡田のバッティングを? と思う人もいるだろう。サーパスのバッティング担当は大島公一コーチだが、夏から小川もバッティング指導を積極的に行うようになり、岡田もよく見るようになっていたのだ。

谷上 岡田の状態はどうですか。
小川 彼の能力から言えばマックスはまだまだ先ですけど、確かにシーズン後半からいい状態を保てるようになってきました。

谷上 注意して見てきたポイントはどこですか?
小川 開きっていうか、解けるっていうのがあったんです。バットを振るときには当然、体は開かれていくんですけど、それがダラ~と解ける感じがあった。そこがひとつ。
谷上 せっかくのパワーが生かされず逃げていた。
小川 そうですね。そういう中で左の股関節っていう話もしたし、(前回参照)あと、テークバックの時にバットが上に引き上がるクセがあったから、そこも修正しました。でも、まあ、ここから。今、ようやく掴みかけてきたところだから。秋のキャンプで本物になるかどうか。
谷上 是非、本物にして下さい!
小川 頑張ります(笑)

 「頑張ります」と答えてくれた小川育成担当だが、秋季キャンプではサーパスに同行。岡田にとっては残念なことだろうが、技術的な手応えははっきり感じているはず。ビデオを見ながら、ティーを打ちながら二人三脚で取り組んできた点を見失わずにやっていけば、自力で上がっていけるに違いない。

  

071101okadabatting02 くどいようだが、今は岡田の将来を占う大切な時期。この秋は野球漬けの秋を過ごして欲しい

ハードトレに感謝!

 こう書いている間にも岡田はバットを振っているのだろう。しかし、このハードなキャンプは、のちに「あの時のあの練習が…」と振り返る“宝”になるのではないか。また、そうなってほしい。一流と言われる選手には必ず、「あの時はきつかった…」「体が壊れるかと思った…」と振り返る、ただ、ただガムシャラに練習した時期がある。
 前にも少し書いたが、この日本シリーズで大活躍を見せている中村紀洋(中日)の口から何度も「3、4年目の時のキャンプ」の話を聞いた。早出特打、居残り特打、夜間練習を1日も欠かさず行ったという。右のスラッガーを育てる名人と言われた水谷実雄コーチに見込まれ、徹底的に振り込まされたわけだ。あまりのハードトレーニングにチームの先輩から中村は「あのオッサン(水谷)はおかしいんや。あんなんについていったら潰されるぞ」という“忠告”を受けたという。しかし、聞く耳を持たず水谷を信じてついていった。そして4年目には金村義明を追いやり、サードのレギュラーを獲得したのだ。
 自らの素質に本気で惚れ込んでくれるコーチとの出会いも岡田にとっては待たれるところだが、3年目の秋に経験するハードなキャンプは絶好のタイミングではある。流れも岡田の背中を押している。

※母校・履正社高校が近畿大会で勝ち上がり、3日に準決勝(勝てば4日に決勝)を戦う。現時点でセンバツ出場は当確で、3月の本番時に岡田とのセットでマスコミを賑わすことを楽しみにしたい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は11月11日の予定です。

2007-10-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第57回-

071021okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で57回目です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1巡目指名で入団、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振から立ち直りを見せ、北京で開かれたオリンピックプレ大会では、日本代表の中軸として活躍しました。そして、帰国後も好調を維持。シーズン終盤での1軍昇格見えたところで痛恨の故障に見舞われたものの、経過は良好。現在は宮崎フェニックスリーグに参加するまでに回復し、なにやらすごいことになっているようです。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

フェニックスリーグで猛打炸裂!

Okada_runningファーム最終戦で左足首を故障した岡田だったが、フェニックスリーグでは元気に出場していた

 中学時代からのライバル・平田良介(中日)がクライマックスシリーズでの大抜擢に燃えている頃…。履正社の後輩たちが来春のセンバツ出場を賭け近畿大会で戦っている頃…。岡田は南国・宮崎の地で3年目の爆発を大いに予感させる猛打を振るっていた――。
 19、20日に観戦のフェニックスリーグレポートへ入る前に、まず、観戦前日までの成績を書いておく。
 
9日 日本ハム戦 1打数 1安打
11日 グッドウイル戦 4打数 0安打
13日 湘南戦 4打数 0安打
14日 楽天戦 5打数 4安打 3打点 1本塁打
15日 ロッテ戦 3打数 1安打 1打点
16日 日本ハム戦 4打数 2安打 3打点 1本塁打
18日 巨人戦 5打数 2安打 2打点

 出だしこそ左足首捻挫の影響もあったのだろう、静かな立ち上がりだったが、中盤から突如、ゴジラが目覚めた。
 新聞などで伝わってくる情報に只ならぬ好調ぶりを感じ、期待をMAXに膨らませて19日に宮崎入り。朝8時過ぎに空港へ降り立ち、9時過ぎには宮崎市内にあるアイビースタジアム(ソフトバンクのキャンプ時使用球場)へ到着した。
 サーパスの試合前練習はすでに始まっていて、間もなくフリーバッティングへ。岡田が打ち始めたところで僕はベンチで一緒に見ていた宮田隆編成部長に「来年は岡田ですよね」と話を向けた。すると宮田さんからは「そうやね、高卒選手の3年目やし。ただ、開幕から一気にじゃなくても、とりあえず1軍で30、40試合しっかり経験を積んで、翌年は岡田でいける、というところまでいってくれれば」。
 僕は心の中で<もう来年一気ですよ>と返しながら、岡田のバットから弾かれていく力強い打球を目で追った。その直前、挨拶がてら「好調やな」と本人に声をかけると「まあ、まあ。まあ、まあです」と相変わらず慎重な反応だったが、表情は確実に明るかった。

成長の証、逆転3号3ラン!

Collins_2この日はコリンズ監督も視察。来季の躍進を狙う名将に岡田の好調はどう映ったか?

 19日の試合は、サーパス・香月良太、ヤクルト・高市俊の両先発で始まった。ゲーム開始に合わせるかのように小雨が落ちてくるあいにくの天候の中、岡田の1打席目はファーストゴロ、2打席目はサードファウルフライ。高市の膝元へのスライダーに少し手間取っているようだったが、対応力のアップが今の好調につながっているはず。
 そんな期待のこもった3打席目。2死一、二塁のチャンスにカウント2-0からのストレートをライトへ! 打球は両翼100メートルのライトフェンスを超え芝生席で弾む逆転の3号3ランとなった。
 あいにく三塁側のカメラマン席からビデオを撮っていたので、ここで写真を披露できないのが何とも残念だが、やってくれた。
 横から見た印象では、差し込まれ気味に思える程のポイントで捕まえながら、鋭い回転で一気に持っていった印象。「たまたま」ではなく「捉えるべくして捉えた」感じの一発に改めて成長の跡を感じた。
 次の第4打席はセカンドゴロのあと、8回の第5打席も惜しかった。1死満塁のチャンスに上原厚治郎からライトへの犠牲フライだったが、捉えた形、打球の角度も悪くなく、スタンドの数少ない観客からも「おおっ!」と声が上がった。やや先だったのだろう、あと数センチ芯の近くで捕らえていたら2本目だったはずだ。

 試合後、前日から宮崎入りしこの日の試合を視察したコリンズ監督が記者に囲まれていた。真っ先に出た質問は岡田について。「春先と比べて、どのあたりに成長を感じますか」――。
 それに対し、コリンズは「まだ2試合しか見てない。春と言ってもどこの時期と比べるのか?」と、いつものように軽く記者の質問に突っかかったあと「大いに期待しているし、今日はいい形でスイングできていた」「パワーがあるのはわかってるが、まだ19歳。やるべきこともたくさんある」「秋季キャンプでは打つだけでなく、もちろん、守りも守備もしっかりやってもらう」と並べた。
 記者が立て続けに「岡田、岡田」と聞くものだから、少しイライラした表情も見せながら、まあ、報道陣に対するこの種の対応はいつものこと。ともあれ、目の前の一発は指揮官にしっかりとインパクトを残したはずだ。

一足先に独占インタビュー!

071021okada_batting_practice試合後の練習での豪打連発の岡田。ヘッドの走りがいいときは打球の勢いが違った

 試合後に行われた特打ちでも岡田のバットからは快音が響いた。特に50スイングを超えたあたりから俄然、打球に迫力が増した。バッティング投手を務める今村文昭の横に立つ大島公一コーチから声が飛ぶ。
「そう今の感じ、今の感じ。抜けてるやろ、わかるやろ!」
 “抜けてる“とはヘッドが走り、効いているというニュアンスのこと。確かに見ていても”抜けてる“時の打球はわかる。勢い、伸びの違いがはっきりと出ていた。2度ほど、今村を直撃しそうなピッチャーライナーがあったほど打球の迫力は強烈。思わず僕は春のキャンプでディーバスコーチが言った「野手を殺すくらいの打球を打て!」という言葉を思い出していた。
 すっきりと打ち終え、ベンチ裏へ戻ってきたところで声を掛けた。この練習終了後に一塁側ベンチ内で新聞記者による囲み取材が行われたのだが、さしずめそれに先立っての独占インタビュー!

谷上 一発出たなあ。打ったのは内角のストレート?
岡田 はい。ちょっと内寄りでした。
谷上 横から見てるとかなり手元まで呼び込んで、回転で飛ばしたって感じやったけど。
岡田 自分では特別そういうのはなかったんですけど、結構いい感じでは打てたと思います。最近はかなりポイント近くで捌けるようになってきてるんです。
谷上 その分ボールも長く見れるし、しっかり見極めも出来る。感覚的にも変わってきた?
岡田 ボールに入っていく形がだいぶよくなってきたと思います。あとは…、今ここ(左脚の付け根を指し)を意識するようにして、それでかなりよくなった感じがあるんです。
谷上 左の股関節?
岡田 はい。これまであんまり意識したことはなかったんですけど、ここを意識するようになって良くなりました。最初少し開き気味に構えてから軽く捻って“ここ”に溜めてから打ちにいく感じです。
谷上 軸足に力がたまってる感覚がある?
岡田 はい。小川さん(博文・育成担当)とビデオを見ながらいろいろやって、取り組むようになりました。あと(ステップして出て行く時に)左の腰と肩をピッチャープレートのあたりに向けていくイメージも意識するようにしてます。
谷上 開かない意識で、また打つまでの形ができてきた。それにしても、続けて結果が出てるよなあ。

071021okada_prebatting_2好調のきっかけは股関節へ意識を置いたこと。それによって自分でも納得のいく形ができているという
岡田 2試合ノーヒットのあとの楽天戦からです。あの試合は第1打席で平下さんのバットを借りて打ったらいい感じのレフトライナーを打てたんです。でも、次の打席でそのバットを折ってしまったんですけど、それが内野安打になって、そこから。最近どれくらい打ってるんかって、ちょっと調べたいなって思ったりしてるんですけど。
谷上 俺の計算で行くと今日で30打数11安打で13打点、3ホーマー。
岡田 3割いってるんや…。
谷上 今日も含めてここ5試合やったら21打数10安打、13打点、ホームラン3本。
岡田 シーズンで4本しか打ってないのに(笑)。でも、結構いいところで打ててるんで、それはちょっといいかなと思ってます。
谷上 さっき住友監督が「最近の岡田は表情が違ってきた。自信が伝わってくる」と言ってたけど、打席での気持ちも違ってきた?
岡田 そうですね、最近はだいぶ余裕を持って入れるようになってます。自分の感じとしては…、これまでで一番いいです。

好調キープ、第4号!

 慎重な岡田の口からついに飛び出した好調宣言。はっきり聞いたのは去年の夏前以来、2度目。今回は確かな技術的裏づけを感じながらの“好調”だけに手応えも違うはずだ。その証に表情も明るく、岡田にすれば口数も多かった。
 一旦、練習へ戻り、終了後、番記者に囲まれての取材が始まった。
――打った感触はどうでした?
――ネット裏でコリンズ監督が見てましたけど?
――怪我はもう大丈夫ですか?
――すり足はもう身についてきました?
 これらの質問に、基本通り、いつも通りに答える岡田を眺めながら、僕は思っていた。<コリンズが見てようが見てまいが…><足が悪かったらこんなに打てるかいな><すり足うんぬんはもう昔の話…>。はっきり今、岡田は自分のバッティングスタイルを掴みつつある。そのことを確認できただけで今回の僕は十分。宮崎まで来た甲斐があった。岡田は翌20日の楽天戦でも、チームが5安打完封負けの中、2安打を放っていた。

Okada_collins勝負の3年目を迎える岡田の台頭は本人はもちろんのこと、球団としても望まれるところ。この秋の好調をぜひとも来年へのステップにしたい(左はコリンズ監督)

 そして、僕が大阪へ戻り、奈良の橿原球場で高校野球の近畿大会を観戦していた21日、14時前に携帯が鳴った。20日から宮崎で観戦中の父・秀和氏からだ。出るまでもなく用件はわかった。そこで開口一番「また打ちましたか?」と尋ねると「4号が出ました」。前日までの5番から3番に座り、グットウイルの同期・田中靖洋から右中間へ放り込んだそうだ。
 本当に、いよいよ、いよいよ、だ。
 あまりの好調に僕の筆も止まらなくなり、気づけば過去最長の原稿になっていた。しかし、まだ書きたいことはあるので、この続きはまた次回。
 とにかく今、凄いことになってます!

フェニックスリーグ成績 10月21日現在
10試合 39打数14安打 打率.359 14打点 4本塁打 5三振 1四死球

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は11月1日の予定です。

2007-10-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第56回-

071011okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で56回目となります。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振から立ち直りを見せ、北京で開かれたオリンピックプレ大会では、日本代表の中軸として活躍しました。そして、帰国後も好調を維持し、シーズン終盤での一軍昇格もありえましたが、ファーム最終戦で痛恨の故障。現在は秋季キャンプに向けて回復を目指す毎日が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
     

フェニックスリーグ開幕

Naruse今シーズン、16勝1敗という驚異の勝率で防御率のタイトルを獲得した成瀬善久(ロッテ)。3年目の今年、急成長を遂げた

 10月8日から宮崎でフェニックスリーグが開幕した。しかし、初戦のシーレックス戦に岡田の出場はなく、続く日ハム戦でも9回に代打で出場(ヒット→一塁守備)したのみ。10日の巨人戦は雨で中止となったため今回の報告はここまでだが、左足首の状態がまだ万全ではないのだろう。
 しかし、今回の故障で改めて“体が資本”ということを本人も再認識したはず。払った代償は安くなかったが、この経験を今後の長い野球人生に生かしてほしい。

 さて、そういった状況により、今回は近況報告というより、あちこちで拾った岡田にまつわる話を紹介させてもらう。
 まずは…。直接関わりがあるわけではないが、10日にクライマックスシリーズの第1ステージ突破を決めたロッテの試合を見ていて岡田を思い出した。というのも完封した成瀬善久が2年前の秋、つまりロッテが日本一に輝いた秋にはフェニックスリーグで投げていた、という話題を聞いたからだ。
 成瀬は横浜高校時代の3年春に甲子園で準優勝に貢献したサウスポー。ただ、僕の印象では少しモッサリした制球重視のサウスポーで、まさかここまでの投手になるとは…、というのが正直なところだ。2004年のドラフト6巡目で入団し、一昨年の秋と言えば2年目を終えたところ。まさに今の岡田と同じ状況だったわけだ。
 1年目はファームで19試合に投げ3勝、2年目は20試合で2勝。まだ1軍経験さえなかったのに、それが昨年1軍で5勝を上げると今年はなんと16勝1敗、防御率1.84。とんでもない成績を残した。
 以前から言うように、高卒3年目の昨年が大きなポイントになっているが、それにしてもこの成長ぶり…。飛躍したきっかけのひとつとして、成瀬は以前、杉内俊哉(ソフトバンク)のフォームを参考にしたことを挙げていた。
 もちろん、それだけではないだろうが、選ばれし者が進んでくるのがプロの世界。“ちょっとしたこと”で伸びる、変わる、ということなのだ。今シーズン後半の岡田もその“ちょっとしたこと”を掴みかかっていたと思うので、この秋にそこをしっかりと自分なりに確立ほしい。
         

071011okadabatting新井宏昌コーチ(ソフトバンク)によると、同じ足を上げて下ろすにしても、「ドタッ」っと下りずに「スゥーッ」と下りるのが理想という

足の上げ下ろし方ひとつで…

 “ちょっとしたこと”と言えば…。クライマックスシリーズ開幕直前、ソフトバンクの新井宏昌バッティングコーチに話を聞く機会があった。その中で、バッティングにまつわる“ちょっとしたこと”がいろいろと話題になったが、そのひとつが「足の上げ下ろし」について。例えば川崎宗則(ソフトバンク)を例に、「悪くはないんだけど、まだイチローに比べるとスゥーッと降りていかないんだよねえ」と新井氏。いまやリーグを代表するヒットメーカーとなった川崎だが、まだ改良の余地がある、と言うのだ。
 オリックス時代(特に前半)のイチローは、まさに「振り子」のごとく足を上げ、大きく揺らしながらステップへと移っていたが、それでも最後は「スゥーッと下りていた」という。川崎もかなり静かに下りているように思うが、「まだまだ」とのこと。薄氷の上に下ろすようでありながら、足の裏の内側ではしっかり土を掴むような感覚…。この足の下ろし方ひとつでも最後の部分でのバットコントロールに影響が出るという。
 岡田のバッティングを見るようになってから、各選手の足の上げ、下げは特に注意して見るようになったが、確かに1軍で打っている選手には「スゥーッ」と降りていく感じがある。新井氏は「ウチの監督だってそうですよ」と現役時代一本足だった王監督の例も出したが、確かに思い出すとそうだった。
 それに比べ、同じ一本足で王に憧れていた大豊泰昭(中日→阪神)などは、少しオーバーに言えば「ドタッ」と下りていた感じがあった。足の上げ方だけでないが、上を目指せば目指すほど細部へのこだわりが大事にもなってくるということなのだろう。そのあたりを岡田にも、ということだ。
        

「N」よりもまず「O」

Niwa中田翔(大阪桐蔭高)の交渉権を日本ハムが獲得後、オリックスが次に1位指名した丹羽将弥(岐阜城北高)。腕っ節の強さは中田にも引けを取らない

 前回以降の話題として最後に触れておくのはやはりドラフトの話だ。結果は承知の通り、大阪桐蔭高の中田翔は日本ハムが交渉権を獲得した。ドラフト後、新聞記者との雑談の中で中田は「自分としては(4球団の中で)オリックスかなあ、と思ってたんですけど」と漏らしていた。オリックスへの興味は比較されることの多かった清原和博への思いが大半だったと思うが、オリックスファンが聞けばさらに後悔をつのらせるような言葉だ。僕も、近い将来、岡田との並びで中田を見たかっただけに、当日、大阪桐蔭高の記者会見場に設置されたスクリーンで「ハズレ」を見た時はちょっとガッカリした。
 中田に“代わって”オリックスが1巡目指名したのは岐阜城北の丹羽将弥(178センチ/84キロ/右・右)。「ON」の並びにこだわったわけではないだろうが、こちらのイニシャルも「N」である。一応、ON砲の可能性は残ったことになるが…。
 丹羽は今年の5月に行われたブラジルセンバツとの一戦で140メートル弾を放ち、評価を上げたスラッガー。ただ、一昨年のセンバツでベスト4に勝ち上がった岐阜城北の中、2年生で4番を打っていた印象は僕の中にほとんど残っていない。ほぼ通しでセンバツは取材していたはずなのに…(笑)。
 ちなみに、改めて調べてみると、センバツでの成績は4試合で14打数3安打、3打点、4三振。ここからどう成長したのか、ひとまずは楽しみにしたい。しかし、「N」が誰になろうと、どうなろうと、肝心なのは「O」。
 僕のフェニックスリーグ観戦は15日以降になる予定だが、その頃には岡田の状態も万全になっているはず。次回の原稿ではしっかり現状報告させてもらうのでお楽しみに!

[フェニックスリーグ成績(10日現在)]
1試合 1打数1安打

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は10月21日の予定です。

2007-10-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第55回-

Okada_071001top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回が55回目となりました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振から立ち直りを見せ、北京で開かれたオリンピックプレ大会では、日本代表の中軸として活躍しました。そして、帰国後も好調を維持し、シーズン終盤での一軍昇格もありえましたが、ファーム最終戦で痛恨の故障。現在は秋季キャンプに向けて回復を目指す毎日が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?


Bsファンの寂しい秋

Okada_moriyama_kakei今季は最下位に沈んだオリックス。OBの河村健一郎氏も、岡田(写真左)らサーパスにいる若手の起用を提言していた

 この連載も岡田の背番号と同じ「55」回目へ突入。基本的には1軍定着まで、というつもりで書いているので、その意味では回数があまり増える前に「終了」となるのがいいのだろうが、どうなっていくだろう。
 さて、プロ野球シーズンも大詰め。今年からはセ・パともにクライマックスシリーズを開催するため、12球団のうち6球団のファンは、楽しい秋を過ごしていることだろう。それに引き換えオリックスファンと言えば…。明日がシーズンのラストゲームになるが、8年連続Bクラスに、3年ぶりの最下位も決定済みだ。
 それにしても、楽天にもわずか3年で抜かれるとは…。2005年に近鉄と合併し、2チーム分の上位戦力がほぼ集まったはずなのに、どうしてここまでひどくなったのだろう。
 寂しい、情けない思いをしているのはファンばかりではなく、OBも同じことだ。1日の夜、チームの現状を取材で一緒になった河村健一郎氏とぼやいた。河村氏は正確にはオリックスの前進、阪急ブレーブスのOBだが、オリックスでも2期に渡り打撃コーチなどを務めた人。何より、イチローの振り子打法を作り出し、世に送り出した人物として有名だ。
 現在は評論活動をしており、9月29、30日のオリックス対西武戦もCS放送の解説も兼ね、京セラドームで観戦したばかり。そこでやはり「オリックスも何とかならんのかなあ…」という話になった。
 ひとしきりぼやきあったあと、僕が岡田の話を出すと「そうそう、ああいう若くて楽しみなのをもっと使っていかないと」と返ってきた。そこで「いや、実は今故障してしまって…」と伝えると、「あいたー。なんや、そらあ…」。それでも岡田の将来性をしっかり伝えておいたので、「また注目しとかなアカンなあ」と楽しみな表情で語っていた。


Mizuguchi07100117年間のプロ生活にピリオドを打った水口栄二。球団からは打撃コーチ就任の要請を受けている

新コーチにドラフト間近

 せめて岡田が1軍に上がっていれば、オリックスファンのやるせなさも、少しは和らいでいただろうが、かえすがえすも最後の最後に起きたアクシデントが残念だ。
 気になる岡田の「その後」だが、まだ別メニューでの調整が続いている。それでもフェニックスリーグの直前には何とかチーム練習に合流できそうということなので、ぎりぎりセーフという感じか。軸足だけにしっかり治してほしいが、1日も早く治して大いに鍛えてほしいというのも正直なところだ。
 冒頭で河村氏の話を書いたので、その流れで言うと、来季のオリックスでは現役引退を表明した水口栄二が1軍打撃コーチになるという話もあるようだ。ジョン・ディーバスコーチとの2人体制ということだが、果たしてどんな指導をするのか。
 それにしても、岡田も当然指導を受けることになるだろうが、入団から関わったコーチを数えれば藤井康雄、ディーバス、大島公一、小川博文、新たに水口。打撃論なんて十人十色なだけに、これでは選手も落ち着かないだろうなあ、という感じだ。水口が岡田にとってのいいコーチであることを願うばかりだが、もうコーチ云々という時期は早く突破して自らの力で打撃を求め、極めていってほしい。

Nakata071001今年の高校生ドラフト注目選手、大坂桐蔭高・中田翔

 そんな一方、明後日には高校生ドラフトが開かれる。やはり注目は大阪桐蔭高・中田翔の行方で、オリックス、阪神、日本ハムに加え、ここへきてソフトバンクも1巡目指名を宣言。方針を明らかにしていない中日、巨人も“参戦”が考えられる。果たしてどこへ行くのか。
 阪急時代から伝統的にクジ運のないオリックスだが、こればかりはわからない。万が一、オリックス・中田となれば、それこそ今年のキャンプ時に清原和博が口にし話題になった「平成のON砲」の誕生となる。明るい話題が皆無だったオリックスにあって、実現となれば球団関係者、ファンにとってもこれ以上ない朗報だろう。
 ただ、岡田の心中は思えば、やはり穏やかならぬものもあるはずだ。


Okada_standing071001阪神・桜井広大の例にもれず、岡田もプロとして内なる負けん気やプライドを秘める

誕生なるか!? 平成のON砲

 ヨソの話だが阪神の桜井広大について、こんな話を聞いた。入団時から将来の和製大砲と期待されながら、今年6年目でようやく1軍で活躍した桜井の飛躍の陰に中田の存在があったというのだ。
 どういうことかと言うと…。昨年後半あたりから阪神が中田獲得を目指すというニュースを報じ出してから、桜井の目の色が変わったようなのだ。
 もし、中田が入ってくれば、ファンの期待も首脳陣の目もそっちへ向いてしまう。何が何でもこの1年で結果を出さないと…、と感じたらしい。憶測の域を出ない話だが、同じスラッガータイプとして中田の存在が刺激になったことは十分あるだろう。
 岡田もしかりだ。基本的にプロ野球選手というのは〈いつも注目されていたい〉という人種の集まりだと思う。普段はおっとりタイプの岡田にしても、ふとした会話の端に強烈な負けん気やプライドを伝えてくることがある。そういえば今年の自主トレ時に話を聞いた時、中田の話題を振った時もそうだった。

「これから高卒でプロへ入ってきてたとしても、こっちは先にプロでやっている自信もあるんで。どの選手でも入りたてに負けるとは思ってません」

Okada_running071001まずは故障を直していい状態で宮崎→高知と続く秋季練習を精力的にこなして欲しい

 それでこそプロ! だが、ライバルの存在が選手をより大きく成長させることも確か。本家ON・長嶋茂雄の横には王貞治が、西武黄金期・清原の横には秋山幸二が、一世代前の阪神・掛布雅之には岡田彰布、近年のソフトバンク松中信彦には小久保裕紀…。そんなことを思えば、岡田&中田の並びを見てみたい気持ちも膨らんでくる。
 …と、ドラフトの結果も気になりつつ、何よりもまずはこの秋。当初は、今回の原稿で岡田に今シーズンを一度振り返ってもらうか、と考えていた。しかし、こちらの時間が取れなかったこともあり、1年の回顧はまだ先でいいと、すぐに思い直した。岡田にとっては、ここからこそがまた勝負だからだ。
 宮崎を経て高知へ――。〈中田でも何でもやってこい!〉、そんな状態にまで持っていってほしい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は10月11日の予定です。

2007-09-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第54回-

P1060162 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。54回目の奮闘記です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振から立ち直りを見せ、北京で開かれたオリンピックプレ大会に日本代表選手として出場。打線の中軸として活躍しました。そして、帰国後も好調を維持。シーズン終盤になって、今年一番の状態を迎えていたのですが…。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。

          

最後の最後に…

P1060355江口トレーナーの肩を借りて球場をあとにする岡田。シーズン最後の最後に思わぬアクシデントが待っていた

「トレーナー! 岡田がケガしました!」
 真っ先に声を挙げたのは一塁ベンチ前でバットを振っていた横山徹也。試合後の練習で吉良俊則と柴田亮輔が打ち込みをし、岡田がライトを守っていた時のことだ。横山のすぐそばにいた僕も、その声にドキッとなりライトへ目をやると、左足首を押さえながら岡田がうずくまっていた。
 アクシデントが起きたのはサーパスの今季最終戦が行われた9月21日、中日戦(あじさいスタジアム)の試合後。間もなくして岡田は痛々しく足を引きずりながら戻ってくると、ベンチ裏の一室で治療に入った。その後、一瞬、トレーナーらが外に出たところで中を覗くと岡田はイスに座りながら氷で幹部を冷やしていた。

谷上 大丈夫かいな?
岡田 いやあ、ちょっと…。
谷上 ボールの上に乗った?
岡田 はい…。左(足首)の思いっきり外側をやりました…。
谷上 最後の最後になあ。もうすぐ宮崎(フェニックスリーグ)やけど…。
岡田 ちょっとやばいかもしれないです…。

 当然、表情にはショックの様子がありあり。その瞬間を見ていなかったので、どういう状況でそうなったのかわからなかったが、ボールを踏んで左足首を捻っていた。
 当日は最終戦ということで、ひとまず今シーズンの総括を聞こうと思っていた。続けて、秋への決意、あるいは近々昇格する可能性もあった1軍への意気込みも…。
 しかし、それらを聞くこともないまま、間もなく岡田は球団指定の病院へ向かうことになり、江口トレーナーの肩を借りながらスタジアムを出ていった。
 

「シゴキ予告」は期待の表れ

 夜になり岡田の父・秀和氏から連絡が入り、骨には異常がなかったことが判明。ひとまず、大事に至らずホッとした。何事もなければ、ここしばらくの間に十分あっただろう1軍昇格が厳しくなったことは残念だが、やむなし。しっかり体を直し、万全の状態で10月8日からのフェニックスリーグへ入ってほしい。この秋に勝負はかかっているのだから。

P1060350試合後に観戦していた穴吹工務店社長の話を聞くナイン(岡田は左端から2人目)
 アクシデントが起こる直前、前回に続き話を聞いていた住友平監督からも、重ねて期待の言葉が口を突いた。「この秋はね55番と65番(近藤一樹)です。この2人を何とか来季の戦力にせんとね」と、強化指定選手に岡田を指名。そこから話はかつて阪急の黄金期を築き、その後日本ハムでも指揮を取った名将・上田利治氏の話題へと流れた。
 住友監督は上田氏の右腕として知られた人。イキのいい若手を思い切って抜擢することで定評のあった上田氏の起用法が浮かんできたようだ。
「それはね、上田さんはハッキリしてましたよ。秋季キャンプ前になると『この秋はコイツとコイツとコイツ。これらを徹底的にしごいて来年ものにするからな。コーチ陣もそのつもりでやってくれ!』って言うんですよ。だから選手にすればチャンスは平等にあるというけど実際には不平等。でもね、首脳陣に「こいつを鍛えたい! 一本立ちさせたい!」って思わせるような選手やないとアカン。あとはその選手が期待に応えられるかどうかです」
 …と、いう話を聞いた直後に起きたアクシデントだった。だが、岡田への期待は日に日に膨らんでいるようで、話を聞いていても嬉しくなる。
 

P1060291絶好調のピークは過ぎたものの、岡田はしぶとくヒットを重ねながらシーズン最終戦を迎えていた

連続試合ヒットは「20」でストップ

 さて、ここで前回更新以降の成績について書いておく。実は更新翌日のゲーム(12日・対ソフトバンク)で4打数ノーヒットに終わり、8月2日(関係ないが僕の誕生日)から続いていた連続試合ヒット(練習試合、交流戦、北京含む)は20でストップ。以降は4-1、2-0、4-2、4-1、3-0、4-1。やや"地味"な数字が続いた。
 だが、そうそう好調期が続くものではない。むしろ大事なのは、感覚的に「決してよくない時」にどれだけ粘って結果につなげられるか。そのあたりが一流と二流を分ける境目でもある。その意味では連続試合ヒットが途切れたあとも"地味"に粘っている。そんな中でウエスタン・リーグ今季最終戦を迎えていた。
 1打席目は吉見一起の外のチェンジアップに空振り三振。不振というより、調子のサイクルからいっても 〈ちょっと下降線かなあ…〉 と感じたが、2打席目では一転して目の覚めるようなスリーベース。得意のインローのストレートをセンター右へライナーで弾き返し、あっという間に打球はフェンスに達した。さらに続く3打席目も外寄り高めのストレートをセンター前ヒット。8回裏の第4打席は、高校時代のライバル・平田良介がライト岡田の頭上を越える今季3号を放った直後に回ってきた。それもあって、今季最終打席での締めの一発を期待したが…。金剛弘樹のストレートにやや差し込まれショートライナー。4打数2安打で最終戦を終えた。
 

2年目の成績と手応え

 というわけで、今季の最終成績は欄外に記した通り。
 昨年の数字と比較すると、プレ五輪の参加もあって出場試合数は14試合減。打率は"1厘"アップした。ホームランは1、打点は2、盗塁は4、三振は6ずつ減。ちなみに69三振は末永真史(広島)と並びリーグトップだから2年連続の"キング"である(笑)。
 この数字だけ見ると、 〈何だあんまり伸びてないじゃないか〉 という声が聞こえても仕方ない。実際、打率もホームランも全然物足らない。ただ、去年と大きく違うのは、最後の約1ヶ月で打率を3分上げたように、上り調子でのフィニッシュだったということ。本人も首脳陣も、これまでとは違う手応えをはっきり感じ、勝負の秋へ突入する。
 本当にこの秋が、来シーズンだけでなく、岡田の野球人生を方向付けるものになる。これまで何度も書いてきたように、1軍で主力を張るバッターは、かなりの確率で3年以内に中心選手としての働きを見せている。ざっと高卒で活躍する選手たちの"当時"の成績を記してみると…。

イチロー 3年目で全試合出場を果たし210安打(打率.385、13本塁打、29盗塁)
松井秀喜  2年目で全試合出場(打率.294、20本塁打)
清原和博 1年目から126試合に出場し新人王(打率.304、31本塁打)
城島健司 3年目でレギュラーとなり120試合に出場(打率.308、15本塁打)
前田智徳 2年目で129試合に出場(打率.271、4本塁打、14盗塁)、3年目で打撃成績リーグ5位(打率.308、19本塁打、18盗塁)
中村紀洋 3年目で1軍に定着し、101試合に出場(打率.281、8本塁打)
立浪和義 1年目から110試合に出場(打率.223、4本塁打、22盗塁)、3年目に規定打数到達(打率.303、11本塁打、18盗塁)
松井稼頭央 プロ入り後、ピッチャーからショートへ転向。3年目で全試合出場(打率.283、1本塁打、50盗塁)
岩村明憲 3年目半ばから1軍に定着し、83試合に出場(打率.294、11本塁打、7盗塁)

P1060334節目となる3年目をいかに過ごすか。このオフからが岡田にとって重要な期間となる

 もちろん、今回のアクシデントでしばらくは練習メニューも制限され、モヤモヤするであろう岡田に必要以上のプレッシャーをかけるつもりはない。ただ、「近い将来のレギュラー」だけでなく、もっともっと上を求めているからこそ、何が何でも来季で台頭してほしい。そのためにはこの秋なのだ。
 最終戦のネット裏には、中村勝広シニアアドバイザー、元球団代表の井箟重慶スペシャルアドバイザーらの顔も見えた。「区切り」での観戦という以外に、戦力の見極めという意味もあったはず。目の前でプレーする選手の中には「これが最後だろう」と思われる面々が何人かいた。ファームは長くいるところじゃない。チームメイトから「さんづけ」で呼ばれることが多くなる前に抜け出す場所なのだ。
 「1軍で待ってるぞ!」。三塁打を放ち滑り込んだ直後、スタンドのファンから力強い声が飛んだ。来季の1軍定着はもちろん、岡田には一気に突き抜けてほしい。そのためにも、何より自分自身がそうなりたいと、本気で思い続けることだ。
 故障をしっかり直しながら、頭の中では飛躍のイメージをたっぷり膨らませ、覚悟を決めて、宮崎へ挑んでほしい。

[ファーム最終成績] 
68試合 256打数 58安打 打率.246 4本塁打 25打点 16四死球 69三振 2盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は10月1日の予定です。

2007-09-12

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第53回-

Okada_top070911 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で53回目を迎えております。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振から立ち直りを見せ、北京で開かれたオリンピックプレ大会に日本代表選手として出場。打線の中軸として活躍しました。そして、帰国後も好調を維持。シーズン終盤になって、今年一番の状態を迎えています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?
  

ファームで好調続く岡田の打撃

Okada_and_sumitomo

    

昨年秋、フェニックスリーグで岡田を指導するサーパス・住友監督。あれから、もう1年になる

「もうね、上(1軍)のほうにも進言してるんですよ。いつ呼んでもらってもいいですから、って」
 11日「あじさいスタジアム」で行われたソフトバンク戦の試合後。ベンチで練習を見ていた住友平監督から何とも嬉しい一言を聞いた。ただ、今の岡田の状態を見れば驚きではなく、僕にすれば確認作業のようなものだった。
 まず、「今の岡田は今年一番の状態にあると思いますけど」と話を向けた。すると「おっしゃる通りです」と返してきた監督に「1軍で見たい気もしますが」と続けた。そこで冒頭の言葉が返ってきた。
 ちょうどこの前日、ファームから平下晃司、木元邦之の左打者2人が1軍に昇格。残念ながら、今回は見送りになったが、岡田も下からの推薦組には入っていたということだ。シーズン終了までに1軍に上がることは間違いない。
 しかし、言ってしまえば消化ゲームの中で「1軍に慣れる」というレベルの期待は僕の中ではそれほどでなくなっている。来季の飛躍がはっきり見える今の岡田には、もっともっと大きな期待を感じている。住友監督とのやりとりをもう少し紹介する。
  

Okada_batting02  

「バタバタしなくなり、いろんなボールに対応できるようになった」住友監督も岡田の成長に太鼓判を押す

いろんなボールに対応できるようになってきた

谷上 オールスター休みのあとから、はっきり状態が変わってきたと思います。
住友 おっしゃる通り。ここ最近は5番に固定して結果も出してますからね。苦労して、本人もいろいろ考えて、コーチのアドバイスもいろいろ試しながらようやく掴みかけてきた。シーズン前半はどうなるかと思ったけどね。でも、ヒントを掴むと飲み込みが早い。この感覚も大事なんですよ。一気に駆け上がるか、どうか。
谷上 何が一番変わりましたか。
住友 結果で言えば三振が減りましたよ。ストライクゾーンとか自分のヒッティングポイントとかがわかってきた。それでバタバタしなくなったし、いろんなボールに対応できるようになってきた。(8日の阪神戦の最終回)ジャンが抜いたフォークか何かを自分のポイントまで引っ張ってきて左中間に打った。あれもよかったよね。それから今日の1打席目のセンター前。左(森福允彦)のスライダーにしっかり対応してね、これも良かった。
   

3年目の来年が勝負

Okada_batting技術的には写真のようなトップの状態で「間」が取れるようになったことが大きいという

谷上 技術的にどこが変わりましたか。
住友 それはもうね“ここ”とボールの距離が取れるようになってきた」
(“ここ”とは、トップを指してのこと)

谷上 間が取れるようになってきた、ということですか。
住友 そうです。流れの中に一瞬、間が取れるようになってきたから変化にも対応できるし、見極めも出来る。何事も準備が大事というじゃないですか? バッティングも同じ。打ちに行く準備がしっかりできるようになって、スイングも結果も安定するんです。
谷上 監督もこれまでいろんな選手を見てこられたと思いますけど、来シーズンは、高卒選手の3年目。やはり、岡田にとって今後を占う勝負の年になるでしょうね。
住友 3年目で出るか出ないか。ここで出られない選手は、正直なところ厳しい。やっぱり、上にいく選手はここできますから。だから岡田もこの秋。ここでしっかり形を固めて自分のバッティングを確立していかんと。
谷上 そういう意味でも、ハワイのウインターリーグへ参加するのかと思っていました。メンバーには入ってなかったですね(サーパスからは由田慎太郎、中山慎也、長田昌浩、鴨志田貴司が参加)
住友 1軍の首脳陣がこっちで見たいというのもあったでしょうし、宮崎(フェニックスリーグ)もありますから。そこでしっかり実戦経験を積めばいい。
  

Okada_deffense_2日頃は常に謙虚な姿勢の岡田本人も、最近の好調ぶりにはたしかな感触を得ているようだ

岡田本人の話

 さて、ここで前回更新日以降の打撃成績を振り返ってみると、こんな感じだ。

3日 対中日 4打数1安打
4日  〃  4打数3安打 2打点 1四球 1三振
5日  〃  5打数2安打 1打点 1三振
6日  〃  4打数1安打
8日 対阪神 4打数2安打 2打点 1三振
11日 対ソフトバンク 3打数2安打 1死球

 この中で4日と11日の試合を観戦し5本のヒットを見た。8日の2本は阪神・中村泰広からのピッチャー強襲と最終回にジャンから放ったセンター左への2点ツーベース。これが住友監督賞賛の1本だ。
 僕が見た中では監督も挙げていた11日の森福からのセンター前が印象に残った。こちらも成長の跡を感じる1本だった。2回1死、2ボール1ストライク。バッティングカウントで来たやや外寄り、サウスポーのスライダーにしっかり反応し、センターへ返した。試合後の岡田には、まずここから聞いた。

谷上 あれは1-2からスライダー待ち?
岡田 いや、ストレートを待ってたんですけど、自然に手が出てヒットになったんです。最近、ああいうのが結構あるんです。

 予想通りだった。ストレートを待っていながら変化球にも対応。オリックス時代のイチローがよく「体が勝手に反応した」とコメントしていたが、この感じが出てくれば間違いなく率は上がる。

谷上 4日の試合後に聞いた時、好調の一因として目線のブレがなくなってきたことを挙げてたけど。足の上げ幅を小さくしたことが大きい?
岡田 それで上下のブレが小さくなったのもあるんですけど、前後のブレも少なくなってきた感じがあるんです。前はもっと差し込まれたり、泳がされたりしてたのが、そういうのがなくなってきて。
谷上 監督も「ボールとの距離」「間」が取れえるようになってきたと言ってたけど、そこにつながる?
岡田 そうですね。少し前まではボールに入っていく形(左肩をしっかり入れて打ちに行く)を意識しすぎてたところがあったと思うんです。でも、今はそこをあんまり意識しないようにして、そしたらボールとの距離も取れるようになったっていうか。ボールを近くまで呼び込めるようにもなって、感じとしては左手でボールを掴みにいくような感覚も出てきてるんです。
谷上 ボールを長く見れるようになってきた。打席の中でも余裕が持てるようになってきた?
岡田 そうですね。あとは打席の中での足の置き方とかですね。
谷上 田淵(幸一・北京五輪プレ大会代表コーチ)さんから言われたポイントやな(やや開き気味だった捕手寄りの足をスクエアに置くようにした)。でも、ここでまきたら自分でも好調を感じてるよな?
岡田 そうですね。今年では一番ですね。というか、今年はいい時が全然なかったんで…。
谷上 そう言うなよ(笑)?
  

20試合連続ヒット中!

Okada_top060911最近の岡田はリストバンドにピンクを使用している。本人によると今はピンクがお気に入りらしい

 実は、この日以外に4日の中日戦にも取材に行っていたのだが、その試合後、岡田に「今日で14試合連続ヒット」と伝えると、「ホンマっすか」と、珍しく(?)声が弾んでいた。
 ただ、続けて「好調やなあ」と言うと、「どうなんすかねえ」。「そろそろ1軍ちゃうか」には「いやあ…」。いつものことながらなかなか慎重な反応だったが、その口からもようやく飛び出した好調宣言。こうなれば重ねて期待するのがやはりホームランだ。
「シーズン終了までにあと2、3本はプラスしてほしいな」と向けると「練習では上がってるんですけどね」と、爆発間近を感じさせるニュアンス。確かに試合後のバッティングではサク超えの当たりも多く、打ち出されて行く時の打球の勢いが他の打者とはまるで違っていた。

 さて、シーズンは間もなく終わるが、本当の楽しみはここから。今、まさに進化中といった岡田を見る喜びを実感している。
 当初、ウインターリーグ観戦でのハワイ行きを考えていたが、行き先をフェニックスリーグの宮崎へ変更。続けてキャンプ地の高知へも飛び、たっぷりゴジラの成長を目に焼き付けたい。僕にとっても忙しく、充実の秋になりそうだ。

9月11日現在の成績
[ファーム] 
60試合 207打数 51安打 打率.246 4本塁打 23打点 14四死球 59三振 2盗塁

*打撃成績は過去最高の12位

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は9月21日の予定です。

2007-09-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第52回-

Okada_top080901 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は52回目です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振からは立ち直りを見せ、北京で開かれたオリンピックプレ大会に日本代表選手として出場。打線の中軸として活躍するなど、ここへ来て好調の兆しを見せはじめています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?
 

「星野ジャパン」の帰国会見へ

Hoshinoプレ五輪での活躍ぶりから、帰国直後の記者会見では星野監督(写真)とともに岡田の登場を期待したのだが…

「これだけの大舞台でのプレーは岡田選手にとって初めての経験でしたが、まず、戦い終えた感想を聞かせて下さい」
続けてもうひとつ。
「代表入りが決まった直後には『バッティングで何かを掴んで帰りたい』と話していましたが、成果はどうだったでしょうか」
 こう質問するつもりにしていた。何のことかと言えば…。8月24日の夕刻、星野ジャパンが北京から帰国し開いた帰国会見で、岡田にこう質問するつもりだった、ということ。
 24日の午後6時から関西国際空港に隣接するホテルで会見が行われる、という一報が前日の夜に入ってきた。当日は午後から大阪の高槻で取材の予定があったが、岡田の帰国第一声を聞かねば…、と取材を早々に切り上げ一路関空へと向かった。
 移動の電車の中でNPBから届いた会見の要綱を改めて見ていると出席者は「星野監督ほか」となっている。しかし、プレ五輪とは言え、金メダルの結果を残したわけで、会見には賑(にぎ)やかに選手も3、4人は並ぶだろう。そうなれば、3、4人の中には岡田も入るだろう、というのが僕の見立てだった。5番に座り先制タイムリーや決勝打など、なかなかの存在感を示していたのだから…。
 

待ち人現れず

 開始予定時間より30分ほど早く着いた会見場のひな壇にはイスが4つ用意されていた。つまり、星野+選手3人。ここで浮かんだのは、アマチュア代表の大場翔太(東洋大)に、いい活躍+阪神の強みで大和、そして岡田と言う顔ぶれだった。ところが…。しばらくすると関係者らしき人が現れ、飛行機の延着で会見の開始が30分ほど遅れると伝えた。
 それはいい、よくあることだ。問題はそのあと。係員は帰りに4つあったイスのうち2つを両脇に抱え持って帰ってしまったのだ…。
 それでも、星野&岡田の組み合わせに一縷(いちる)の望みを託したが、間もなくやってきたNPBの広報担当者はアッサリこう言った。
 
「会見の出席者は星野監督と大場選手です」
 
 一気に力も抜け、その時点で帰ろうかと思ったが、立ち上がる元気もなし。結局6時45分に始まった会見は15分足らずでアッサリ終わった。
 何だかつまらなさそうな星野と緊張でほとんど話せない大場のコメントだけを聞いて帰ることになろうとは…。関空からの2時間近い帰り道が何と遠く感じたことか。こんなことなら、初めから会見要項に「出席者は星野仙一監督と大場翔太選手」と書いておいてくれればいいのものを。まあ、「ジャパン」には「ジャパン」の都合があるのだろうが。
 

Hoshino_and_oba記者会見に対応した星野監督と大場投手。このあと、各自解散になることを知らなかったことが悔やまれる

後悔先に立たず

 “空振り”に終わった2日後、岡田貴弘選手を応援する会の世話役Yさんからメールが届いた。
 帰国後に岡田と会ったというYさんが、貴重な金メダル写真をメールで送ってきてくれたのだ。そこで関空での空振り話をすると返信が届き…。何でもYさんは北京まで観戦に行っていた岡田の両親と“本人”を出迎えに関空まで行っていたとのこと。
 「行ってたんですか!」と向こうも驚いていたが、その話を聞き、僕の中には後悔の念がジワジワと沸いてきた。そもそも、ジャパン一行は北京への出発前日に関空に隣接のホテルで一泊し現地へ飛んだ。そこで僕は勝手に帰国日もホテルに一泊し、翌日に各自解散、チームへ戻っていくのだろう、と思っていた。帰国日までは「ジャパンの一員」として拘束されているのだろう、と。
 ところが、そうではなかったのだ。ということは、国際線の到着ゲートに行けば“解散直後”の岡田には普通に会えたわけで、用意した質問どころか、もっとアレコレ聞くこともできたのだ。まさに空振りの連続。流れが悪い。
 

サーパス復帰後も好調キープ

 しかし、悔やんでばかりもいられないので、気持ちを切り替え、復帰の公式戦で直撃! とサーパスの日程表を確認。サーパスは岡田の帰国日から26日までは雁ノ巣でソフトバンクとの3連戦だった。
 そう言えば、北京行きの前に「戻ってすぐは遠征なんでチームに合流するのは、そのあとからになると思います」と岡田が話していた。となると2カード目の28日からの広島2連戦だ。しかし、ここは僕の取材予定が詰まっていて神戸には向かえず。さらに中国代表との交流試合が31日、9月1日と行われたが、こちらは締め切りラッシュで自宅に監禁状態で動けず。結局、今回の更新日まで残念ながら岡田観戦はならなかった。
 そこで改めて、5戦5勝で優勝を飾った北京でのジャパンの戦跡と岡田の成績を書いておく。

[予選リーグ]
8月18日 対チェコ戦 3対2(延長11回サヨナラ) 5打数1安打
8月18日 対フランス戦 4対3(延長11回) 6打数2安打 1打点 岡田のライト前ヒットが決勝点となる
8月20日 対中国戦 7対1 4打数1安打 1打点

[準決勝]
8月22日 対フランス 9対4 4打数2安打 3打点 岡田先制のセンターオーバーのタイムリーツーベース

[決勝]
8月23日 対中国 5対2 4打数1安打

さらに復帰後のサーパスでの打撃成績も。

8月28日 対広島 4打数1安打(勝ち越しタイムリー) 1打点 2三振 
8月29日 対広島 3打数1安打
8月31日 対中国代表 4打数2安打
9月1日 対中国代表 6打数2安打 2三振

 

14試合連続安打中!

Okada_batting070901岡田は帰国後も好調をキープ。シーズン中の1軍昇格を期待したい

 代表での5試合すべてでヒットを打っていたのはわかっていたが、サーパスに復帰後の4試合もヒットを続けている。さらに遡(さかのぼ)って考えると、北京行きの直前に社会人と行った練習試合2試合でも、逆転のタイムリー3ベースに、一時勝ち越しとなるタイムリー2ベースなど連続安打。さらに、さらに遡(さかのぼ)ると、サーパスを離れる8月4日までの3試合でもヒットを放っており、すべて足してみると現在14試合連続安打中であることが判明した。
 本人はまだまだ半信半疑だったがオールスター明けから確実に上向きを感じていたバッティングは間違いなくワンランク上のレベルにきている。そこにジャパンの一員として戦った自信もプラス。充実の秋到来の予感が僕の中ではムンムン漂っている。
 そうなってくると興味はいつ1軍に上がるのか、ということ。まだ、プレーオフ進出の可能性を残しているので…、という声も聞こえてきそうだが、消化試合に入ってからではなく、緊迫感のある戦いの中で打席に立たせたい。
 来シーズンへの手応えを掴む、そんなバッティングを1軍首脳陣、そしてファンの前で見せてほしい。

8月31日現在の成績
[ファーム] 
54試合 183打数 40安打 打率.219 4本塁打 20打点 12四死球 56三振 2盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は9月11日の予定です。

2007-08-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第51回-

070821okada_running_2 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今週から51回目。新たな気持ちでスタートいたします。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。しかし、春先の不振からは立ち直りを見せ、日本代表の中軸として、現在、オリンピックプレ大会に出場しています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?

いざ北京へ

070821okada_up岡田は代表チーム合流後、北京入り前の練習試合や一次予選で得点に絡む活躍を見せている

 前回の更新日に行われた松下電器との練習試合では、4回に左中間へ一時勝ち越しとなるタイムリーツーベース。翌日の三菱重工神戸との一戦でも8回に逆転の左中間スリーベース。甲子園取材でどちらも見ることはできなかったが、ジャパン入りの前から感じていた上昇気配が結果に表われてきた。
 そして16日に北京入りし、18日からはいよいよ一次予選がスタート。その初戦は延長11回に大和(阪神)のサヨナラタイムリーで辛うじて勝利。チェコのレベルがよくわからないが、このスタートはどうなのだろう。この試合については岡田関連のニュースは伝わってこず。
 しかし、続くフランス戦。やはり延長となった11回に5番・岡田が決勝タイムリー。チームとしての引き続きの戦いぶりはともかく、ジャパン入り後の岡田は見出しになる活躍を続けている。
 そして3戦目の中国戦は7-1で圧勝し、22日からは決勝リーグが始まる。しかし残念ながら、今は伝わってくる情報しか僕の元にもない。
 そこで今回は前回に続き、ジャパン合宿中に聞いたインタビューの一部を紹介することにした。北京での活躍を浮かべながら読んでみてもらいたい。

070821_hoshino代表監督の星野仙一氏。今回のプレ大会では、本番に向けての情報収集も大きなウエートを占める

ジャパンのユニホーム

谷上 ジャパンのユニホームを着た感想は?
岡田 やっぱりいいすねえ。重みを感じます。高3の夏が終わってから大阪と兵庫の代表チームで台湾に行ったことがあるんですけど全然違いますし。
谷上 チームの雰囲気も引き締まってる?
岡田 まだ練習なんで、そこまでというのはないですけど。現地に入って戦いが始まったら緊張感も増してくると思います。
谷上 一緒にやれることを楽しみにしていた星野(仙一・代表監督)さんの印象は?
岡田 違いますねえ。やっぱりオーラがあるっていうか全然違います。
谷上 星野さんから何か言われたことは?
岡田 田淵(幸一・代表コーチ)さんからはよく話しかけてもらうんですけど、星野さんはブルペンにいることも多いんで特には…。最初のミーティングの時には「とにかく全部勝って帰るからな」と言ってました。
谷上 もちろん、そのつもりやんな。
岡田 はい。相手のチェコ、フランス、中国ってどんな選手で来るんですか?
谷上 いや、俺も知らんけど、そういうデータはチームにないの?
岡田 今のところ相手の情報は何にもないですね。
谷上 ぶっつけで行っても勝たなあかん相手やけど、そういう感じなんかな。

ファーストの守備

谷上 いろんなチーム、アマチュアからも選手が集まってるけど。
岡田 知った選手も少しいますし、楽しくやれてます。
谷上 例えば?
岡田 大和は普段のウエスタンのゲームから会うといろいろしゃべってるし、若竹(竜士・阪神)は子供の時から知り合いなんでアドレスなんかも知ってるし。あと、今一番一緒にいるのは吉田(圭・広島)さんです。
谷上 中軸でファーストを争う“ライバル”や。
岡田 (笑)メンバーを見ると吉田さんと僕くらいしか真ん中を打ちそうな選手はいないのは確かですけど。
谷上 守備はファーストって言われてる?
岡田 いや、まだ何も。練習で(シートに)ついてるのは僕と吉田さんだけなんでどっちかにはなるでしょうけど。
谷上 ファーストの守備では負けてないやろ?
岡田 いや、吉田さんも普通に上手いですよ。
谷上 そうなん? でも、ブログでもいつも書いてるけど、守備の上達はなかなか。
岡田 どうなんですかねえ。でも、田淵さんからもちょっと言ってもらいました。「結構、上手いな」って。まあ、去年よりは、ましになったとは思うんですけど。

実のある代表参加

070821okada_meeting_3代表合宿でチームメートと並ぶ岡田(右から2番目)

谷上 吉田らとはバッティング技術の話とかもする?
岡田 僕が聞くのが多いですね。嶋(重宣・広島)さんの話とかも聞いて勉強にもなってます。
谷上 例えば?
岡田 タイミングの取り方とか、左ピッチャーに対する待ち方とか。
谷上 なかなかオリックスには岡田タイプのバッターがおらんから、いろいろ見て、聞けるのという意味でも意味のあるジャパン入りやな。
岡田 そうですね。いろいろ身につけて帰りたいです。
谷上 改めて前哨戦に向けての決意を。
岡田 やっぱり、星野さんが言ったように、全部勝つだけなんで、チームに貢献できるように頑張ります。
谷上 勝つのは当たり前やけど、圧勝するくらいの気持ちでいってほしいな。
岡田 はい。
谷上 特に不安もなしか。
岡田 野球では特にないですけど、北京っていうのがちょっと。
谷上 どういうこと? 海外は苦手とか?
岡田 それは別に大丈夫と思うんですけど、北京は水もダメで、空気も結構汚れてるらしいんで。マスクをしょっちゅう持ってないといけないとかって注意もありましたし。そういうのがちょっと。
谷上 そういうことか。戻ってきたらもう残りシーズンもわずかになってるし、体調にも気をつけながらの活躍を期待してるわ。
岡田 はい、頑張ります。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は9月1日の予定です。

2007-08-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第50回-

Okada070811 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。いよいよ節目の50回目を迎えました。ご愛読いただいている読者の方に改めて御礼申し上げます。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。春先の不振からも立ち直り始め、いよいよ日本代表の一員としてオリンピックプレ大会に臨みます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?

       

プレ五輪の代表合宿始まる

 8月7日夕刻の集合からいよいよプレ五輪の代表合宿がスタート。翌日からは夏の高校野球も開幕したが、連日、甲子園のスタンドから熱戦を観ながらも、気持ちの半分は神戸に行っている。
<岡田の状態は? いい指導を受けているだろうか?>
…、と。代表チームの練習(及び練習試合)はスカイマーク、神戸サブグラウンドで行われているが、日中に甲子園を離れることは難しく、見に行けない。それでも、見たい、話を聞きたい――。
 そこで正式な形で取材を申し込むと、NPBとオリックス広報の協力もあり10日の練習後、16時から神戸市内にある宿舎で話を聞けることになった。この時のインタビューの模様は今回と次回の2回に分けて掲載させてもらいます。

         

合宿前の公式戦

Okadabatting070811代表合宿を前に少しずつ調子が上向いてきた岡田

 その前にまず、合宿直前の様子から振り返ってみる。合宿前の最終ゲームとなった5日のソフトバンク戦を観戦。バッティング練習が終わったところでベンチ裏に現われた岡田に近頃の感触を聞いた。

谷上 いい感じになってきてるんちゃう?
岡田 いや、まだそこまでは。でも、追い込まれても当てにいくようなスイングはしなくなってきたし、そのへんはちょっといいかなと思ってます。
谷上 「ちょっと」か。後半戦の開幕で一発、2日の阪神戦で9回に同点ツーベース。結果も出始めてきたように思うけど。
岡田 広島戦は感じが良かったですね。阪神戦も悪くなかったですけど、最後のはたまたまっていう感じもあって。
谷上 たまたまも大事。それも一時はなかなか出んかったんやから(笑)。ところで後半戦からフォームがかなり変わっててちょっとビックリしたけど。まず構えた時にヘッドを少しキャッチャー方向に倒してる。
岡田 あれは線で捉えるっていうのを意識してて、ボールの軌道にバットが入りやすくするイメージです。
谷上 構えた時のグリップの位置も少し低くなってる。
岡田 前までの位置だと、ひいた時(テークバック)にグリップも一緒に上がってしまうクセがあったんで、それをなくしたいと思って。低くしたらそんな上がらないんです。
谷上 構えの最後にバットをぶるっと震わせるのは?
岡田 バットがどこにあるのか確認するためですね。ヘッドの重みを感じるっていうか、そんな感じです。

Japan01 代表合宿で星野仙一監督を前に集まる選手たち(右から2番目が岡田)

 期待した"ラストゲーム"の結果は3打数1安打。第1打席で放ったレフト前ヒットは、フルスイングの空振りで追い込まれたあと、山田秋親のスライダーにバットを合わせ軽打。本人も言っていた通り、追い込まれたあとも対応できる雰囲気が出てきている。
 スタンドを沸かせたのは続く第2打席。初球、真ん中高めのストレートをジャストミート!(に見えた)。45度の角度でライトへ一直線、瞬間に第5号を確信したが、どうしたことか届かずライトフライ。後日、確認すると芯ではなく先だったそうで…。残念。
 第3打席目、ショートゴロのあとの第4打席は1点を追う9回裏、無死一塁の場面で回ってきた。一発出れば、もちろん逆転サヨナラ。2打席目の「あわや」を覚えているスタンドはこの日一番の盛り上がりで、少年ファンから「オカダッ、ホームラン!」の声も飛んだ。
 北京行きを前に景気づけの一発を!と、誰もが願った思ったその時、何と岡田が送りバント…。勝利優先と言えばそうだけど…。北京ならこういうケースもあるかしれないけど…。岡田は"あのタイプ"にして器用で何なくバントを決める選手だけど…。それにしても、だ。
 何とも消化不良の結末に終わったが、本人の言葉以上に上向きを感じたことは確か。漠然としたものだが、定期的に見ていると、打席に立った時の雰囲気に好不調を感じられるようになってきた。ひとまず、そんな状況を踏まえ、合宿4日目の10日、甲子園取材を途中で抜け出し神戸へと向かった。

         

合宿での感触

谷上 まず、星野ジャパンの一員として合宿に参加してみての感想は?
岡田 まだ練習は3日しかやってないんですけど、雰囲気的には楽しんでやれてます。試合が近づいてきたら、もっと緊張感も増してくると思うんですけど。
谷上 肝心のバッティングの調子はその後どう?
岡田 ここ2、3日はダメですねえ。
谷上 ダメなんかいな!
岡田 ひとつは体が切れてこないんです。合宿ではやっぱり練習量が少ないんで。特に打つ量が少なくて、僕とすればもっと打ちたいんですけど…。
谷上 代表チームといってもみんな若いから、確かにもっと練習したい選手も多いやろうな。

Tabuchi_coach代表コーチを務める田淵幸一氏。この出会いが岡田のさらなる打撃向上のきっかけになるか?
岡田 あと、技術的にはバットが遠回りしてる感じがあって、あんまり良くないんです。休み明けの広島戦から阪神戦あたりでは、練習でもレフトへしっかりひっかかった打球が飛んでて、それがひとつのバロメーターでもあるんですけど。
谷上 左方向でも引っ張ったような打球?
岡田 そうですね。距離もしっかり出てたし。でも、いい時とそうでない時の(フォームの)差が自分ではなかなかわからないんで誰かに見てもらわないと。 
谷上 そう言えば、田淵(幸一・コーチ)さんから初日の練習で指導を受けたという話も新聞に出てたけど。うねり打法の極意でも教えてもらった?
岡田 うねり打法っていうより…。ひとつ言われたのは構えた時の軸足の足先。これが少し開き気味で、それではパワーが逃げるからスクエアの方がいいって言われました。今のところはそこだけです。
谷上 代表チームで、技術指導は基本的にあまりしないんかな。
岡田 でも、田淵さんは質問があったら聞いてくれ、と言われてるんで。それに田淵さんは結構、声を掛けてくれるんです。
谷上 このメンバーを見たら、そら、田淵さんの目は岡田に行ってるわ。本当は教えたくてウズウズしてるんちゃうかな。どんどん聞きに行って、自分の感覚に合うものを探していったらいい。
岡田 そうしていこうと思ってます。ただ、まだバッティングも練習だけなんで、練習試合とか実戦になってきた中でどう見えてるのか。その段階でいろいろ聞きたいです。
谷上 でも、このメンバー見てたら、中軸には座ってほしいな。
岡田 パッと見て大きいのを打つタイプがあんまりいないんで。自分でも、できれば…、っていう気持ちはあります。
谷上 何とかこの機会をきっかけにしたいな
岡田 はい。せっかくこういうチャンスをもらったんで、バッティング面で何かを掴んで帰りたいです。

Okada_interview練習後、取材に応じる岡田。北京での活躍を大いに期待したい

(つづく)

8月10日現在の成績
[ファーム] 
52試合 176打数 38安打 打率.216 4本塁打 18打点 12四死球 54三振 1盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は8月21日の予定です。

2007-08-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第49回-

Imagination 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で49回目のレポートとなりました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。一時極度の不調に陥っていましたが、ようやく上昇の兆しが見え始めてきています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?

           

久しぶりの生観戦

Meetingウエスタンリーグも後半戦がスタート。岡田(奥の列右端)は早々に本塁打を放ち、幸先のいいスタート切った

 前回は高校野球の話題にも触れたが、岡田の母校・履正社は残念ながら5回戦で大阪桐蔭に敗退。1997年以来となる夏の甲子園出場はならなかった。
 そんな予選取材真っ盛りの7月24日。西京極球場で京都大会を観戦していると「岡田貴弘選手を応援する会」世話人のY氏からメールが届いた。開けてみると…。
「たった今、第4号ホームランが出ました!」
 後半戦の初戦にこれ以上ない出だし。前半戦のラストが高知遠征から漏れての居残りだっただけに、その悔しさを見事、結果で見せた。
 このスタートから31日までに行われた4試合(アマとの交流戦含む)の結果は以下の通り。

 24日 広島 3打数1安打 3打点 1本塁打 1犠飛 1三振 1四死球
 25日 広島 2打数1安打 1三振 2死四球
 27日 名古屋ウェルネス 3打数0安打 2四死球 
 31日 阪神 2打数0安打 2三振 

 31日のゲームは吉良俊則に一塁での先発スタメンを譲り途中出場してのもので、その吉良の2三振のあとに登場し、同じく2三振。このあたりはまだまだだろうが、数字を見ながらひとつの変化として目についたのが四死球の数だ。
 前回更新までの45試合で9四死球だったのが、この4試合では5四死球。中に死球が含まれているのかどうかや、相手投手の調子など、実際に見られていないので何とも言えないが、目一杯想像力を膨らませると…。ストライク、ボールの見極めができているということと、打席の雰囲気が変わってきたのではないかと思えた。打席から発する雰囲気をピッチャーは敏感に感じる。気楽にストライクを投げ込んでいけない雰囲気が出てきたのでは…、ということだ。
 そのあたりも確認するため、今回の更新日となる8月1日、鳴尾浜へ向かった。

         

Buttingform後半戦に入ってマイナーチェンジされた岡田の構え。上体の揺れを抑え、バットのヘッドをキャッチャー側へ少し傾けている

明らかに感じられた復調の兆し

 サーパスのバッティング練習中に球場へ着くと、ちょうど岡田が打ち始めるところだった。ネット裏のスタンドに上がり、その様子を真後ろからじっくり見た。一目見ただけで感じは悪くないと確信。あれこれ言う前に芯で捉える打球が増えていたし、フェンスオーバーの当たりも出ていた。
 次に気づいたのがマイナーチェンジしていた構え。まず、前回の観戦時からそのきざしはあったが、構えた時にリズムを取る意味もあって前後に動いていた上体の揺れが、さらに小さくなっていた。腕の動きも大人しく、テークバックも少し小さくなって見えた。スイングしたあとのフォローで左手を離さないことも多く、総じて<コンパクトに振ろう>という意識を感じた。
 また、構えた時のバットのヘッドをキャッチャー方向へ少し倒していた。ここにも<最短距離でバットを出そう>という、という意識を感じた。さらに、キャッチャー方向へ少し倒したヘッドを構えた時に一度“ブルッ”と震わせていた。たとえていうならローズ(オリックス)が、構えた時に「ブンッ」「ブンッ」とヘッドを揺らすあの仕草のようなもの。あれほど忙しくも、あれほど上段に構えているわけでもないが、一度“ブンッ”。固まるのを嫌ってか、ヘッドの重みを感じたいということか…。ちなみにローズは98年までヘッドを立てていたが、99年から寝かせて、揺らすようになり、その年2冠。特にローズは関係ないとは思うが、とにかくそういう動きが入っていた。

               

結果に出なくても得られた手応え

Buttingこの日の阪神戦は6番ファーストで出場。無安打だったものの、打席での雰囲気があり、岡田らしい打球も見られた

 試合には「6番ファースト」で出場。相手の阪神先発は太陽だった。
 第1打席は2-2から内寄りのストレートに詰まらされサードへのファウルフライ。1死一、二塁で回ってきた第2打席は、1-3から外のストレートを打ってレフトフライ。合わせただけの打球で伸びを欠いたが、タイミングは悪くなかった。もうひと押し込みあれば…。体重をぶつけていければ…。第3打席は1-2から真ん中付近のストレートをファーストゴロ。甘い球だったが“きたっ!”と力んでしまったようなスイングだった。
 どの打席にも甘い球が来て、そこへ手を出しているのだがまだ捉えきれていない。ただ、タイミング、スイングの形、打ったあとの形も悪くない。
 そして最終第4打席目は2点を追う9回表に回ってきた。あと1人出れば岡田に回る展開ながら簡単にツーアウト。祈る思いで見ていると坂口智隆が見事にレフト線へツーベースを放ってつないだ。マウンド上は2番手の玉置隆。3打席凡退ながら、本当に一発出そうな、そんな雰囲気を感じた。
 そして…。
 初球ボール(外カーブ)のあとの2球目。外角やや高めのストレートを上から叩いた打球はレフトへ! 打った瞬間に「いった!」というほどではなかったが、打球を追うネット裏の阪神ファンからは「えっ!」「えっ!」という声、声、声。軽く打ったように見えて意外に伸びるのが岡田の打球で、特に左方向はそう。
 <もしかして同点アーチ…?>と僕も打球の行方を追った。が、最後はレフト高橋勇丞のグラブに収まりゲームセット…。捕球地点は外野フェンス直近のアンツーカーのエリアに入っており、あと2、3メートルで柵越えというところ。2打席目の当たりよりも捉えていたが、まさにあとひと伸び、ひと押しだった。
 この打球が捕球されたところで、一塁を大きく回ったところで岡田も悔しそうに天を仰いでいた。しかし、こういう打球が増えてくれば本当にもう一息。打席に立った時の期待感を大きく感じさせてくれ、4打数ノーヒットの結果よりもはるかに僕は手応えを感じた。
 残念ながら、次の取材予定が迫っていて試合後の岡田に話を聞くことはできなかったが、確かな上昇気配を感じ球場をあとにした。

                     

守りは一足早く1軍クラス

 この試合について、バッティング以外で触れておきたいのがその守備。これまでも何度か書いてきたが、ファーストの守りということでは間違いなくすでに一軍クラスだろう。ひいき目ではなく、将来はゴールデングラブを獲れる上手さがある。
 この試合でも3度「ナイスプレー」があった。2度は三塁・相川良太からのショートバウンド送球をすくってピンチを未然に防いだ場面だが、どちらも逆シングルでのショートバウンド捕球。難しい送球を難なく捌く柔らかなミット捌ききに、思わず現役時代の王監督の守りを思い出した。あの人もミット捌きが柔らかく上手いファーストだった。ゲッツーを取る時の二塁送球も流れるような動きで美しかったが、そのあたりも含め岡田に通じる素質を感じる。
 もう1つ極めつけだったのは、初回に藤原通のファウルフライを捕球したプレー。ダッシュよく飛び出した岡田はそのまま一塁ベンチ前でスライディングキャッチを決めたのだ。ベンチ直前の危険ゾーンだったが、まあ、見事なスライディングキャッチ。捕ったあともスッと立ち上がり、まるで盗塁の上手い選手のスライディングシーンを見ているようだった。
 この守備は間違いなく味方投手陣から感謝されるものになる。あとはバッティング、バッティングの結果だ。

Talk_okadaファームで首位打者争いをしている迎祐一郎と話す岡田。18日に開幕する北京五輪のプレ大会を控え、8月7日からは若手中心で構成される日本代表候補の合宿に参加する

 さて、最終発表は間もなくだが、8月7日からはいよいよプレ五輪の合宿(神戸)に入る。神戸サブとスカイマークで練習&練習試合を行い、18日から23日まで大会が開催。状態は間違いなく上がってきているので、北京での大爆発に期待したい。

 
8月1日現在の成績
[ファーム] 
49試合 166打数 35安打 打率.211 4本塁打 17打点 12四死球 52三振 1盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は8月11日の予定です。

2007-07-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第48回-

070721okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。これで48回目のレポートです。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。一時極度の不調に陥っていましたが、ようやく上昇の兆しが見え始めてきています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?

居残り調整

 7月としては過去最大級の台風が日本列島を通過し、いよいよこれからが夏本番。プロ野球の世界は前半戦が終了し、オールスター休みへ突入した。
 昨年のこの時期は、岡田が出場したフレッシュオールスターを追いかけ東京ドームへ飛び、そこで岡田が一発&ツーベースで優秀選手賞を獲得。直後に1軍練習に召集され、そのまま昇格か! と盛り上がったものだった…。
 あれから1年。19日には今年のフレッシュオールスターも開催され、改めてプロの世界の流れの早さを感じる。

Okada_06jrallstar昨年のフレッシュオールスターで活躍し、優秀を受賞した岡田。1年はあっという間だ

「復調気配」と書いた前回の記事が掲載された翌日、ある人から連絡が入った。14、15日に予定されていた四国遠征(中日戦)のメンバーから岡田が外れ「居残り」になったという。10日の観戦時、僕の目にはドン底から脱したと映り、本人の表情も明るかったはずなのに…。そこで思うことがひとつあり、連絡をくれた人にもこう言った。
「もしかすると1軍の首脳陣が状態を見たい、と言ったのかも」
 というのも、居残り組は調整中だった塩崎と岡田の2人。そして、千葉、宮城、札幌と遠征に出ていた1軍は、ちょうど13日から12日ぶりに関西へ戻ってくることになっていたからだ。
 しかも、遠征中の1軍は相変わらずの低迷で楽天にも差をつけられ最下位に沈んだまま。折り返し地点もすっかり過ぎ、思い切ってメンバーの切り替えを考えたとしても不思議ではない時期だ。
 確かに岡田はまだファームでも結果を残せてはいないが、オープン戦まで1軍に帯同し、コリンズ、ディーバスコーチらの大きな期待も受けている。だから「もしかすると…」と思ったのだ。
 だが、結論から言えば、僕の仮説は外れ。あくまで「不振」での居残りということのようだった・・・。

     

高校野球取材の合間に…

 その後、数日の間にこの「居残り話」を続けて3人の口から聞いた。
 まずは岡田の父・秀和氏。17日、僕の家の近所でもある豊中ローズ球場にて、息子の母校・履正社の初戦(大阪工大戦)を観戦にきていたところでバッタリ。ちょっと危ない展開だった試合の行方が終盤の猛攻で決まると、「居残り話」になった。直近に話をする時間があったそうで、それによると、居残り期間に神戸でしっかり走り込みもし、気持ちを前に向けていたという。
 実はその少し前に、秀和氏は野球以外の部分で少し岡田に厳しいことを言ったことがあったそうだ。特に何かが悪かったというより、気持ちを強く持って頑張れ! という父親としての叱咤のようだった。
「居残り話」をした2人目は履正社の岡田龍生監督。初戦に続いて観戦した19日の2回戦終了後、場所は同じく豊中ローズ球場。この日は阿武野相手に10対0のコールド勝ち。納得の試合内容を振り返ったあと、新聞記者が離れたところで「岡田はどうですか」と監督から逆取材を受けた。
「ドン底は脱したと思います」と言うと、そこで「でも、四国には連れて行ってもらえんかったらしいですねえ」と戻ってきた。こちらの情報源は、今はオリックスの同僚でもある岡田の履正社時代の後輩、土井健太。岡田監督と2、3日前に電話で話した際に話題になったという。「何とかいい方向にいってほしいんですけど」と、夏の戦いの最中でも、やはり岡田のことが気になっているようだった。
 居残り話を口にした3人目は藤井康雄スカウト。20日に西京極で京都大会を観戦していると、ネット裏のスタンドで一緒になった。
 しばらくは目の前のゲームや、2日前にオリックスが6人体制で観戦した中田翔(大阪桐蔭)の初戦について話を聞き、一段落となったところで「この間、寮で岡田に会ってきましたよ」ときた。そこから「居残り話」となり、藤井さんは『何やっとるんや』と言っときましたよ」と笑っていたが、こちらもなかなか浮上の波に乗れない愛弟子の状況が頭から離れないよう。みんな岡田の爆発を心待ちにしている。

       

Fujii1年生のときからベンチ入りし、岡田とともにプレーした経験を持つ藤井一成(履正社)。最後の夏に燃える後輩も岡田にエールを送る

後輩からのメッセージ

 そんな岡田が少し元気が出る話(?)を最後に書いておく。
 2回戦快勝のあと、履正社の今のキャプテン・藤井一成と少し話をした。藤井は岡田とは2つ違いで1年時からメンバーに入っていた選手。「この夏」の話を聞いたあと、岡田の話を出した。
 この年代での2年違いというのは結構な距離感もあり、どんな反応が返ってくるかわからなかったが、藤井からはニコッといい笑顔が返ってきた。

藤井 岡田さんにはオーラっていうか雰囲気がすごくありました。やっぱり全然違いました。でも、優しくてホントにいい先輩なんです。今年の冬も自主トレで履正社のグラウンドに来てくれたんですけど、その時もプロの厳しさについて話をしてくれました。
谷上 その岡田も2年前の夏は苦労してたよなあ。
藤井 はい。でも、僕は岡田さんが調子が出なくても、不安より最後まで<岡田さんなら絶対何とかしてくれる>っていう期待の方が強かったです。
谷上 最後は大阪予選の準決勝で(大阪)桐蔭に負けたけど、9回に中田からバックスクリーンに一発。岡田のホームランで特に印象に残ってる1本ってある?
藤井 ちょうどここ(豊中ローズ球場)で夏の前に紅白戦をやったんですけど、その時にセンターバックスクリーンを越えるホームランを打ったんです。それも木で。あれが凄かったです。
谷上 じゃあ最後に岡田にメッセージを。
藤井 僕等も先輩たちが築いてくれた伝統に恥じないプレーで、絶対、甲子園に行くので、岡田さんも見ておいて下さい! あと、僕なんかからはあんまり言えないですけど、岡田さんも頑張って下さい! 応援してます!

Riseisya_win履正社は、現在、順調に大阪大会を勝ち上がっている

 2年前の夏は、大阪桐蔭の平田良介(中日)、辻内崇伸(巨人)、近大付の鶴直人(阪神)と並び「ナニワの四天王」として大いに注目を集めていた岡田。豊中ローズ球場で行われた夏初戦の様子は翌日の日刊スポーツ(大阪版)の一面も飾ったほどだった。
 何とも懐かしい限りだが、振り返ってばかりもいられない。しばらくは高校野球の予選取材が続くが、一段落すれば岡田観戦を再開の予定。その時にはスカッと上昇の姿を見せて欲しい。

7月20日現在の成績
[ファーム] 
45試合 155打数 33安打 打率.213 3本塁打 14打点 9四死球 48三振 1盗塁
(前回の成績に一部間違いがありました。関係者各位の皆様にご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます)

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は8月1日の予定です。

2007-07-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第47回-

Okada_05 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。47回目のレポートです。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。一時極度の不調に陥っていましたが、ようやく上昇の兆しが見え始めてきているようです。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?

  

久しぶりの観戦

Okada_04一時期の低迷時に比べると、雰囲気的にもかなり良くなってきた

 久しぶりの岡田観戦が実現したのは6月10日。「あじさいスタジアム」で行われた阪神戦を見に行ってきた。
 ナイターでの開催だったが、当日は朝からぐずついた空模様のため、ネットの天気予報を1時間毎にチェック。<もうひと雨降れば中止かも…>と不安を抱えながら3時半過ぎに家を出た。
 途中、三田駅から乗り換えた神戸電鉄の車内にサーパスの日程表が吊ってあり、左に近藤一樹、右に田中彰、その中央には岡田。あとで聞けば岡田はこのチラシに3回連続での登場ということ。改めて周囲の期待の高さを感じながら球場へ着くと、スタメンが発表されており岡田は「7番ファースト」での出場だった。

 空には厚い雲。右から左への強い風。荒れ模様の中始まったゲームは、この日から本格的に実戦復帰した阪神・浜中治がライトへ3ランを叩き込むところから始まった。
 阪神の先発は2年目の金村大裕。金村と言えば、昨年の4月6日に岡田がプロ第1号を放った相手だ。場所は鳴尾浜で球種は真ん中高めのストレート。岡田にもその印象は残っているはずで、爆発に期待したが、2回2死一塁で回ってきた第1打席は空振りの三振。この時は三塁側から見たので正確なコースは分かりにくかったが、おそらくインコース寄りのストレート2つで追い込まれたあと、最後はフォーク。3球勝負でやられた。
 この日の阪神のスタメンマスクはルーキーの橋本良平。智辯和歌山時代は岡田のいた履正社と2年秋の近畿大会で対戦。乱打戦を履正社が制し勝利した試合だったが、昨年のドラフト前、橋本に高校時代の思い出を振り返ってもらうと、印象に残る試合として真っ先に挙げたのがこの一戦だった。また、マスク越しに見た中で、高校時代に最も印象に残ったバッターとしては岡田の名前を挙げ、「どこに投げても打たれそうな雰囲気があった」。そんな橋本との対戦でもあったわけだ。
 金村は3回、橋本も4回途中で退いたため、2人との対戦はこの1打席のみだったが、まずは完敗の結果。ただ、打席に立った姿からは、一時のどん底状態時には感じなかった、"打てそうな雰囲気"が漂ってきた。足の上げ下ろしにもバタバタッとした感じがなくなり、見送り方も悪くない。構えに入るまでの動きから無駄も消えたように見え、2打席目以降に期待を抱かせた。

   

Okada_03_2第2打席で中村泰広(阪神)からタイムリーヒットを放つ

3カ月前の同じ相手、同じ球種の対応に変化が

 2打席目の前に、父・秀和氏をはじめとする「岡田ファミリー」がスタンドに到着。挨拶して並んで観戦させてもらうことに。
 その前で4回に回ってきた第2打席。1死一、二塁のチャンスにサウスポー中村泰広から、今度はタイムリーを放った。0-1からのストレートに差し込まれながらレフト前へ落とした。
 納得のいく当たりではなかっただろうが、「詰まった当たりでもヒットになるのは振り切っている証拠」と、よく評論家が口にする言葉もある。確かにこの日はしっかり振っていた。「振れないんです」という言葉を聞いたこともある時期を思えば、やはり<悪くない>。
 その思いをさらに強くさせてくれたのが、3打席目のセカンドゴロ。2点を追う6回2死二塁のチャンスに、再び中村と対戦し打ち取られたが、スライダーにしっかり間を取って自分のタイミング捉えていた。一瞬抜けたかと思う一、二塁間への打球に、もう3カ月も前になるレポート(38回目http://kozo.weblogs.jp/kozo/2007/04/38_114a.html)で書いた試合のことを思い出した。相手先発が中村。その時は見え見えのスライダー攻めに体が開き、完全に形が崩れていた。いくら振っても空振りかバットの先でひっかけてのゴロしかイメージしかわかなかった。
 それに比べ…。今回のセカンドゴロは、インパクトでもうひとつ強さを伝えられれば、さらにいい打球となって飛んでいったはず。間違いなく上向いている。

   

雨天中断、4打数1安打もいい雰囲気を感じた試合

Ajisai試合は雨のため中断したが、その後再開

 その後、試合はついに堪えきれなくなった空から激しい雨が落ち始め、7回表阪神の攻撃途中に中断。その時間は50分にも及んだ。
 その時点での得点は5-3で阪神がリード。試合は7回。普通なら中止の試合だっただろうが、その夜は7回終了時にスカイマークの1軍のゲームで行われる「花火ナイト」の企画が用意されていた。悪天候の中、熱心なファンが多数スタンドに詰め掛けていたこともあったのだろう。すぐに中止にはならず、状況が見守られた。
 その甲斐あって、やがて雨が止み、グラウンド整備に入る。合間を利用し、まずは無事に花火が打ちあがった。そして、再開までの間、両軍選手は外野の人工芝部分で体を動かす。その時に見た岡田の表情が非常に明るかった。頭をスッキリ刈っていた雰囲気も手伝い、ふっきれた感じが伝わってきた。
 試合再開。花火のお陰で巡ってきた8回の岡田の第4打席。7回に相川良太のタイムリーが飛び出し得点は1点差で場面は2死ランナーなし。
「オカダー、一発頼むで~」というおじさんの声に僕の中に予感が走った。マウンドには阪神5番手の玉置隆。市立和歌山商業から入団した3年目の投手で、ストレートとタテのカーブに特徴を持つが、苦手なタイプではない。岡田の頭にも一発はあったであろう打席。初球ボール(外ストレート)、2球目ファウル(外ストレート)、3球目ボール(中高め)、4球目ストライク(外カーブ)。そして2-2からの勝負球はやや外の高目から入ってくるカーブだった。
 これに少し体が浮いたのか、外から回ったようなスイングで打球は1塁ライン際への平凡なゴロとなりアウト。雰囲気を感じていただけに残念な結果ではあった。

 そのままゲームは21時37分に終了。中断時間を含めると4時間7分のロングゲームだった。途中は傘も差しながら、カメラとビデオでの撮影もしながら…、と慌しかったが、結果は4打数1安打ながらもいいものを見れた気がした。
 試合前までとは違い、僕の気分も少し明るくなったところで、試合後のベンチ裏で岡田をつかまえた。

      

Okada_07 調子を取り戻すきっかけは、高校時代のいいイメージを発展させたところにあった

コメントからも上向きを実感

谷上 で、調子はどうなん?
岡田 全然っすねえ。
谷上 でも、一時に比べるとスイングの形も凡打の形も良くなって見えたけど。
岡田 まあ、全然だった時に比べたら…、ですけど。でも、まだまだです。ただ、ちょっと自分の目指してる形が見えてきたかな、という感じはあるんです。
谷上 ええ話! その形っていうのは?
岡田 言うのは難しいんですけど…。自分の中では高校時代の一番よかった、やっぱり高2の頃をイメージしてるっていうか。
谷上 その頃の感覚が出てきた?
岡田 高校時代と同じじゃいけないし、それでは通用しないんですけど、そこから省くところは省いて、無駄をなくしていってるって感じです。
谷上 感覚的なものが上がってきた、と
岡田 そうすねえ。言うのは難しいんですけど。構えも…。
谷上 また足もしっかり上げるようになって、そういう面でも高校時代のいいところは残しつつ、というところか。今、意識しているポイントは?
岡田 左半身で振るってことですね。
谷上 前に突っ込まず、軸に残しながら捉えにいくイメージ。
岡田 自分の中でいろいろ変えてからすぐ若竹からホームラン(6月13日)も出たんです。それはたまたまだったのかもしれないですけど、少しはいい方向にいっていると思います。
谷上 ええことや。ところで"坊主"にしたのも気合の表れ?
岡田 いやあ(笑)。もうちょっと長めに仕上がってたんですけど、もう少し切りましょうかって言われて任せたらこんなになって(笑)。
谷上 頭も高校時代を思い出して…。ガンガンいってや。
岡田 はい、頑張ります!

Okada_02グラウンドでの表情もいい顔になってきた

 もう少し踏み込んで「目指している形」についても聞きたかったが、ロッカールームからバスに乗り込むまでの時間は短い。そのあたりは、もっと調子が上がったところで、じっくりと聞かせてもらうとしよう。
 それでも、明るい表情、前向きな言葉からは、「全然っすねえ」という言葉とは裏腹に、岡田の中に芽生えた手応えを感じさせてくれた。雨の中で見た甲斐があった。遅まきながら、迎えた大好きな夏。ゴジラの逆襲はこれから始まる!

7月10日現在の成績
[ファーム] 
45試合 158打数 34安打 打率.215 3本塁打 15打点 8四死球 48三振 1盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は7月21日の予定です。

2007-07-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第46回ー

Okada_top070701 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。46回目のレポートをお届けします。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。その後、一時極度の不調に陥るなど、苦心が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になったでしょうか?

         

Nakamuranori昨オフ、騒動の末に中日へ入団した中村紀。一時期故障で鮮烈を離れたが現在は元気に一軍へ復帰している

中村紀洋の岡田評

 残念ながら予想通り6月22日から由宇での広島3連戦(初戦は雨で中止)、29日から雁ノ巣でのソフトバンク3連戦は観戦できず。さらにその間に神戸サブで行われていたはずのサーパスの練習にも向かえず…。どうにもこちらの時間と合わない状況が続いている。
 そこで、今回は何を書こうかと考えたが、岡田を見れない間に各地を回っていた中で拾った「岡田に関するコメント」を紹介させてもらうことにした。
 6月末に中日のファームの練習を名古屋球場で見る機会があり、そこで肉離れのため調整中だった中村紀洋と話す時間があった。去年はオリックスの一員だった中村には当然、岡田についての印象も残っている。そこで聞いてみると…。
 まず「あのパワーはやっぱり素晴らしいですよ」と言ったあと「でも」と続いた。
「でもね、まだ自分の形が掴めてない。今のままではまだ苦労すると思いますよ」
 ちょうど、6月15日から名古屋での3連戦で久しぶりに岡田を見たそうで、直近の状態を知った上での発言だ。5月20日の第1号以来、6月13日の2号、さらに24日の広島戦での代打2ランによる3号と、一時に比べると岡田の状態は上がってきているが、期待が大きい分、周りの見る目も厳しくなる。

         

足を上げるフォーム

Okada_batting足を上げるのか? すり足か? 中村紀は「一貫すべきと」説いた

 話の流れの中で、足の上げ方についても聞いてみた。岡田にしろ、例えば、今話題の大阪桐蔭・中田翔にしろ、足を大きく上げて打っていた選手が調子の下降と共にすり足に変え、やがてまた上げ始めるというケースを見ている。
 対して、中村も左足を大きく上げるフォームだが、プロの世界でこれだけの実績を残してきている。その違いは何なのか…。岡田がすり足も試しながらやっているという話をすると中村は簡潔に言った。
「足を上げるフォームで高校時代までやってきてたんですよね? なら、その形でいくべき。だって、それをすり足にしてやるとなったら、また一からじゃないですか。もちろん、僕も苦労した時期はあったけど、足を上げながら対応できる方法を探してやってきましたから」
 残念ながら、「そのためには…」という肝心の部分については、時間切れで聞くことはできなかった。以前やはりフォームについて中村に聞いた時には、「右足対左足は7対3の感覚で重心を置きながら、軸足にしっかり体重を乗せてからボールを捉えにいく」と話していた。
 中村のフォームは独特で、大きく上げた左足もスッとは降りない。例えるなら、ピッチャーの2段モーションの時のように、空中で1度、ヒザ下からつま先までをポーンと軽く投げるような感じで遊ばせる。そこで「間」を作っている。あのへんの感覚が「さすが」ということなのだろうが、あの「間」とそれを可能にする軸足の強さがあるから、多彩な変化球にも簡単に崩されることはない。
 常に軸足の重要性は力説していて、今も軸足1本でのティーバッティングや、普段の練習から若手以上にゴロノックを受けるなど下半身強化には余念がない。もちろん、バッティングにはそれぞれの感覚があり、タイミングの取り方となればなおのこと。結局、本人にしかわからない部分だが、ひとつ、中村流の考えを紹介しておく。

       

福本豊の岡田評

Fukumoto解説者として関西を中心に活躍している福本豊氏。以前から岡田を高評価していた

 次に登場は福本豊さん。やはり話を聞く機会があり、合間に岡田の話題を向けた。
 するとまずは「苦労しとるなあ」と一言。こちらは先の中日3連戦の前に鳴尾浜で行われた阪神対サーパス戦で岡田を見ていた。
 福本さんはマメにファームにも足を運んでおり、昨年の状態も知っているが「去年のことを思ったら、もっと伸びてこなアカンのやけどなあ」と渋い顔。福本さんが阪神戦での岡田のバッティングを見て指摘したのは「完全に上で打っとる」ということ。
 41回目のレポートで藤井康雄スカウトによる即席打撃教室の模様を少し書いたが、その時、藤井さんが「福本さんによく言われた」と岡田に伝えていたのが「上(上半身)は忘れて、下(下半身)で振れ」という言葉だった。
 その模様を伝えると福本さんも「そう、とにかく下を意識してやってたら、そんなへんなことにはならん。バッティングっていうのは難しく考えれば難しいけど、間単に考えたら簡単なんやから」と頷いた。
 盗塁だけでなく歴代4位となる2543安打を積み上げたヒットメーカーの言葉は、シンプルではあるが確かなものなのだろう。そんな福本さんが最後に口にした岡田への叱咤激励を加えておく。
「まだ2年目やけどもう2年目。1年1年何かを掴んでいかんと、選手生活なんかアッという間に終わってしまうんやからね。オリックスの現状を見てたら、岡田の状態さえ良ければ、いつでも(1軍へ)上げたいはず。でも、まだまだそこまでいってない。本人も一生懸命やってるやろうけど、松井二世の声に応えるように活躍してほしいね。それだけの素材なんやから」

        

左打者不足のチーム事情に思いは複雑

 6月28日、オリックスは吉井理人とロッテ・平下晃司のトレードを発表。翌日のスポーツ紙には「左の外野手を希望するオリックス側の希望にも合った」という一文が載っていた。その2日前には、日本ハムから同じく左の木元邦之も獲得。そんなニュースを聞きながら、何とも歯がゆい気分にさせられた。
 福本さんが言ったように、現在のオリックスは楽天にも水を空けられ最下位に低迷中の上に左打者不足。岡田の状態さえ良ければ、チャンスはすぐ目の前にぶらさがっているのだ。
 しかし、それを手にできない悔しさを誰よりも感じているのはもちろん岡田自身。何とかこの悔しさの中から、上昇のきっかけを掴み、自分のバッティングを作り上げていってほしい。見守るしかないこちらとすれば、そう願うしかない。

7月1日現在の成績
[ファーム] 
42試合 149打数 32安打 打率.215 3本塁打 13打点 7四死球 46三振 1盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は7月11日の予定です。

2007-06-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第45回ー

Oakada_top070621 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。45回目のレポートです。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。その後、一時極度の不調に陥りましたが、少しずつ上昇の気配が見てきています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。久しぶりに岡田選手本人の話も読者の皆さんにお届けできそうです。

                  

2号目の吉報

 今回は、6月12、13日の阪神戦(鳴尾浜)、19、20日のソフトバンク戦(北神戸)と、関西圏のゲームも4試合あったが、またしても観戦できず。そういう日に限り、あれこれ仕事が入ってくる。ソフトバンクとの2連戦のどちらかが雨で流れれば、21日が予備日になっていて、その日なら何とかなりそうだったが、残念ながら天も味方せず…。
 その中、前回の更新以降で一番のニュースと言えば、13日のゲームで第2号が飛び出したことだ。その日は別の取材が入っていたが、移動中だった午後、父・秀和さんから連絡をもらった。サーパスの試合時間中に入ってくる連絡は、間違いなく「いい知らせ」。そこで出てみると「若竹(竜士・阪神)君から打ったみたいですよ」と、やはり予感が当たった。秀和さんも仕事のため連絡元は先日書いた「岡田貴弘選手を応援する会」の世話人Yさん。つまり、Yさん→秀和さんをたどって僕のもとへ一報が届いたわけだが、岡田ライターとしては有難いことだ。
 さらに夕方、家に戻るとYさんから「久しぶりにゴジラの笑顔が見れてよかったです」とメールが届いていた。文面を読みながら、僕の頭にもあの控えめな? 上品な? しかし、何とも愛嬌のある岡田の笑顔が浮かんだ。

               

早速VTRで確認

Wakatake兵庫・育英高校時代の若竹竜士。同期のライパルもファームで奮闘中

 その試合は関西のU局(サンテレビ)で中継されており、ビデオ録画していたものを夕食をとりながら見た。開始30分からの放送開始だったため、岡田の一発は試合経過を振り返るVTRの中で確認。若竹の真ん中寄り、やや低めに来たスライダーをレフトポール際に運んだ一発。会心という当たりではなかったが、どんな強打者でも完璧な打球ばかりではない。「それ以外」の当たりをいかにホームラン、ヒットにするかも大事なこと。そう思えば、こういう1本もまた、よしだ。特に今の状況では。
 相手先発の若竹と岡田は小学校から対戦を重ねてきた仲で、中学時代に飛び出した伝説の特大ホームランも若竹から打ったのだ。まさに好敵手といった感じだが、若竹は2年目の今年、ファームとは言え、先発組に入り2勝(3敗)。リーグ投手成績8位(防御率3.15)は、今阪神の1軍で売り出し中の上園啓史の上にランクするもので安定感がある。
 この日のピッチングもなかなか(6回1失点)で、ストレートをけれんみなく投げ込んでくる姿は魅力的だ。「ナニワの四天王」に数えられた辻内崇伸、鶴直人の2人が故障で苦しむ中、着実に成長中。岡田との1軍対決を早く見たいものだ。

         

思いもしなかった本人からの電話

 さて、早送りでゲームを見終え、原稿に取り掛かっていた夜。ある意味で「第2号以上(?)のニュース」が起きた。思わぬタイミングで岡田本人から携帯に電話がかかってきたのだ。実は、前回の更新日の前日に連絡を入れていた。あいにく留守電で「明日、豊中の治療院にくるならそのあと話を聞きたいので連絡を」とメッセージを残した。ただ、「予定がなければ連絡はいいので」とも続けおいたので、結局、その日の連絡はなし。
 しかし、それから3日。こちらも忘れかかっていたところへかかってきた電話である。予想してない上に、ちょうどその時、書いていたのがイチローの高校時代の活躍を振り返る原稿。頭の中は「イチロー、イチロー、イチロー」となっていたので、咄嗟の切り替えが聞かず、もっといろいろ聞きたかったのに…、というやりとりになってしまった。

岡田 こんばんは。
谷上 今日打っとったなあ。
岡田 でも、風がなかったら多分レフトフライだったと思うんで当たり自体はあんまり。
谷上 でも、結果も大事。相手が若竹で、打てそうな感じがあったとか?
岡田 特にそういうのはなかったんですけど。2打席目以降も全然やったんで(残り3打席は同じく若竹から二ゴロ、センターフライと、左腕・田村領平からサードファウルフライ)。
谷上 ただ、最近はヒットも増えてきて、状態も上がってきてるとちゃうの?
岡田 どうすかねえ。まだ、自分ではそこまでの感じはないんですけど。
谷上 まあ、これくらいじゃ、ということやな。そういえば、少し前になるけど、北京でのプレオリンピックの一次メンバーに入ってたよな。
岡田 選ばれたら楽しみですね。監督も星野さんでどんな感じなのか興味がありますし。
谷上 ああいう舞台でプレーできたら、そらいい経験になるで。
岡田 そうですね。選ばれるようにもっと結果も残していきたいです。

Oakada_relax復調はしつつも、まだ本調子とはいえない状態の岡田。いよいよ到来する夏場での巻き返しに期待

 正味3、4分。絶好機に打席に立ちながら中途半端なスイングで凡打した気分だ。もっと狙い球を絞りしっかり準備できていれば、いろいろ聞けたはずだ。僕も咄嗟の対応力をもっと磨かないと…。
 と、自分自身の反省はともかく、岡田の話だ。前回の更新期間中5試合で打率が.353と、上昇気配を感じさせていたところで、今回も13日に一発。いよいよ一気に爆発か! と期待したが、その後は残念ながら低調期に突入。この10日間、7試合の成績は29打数5安打、打率にすると.175。
 う~ん、なかなか、なかなか…と、いった感じだが、前を向いてやっていくしかない。というわけで、次こそは僕も何とか観戦に出かけ、ここでしっかり「いい報告」をしたいものだ。

             

最後に…

「岡田貴弘選手を応援する会」について。現在は「知り合い、関係者(その紹介者)のみで運営中。今後は形を変えていく可能性もあるそうなので、もし、そういう話が出てくればまたここでもお知らせします。

6月21日現在の成績
[ファーム] 
38試合 139打数 29安打 打率.209 2本塁打 10打点 7四死球 42三振 1盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は7月1日の予定です。

2007-06-12

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第44回ー

070612_okada_2  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で44回目。50回も見えてきました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。その後、不調が続いていましたが、ここへ来てようやく上昇の気配が見てきています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。残念ながら、今回も本人の談話はとれなかったようですが、岡田選手にとっては朗報もあったようですよ。

       

本格的な上昇の兆し

 いよいよ“いい感じ”になってきた。前回の更新以降、サーパスは5試合を行ったが、岡田の成績は以下の通り。

 2日 対阪神(北神戸)3打数 2安打 1四球
 3日 対阪神(北神戸)4打数 1安打(能見、小嶋 江草らの前に3三振…)
 5日 対広島(北神戸)4打数 1安打 2打点(満塁でタイムリー)
 6日 対広島(北神戸)3打数 0安打(ルーキー前田健太の前に音なしでチームも完封負け)
 7日 対広島(北神戸)4打数2安打(今季初盗塁)

 計17打数6安打の.353と、数字からでもはっきり上昇気配が伝わってくる。
 しかし、その姿をなかなか確認できない…。ここ最近は、名古屋、広島、千葉、東京、そして大阪周辺を取材で回っており、サーパスのゲームには向かえないまま。
 そんな中、今回の更新に向け岡田に話を聞く最後のチャンスだった11日。こちらの取材予定もなく、サーパスのゲームもなし。もしや岡田が整体に通っている豊中の治療院へ来るならそこで話を聞けるかも…、と連絡を入れたが、残念ながら実現せず。ブログを読んでくれている人も、調子の上がってきた岡田の生コメントをそろそろ読みたいところだろうが、もうしばらくお待ち下さい。

        

Carp_yoshida岡田とポジション、役割がかぶる吉田圭(広島)

プレ五輪の1次メンバーに選ばれる

 ということで、今回は、その間に飛び込んできた「ビッグニュース」について書かせてもらう。
 6日に発表された「プレ五輪」の第1次メンバーに岡田が選ばれたのだ。来年の北京オリンピック開催を前に行うプレマッチで、ジャパンのメンバーはプロのファームと大学生(社会人は都市対抗もあり出場せず)からの30名。サーパスからは柴田亮輔と岡田の2人が選ばれた。
 メンバーを見ると先々が楽しみな面々が並んでいるが、ここから8月初旬の合宿を経て、最終の24人に絞られていく。現在は投手15人、野手15人となっているが、おそらく投手は11~12人になり、捕手の3名枠は確定。となれば、残りは内野、外野から2~3人が外れることになる。今後、追加メンバー召集の可能性もあるが、岡田の状態さえこのまま上がっていけば、代表入りの可能性は十分。それどころか、主軸に座っておかしくない顔ぶれだ
 メンバーを見ると一塁兼外野で左打ちの中軸タイプということで重なるのが広島の吉田圭。帝京高校出身で甲子園でも活躍した5年目の選手だ。高校時代より体も大きくなっており選手名鑑で確認すると185センチの85キロ。サイズ的にも岡田に近い。現在の9本塁打、24打点は共にウエスタンリーグ2位の成績。打率の.229、三振の32は岡田とかなり近い数字だが、長打が売りの選手として着実に実績を重ねている。そしてもう1人、日本ハムの6年目の野手、佐藤吉宏も外野と一塁を兼ねる中軸タイプ。岡田にはこれらの“ライバル”にも負けることなく、ここからどんどん数字を上げていってほしい。

       

代表チームで「4番・岡田」のコールを

Mr_hoshino代表監督の星野仙一氏。岡田のこともぜひお見知りおきを!

 岡田の名前は外野で載っているが、一塁での守備力を生かさない手はない。一発勝負の戦いでは、より守りが重要になる。サーパスでは左ヒジの故障から復活過程の吉良との兼ね合いもありレフトを守ることもよくあるが、柔らかいグラブ捌きと一塁手としては安定しているスローイングはなかなか。吉田、佐藤の守備力はちょっとわからないが、岡田の守りを思えば、一塁・岡田で使ってほしい。首脳陣も「知らない選手ばかりだけども、この後に自信をつけてくれたら…」(星野仙一代表監督)などと言わず、ファームの試合にしっかり足を運んで適応力を見極めてほしい。
 そして、やはり出るとなれば4番で見たいなあ。国際試合のストライクゾーンは内角に厳しく、外に甘いのがパターン。当然、逆方向へ打つ技術が求められるが、岡田は本来そこに特徴のある選手。外へ狙ったボールが少し甘く入り、それを左中間へ一発…。なんて絵が今から浮かんでくる。

        

シーズンで一層奮起を!

 戦いは8月18日から23日まで北京で行われる。1年後の「本番」と同じ球場、同じ時期で行われるという意味でも興味深いものとなるだろう。
 このまま岡田がメンバー入りすれば、北京まで追いかけていきたいところだが、夏の甲子園の仕事をどうするか…。今から悩んでも仕方ないが、ひとまずはここから調子を上げて無事メンバー入りを果たしてほしい。
 実現すれば岡田にとって初の国際舞台。他チームの選手との交流や、異国でのプレー経験は大いに刺激となり、この先の成長につながっていくことだろう。ジャパンの主砲として思いっきり暴れるために、ここからだ!

6月11日現在の成績
[ファーム] 
31試合 112打数 25安打 打率.223 1本塁打 8打点 6四死球 31三振 1盗塁

※打撃成績21位(下から3番目)に浮上!? 

北京オリンピックプレ大会日本代表チーム1次登録選手
■投手
植村 祐介(日本ハム)/髙橋 秀聡(ソフトバンク)/大田原 隆太(ソフトバンク)
内 竜也(ロッテ)/菊地 正法(中日)/若竹 竜士(阪神)
村中 恭兵(ヤクルト)/越智 大祐(巨人)/深町 亮介(巨人)
佐藤 剛士(広島)/加藤 幹典(慶応義塾大)/久米 勇紀(明治大)
大場 翔太(東洋大)/長谷部 康平(愛知工業大)/宮西 尚生(関西学院大)

■捕手
渡部 龍一(日本ハム)/金澤 岳(ロッテ)/斉藤 俊雄(横浜)

■内野手
細谷 圭(ロッテ)/柴田 亮輔(オリックス)/大和 (前田大和)(阪神)
大塚 淳 (ヤクルト)/坂本 勇人(巨人)/小窪 哲也(青山学院大)

■外野手
佐藤 吉宏(日本ハム)/岡田 貴弘(オリックス)/高橋 勇丞 (阪神)
田中 大二郎(巨人)/吉田 圭(広島)/加治前 竜一(東海大)

以上30名

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は6月21日の予定です。

2007-06-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第43回ー

Okadatop070601 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で43回目です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。飛躍が期待された2年目はキャンプを1軍で過ごしたものの、開幕は2軍スタート。その後、不調が続いていましたが、ここへ来てようやく上昇の気配が見てきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。日程の関係上、試合が少ない中、谷上さんのもとにとどいた封書とは…いったい何だったのでしょうか?

   

神戸電鉄で岡田を目撃!?

Okada_difenseディフェンスの動きが決して悪いわけではない岡田。だが、やはり登場するならバット姿の方がいい?

 5月末のある日、電車に乗っていると岡田とバッタリ! と言っても本物ではなく…。車内の吊り広告に登場していた岡田と"会った"のだ。その日は兵庫県三木市にある関西国際大(6月12日開幕の大学日本選手権に初出場)の練習グラウンドへ向かっていて、僕が乗っていたのは神戸電鉄。サーパスの本拠地「あじさいスタジアム」がある最寄り駅(徒歩なら「二郎」、バス・タクシー利用なら「岡場」)も通っている電車で、サーパスの試合日程を知らせるチラシに吉良俊則と共に岡田が登場していたのだ(1軍の告知スペースにはローズも)。こういうものを見ると、改めて岡田への球団の期待感も伝わってくる。些細なことではあるがちょっと嬉しくなった。
 ただ、岡田の写真は打席のものではなく、ファーストを守っている時のもの。たまたま写真がなかったのかもしれないが、ここはやっぱりミットじゃなくバットだろう、という思いも。いずれにせよ、早く1軍のポスターでその雄姿を見たいものだ。

       

締め切りに前日に届いた封書

 さて、岡田の近況だが、前回も書いた通り、このところのサーパスは試合自体が少ない。5月25日から広島、29日から中日とのそれぞれ2連戦が組まれていたのみだが、どちらも1試合が雨のため中止。その結果、前回の更新以降の10日間で行われたのはわずか2試合のみ。"上向き"を感じさせていた岡田には何とも歯がゆいスケジュールとなったわけだが、2試合での成績は共に4打数1安打。中日戦での1本はスリーベースということで、当たりはわからないが長打と聞くとちょっと明るい気分になった。
 それはそうと――。
 今回は試合数が少ない上に関西圏での試合もなし。練習日の取材も考えたが、こちらの都合もつかないまま、結局、「生・岡田」を見ることはできず。となると、今回のネタに何を書こうか、と頭を捻った。しかし、これといったネタが思いつかないまま更新日が1日、1日と迫り…いよいよ明日が原稿締め切りという30日。取材を終えて夜に家へ戻ると1通の封書が届いていた。裏を見ると、硬球マークのシールで封がされた下にある差出人の欄には「岡田貴弘選手を応援する会」。

      

Fanbookサーパスのシーズンスケジュール(ポケットサイズ)。岡田は左上に大きく掲載されている

会員特典は「ナニゴジTシャツ」!

 「岡田貴弘選手を応援する会」とは、その名の通り、岡田を応援しよう、という有志が立ち上がって発足した会で、僕も入会させてもらっていた。で、届いたのはそこからの会報だったわけだが、ネタを探していたところへ見事なタイミング! 早速、中を空けてみると…。
 まず、先日飛び出した第1号を知らせる記事があり「最近(の調子)はまあまあです」という"らしい"岡田のコメントも紹介されていた。さらに、岡田が初登場したというサーパスのシーズンスケジュール(左写真)に、ポストカードタイプのオリジナルカレンダー(右下写真)が会員特典として入っていた。
 さらに「(希望者は)ゴジラTシャツも只今作成中!」とあり、これに反応した僕は、会の世話人であるYさん(女性)に連絡を入れた。
 するとTシャツは、さらにニューデザインを考案中ということで、それが出来次第、サンプルを見せてもらえることになった。早く「ナニゴジTシャツ」が着たい!(笑)

   

Yさんが語る岡田の人柄

 Yさんは元々岡田家と家族ぐるみの付き合いをしていたそうで、小学生の頃から岡田を見るうちに、今では「追っかけ状態(笑)」になっているとのこと。そこで夢を叶えプロ野球選手にまでなった岡田に「何かできることがないか」と考え、会を立ち上げたのだ。
 改めて岡田の魅力を聞くと、「一杯あるけど」と前置きした上で「何事にも一生懸命でトコトンまでやるところ」、「誰からも好かれる優しい性格」と言った。
 1つ目については、岡田はいかにも「一生懸命やってます! というタイプではなく、僕なんかも正直「もっと追い込んでやっても」と感じた時はあった。しかし、Yさん曰く「表には見せないけど、とにかく一生懸命やってますよ」とのこと。
 2番目については、オフに岡田が実家へ戻ってきた時のエピソードを聞かせてくれた。
 その場に居合わせたYさんは、両手一杯の荷物を手に帰ってきた岡田を目撃。「何をそんなに・・・」と思っていると、それらは、誕生日が続いていた「ファミリー」へのプレゼントだったそうだ。「18、19でそういうことをさらっとやるというか、本当に家族のことを大切にしてるんですよね。それを見ていると心があったまったのと、改めて成長したなあ、と思って」と、関心しきりといった感じで話してくれた。

   

会の発展とともに岡田自身の活躍にも期待

Carender「岡田貴弘選手を応援する会」オリジナルのカレンダー。応援する方々の思いが早くかなうことを期待したい

 今も仕事の合間を縫ってスタンドへ応援に駆けつけるYさんは「早く毎日テレビで応援できる日がきてほしい」とゴジラのさらなる成長を願った。そしてその思いは「岡田貴弘選手を応援する会」の人たち、このサイトを読んでくれている岡田ファン、もちろん、岡田ファミリー、そして僕の願いでもある。そんな僕たちの気持ちが、声が、少しでも岡田の力になってくれれば、これほど嬉しいこともない。
 ちなみに「岡田貴弘選手を応援する会」の会員は現在約80名。今のところは岡田とつながりのある人たちによって構成されているが、今後の活躍に合わせて会も成長していくのだろう。
 そのためにも、まずはここからどんどん数字を上げていかないと。打撃成績の最下位をルーキー(阪神・野原)と争ってる場合じゃない(笑)!

    

5月31日現在の成績
[ファーム] 26試合 94打数 19安打 打率.202 1本塁打 6打点 5四死球 27三振 0盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は6月11日の予定です。

2007-05-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第42回ー

Okada03 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。42回目です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。しかし、飛躍が期待された2年目は開幕2軍スタートとなり、不調が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回は進展のきざしがあったようです。 

  

待望の今季初アーチ!

Okada02ウエスタンの試合で待望の今季1号本塁打が出た岡田。長いトンネルだった

 5月20日の午後。阪神大学野球リーグの最終戦、関西国際大対大阪産業大を観戦&取材のため万博公園野球場にいた。そこへ岡田の父・秀和さんから久しぶりの連絡が入ったのは試合が始まり間もなくした時のこと。直感で<もしや>と思った。
 この日のサーパスは12時30分から中日と対戦中。おそらくは土日を利用し名古屋へ赴いていると思われる秀和氏からの連絡ということならば、まさに<もしや>である。電話に出ると同時に「打ちました?」と尋ねると、受話器の向こうからホッとしたような声で「はい」と返ってきた。開幕から24試合目、実に87打席目で、岡田に待望の今シーズン第1号が飛び出したのだ。一報を聞いて僕もホッとした(笑)。
 そこからは逆取材がスタート。前日から名古屋入りし2連戦を観戦していた秀和氏に話を聞いた。

谷上 どんな状況だったんですか?
秀和氏 初回に(田中)彰くんがタイムリーを打ったあとに3ランです。
谷上 当たりは?
秀和氏 ライトスタンドにライナーで行きました。いやあ、やっとですわ。
谷上 相手ピッチャーは?
秀和氏 川井(進)投手です(※僕は勘違いし、その時「ロッテにいた…」と言ってしまったが、それは楽天の川井貴志。ただ、どちらも同じサウスポー)。
谷上 昨日もヒット1本ありましたけど、少しづつ上あがってきましたねえ。
秀和氏 あれは初回にセンターオーバーのフェンス直撃(ツーベース)でした。あとは出なかったんですけどね。
谷上 でも、2日連続でいい打球が出たということは、やっぱり上がって来てますね。僕はシーズンに入ってからほとんどまだ会心のあたりを見てなかったんで…(笑)。
秀和氏 技術のことはよくわかりませんけど、昨日の夜にちょっと本人と話した時も、別に沈んだりとかもなくいつもと変わらなかったんでね。それと昨日、今日とレフトの守備でフェンスギリギリの打球を2本捕ったんですよ。守りのリズムがバッティングにいい影響を与えたっていうのもあるのかもしれないですね。
谷上 なるほど。逆にバッティングの状態も良くなってきたんで足もよく動くのかも。でも、まずは1本出て良かったですよね。
秀和氏 何せスロースターターなもんで、ここからですけどね。

   

続いてタイムリー、2安打、4打点!

 原稿の更新日前日に何ともいい報告が飛び込んできた。さらに「また何かあったら連絡下さい」と、言って電話を切ると、万博の一戦が7回に入ったところで再び携帯が鳴った。<2発目か!>と急いで出ると「ホームランじゃないですけどタイムリーが出ました」と、またもや嬉しくなる報告。今度は右サイドの斉藤信介からセンター前ということだった。前日のツーベースといい、センターを中心とした強い打球は岡田の好調時に見られるものだ。
 その日は結局4打数2安打、4打点(1四球、2三振)の活躍で、1試合2安打も今季初。もちろん、岡田と言えばホームランだが、本来は広いヒットゾーンを持ったミート力のあるバッターでもある。身長より低くなっていた打率もどんどん上げていきたい。
 しかし、突然のゴジラの目覚めにはやはり何か「変化」があったのか。苦しみもがく中で、見えたもの、感じたものがあったとすれば…。いずれ是非聞いてみたい。

   

Tanaka「考えることはあっても悩むことはない」という田中将大(楽天)

あのスターにしても…

 しかし、秀和氏からの一報がなければ、今回は全く違う調子の原稿になっていただろう。前回の更新以降、岡田観戦ができず、その間各地を回っていたが、例えばその中で田中将大(楽天)に話を聞くことがあった。そこで田中はこんなことを言った。「考えると悩むのは違う。僕は考えはするけど悩まない」。その数日後、今度は中島裕之(西武)に話を聞いた。すると「僕はこれまで悩んだことなんかないですね。いつも何とかなるって思ってますから」と明るく言った。何も岡田のことを頭に置いていたわけではなかったが、スランプ時や思うにならない状況の時にどう考え乗り切るのか、というところに興味があり、その流れの中で出た答えだった。
 スランプと言えば、岡田が結構興味を持ってバッティングを見ている李承燁(巨人)も5月は相当苦しんでいた。15日にヒットを放つまで22打席ノーヒット。ある時、不振にあえぐ李にテレビで解説をしていた駒田徳広がこんなアドバイスを送っていた。
「調子が悪くなるとボールをよく見ようとして上から見過ぎる。そうなると突っ込みやすくなるからって今度、軸足に乗せようと意識しすぎると下半身が死んで使えなくなる。だからね、そういう時は、あごを少し上げて構えるんです。これをするだけで突っ込み、開きを抑えられることが結構あるんです」
 岡田に通じる話に思え、思わずメモを取り<次のレポートに入れよう>と決めていた。年俸6億5千万の巨人の大スターだって22打席もヒットを打てない時もある…という話を聞けば、まあ、多少は気も楽になるかなあ、と思ったり。
 と、こんな感じで「何もなければ」今回はあちこちで拾い集めたスランプ脱出法やそういった時の気の持ち方などについてのコメントを並べてみようか、と思っていた。

   

今後の上昇に期待

Okada04 センター方向へのいい打球が増えたのも明るい材料。オリックスのユニフォーム姿で登場するシーンを早く見たい

 しかし、最後にいいニュースが届いたお陰で、岡田ファンにとっても嬉しい原稿を書くことができた。初アーチの夜、どうしようかと思いながら岡田の携帯に連絡を入れた。迷ったというのは、ファームでの第1号にわざわざ連絡するのも…、という思いと、それでもやっぱりホッとしてるだろうし、何か「変化」があったのならそのあたりも聞きたい・・・、という思いの間で考えたから。
 ただ、かけてみると残念ながら留守番電話だった。というわけで短いメッセージだけを残して切った。ゆっくり話を聞くのはもう少し手応えを膨らませた時に。
 ただ、せっかく上昇気配が漂う時に初アーチの翌日から4日間、サーパスのゲームが組まれていない。ウエスタン5球団、イースタン7球団のいびつな構造がこういう間の抜けた日程を毎週作ることになるのだが、どうにかならないものか。
 まあ、ここでぼやいても仕方ないので、時間が取れればサーパスの練習なり、紅白戦なりをどこかで見に行きたい。そこでまた、さらなるゴジラ爆発のレポートをお届けしたい。

   

5月20日現在の成績
[ファーム] 24試合 86打数 17安打 打率.198 1本塁打 6打点 5四死球 24三振 0盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は6月1日の予定です。

2007-05-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第41回ー

Okada_top07051102 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。早いもので今回で41回目となりました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。しかし、飛躍が期待された2年目は開幕2軍スタートとなり、不調が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でレポートいたします。迷える2年目の大砲、岡田選手。果たして不振脱出となったのでしょうか?

      

状況に大きな変化なし

Okada_batting070511なかなか調子が上向かない岡田。入団以来、最大の不振に悩む

 いつものように前回の更新から10日が経過。しかし、岡田の状態は一向に上向かず、本人も岡田ファンにとっても我慢の時が続いている。
 前回以降の10日間でサーパスが行った試合は4試合のみ(うち1つは社会人との交流戦)。現在、ウエスタンリーグは5球団で運営しているため、毎週、どこのかのチームの日程が週の半ばに空くことになる。今回はサーパスが"その番"に当たったわけだが、4試合の結果を記すと次の通り。数字からも、起用法からもいまだ不振であることが伝わってくる内容だ。

5月2日 サーパス○5対0●広島(あじさい)
 相手先発は注目のルーキー前田健太だったが出場なし。

5月3日 サーパス●3対5○広島(あじさい)
 終盤に代打出場のみで1-0。

5月5日 サーパス△3対3△ソフトバンク(八代)
 4-1(ツーベース)。翌6日は雨天中止。

5月9日 サーパス○14対7○全播磨(神戸サブ)
 「4番レフト」で出場し4-1。

 この中で、9日の全播磨との一戦を観戦した。本来ならばバッティング練習からしっかり見たかったのだが、試合前に別の選手の取材があり、岡田の状態は確認できず。試合開始直前にネット裏下にある一室に入った。
 準備を整え待っていると、藤井康雄スカウトが登場。実は前日も阪神大学リーグの試合で藤井さんに会っており、「明日は岡田を見に行ってきます」と伝えていた。一方の藤井さんは、この日も大阪・豊中ローズ球場で同リーグの試合を途中まで観戦し、そこから神戸サブまでやってきたのだ。
 やはり、昨年までの愛弟子たちが気になるのだろう。もちろん、その筆頭が岡田だ。

        

Okada_batting03全播磨との試合。打席の雰囲気からも、厳しい状況であることが伝わってきた

決まらない「ボールを捉えにいく形」

 2人で注目した第1打席はレフトフライだった。相手の先発投手は海外でのプレー経験もある右上手・上村総一だったが、この日に限って言えば球に切れはなく、ネット裏のスピードガンの最速も136キロ。岡田が調子を上げるには格好の相手にも思えたが、真ん中高めのストレートに最後は詰まっていた。
 横の藤井さんも「う~ん」と唸り、「まだまだやなあ」とポツリ。一番に指摘したのは、これまでにも繰り返していた「球を捉えにいく形」が出来ていないこと。「間」と言ってもいいと思うが、本来なら球を捉えにいく流れの中に「ふっ」と決まる瞬間がほしいところで、今の岡田は言葉は悪いが「ダラ~」っと球を捉えにいってしまっている。
 さらに藤井さんの言葉を借りれば、「足を着いてから打ちにいかないといけないのに、着いた時にはもう上体が前に行ってる」。この試合では、岡田のあとの5番を打っていた吉良俊則の状態が良く、2人の打席を見比べるとのそのあたりの違いが確かに感じられた。
 ただ、1打席目の結果を見るまでもなく、打席に立ったところで僕は<今日も厳しいなあ>と苦戦を覚悟した。これだけ見続けていると、“打てそうな感じ”の日が段々とわかるようになっていたからだ。それは体の中から伝わってくる自信はもちろん、構えた時に、ボールを見逃した時の形、雰囲気から伝わってくるものだろう。
 2打席目はインコース低めにきたスライダーか真っスラを、体は前に行きながらゴルフの「寄せ」のような打ち方で拾いライト前に落とした。藤井さんは「悪くても4打席立てば1本は打つのが岡田のセンスなんだけど…」と言ったが、本来の当たりにはほど遠い内容だ。
 ところで、この打席の初球。岡田は真ん中高めのストレートに手をだすも三塁側スタンドへのファウルになっていた。シーズンに入ってから、こういう当たりをよく見る。体は前に流れ、開く。そして、バットヘッドが出てこない。さらにヘッドも寝ているから130キロ前後のストレートでもバットが負けてしまっていた。ゴジラのパワーがインパクトの瞬間にまったく伝わっていないのは明らかだった。
 続く3打席目。僕はビデオ片手に三塁側スタンドに上がり、横の角度から撮影した。結果は、初球ボールのあとの2球目を打ってピッチャーゴロ。やはりバット先端に見えたが、藤井さんに確認すると外のストレート。本人はもちろん捉えにいっているのだが、体がイメージ通りに動いていないのでバットの芯になかなか当たらない。

         

難しいです…

Okada_batting02「難しいです…」と悩む岡田。会話からも深刻さが伝わってくる

 5回裏が終わりグラウンド整備の時間に入ると、藤井さんのところへ大島公一バッティングコーチがやってきた。藤井さんの一言からすぐに話題は岡田へ移り、2人でいろいろと話込んでいたが、時間も少なく途中で話は終わった。しかし、聞いているだけでも難しい…。
 6回の第4打席。今度は藤井さんがスカウトとして普段から持ち歩いているデジタルビデオを手に三塁側スタンドへ。しかし、この打席はバットを振ることなくストレートのフォアボールだった。
 そして、最終5打席目は4番手右腕の外のスライダーを打ってショートゴロ。これもやはりバットの先で「バコッ」という鈍い音がネット裏に響いてきた。う~ん、明るい兆しがまだまだ見えてこない。
 試合後、引き続き練習が行われれば、藤井さんと一緒に観戦のつもりだったが、残念ながら寮へ戻ってウエートとのことだった。そこで、ネット裏の通路に立っていると、岡田がロッカールームから出てきた。通路におにぎりなどの軽食が置いてあり、それをつまみにきたのだ。僕はすかさず声をかけた。

谷上 で、どないなってんの?
岡田 はあ…。全然振れないんです。
谷上 ちょっと長いよなあ。
岡田 はい…。今は何をやっても上手くいかない感じですねえ…。
谷上 オープン戦までは結果もそれなりに出てたのが…。
岡田 こっちに戻ってきてそこから崩れて、そのままですねえ。
谷上 開幕以降はずっと低調なままやからなあ。
岡田 そうですねえ。(バッティングが)難しいです…。

      

悩む前に動くのも手

 こちらも何を話せば…、という状況で、なかなか言葉も弾まない。そこへ藤井さんがやってきて、一言、二言言葉を交わすと、狭い通路で即席バッティング指導が始まった。岡田も真剣な表情で耳を傾けていたが、10分程が過ぎた最後に岡田は再び「(バッティングは)難しいです…」とポツリ。バッティングにしろ、ピッチングチングにしろ「打つ」「投げる」という感覚を教えることは本当に難しい。岡田を追いかける中で改めて僕も感じさせられている。
 最近、社会人時代には都市対抗へも10度出場し、社会人と高校で監督経験もある元・スラッガーに話を聞く機会があった。その人は選手にバッティングを教える難しさを語る中でこんなことを言っていた。
「ある選手にヒザの辺りを振ってみろ、というと実際にはベルト辺りを振る。次に地面をこするように振ってみろと言うとやっとヒザの辺りを振る。わかりやすく言えば、それくらい頭の感覚とバットを通しての動きにはズレがある。だからズレがあることを理解した上で、バッティング指導もしないといけないし、選手も聞かないといけない」

Okada_defence070511とにかく一刻も早く不振脱出へのきっかけをつかみたい。積極的に動くのも手だ

 さらにこうも付け加えた。
「教える側が本来伝えたいと思っていたこととは違う解釈を選手がしたのに、それがいい結果を生む場合もある。そう思えば『何が合うかわからない』ってことなんですよ」。
 一見、無責任にも聞こえるが、この感覚は非常に大切だと思った。
 岡田も連日、いろんな人からいろんなことを言われ、相当頭も疲れていることだろう。こうなれば「100聞いて試した中から1つ合うものがあれば儲けもの」くらいの感覚でやってみるのも手かも。少なくとも<また違うことを言われた。う~ん…>となるより、積極的にアレコレ試していく方がスランプ脱出の出口にも近そうな気がする。あくまで外野席の気楽なアドバイスだが、そういう開き直りも案外大切かもしれない。
 
5月10日現在の成績
[ファーム] 20試合 71打数13安打 打率.183 0本塁打 2打点 3四死球 18三振 0盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は5月21日の予定です。

2007-05-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第40回ー

Okada_070501top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。これで第40回目のレポートになります。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。そして、今年は大きな期待を背負って1軍のキャンプにほぼフル参加しましたが、開幕は2軍スタートとなり、以後やや不調が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でお届けいたします。渾身のレポートをどうぞ!

   

取材予定の試合が雨で流れる

 今回で40回目を迎えたこのレポートは毎月「1」のつく日に更新している。つまり1日、11日、21日。そのため毎回の原稿は、早ければ掲載日前日の10日午後、遅くとも当日の夕方までには「野球小僧」編集部の担当者の元へ送っている。しかし、今回はその期限を5月1日の夜まで延ばしてもらうよう頼み、了解を得ていた。というのも、前回の更新以降、岡田取材の時間が取れず、ようやく1日のサーパス対広島戦(あじさいスタジアム)を見に行けることになったからだ。予定では昼から夕方までのゲームを観戦し、その後すぐに原稿をまとめ日付が変わるまでの更新を考えていた。
 ところが――。
 1日の朝に起きて見ると外は雨。前日から予報は悪かったが、外れることも少なくないので<それほど降らないだろう>と、思っていたらしっかり降っていた…。
 そこで今回は、窮地の策というわけでもないが、前回の更新日以降の岡田の戦跡を振り返ってみることにする。数字からだけしかわからないが、それでも十分「悩めるゴジラ」の窮状が伝わってくる。残念ながら岡田は極度の不振にあえいでいるようだ。

    

不振の続く岡田

Okada_defense_2開幕からの不振状態を依然として脱出できぬ岡田。復調のきっかけを早く見つけたい

4月21日 サーパス●2対10○広島(京丹後)
 3打数ノーヒット(1三振、1四死球)。広島投手陣は、先発の大島から佐竹、小山田、広池のリレー。昨年から対戦してきているいつもの顔ぶれ相手に音なし。打率は再び1割台へ…。

4月22日 サーパス○4対3●広島(京丹後)
 4打数1安打。この試合で今季2度目の1試合2ホーマーを放ち現在、ウエスタンリーグの本塁打部門でトップ(5本)を走るのがアレン。この時点での打率は岡田とほとんど変わらないが、存在感は示している。岡田にも早く一発がほしい。

4月25日 サーパス○4対0●大和高田クラブ(神戸サブ)
 4打数1安打、1盗塁。昨年、同時期に行われたニチダイとの交流戦で初めて「4番」の座に座った岡田はこの日も「4番レフト」で出場。初スタメンとなった履正社高の後輩、土井健大(9番DH)と揃っての出場だったが、結果はツーベースを含む3打数2安打の土井に一歩譲った形となった。

4月28日 サーパス○3対1●阪神(あじさい)
 3打数ノーヒット(3三振)。玉置隆、筒井和也、伊代野貴照、吉野誠、桟原将司、橋本健太郎のリレーの前に3三振。公式戦は6日ぶりで、この間にフォームの修正にでも取り組んでいるのか。その過程なのか、あるいは上手くいっていないのか…。さすがに3打席3三振は気になる。

4月29日 サーパス○7対5●阪神(あじさい)
 4打数1安打(1三振)。16安打と打線爆発の中でゴジラは火を噴かず。今シーズンはまだ2安打以上を打ったゲームがない。昨年はこの時期(4月25日の中日戦)に初の猛打賞も記録していたが…。どこかでスパーン! と抜けるきっかけがほしい。

4月30日 サーパス○14対5●阪神(あじさい)
 4打数ノーヒット(1打点、1四死球、1三振)。サーパス打線は連日の猛打で阪神投手陣を打ち込み、この日も17安打。スタメンの中でヒットがなかったのが実は岡田だけだった。同期の柴田亮輔にも一発が出るなど、他の選手が数字を稼ぐ中、どうしても不振が目に付いてしまう。この日の阪神先発は、小学校の時代から対戦してきた若竹竜士。中学時代には伝説の特大アーチを放つなど好相性を誇っていたのだが…。

   

明日を信じて

 ざっと振り返るとこんな感じだ。
 現在はウエスタン打撃成績で規定打席到達者26人中の24位(下にいるのは阪神・ルーキーの野原将志と何故かソフトバンクの城所龍磨)。前回の更新以降も、大和高田との交流戦も含む6試合で、22打数3安打と、まったく当たりが出ていない。
 実際の打席を見られていないのでいい加減なことは言えないが、本人も相当悩んではいるはずだ。今年はキャンプから1軍に帯同し、オープン戦で3割の結果も残した。終盤には一発も放ち、当然、昨年以上の手応えを感じて迎えたシーズン。それがファームのスタートでここまでつまずくとは、岡田自身考えもしていなかったことだろう。
 ただ、まだシーズンは1カ月を戦い終えたばかり。何事も沈んだまま、ということはない。今は浮上の時を信じて、バットを振るしかない。そしてその中で何かを掴んで欲しい。僕も似たことばかり書いているが、しかし、それ以外にない。

Okada_batting今がどん底ならばあとは上がっていくだけ。腐ることなくバットを振り続けて欲しい

 今、1軍で活躍中で、クリーンアップを打つことも出てきた下山真二などは、昨年はまったく出番が与えられず、ほぼ1年ファーム暮らしだった。それでも30歳を超えたベテランが腐ることなく、黙々と汗を流し続けチャンスが来る日を待った。岡田の観戦にいくと最後に1人残ってティーバッティングをしている下山の姿を何度か見たが、その取り組みが今の活躍につながっているはずだ。
 どの世界も同じだが、結局は「やったもの勝ち」。岡田には今が底と開き直って、ひたすらバットを振り続けてほしい。そうすれば必ず浮上の時は巡ってくる!

4月30日現在の成績
[ファーム] 18試合 66打数12安打 打率.182 0本塁打 2打点 3四死球 17三振 0盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は5月11日の予定です。

2007-04-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第39回ー

070421okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。これで第39回目のレポートになります。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。そして、今年は1軍のキャンプにほぼフル参加。ただし、2軍スタートになった開幕以降は、やや不調が続いています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でお届けいたします。渾身のレポートをどうぞ!

   

不調から脱出できぬ岡田

Okada_next不調に苦しむ岡田。昨年はあまり見られなかったスタメン落ちもたびたび見られるようになった

 岡田の調子が上がってこない。
 20日時点の打率は.208。「今年はこだわっていきたい」と語っていた一発もまだなし。何より打席での姿に悩めるゴジラの姿が伝わってくる。
 11日のゲームでは、ついにスタメンから岡田の名が消えた。昨年から調子の悪い時でもスタメンでほぼフル出場を続けてきた岡田にとって、これは1つの「事件」だ。
 さらに翌日も途中出場で2打席、13日は再び出場がなく、14日は途中出場で2打席…。前回、大島コーチを取材した際に聞いた「もう高校生とは見てくれないんだからね」という言葉を思い出したが、そんな岡田の一大事!? にかけつけないわけにはいかない。そこで15日、高校野球の春季大阪大会でPL学園&大阪桐蔭のゲームを見た足で夕刻のスカイマークスタジアムへと向かった。
 その日のサーパスは1軍戦に続く親子ゲーム。前の1軍戦が延長12回の熱戦となったために6時半の試合開始となったアップ前、ベンチ裏で岡田とバッタリ出くわした。

谷上 スタメン落ちは何か? 状態の問題?
岡田 う~ん、状態はあんまりよくないですね。
谷上 体は大丈夫?
岡田 結構、ボロボロです(苦笑い)。
谷上 腰にきてる?
岡田 いや、ちょっと前に肩(おそらく左)を少し痛めて、昨日の練習で足首をちょっとやって…。
谷上 そうなんか。いろいろキツイところやなあ。
岡田 今日もスタメンかどうか、まだわかんないです…。

           

070421okada_2basehits軸足に乗せる時間を作っていかに“間”を取ることができるか? 下半身主導で打つための最大の課題だ

下半身主動で打つことの重要性

 浮かない表情でベンチへ消えていった岡田だったが、スタメンが発表されると「6番ファースト」で出場。練習の合間にも左肩を伸ばす仕草が見られたように、やや気になるようだったがとにかく打席に注目した。
 相手先発は倉野信次。その第1打席は2-2から外角高めの完全なボール球を伸び上がるように打ちサードゴロ。当てただけの打球でスイングの形をどうこう言う以前のバッティング。残念ながら見極めの拙さも含め、状態の悪さが伝わってきた。
 <厳しいなあ…>と、ネット裏の記者席から試合を見ていると、そこへ「どうも!」と現れたのが藤井康雄スカウト。和歌山の高校野球を見た帰りに立ち寄ったということだったが、やはり岡田の状態が心配なよう。藤井さんはアマチュアの有望選手を撮影するためのビデオで岡田の第1打席を撮っており、それを見せてくれた。
 今は立場上、本人に直接指導することは控えているが、藤井さんから続けて聞こえてきたのは次のような言葉。

「踏み出した足が着いてから打ちにいかないといけないんだけどねえ。今は着く前に上が打ちにいってしまってるから」

「軸足に乗ってる時間が短い。アマチュア選手を見ていて一番感じるのは“ここ”なんですけど、今の岡田も十分乗らないまま打ちにいってるから“間”がない」

「左手が強くて上体で振ってるでしょ。上のことは完全に忘れて下半身で打つ。腰でボールを飛ばす感覚をもっと意識してほしいなあ。いいバターというのは下に引っ張られて上がついてくる。バットは振るんじゃなくて、勝手に振られるものなんですよ」

 岡田の第3打席を前にしたネクストでのスイングを見ながら「あの形から変えていかないと」とも藤井さんは言った。確かに言われてみると、上体が先行し、上でバットを振っている感じが僕にもわかった。岡田のバットは、下に勝手に振られるのではなく、上体、腕によって振られていた。
 藤井さんと注目した第2打席は2-2から外のストレートを打ち平凡なセカンドゴロ。結果ではなく、岡田本来のスイングが見られない。上体の力ばかりが目につき、「軽くミートしたようで飛んでいく」下からのパワーが感じられない。ちょうどソフトバンク打線の中では右と左の違いはあるが、松田宣浩も同じようなスイングをしていた。

         

1本長打は出たが…

Okada_runnerレフトへ二塁打を放った岡田。だが、筆者の見る限りまだまだ不調から脱出したようには見えなかった

 第2打席を見終えたところで「明日も朝から大学野球なんで」という藤井さんは席を立ったので、僕は一塁側ベンチ上のスタンドで観戦していた「岡田ファミリー」の元へ。しかし、父・秀和さんも「どうなんですかねえ…」という感じで心配顔。なかなか軽やかに会話が弾むという雰囲気ではなかった。

 ネット裏に戻って見た8回の第3打席。アレンの一発に続き打席に入った岡田は、3番手・竹岡和宏が1-1から投じた外角高めのストレートを捉えレフトフェンス直撃のツーベースを放った(最上段の写真)。あと1、2メートルで今季初アーチという打球は、ライン際でも切れない岡田らしさを感じる軌道でもあった。
 ただ、それまでの形を見ているだけに言葉は悪いが「たまたま」というふうに見えてしまい…。まだまだ、打つべくして打った当たりではなかった。

 それでも最後に1本見ることができて、<これが少しでもきっかけになってくれれば…>と思いながら帰り支度をしていると、サーパス打線が活発に打ち出した。
 <もしかすると、もう1打席あるかも…>と、帰り支度の手を止めて見ていると、9回裏、2人出れば岡田の第4打席が回ってくるという状況で、1死からまず由田慎太郎がヒット。牧田勝吾は倒れたがこの日、2ホーマーのアレンが猛打賞となるセンター前ヒットを放ち岡田に回した。前回の観戦時は岡田の前で攻撃が終わったが、今日は最後につながった格好となった。

 ソフトバンクのマウンドは4番手の佐藤誠。最後にいい形を見て帰りたかったが、結果は2-1からインローへのカットかスライダーにバットが合わず、空振りの三振。ワンバウンドのボールを振り終わったあと、岡田の体は前に流れ、そのまま4、5歩打席を飛び出した。完全に体が「いって」しまっていた。
 うつむきながらベンチへ戻る岡田の姿からは深くなりつつある悩みが伝わってきた。いろいろ思うこともあるだろうが、藤井さんの言葉を本人に聞かせたい。「上を忘れて下で振る」「バットは振るものではなく振られるもの」。

Okada_swing聞き手の左手が強くなってしまう今の岡田のスイング。味方の打線に火がついて回ってきた最終打席もあえなく三振に倒れた

 前回、大島コーチが言っていた気持ちの面ももちろん大事だ。気持ちが上がってくることで、練習への取り組み、意識が高まり、技術の習得につながっていくことはある。
 またその一方で、常に技術を求め、漠然とではなく「今、何が良くて何が悪いのか」をしっかり確認しながら進んでいくことも現状からの脱出につながっていくはず。同じ凡打でも昨日より少しでも内容のある凡打を目指して、そこから上がっていってほしい。

※15日以降はスタメンに名を連ね、各1安打づつ。現在5試合連続安打中だが、岡田への期待はこの程度で満足するものではない。

4月20日現在の成績
[ファーム] 13試合 48打数10安打 打率.208 0本塁打 1打点 0四死球 11三振 0盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は5月1日の予定です。

2007-04-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第38回ー

070411okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。これで第38回目のレポートになります。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。そして、今年は1軍のキャンプにほぼフル参加。開幕は2軍スタートになったものの、いよいよ一軍定着に現実味が出てきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でお届けいたします。渾身のレポートをどうぞ!

   

今季公式戦での岡田を初観戦

「さっぱりですねえ…」
 4月7日の昼前。西京極球場で関西学生野球(大学)の開幕戦を観戦していたところ、岡田の父・秀和さんから電話をもらった。別件での連絡だったが、ヤフードームで午前中に開催のソフトバンク対サーパス戦を観戦中ということだった。岡田の状態を尋ねたところ、返ってきたのが冒頭の一言。確かに数字を見ていても岡田の出足はスローのようで、ホームランもまだ出ていない。
 そんな岡田の状態を確認すべく、10日の阪神戦でようやく今シーズンの公式戦初観戦が実現。期待を胸に鳴尾球場へ向かった。

070411okada_difense_1試合前の岡田の表情は明るかったのだが…

 試合前の練習から岡田の表情は明るく、動きも悪くない。フリーバッティングで捕えた時の打球も相変わらずの迫力。ただ、捕える確率にまだまだバラつきがあった。時に差し込まれ、時にラインドライブがかかり、時にポップフライとなり…。現状ではきれいに捕える確率は10球中5球程度。この確率がまず1軍のレギュラークラスのように8割から9割に高まっていかなければ…。ティーバッティング時に指導していた大島公一バッティングコーチに現状を聞いた。

「技術どうこうより、岡田にはもっと気持ちを表に出してほしい」というところから、話は始まった。岡田の場合、どうしても結果が出てこないとそう言われてしまうタイプ。特に現役時代165センチ程の体で、法政二高、法政大、日本生命、近鉄、オリックスとレギュラーを張ってきた大島コーチは「気持ち」を全面に出してプレーしてきた人。どうしても「もっと表に出せ、もっとガムシャラに」と思えてならないのだろう。一方で気になるのはやはり技術面。特に昨年から試行錯誤を繰り返すタイミングについても尋ねたが…。

Oshimaokada試合前、大島コーチから指導を受けながら練習に励む岡田

大島 タイミングなんていうのは、自分で掴んでいかんとしゃあないからね。足を上げる、上げないなんていうのもどっちでもいい。上げなくても、ステップなしでも打つ人は打つんだから。それに今、こっちがいろいろ言って考えながらやってる本人を迷わせてもいけないしね。

 まだ僕も大島コーチとはじっくり話していないのでよくわからないが、技術的なヒントを与えてくれることを期待したい。まして大島コーチは球界でも随一の打撃指導者として定評のある中西太氏の門下生でもある。是非、持っている技術を岡田に伝え、この怪物を目覚めさせてほしい。

   

鳴尾浜では中村泰広のスライダーに翻弄される

 さて、試合に目を向けると阪神先発は左腕の中村泰広。1軍経験も豊富なサウスポーに対し、結果は3打数1安打も残念ながら内容は今ひとつ。
 第1打席。ネット裏から見たところ、おそらく5球中4球がスライダーだった中村の投球に対し、空振り2つを含め終始対応できていない。しっかり“間”が取れておらず、体は前に流れ、開きも、見切りも早く見えた。再び軽く足を上げて打っているが、そこで軸足に乗る感じがほしい。そうすれば同じ空振りでも次に手元を狂わせるような迫力が出てくるように思うのだが…。最後は真ん中低めにきたスライダーを打ち、バウンドして1、2塁間を抜いていくライト前ヒット。ただ、当たりは緩くランナーが1塁にいなければファーストゴロの打球。とても本人も納得できるものではなかっただろう。
 続く第2打席。ストライク(外スライダー見逃し)、空振り(外スライダー)、ボール(外寄りストレート)のあと、外のスライダーを空振りして三振。この日の中村は全投球の7割程度がスライダーやカーブに見えたが、岡田に対してもその傾向が顕著だった。
 3打席目。ファウル(外ストレート)、ストライク(外ストレート)、ボール(真ん中高めストレート)のあと、最後はまたもや外のスライダーを打ってレフトフライ。この当たりはタイミング的には悪くなく、芯近辺でも捉えてはいたが、腰が逃げていた分、打球に力が伝わらず。いい時の押し込みがあればあの左方向の打球がもうひと伸び、ふた伸びしていったはずだが…。

070411okada_batting鳴尾浜で行われた10日の阪神戦では、左腕・中村のスライダー中心の投球に崩される場面が多かった

 たまたま一緒になったライターの服部健太郎氏からは「左は苦手やったっけ?」と一言。決して得意ではないが、この日の対応は昨年の序盤に戻ってしまったかのようで左のスライダーに翻弄されていた。服部氏はさらに「ボールに集中し切れてないような気がするなあ」とポツリ。確かに打席に立った時から伝わってくるムードがなく、相手投手のテンポに合わせてスイングしているようにも見えた。いい時の「いらっしゃい」という雰囲気が感じられなかった。
 そして、1対1で迎えた9回表。1人出れば岡田の第4打席が回ってくるところで、一死から牧田勝吾がデットボールで出塁。<よしっ!>と思ったのも束の間、直後に代走柴田亮輔が牽制で刺され、続く田中彰もセカンドゴロ。試合はそのまま規定により1対1の引き分けに終わった。開幕時の4番からこの日は7番。この降格も響いた格好だったが、今季初観戦はモヤモヤッとした中で終わった。

   

張りつめた空気のままバスへ直行

 試合後、サーパスの選手たちは外野でダッシュ、スクワットなど下半身強化のメニューを約40分。住友平新体制となり、サーパスの練習量がかなり増えたという。久保マネージャーに聞いても「時間が長くなりました。試合がない日の練習は特にそうですね。練習のあと紅白戦、そのあとにまた練習という感じで、選手はきついでしょうね」。
 ただ、選手は疲れもたまっているだろうが、このキツイ練習を乗り越えた時に、掴むものが何かあるはず。ソフトバンクや中日あたりのキャンプを見た時にもオリックスとは違う「量」による迫力を感じたし、成功する選手には「理屈ではなく徹底的に体をいじめる時期がある」ともいろんな選手を取材してきた中で実感してきた。岡田にも今の練習が身を結ぶことを信じて前向きに頑張ってほしい。

 さて、その練習も終了。岡田はアレンに続き、勢いよく走って戻ってくるとそのままベンチ裏へ直行。自らへの不甲斐なさからなのだろう、表情は硬いままで声をかける雰囲気はなし。
 その後、球場前で“出待ち“をするファンの近くで僕も一応待機することに。何を聞きたいということはなかったが、何か聞ければ、という感じで待ったが、バックを抱えて出てきた岡田の表情は硬いままで、ファンも声をかけるのをためらうような雰囲気。結局、その足早にバスへ乗り込んでしまった。そんないつもと違う空気からも、岡田の苛立ちが伝わってきた。

Okada_training調子の上がらぬ岡田。試合後のトレーニングをこなすと厳しい表情でバスに乗り込んだ

 よく1軍のゲームで「今日はノーコメント」という選手の声を耳にする。実際には選手は何も言っておらず広報が作っている場合がほとんどなのだが、さしずめこの日の岡田はそんな感じ。唯一聞けた当日の肉声は試合前のベンチでの一言のみ。スポーツメーカー担当者か何かの人に「どう?」と声をかけられ「全然です」。確かに今の状態ではそれしかないのだろう。また、上昇の兆しが見えてきた時にしっかりしゃべってもらおうと思う。

4月10日現在の成績
[ファーム] 7試合 29打数5安打 打率.172 0本塁打 1打点 0四死球 6三振 0盗塁
 

(取材・本文/谷上史朗)

   

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は4月21日の予定です。

2007-04-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第37回ー

070401top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。37回目のレポートをお届けいたします。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。そして、今年は1軍のキャンプにほぼフル参加。開幕は2軍スタートになったものの、いよいよ一軍定着に現実味が出てきました。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線でお届けいたします。渾身のレポートをどうぞ!

         

開幕後の岡田取材は断念

 3月24日にプロ野球パ・リーグが開幕。ここまで、オリックスは近年にない滑り出しを見せている(31日現在4勝2敗)。
 一方、サーパスは、1軍同様24日開幕の予定だったが、「あじさいスタジアム」での中日戦は雨で中止。さらに翌日も続けて中止となり、27日に由宇で行われた広島戦が初戦となった。
 翌日をあわせての2連戦を5対0、6対2の連勝スタート。光原、中山が先発で好投を見せこちらも幸先のいいスタートを切った。
 その中で、初戦は「4番ファースト」、2戦目は「4番レフト」で出場した岡田は、ともに5打数1安打。いきなりの爆発とはいかなかったようだが、2戦目のヒットはライト前へのタイムリーでもあり、まずは無難な滑り出しといったところか(?)
 3戦目となる31日は「あじさいスタジアム」へ戻っての阪神戦。何とかこれを見たかったが、選抜高校野球大会の取材で大阪桐蔭の準々決勝と重なってしまった。
 大阪桐蔭のゲームは11時からで、サーパスは12時半から。甲子園とあじさいスタジアムは、電車とタクシーを乗り継げば最短で1時間10分ほどなので、甲子園のゲームが2時間少々で終わり、即あじさいスタジアムへ向かえば岡田の1打席、運がよければ2打席くらいは見られるかも、と淡い期待を抱きながら大阪桐蔭対常葉菊川のゲームを観戦。しかし、試合後の取材を終えた時には14時を回っており、残念ながら移動は断念。甲子園→あじさいスタジアムという流れで、中田翔→岡田のアベックアーチでも見れたら…という淡い期待も夢と消えた。
 というわけで、岡田観戦は次回に持ち越し。現状レポートはそこでたっぷりお届けするとして、今回は、岡田と共にオリックスのこれからを担う若手2選手について書かせてもらうことにした。

        

Sakaguchi長いトンネルを抜け、今年大抜擢された坂口

 1人は、今年一気に好調オリックスの核弾頭となった感のある坂口智隆。
 元々は兵庫の神戸国際大付の出身で、3年時はエース&センターで3番を打っていた。が、最後の夏には野手としての能力が俄然際立つようになり、一目見てイチローをイメージさせるバッティングスタイルとアグレッシブな走塁には華があった。
 その後、2002年秋のドラフトで近鉄に1巡目指名を受け入団。1年目からファームで3割近い成績を残したが、順調だったのはそこまで。一言で言えば伸び悩んだ。
 一昨年には新井コーチ(ソフトバンク)の元で大掛かりなフォーム改造にも取り組んだが結果は出ず。その頃はイチローばりの伸びやかなハイフィニッシュは消え、打球の勢いもすっかりなくなり、完全に輝きを失っていた。
 僕が取材をしたのがちょうどその頃。「将来の夢はシャラポワと結婚することです!」と「らしい」ジョークを飛ばしつつ、「何とか1軍に残りたいんです。このへんで何とかしないと本当にヤバイんで…」と危機感が募る心境をストレートに伝えてきた。

 昨年はフォームを元に戻し、ファームでは安定した内容を見せたが、1軍での出場はわずか5試合。過去4年で放ったヒットは8本しかなく、年々置かれるポジションは厳しくなっていた。それが今年、オープン戦で26打数11安打と爆発し、一気に開幕スタメンの座を勝ち取ったのだ。

Okada_sakaguchi坂口(左側)は5年目の23歳。今年ようやくおとずれたチャンスを、何としてもモノにしたい

 きっかけとなったのは監督の交代。オリックス・コリンズ監督は、キャンプの時から坂口のことを「私の好きなタイプの選手」「1番打者の理想に近い」と口にしており、新しい指揮官との出会いが何より大きかった。このあたりの背景は、1994年に仰木の抜擢によって颯爽とデビューしたイチローを思い出させる。
 オープン戦最終戦で一発を放って開幕1番を決定付けた試合後、ベンチ裏通路で記者に囲まれている坂口の言葉を聞いた。

坂口 今年が最後のチャンスというくらいので気持ちでやってるんで。結果を残していくしかない。それだけです

 シーズン開幕後は、初打席でヒットを打ったあと13打席ノーヒットでスタメン落ちも経験した坂口だったが、29日には3安打。当然この先も厳しい戦いが続くだろうが、その中でどんな活躍を見せてくれるのか。非常に楽しみだ。

            

Kira3度の手術乗り越え台頭狙う吉良

 もう1人の期待の星は吉良俊則。こちらはまだサーパスで出場中だが、今年に賭け奮闘中だ。吉良には03年のドラフト前に特集取材のため大分に飛んでたっぷり話を聞いたことがあり、思い入れがある。
 柳ヶ浦時代は岡田の通算ホームランより1本少ない54本を記録したスラッガーとして大いに期待され、ドラフト2巡目で近鉄に入団。しかし、かねてから不安のあった左ヒジの手術をプロ入り後に3回行い、初めの2年はリハビリに暮れている間に終わった。昨シーズンも、前年秋に3度目の手術を行い、当時の藤井康雄バッティングコーチ(現スカウト)は「今年は代打くらいでしか出場は難しいんじゃないか」と話していた。
 しかし、本人の懸命な取り組みでシーズン途中からはファーストの守備にもつけるようになりファームで65試合に出場。1年目が10試合、2年目に至っては出場ゼロだったことを思えば大きな前進だった。

 開幕直前にその吉良と少し話す時間があった。快方には向かっているとはいえ、左ヒジはまだまだ万全ではなく、イメージしたバッティングができない歯がゆさを伝えてきた。
「まだ完全に(ヒジが)伸び切ないんで、飛距離がいい時に比べたら10㍍以上落ちてる感じなんです」「1軍クラスの真っ直ぐに対応できるようにならないといけないんですけど…」
 吉良のバッティングは本来、うしろ手の押しが強く、それが飛距離にもつながっていた。ところが手術の影響でヒジが伸び切らない、筋力もまだ戻りきっていない、ということで、最後の押し込みが以前のよう効かない。
 ただ、初めの2年は野球らしい野球をしておらず「それを思ったら全然。もし、去年、あそこまで投げられるようになってなかったら育成選手になってかもしれなかったですから」と、明るくも伝えてきた。怪我でプレーできなかった時には、やはり覇気がなく、柳ヶ浦時代に感じた朗らかさが見えなくなっていたが、表情は完全に戻ってきた。

Okada_kira21歳、4年目の吉良は、強打が売りの左打ち。岡田と役割が近い選手だけに、先輩であると同時に最も身近なライバルだ

 まだ十分ではないものの、外野の守りにつけるようになり、サーパスの開幕戦には「6番レフト」で出場。教育リーグでは4番も打った。ひとまず、ここまできた。あとはここからということだろう。

 吉良にとって岡田は同じ左で打線の中で求められる役割も近い。ポジションも重なる。いわば直接的なライバルだ。それだけに、互いの存在が気になるのは当然として、僕の願いは坂口も含め3人の名がスタメンに揃い、強いオリックスを作っていってくれること。1番坂口、3番吉良、4番岡田なんて並びを想像しただけで胸が躍ってくるし、これにもし来年、中田が加わるようなら、さらにうれしい悩みになるだろう。
 とにかく、彼らのような若い世代が中心となり、オリックスの明るい未来を作ってほしい。そのためにも、岡田のこれからの頑張りに期待していきたいと思う。

3月31日現在の成績
[ファーム] 3試合 14打数2安打 打率.143 0本塁打 1打点 0四死球 2三振 0盗塁
 

(取材・本文/谷上史朗)

   

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は4月11日の予定です。

2007-03-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第36回ー

070321okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で36回目を迎えております。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、ついた呼び名は「ナニワのゴジラ」。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積み、日々その技術に磨きをかけました。

 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。
 前回の朗報から一転、開幕1軍からはずれてしまった岡田の直近のコメントがとれたようです。では、渾身のレポートをどうぞ!

 

開幕1軍ならず

 岡田の2軍開幕が決まったという報道が出た21日。僕は午前中からサーパス対大阪ガスの練習試合が行われた神戸サブグラウンドにいた。
 別件で試合後に清川栄治ピッチングコーチへの取材があったためだが、試合前の練習開始に合わせ球場を訪ねたのは、もちろん岡田観戦のためだ。おそらく、その日からサーパスに合流するだろうということで、不本意ながらも再出発の姿を確認しに行ったというわけ。

070321okada_and_oishiオープン戦では北川博敏との併用ながら1軍で起用され続いていた岡田。だが開幕は2軍スタートが決定した(右は大石大二郎ヘッドコーチ)

 ところが、グラウンドをいくら探しても岡田の姿が見当たらない。もしかすると、1軍メンバーにアクシデントでも発生し、急転、残留になったのかも…。そんな思いが頭をよぎった。ちなみにその日の1軍は京セラドームで紅白戦を行う予定。しかし、ネット裏下にある関係者席に顔を出すと、すぐに事実は判明した。岡田は今日まで1軍練習に参加し、明日からサーパスに合流するのだ、と…。

 というわけで僕は岡田のいないゲームをゆっくり観戦したが、その合間に近くにいた酒井勉スカウトと岡田の話をした。現時点での酒井さんの岡田評は端的に言えば「成長はしているけど、まだいくらでも攻めどころがある」。特に「凡打する時の形がねえ…」と続けた。

酒井 たとえ凡打に終わっても、ピッチャーに「コイツ雰囲気があるな」「少し甘く入ったら次はやられる」と思わせるようなものがないと。その点、まだ今の岡田は打てるゾーンがかなり限られているし、相手に余裕を持たれるバッターですよね。

 前回の日記でも少し触れたが、例えば、勝ちゲームで出てくる一線級のピッチャーとの対戦では、その内容に物足りなさを感じたのは確か。オープン戦で打数はそれほど多くないにしても3割2分を打ちながら、1軍漏れとなった今回の決定もそのあたりに大きな要因があるはずだ。
 しっかり振っての凡打と翻弄されての凡打ではやはり違う。対応できるコース、対応できる攻めのパターンを1つずつ増やしていくことがこれからの課題ということだろう。

  

070321okada青濤館で明日からサーパスに合流となった岡田に偶然出会う。即興で話を聞いたときの1枚

青濤館にて、岡田に遭遇

 さて、ゲームは7対1でサーパスが勝ち、試合後の選手たちは軽いトレーニングから個人練習へ流れていった。僕の目当ての清川コーチは、そのあとさらに首脳陣のミーティングに入るということで取材はそのあとに。そこでしばらくグラウンドで練習を見学したあとは取材場所に指定された合宿所「青濤館」へ移動し、館内で待機することにした。
 とは言っても、部外者が気楽に時間を潰せる場所はなく、結局は隣接する室内練習場の脇にあるベンチで1時間余り待った。しかしお陰で吉良俊則、横山徹也、勝(長田勝)といった若手選手がマシン相手に黙々と打ち込む姿を目の当たりにし、彼らのサバイバルな日常を垣間見ることもできた。

 その後、清川コーチへの取材内容を確認していたところ…。右横から「アッ」と聞き覚えのある声が聞こえた。ふっと顔を向けてみると、そこに私服の岡田が立っていた。京セラドームでの紅白戦を終え戻ってきたところだった。
 合宿所と室内練習場は隣接しており「もしかして…」と密かな期待はあったが「そう上手くはいかんよな」と諦めていたところでバッタリ。岡田は誰かを探していたようで急いでいる風でもあったが、この偶然を逃してなるか、と矢継ぎ早に質問をぶつけた。

谷上 今日はこっちかと思って来たんやけど。
岡田 今日までは向こうで明日からです。
谷上 今回の結果については?
岡田 (最近の起用などから)ある程度、予想みたいなものはありました。監督からは下で経験を積めと言われました。
谷上 キャンプから1軍に帯同して「足りない」と一番感じたところは?
岡田 えー…。いろいろあり過ぎますね。
谷上 1軍レベルのピッチャーにどう対応するか、という部分も。
岡田 確かにそうなんですけど、やっぱりそういうピッチャーを打つには、打席に立って経験していくしかないと思うんで。そこが…。
谷上 当然、オープン戦でももっと打席に立ちたかったし、しがみついてでも1軍に残りたかった。
岡田 そうですね。
谷上 ちなみに今日の紅白戦の結果は?
岡田 ヒットは出なかったですけど、感じは全然悪くなかったです。
谷上 明日からは、また、サーパスで、ということになるけど、今度はもっと際立つ数字も残して…。やっぱり岡田はホームランやな。

070321okada_battingこの2ヶ月間で得た経験と悔しさを胸に秘め、岡田2年目のシーズンが始まろうとしている

岡田 今年はそこにこだわっていきます。明日からまた頑張ります。

  

今回の結果を次の機会へ

 最後の言葉はいつも似た感じになるが、実際それしかない。前を向いて頑張っていくしかない。そう言えば、このあとに取材した清川コーチが言っていた。「伸びる選手と伸びない選手との違いは、悔しさをどれだけ感じられるか」だと。
 確かにその通り。その点、キャンプから1カ月半余り続いた競争の中で、岡田もこれまで以上に数々の悔しい思いを味わったはず。もちろん、その最たるが最後の最後で1軍枠から漏れた今回の結果だ。
 岡田にはこの悔しさを忘れようとするのではなく、ごまかそうとするのでもなく、「コレが今の実力」と、大いに味わってほしい。そして今度こそ、誰をも納得させる成績を残し、力をつけ、1軍へ這い上がっていってほしい。引き続き、期待している!

(取材・本文/谷上史朗)

   

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は4月1日の予定。岡田選手と同様、こちらも2年目に突入です!

2007-03-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第35回ー

070311okadatop 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。35回目の今回は朗報になりそうです。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、ついた呼び名は「ナニワのゴジラ」。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積み、日々その技術に磨きをかけました。

 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。岡田選手、オープン戦ながらついに一軍で待望の一発が出ました。では、渾身のレポートをどうぞ!

     

待望の一発!

 3月10日の夜の話。取材から戻ると、早速CS放送のスイッチを入れ、巨人対オリックスの生中継にチャンネルを合わせた。試合はすでに7回裏に入っている。
 実は、テレビをつけるまでの間、僕にはちょっとした不安があった。オープン戦の序盤はまずまずの感じで乗り切った岡田が、ここへきて出番が減少。坂口智隆、由田慎太郎らが活きのいい活躍を見せる一方、オープン戦の残り試合も少なくなる中《ファーム落ち…》の不安が頭から消えなくなっていたからだ。
 そこで、岡田の姿を探しながら画面に集中すると、「キュイーン!」の鳴き声に続き「ダダダ、ダダダ、ダダダダダダダッ…」の音楽。文字ではわかりにくいが、そうゴジラのテーマが流れ、ネクストから打席へ向かう岡田の姿がアップに! 杞憂だった。

Okada_finish_2一軍の試合で待望の一発が出た岡田。勝負を決める価値ある3ランだった

 この夜は北川に代わって途中出場し1打席目はセカンドフライだったとか。2打席目となったこの打席。一、三塁にランナーを置いた場面で左腕・上野貴久の初球、甘く来たストレートをとらえると、ライトフェンスにワンバウンドで達する痛烈なタイムリーツーベース。思わず横で見ていた嫁さんと2人で「ヨッシャー!」と雄叫びを上げてしまった。
 久しぶりに見る岡田は、再び足を上げていた。この一点を見るだけでも試行錯誤が続いていることはわかったが打席の雰囲気にはボールを呼び込む「いい感じ」が出ていた。
 そして、クライマックスは8回裏の第3打席。吉武の1-2からの外寄りストレートを一閃! 打球はセンター右へグン、グン、グンッ。テレビの前で「イケッ、イケッ、イケーッ」と叫んでいると、打球は糸を引くような弾道のままスタンド前列へ! 足早にダイヤモンドを駆ける岡田に続き、忙しく手を叩くコリンズの姿が映る。みんなが、何より本人が待ちに待っていた待望の一発だ!

 その後もカメラは何度も試合終了まで岡田の姿を映していた。守っていても自然と沸いてくる喜びを抑えるに必死という感じ。ガムを噛む口元が随分せわしく動いていたのもそのせいではなかったか。初々しい。
 解説の野田浩司氏は「去年とは見違えるほど成長しています」と言っていたが、一変ではなく、一歩一歩積み重ねてきた結果。その取り組みが、最後に打球を一伸びさせフェンスを越えさせたのだろう。夜に留守番電話にメッセージを入れた。
「とりえずよかった。明日は観にいくので、できればもう一発」

      

オリックス対ヤクルト in 京セラドーム大阪

 というわけで10日は、朝の9時半過ぎに京セラドームへ到着し、練習からしっかり観戦した。岡田の表情は…やはり練習中から随分明るい。一発の効果が感じられた。バッティング練習が終わりベンチ裏へ戻ってきたところで岡田を捕まえた。

谷上 1本出てとりあえずホッとした?
岡田 そうですね。
谷上 調子が上がってきてた? 波がまた戻ってきてた?
岡田 どうなんですかねえ。まだなんとも。
谷上 昨日はテレビやったけど、打ちそうな雰囲気が出てたで。
岡田 (ちょっと嬉しそうに)そうですか。
谷上 昨日は巨人戦。李承燁もいていいイメージがもてたとか。
岡田 ちょっとあったかもしれないですね。
谷上 で、今日やな。
岡田 はい、今日ダメやったら昨日はたまたまやったって思われますから。
谷上 今日、もうひとつアピールして関東遠征に同行して…。
岡田 そうですね。でも、今日はなんでかDH(5番)なんですよ。なんでなんですかねえ…。

 ちなみに先発のファーストには相川(4番)。ファーストでの守りで言えばひいき目ではなく、間違いなく岡田が上。首脳陣の意図はわからないが、同じポジションで競わせ、いろんな角度から見て判断していくということなのだろう。しかし、《なんで…?》という部分を持つことはいい。それくらいの自信と思いがないと、ということだ。

      

Okada_batting070310真価が問われた翌日。一線級の投手に苦心しつつも、最終打席で次につながるヒットを放つ

翌日は快音響かず

 試合前のグランドは、前日に発覚した西武の裏金問題のせいで落ち着きがなかった。チームには同行していない選手会会長・宮本慎也への電話取材を試みる記者、古田敦也監督にコメントを求める記者…。プレスルームも「そんな話題」で持ちきりだったが、僕の興味は球界を揺るがす大問題よりも、今日の岡田。
 と、13時に始まったゲームへ集中したのだが…。

 第1打席は2回1死の場面。この日抜群のピッチングを見せたヤクルトの新外国人・グライシンガーに翻弄された。この打席は三塁側から見ていたので球種の判別は難しかったが、2つ空振りのあとの2-1から最後はインローの真っ直ぐを見逃し三振。
 続く第2打席は5回の先頭。ここからピッチャーがゴンザレスに代わったが、昨年後半だけで6勝を挙げた投手だけに相手も手強い。2-1からインローのスライダーかカットボールに空振り三振。満足に振らせてもらえなかった。
 そして第3打席。7回二死から引き続き相手はゴンザレス。今度は初球の真ん中低め、138キロのストレートを高々と打ち上げセカンドフライ…。全力で2塁ベース手前まで走ったが、ベンチへ戻る姿はさすがにガックリ。僕も《今日はここまでか…》と思ったが、まだツキが残っていた。味方打線が8回に走者を4人送り、9回にもう1打席が回ってきたのだ。
 その最終第4打席。1死一塁でマウンドには館山昌平。右のややサイド気味に投げてくる投手なのでこれまでの2人の比べれば対応しやすいはず。このまま終わると《翌日からの関東遠征メンバーから外れる可能性も…》との思いも浮かび、起死回生の一発を祈った。
 初球は131キロの外からのスライダーでストライク。2球目。今度は少し内に入ってきたスライダーをとらえに行くと、打球は高いバウンドで一ニ塁間を破り転がっていった。当たりは決して良くなかったが最後に1本出るかでないかは絶対に違う。こういうしぶとさは間違いなく次につながるだろう。

        

サバイバルの日々は続く!

Okada_defence開幕まであと2週間を切った。生き残りをかけた岡田の奮闘はむしろこれからだ

 ところが、そのあとがいけなかった。続く下山のセンター前タイムリーで2塁走者の相川がホームインした場面。岡田はここで2塁を回ったところで一瞬スピードを緩め、三塁の松山コーチを見た(ここでの指示は確認できず)。そこから再びサードへ向かったが、送球をカットした一塁・武内から三塁へボールが渡り楽々アウト。直後に日高にもタイムリーが出て1点差に迫っただけに結果的にも痛いミスだったが、何より思い切りの悪さがまずかった。前にも書いたようにコリンズ野球の一番の特徴は積極的な走塁なのだ。「ここへ飛んだら、こう走る」というイメージが岡田の中にあったかどうか。試合前には走塁練習も繰り返していたが、常に細かく実戦を想定してのものが求められる。
 今日の失敗もまた次に生かせ! 以上が今日の観戦記。

 オープン戦の残りもわずかとなり、いよいよシビアな絞込みに入っていく。本人にとっては息の抜けない戦いが続くが、今の1日、1日がまた岡田にとっての何よりの経験になっているはず。履正社時代も1年から4番を打ち、昨年もファームでほぼスタメン出場がほぼ約束されていた。オーバーではなく、今が岡田の人生の中で最も「負けたくない!」という気持ちが出てきている時ではないだろうか。
 ここからどういう結果が待っているかはわからないが、このサバイバルの中で確実にゴジラは育っている。まさにこのタイトル通り「奮闘中」。テーマソングの中で響くゴジラの鳴き声にさらなる迫力が感じられるようになる日を楽しみに、この先も岡田の動向に一喜一憂していきたい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は3月21日の予定です。

2007-03-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第34回ー

Okada070301 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回が34回目です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、ついた呼び名は「ナニワのゴジラ」。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積み、日々その技術に磨きをかけました。

 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。今回は、岡田選手を指導するディーバスコーチについての話のようです。渾身のレポートをどうぞ!

   

Okada_dash今季はキャンプを全て1軍で過ごした岡田。いよいよ、オープン戦モードに突入する

プロ野球はオープン戦へ突入

 宮古島から高知へと続き行われたスプリングキャンプが2月27日に終了。見ている者にとってはアッという間だが、初めて1軍で過ごした岡田はどんな感想を持っているのだろう。
 連絡を入れようかと思い携帯電話を手に取ってみたが、今回はちょっと遠慮することに。生き残りをかけ必死に闘っているこの時に「調子はどう?」と聞くのもなんだし、かといって何を聞けば…と思っている間に、結局、かけられなくなってしまった。また、次回以降、球場での姿をしっかり確認した上で話を聞かせてもらおう。

 というわけで前回のキャンプ取材以降、オープン戦はまだ生観戦できていない。ただ、テレビ中継を通して見たバッティング、報道が伝えてくる岡田本人のコメントなどから、まだまだ納得できていない様子が伝わってくる。課題であるタイミングの取り方については、「これ」というものはつかめていないようだし、加えて前回の取材時に聞いた「まだ(実戦で)一発がでていないんで」という部分でのモヤモヤもあるはず。岡田にとっては、やはりホームランが何より。一発が出れば、気分もグッと乗って、いろんなことも変わって来そうに思うのだが…。

     

Dibus今年からコリンズ監督とともに来日したディーバスコーチ。果たして岡田にとって運命的な出会いとなるか?

ジョン・ディーバスコーチの存在

 そういった状況ではあるが、もちろん引き続き岡田に対する期待は大きい。中でも、前回も触れたとおり、首脳陣から岡田を育てようという姿勢を感じられることが心強い。その筆頭が、身長190センチ、体重100キロ超の巨体で、常に岡田のそばに立つジョン・ディーバスコーチだ。そもそもディーバスコーチとはどんな人物なのか。略歴をざっと示すとこんな感じだ。

ジョン・ディーバス(Jon Debus)

1958年、アメリカ・イリノイ州出身。
 1980年にロサンゼルス・ドジャースからドラフト21巡目指名されプロ入り。以降、89年まで10年間、外野手、捕手としてプレーするがメジャー経験はなし。マイナー通算、927試合の出場で打率.281。
 90年に32歳の若さで指導者となり、マイナーリーグ、独立リーグ、ノーザンリーグで打撃コーチ、監督など務めた。02年にはドジャース傘下のエルマイラ・パイオニアーズ(野茂らがオーナーになったチーム)で監督兼アシスタントGMの職にも。05年からドジャースでブルペンコーチ、捕手巡回コーチ。この間に当初内野手だったラッセル・マーティンを捕手へコンバートし、ドジャースの正捕手に育て上げた手腕も評価される。愛称はディボ――。

   

ディーバスコーチの乗せ上手ぶり

Okada_batting070301岡田に対するディーバスコーチのアドバイスは「野手を殺すくらいの強い打球を打て!」

 ディーバスのプロ入りと入れ替わるように80年に現役を引退し、指導者となったコリンズとは25年来の知り合い。そのコリンズによるディーバス評は「大男だが、繊細でいい人間性を持っている」。本来、捕手の育成、指導に定評があり、その面でオリックスが期待する部分もあるが、アメリカでは「名選手」=「名コーチ、名監督」という図式は皆無。ディーバスの打撃論が岡田のバッティングを開花させる可能性は十分にある。

 キャンプの時にも感じたが、ディーバスはまず明るい。時にグラウンドでも鼻歌を口ずさみ、笑顔も多い。僕には英語はわからないが、アクション、雰囲気からも乗せ上手の人柄は伝わってくる。
 オリックスの前身の阪急時代、上田監督のキャンプでの口癖が「ええで節」として取り上げられていたことがあった。とにかく若手は乗せながら、自信をつけさせようという名将の思惑があったわけだが、ディーバスから聞こえてくるのも前向きな発言ばかり。紅白戦初戦で快打を飛ばした岡田に対しては、こんなコメントも残した。

「この仕事を始めて28年だが、19歳であれだけのパワーを持った選手はどこにもいないんじゃないか?」
「経験と練習を積んで行けば(ナニワのゴジラじゃなく)本物のゴジラになれる」

 経験が人を育てる。場面が人を育てる。そして期待が人を育てる。昨年の藤井コーチに続き、ディーバスとの出会いが岡田をラッセル・マーティンに続くサクセスストーリーの主役へ押し上げてくれることを願うばかりだ。

 そんなディーバスから、秋季キャンプ時に「野手を殺すくらいの強い打球を打て!」とアドバイスされた話していた岡田。この春には「構えた時のバットヘッドの動きを抑えるように」と指導を受けたそうだ。キャンプに入るまでは、動から動のイメージで上体を前後に揺らしボールを捕まえにいっていたが、ディーバスコーチはヘッドを動かすことでバットが遠回りすることを危惧したのだろう。宮古島で見た時には、その動きは消えていた。このアドバイスがどう効いてくるのか? 岡田からは、まだまだ「野手を殺すくらいの強い打球」は見えてこないが、今後、打球の迫力さえ出てくれば一発も出るだろし、開幕への期待もますます膨らんでいくだろう。

     

1日1日を大切に

Okada_traning_11年後にどんな立場になっているか分らないのがプロの世界。岡田もそのことを肝に命じて頑張って欲しい

 さて、オープン戦も本番。コリンズはキャンプの打ち上げで「オープン戦もキャンプの延長」と話したそうだが、まさに若手にとってのサバイバル戦は続く。その中で岡田は生き残れるのか、はたまた…。
 それにしても改めて、球音が響きだすと時間が流れるのが早い。余談だが2日には「あじさいスタジアム」で行われるサーパス対中日の教育リーグに中村ノリが登場する。昨年の岡田は、この教育リーグに参加しており、中村は「ノリ&キヨ」としてマスコミ注目の只中にいた。それがわずか1年でこのようなことになるとは…。そんなことを思うと来年の今頃、岡田がどんな立場で、どんな思いで迎えているのだろう…、とも浮かんできた。
 <去年は結構大変やったなあ>と明るく振り返れるようにするためにも、ここから。岡田には、焦らず、しかし、急いで、今日の1日を大切に過ごしてほしい。言うまでもないことではあるが。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は3月11日の予定です。

2007-02-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第33回ー

Top070221  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回が33回目です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、ついた呼び名は「ナニワのゴジラ」。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積み、日々その技術に磨きをかけました。

 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。

      

Orix_camp_2オリックス宮古島キャンプの模様(岡田はランニング最前列の向かって1番右)

17日に宮古島キャンプを取材

 オリックスのキャンプは18日までが宮古島で行われ、20日からは高知へ移動し2次キャンプがスタート。しかし、やはり宮古島で一度見ておきたかったので、アレコレ日程調整の結果、終了間際の17日に何とか間に合い取材することができた。
 当日は朝一番の飛行機で那覇から宮古入り。そこからタクシーで10分少々走り9時前には平良市民球場に到着した。1日のみだが、気合を入れての取材をスタートさせた。

 まず、受付でもらったその日の練習プログラムが入ったプリントを確認。すると、「W-UP(ウオーミングアップ)」「キャッチボール」「フリーバッティング」、午後からの「紅白戦」…と続いたメニューの最後に「0・10・50・55 早出組FB室内」とあった。そう、僕が着いた時点で、岡田はレフト後方にある室内練習場ですでに打ち始めていたのだ。
 早速、荷物を置いて室内へと急ぐと、前方に足早に歩くコリンズ監督を発見。そして、そのままあとをついていくとコリンズがまず向かったのも岡田の元だった。3、4メートル離れた位置からディーバスコーチが下から投げでくるスローボールを気持ち良さそうに打ち返す岡田のバッティングを腕組みをしたままじっと観察。早々に首脳陣の期待の大きさが伝わってきた。

       

岡田は好調キープ

 続いてマシン相手のバッティングも見たが、僕の目にも岡田の状態はなかなか良く見えた。簡単に言えば、芯でとらえる確率がはっきり上がっていたし、打球音も「カーン」「カーン」ではなく言葉にするなら「カンッ」「カンッ」。圧縮されたような響きは弾きの良さを伝えてきた。

Debus_and_okada_1岡田の打撃練習時には、ディーバス打撃コーチが付きっ切りで見守る。これも期待の表れだ

 9時半まで打つと、そこから室内練習場の外でコリンズ、ディーバス、通訳と岡田の4人で10分ほど何やら話し合いが始まった。その様子を撮ろうと新聞社のカメラマンがレンズを向けるとコリンズが大きな声で「ノー!」。何を話していたのか岡田にも一応、あとで尋ねてみたが「秘密です」。結構、大事なことが話されていたような気もしたが、またいつか聞いてみるとしよう。
 話し合いが終わると、一旦、メイングラウンドへ戻る。室内からメイン球場へ続く道が選手にコメントを取ることのできる貴重な道というわけで岡田に接触。他の記者がついてくると時間も短くなるが、幸いこのときは岡田のもとに集まる記者の姿はなし。同じ室内でローズが打っていたため新聞記者はそこへ残っていたのだ。ローズへ感謝しながら話を聞いた。

谷上 なかなか調子はいいみたいやけど。
岡田 いや、第2クールはもっと良かったんですけど、ちょっと下がり気味です。 
谷上 疲れも出てくる頃か。でも、その中で紅白戦では結果を残してる。何かつかんだものがある?
岡田 う~ん、つかんだというのはどうですかねえ。ただ、今はとにかくフォームの中から無駄を省こうという意識でやっていて、それが少しづついい結果にもつながってるのかなと思います。
谷上 キャンプ前は「最初から調子を上げて入っていくべきか、後半に徐々に上げていった方がいいのか」。そういう話もしてたけど。
岡田 でも、始まるとやっぱり調子が悪いと不安になるし、結果も残したいんで、ペースを考えてる余裕はなかったです。ベテランの人みたいにはなかなかいきません。
谷上 今日1日の滞在なんで、いいのを期待してるから。
岡田 まだ待望の一発が出てないんで…。自分でもそろそろっていう気持ちはあるんですけど。

       

Hoshino北京五輪日本代表の監督として宮古島を訪れた星野監督

ジャパン首脳陣も宮古島を視察

 サブグラウンドでのアップを終え、再びメイン球場へ戻りフリーバッティングが始まった。やはりここでも昨年の姿からすると明らかな打ち損じという当たりが減り、柵越えも披露。ちなみにこのキャンプから岡田は練習時のバットに新メーカーのものを使っている。これまではミズノオンリーだったところにオールドヒッコリー社のものを採用。岡田曰く「日本ハムの選手や松中さん(信彦・ソフトバンク)たちが使っているバット」で「弾きが良くてしっかりとらえたら飛距離がかなり出るんです」とのこと。材質はカナディアンメープルでかなり硬い。まだ実践では使っていないが、飛距離へのこだわりと確実性がアップしてきた中で新バットへもトライとなったようだ。
 打ち終わったあとは北川博敏、相川良太と共にサブグラウンドへ再び移動し、投手陣と一塁牽制の練習を行う。この練習の指導にわざわざコリンズがやってきたが、こういった細部へのこだわりがコリンズ流でもある。

 その後、メイングラウンドへ戻ると、そこへジャパン首脳陣が到着。もちろん、星野仙一、山本浩二、田淵幸一、大野豊の4人である。実は僕は前日(久米島)も、翌日(北谷)も一緒だったのだが…。それはともかく、岡田に対しては山本が「頑張れよ」と声をかけ、オリックスのメンバー表を見ていた田淵は「186センチの93キロ。俺の現役時代とほぼ一緒のサイズやな」と反応していたが、今回のところはそこまで。岡田にしても、今はもちろんジャパンよりも、頭の中は目の前に勝負に勝つことのみである。

     

ナイスバッティング、ナイスラン!

 午後からは6試合目となる紅白戦が行われた。ここまで11日から始まった紅白戦での岡田は3試合連続ヒットのあと、ノーヒットを1試合挟み、翌日には2打数2安打。好調をキープしている。しかも、準レギュラー組とはいえ、「4番ファースト」での出場は、やはり首脳陣の期待の大きさもしっかり伝わってくる。

Okada_batting070221この日の紅白戦で、岡田は第1打席でレフト線へタイムリー二塁打を放つ

 さて、その試合で岡田がいきなり魅せた。
 初回1死一塁で立った第1打席。カウント2-1と追い込まれたあとの4球目。平野佳寿の外寄りのストレートを綺麗にライナーで弾き返した打球はレフトライン際へ飛びワンバウンドでフェンスへ。レフト線の打球が切れずにそのまま伸びていく打球は岡田ならではの当たりで、本家ゴジラではなく松中を彷彿とさせるものだった。そして魅せたのはバッティングだけではない。
 この一打で一塁ランナー坂口が一気にホームインすると、岡田も送球の間に三塁を陥れるナイスラン! 見事にコリンズ野球を実践して見せた。積極的な姿勢は必ず指揮官の目にも大きく止まったはずだ。
 そう言えば、紅白戦の途中で球場をあとにした星野が会見でコリンズについて話していた。

「テリー(コリンズ)は特に走塁に関しては厳しい男。相手の捕球体勢、ステップの仕方なんかを見て次の塁を盗め、というのをよく言ってた。失敗は恐れず、少々の冒険はOKというスタイル。走塁というのはチームに勢いをつけるからね。間違いなく、彼の指導でチームも変わっていく」

 2人は星野が中日監督2年目の1988年に行ったベロビーチキャンプで、コリンズに守備走塁の臨時コーチを頼んだという仲。それにしても、これまでの記事でも書いてきたが、岡田の走塁にはなかなか見るべきものがある。スピードも見た目の印象以上にあるし、スライディングも様になっている。だいたい走塁のセンスはスライディングの形を見るとわかるが岡田は上々。盗塁うんぬんという意味でなくても、走れる岡田はチームにとっても大きな戦力になるはずだ。

     

勝負はこれから

 好調な出だしに<これは一発が見れるかも…>と期待したが、あとの2打席は音なし。無死三塁のチャンスに回ってきた2打席目は、左腕・高木康成の内角ストレートに詰まりボテボテのショートゴロ。3打席目は2死一、二塁で同じく高木のインハイのボール球に手を出しファーストゴロ。残念ながら絶好のアピールの場面をものにすることはできなかった。ただ、まだまだ一進一退ながらも1軍メンバーに入っても落ち着いてプレーしており、やってくれそうな雰囲気を感じさせてくれた。

 そして、試合後には約30分の特打。その間もディーバスコーチの視線が岡田から離れない。何とかしてこの「逸材」を育てようという首脳陣の思いを強く感じた1日でもあった。
 特打後、ベンチ裏で当日2度目となる「岡田キャッチ」に成功。話を聞いた。

谷上 今日の1本目。ライン際が切れずに伸びていく、いい時の打球やった。
岡田 そうですね。あれは自分でも良かったです。
谷上 走塁も良かった。
岡田 走塁に関してはチーム全体として監督がすごく言われてることなんで、打つだけじゃダメだと思ってやっています。
谷上 コリンズ野球の一番の肝はそこ?
岡田 だと思います。でも、あとの2打席が全然ダメでした。
谷上 それでも、1本ずつでもヒットが出てると気分的には楽?
岡田 それはやっぱりそうです。1本出ると出ないとじゃ、全然違いますから。
谷上 このままの調子をキープしてオープン戦、開幕へ…。
岡田 いや、もっともっと上げていかないとダメです。だからまだまだここからが本当の勝負だと思っています。

 くしくもこの日は清原和博が古傷の左ヒザの状態が悪く、早々に退場。それでなくてもヒザに爆弾を抱える清原はコリンズ野球の中では厳しい状況に置かれていると言わざるをえない。その中でまた長距離砲としての岡田にかかる期待がますます高まってくる。
 そんな期待に応えるためにも、本人が口にしたように「ここからが勝負」。キャンプも後半戦に入り、実戦形式の中でもワンランク上のボールと対することが多くなる。その中でいかに結果を積み上げていくか。
 2次キャンプでは「入れ替えもどんどんやっていく」(コリンズ)ということなので、野手間の競争もさらに激しさを増していく。ただ、随所にひと回り成長を感じることのできた岡田の姿には楽しみしか見えてこない。
 開幕1軍、いやここからの結果次第で開幕スタメンも…、そんな気持ちにさせてくれた宮古島観戦だった。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は3月1日の予定です。

2007-02-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第32回ー

Top070211 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回が32回目です。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、ついた呼び名は「ナニワのゴジラ」。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積み、日々その技術に磨きをかけました。

 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。それではどうぞ!

       

清原から岡田へ、檄がとぶ宮古島

 宮古島キャンプも開始から10日が経過。何より岡田の状態が気になりながら観戦に向かうことはできず、ジリジリと毎日を過ごしている。
 そんな中、新聞テレビを通じて流れてくる岡田関連のニュースはだいたいが清原絡み。例えば6日は「新ON砲」の話題だった。なんでもテレビの収録でやってきた徳光和夫氏から中田(翔・大阪桐蔭)の話題をふられた清原は「高校時代の自分より凄いやつは初めて。ウチへ来れば、"オリックスのON"ができるし、関西が盛り上がる」と言ったあと、岡田の宣伝をしたとか。その発言を聞いた時はてっきり、このブログを読んだのかと思った(笑)というのも、前々回、ここ岡田&中田についてこんな感じで書いていたから。

Kiyohara_1宮古島キャンプでは清原から岡田への檄が連日とんでいる。期待のあらわれか?

<もし、岡田貴弘と中田翔の名がスタメンに揃うようなことにでもなれば、長らく不遇を囲ってきたオリックスファンにとってこれ以上ない楽しみとなるだろう。そして、かつてイチロー&田口がチームを引っ張りチャンピオンへと導いたように、岡田&中田が再び強きオリックスを作ってくれたら…、考え始めると止まらなくなってきた>

 文中に「ON砲」という言葉を使っていれば、さぞ「清原発言」のああとにヒット数もアップしたはずだが、不覚にも「ON」が浮かんでこなかった…。
 それはともあれ、清原の目にもやはり岡田の資質は止まったというわけだ。伝え聞いた岡田は「清原さんにそう言ってもらうのはうれしい。光栄です。期待に応えるよう頑張ります」と、"気合を入れ直していた"と新聞にはあったが、マイペース岡田のこと。どの程度、影響を受けたかは…(笑)。

 そして19歳の誕生日でもあった9日。今度は「清原が岡田に檄」。何でも…。
「もっとがむしゃらにやればいい。マッチ棒みたいな(880グラムの)バット使って、打ち方気にしとっても仕方ない。遠くへ飛ばすことだけ考えたらいい。松井秀喜なんか1キロのマスコットをブンブン振り回しとったぞ」(日刊スポーツ)と言ったとか。
 清原が岡田を見れば間違いなくこういう言葉が出てくるだろう。確かに、もっと表に出した方が…、と思う事はある。岡田には岡田のキャラクターがあるので、無理に表面的なガッツを出す必要はないが、一心不乱に打ち込むガムシャラさはもっと見たい。おそらくこのキャンプでは岡田なりに、そのあたりの意識も高まってきているとは思うが。
 そして、プレーが成長し、結果も出るようになれば、その自信が表情や態度に現れ、清原に感心した「オーラ」も全身から漂ってくるはずだ。そのためにも、まずはバッティングで「自分のもの」をつかむこと。これまでにも書き続けてきたが、それに尽きる。

        

Fujii_and_okada藤井康雄氏は、昨年はコーチとして岡田を指導した

藤井康雄スカウトと会う

 さて、その話に絡めて今回はひとつ。実は2日の夜、藤井スカウトと食事をする機会があった。スカウトに転身して間がなく、そのあたりの話をアレコレしながらの楽しい時間だったが、一段落となったところで話題はやはり岡田へと向いた。「もう1年見たかった…」今なお悔しさありありで話す藤井さんも、当然、岡田の「その後」が気になっている。そこで岡田の成長を思い、最大のポイントとして繰り返したのが「ボールを迎えにいく時の形」。
「その場で回転しようとするとどうしても腰の開きにつながりやすくなる。そうじゃなくて、前へボールを捉えにいきながら、そこで回転。そういうイメージで打てるようになればね」
「開き」と「捉えにいく時の形」は、岡田からも何度か聞いていた課題だ。
「これなんですよ」と見せてくれたのは、イチローが自主トレに神戸の室内練習場でティーバッティングをしていた時の携帯動画だった。確かに左肩越しに見据えたボールに対し、スーッと体を前に移動させ、最後に鋭いボディターン。
 40歳まで現役を続け、16年間で282本のホームランを放った現役時代の藤井さんも、この形をものにして飛躍的アップ、打力の向上につながったという。

藤井 社会人(プリンスホテル)4年目の秋に『これか!』というのをつかんだんですよ。ある日、突然、それまでと違う感覚が現れてね。言葉で言うのは難しいけど、それまで思っていたことが体で表せたというか、そういう感じだった。

Yasuofujii今年からスカウトに転身した藤井氏。この写真撮影時には「がんばれ岡田!」と激励の言葉も出た

「極意」をつかんだ藤井さんはドラフト4位で阪急ブレーブスに入団。ちなみにこのドラフトで西武は清原を6球団が競合の末に獲得したが、もし、清原を外していたら系列のプリンスホテルから外野兼一塁手だった藤井さんを西武が獲得したかも、という話は耳にしたことがある。話を戻す。
 もちろん「捉えにいく時の形」については、コーチ時代、何度も言葉を変え、練習法を変えながら岡田にも伝えてきたし、岡田の中にも強い意識があるはず。ただ、まだ頭のイメージとフォームが一致しないのだろう。それは、最終的には自分でつかむもの。出来る限りの「理想形」を脳裏にリピートしながら「その感覚」が内から現れてくる時を待つしかない。成功するバッターには「あの打席で変わった」という瞬間が、何の訪れもなく突然にやってくるという。
 しかし、その瞬間と出会うためのも、藤井さんが言うように「今はとにかくいろいろやって、1日、1日を大切にすること。その中から何かを自分でつかんでいくしかない」。

 というわけで、次回は試行錯誤を続けるゴジラの奮闘記をお伝えする予定。「捉えに行く時の形」に、しっかり注目してきたい。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は2月21日の予定です。

2007-02-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第31回ー

Okada_7  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。早いもので、ついに31回目を迎えました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、ついた呼び名は「ナニワのゴジラ」。2005年の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年はフレッシュオールスターで本塁打を放つなど、主にファームで経験を積み、日々その技術に磨きをかけました。

 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。それではどうぞ!

1軍・宮古島キャンプ決定

 早いもので今日からキャプイン。また長い1年、そして岡田にとっての「勝負の年」が始まったが、まずは1軍キャンプでスタートとなった。メンバー発表が新聞紙面に載った翌日の1月29日夜に連絡を入れた。

谷上 ひとまずは1軍メンバー。予想通りやった?
岡田 いや、どっちかなって思ってたんですけど。とりあえず良かったです。
谷上 どういう形で連絡が?
岡田 サーパスのサブマネージャーの久保さん(充広)から連絡をもらいました。でも、久保さんだったんで<2軍スタートかな…>って思ったんですけど「1軍や!」って言われて。
谷上 改めて聞くと気持ちも引き締まった?
岡田 そうですね。でも、今は不安もありますね。
谷上 母校・履正社高校での自主トレを終えて、神戸へ戻ってからの状態は?
岡田 バッティングは、まだマシン相手にしか打ってないので何とも言えないんですけど。やっぱり実際に投げるボールを打ち始めてからですね。
谷上 今もすり足を続けてる?
岡田 はい。それは続けてやってます。
谷上 フォームが固まってきたという手応えは?
岡田 どうですかねえ。まだ何とも…。

これも大物の証明!?

Okada1_3岡田の大きな背中を見るたびに、無限の可能性を感じてしまう

 岡田の成長を何よりも楽しみにしているオリックスファンとすれば、もう少し威勢のいい言葉も聞きたいところだろうが、これが岡田流でもある。これまで読んでくださっている読者ならおわかりだろうが、何事にも慎重というか、口はなかなか重い(笑)。しかし、口先だけで「レギュラー獲ります!」「バッチリです!」なんて言っても仕方ない。逆にこの重い岡田の口から自信の言葉が聞こえ出した時には、それはかなり信頼できるというもの。今は、その時が来る日を楽しみに待ちたい。
 さて、連絡を取った日というのは実は、「イチロー&清原」が神戸の室内練習場で1日限りの合同自主トレを行った日でもあった。僕は残念ながら別の取材で向かえなかったが、かなり盛り上がっていたよう。そこで、岡田も自主トレの傍らで2人の競演に見入っていたのでは…、と聞いてみたが…。

谷上 で、イチローと清原の練習は見た?
岡田 いや、見てません。
谷上 全然?
岡田 はい。イチローさんと清原さんの練習は午後からだったんですけど、僕は午前中で上がったんで。
谷上 ……。
岡田 元々今日はそんなに多くやる予定じゃなかったんで。
谷上 でも、ちょっとくらいは見てみたいとか、そういう気にはならんかった?
岡田 どうなんですかねえ…。イチローさんの練習はこれまでに何回か見ましたし。
谷上 そういうもんか。俺は俺、という感じ?
岡田 いやあ、別にそういうことでも…。

 ちょっと拍子抜けのようでもあり、でも、これがまた岡田らしくもあった。あまり他人に興味がないというのは、これまで取材してきた中で感じることの1つだが、どこか捉えどころがないというのもそう。ただ、段々とそんな岡田のペースもわかるようになってきた。ビッグスター2人への無反応も、岡田らしさ、ある意味で大物の証明と考えることにした。

Kiyookada同じポジションの清原(写真・左)は尊敬する先輩であり、越えなくてはいけないライバルでもある
一塁? 兼用?

 冒頭のやり取りのなかで岡田が「不安もあります」といった中には、守りのことも含まれている。昨秋の段階でコリンズ監督は岡田について一塁固定での育成を明言していたが、ここへきてそのあたりが曖昧になってきているようなのだ。
岡田 直接は何も言われてないですけど、新聞かなんかには外野と両方という風にも載ってたみたいで。そのへんがちょっと落ち着かないですね。

谷上 やっぱり一塁固定がいいよな。
岡田 気持ち的には、できれば。
谷上 でも、とにかくまずはバッティング。打ってアピール、守りはそのあと。
岡田 そうですね。
谷上 またキャンプに行くので、宮古島でいい状態が見れるように楽しみにしてる。
岡田 はい、頑張ります。

Ichiro_1イチローが栄光の礎を築いた宮古島で、岡田の07年シーズンがスタートする
 実際、オリックスから発表された1軍キャンプ参加メンバー表にも外野の欄に名前があった。掛け持ちとなれば、守備練習の時間が増えるなど、何かと負担も多くなるだろうが、何よりもまずはバッティング。とにかく打でアピールするのみ! いざ、宮古島キャンプスタート!
 僕はこれまで宮古島キャンプには10回近く行っているが、最初の頃、オリックスにはまだイチローがいた。そのイチローはキャンプで徹底して打ち込んでいた印象がある。練習後のグラウンドでの特打もたびたび見たし、ティーバッティングひとつ取っても、ほかの選手とは力の入れ具合、真剣度が違って見えたものだ。
 そう言えば、イチローがまだ鈴木だった1993年、あるいはイチローとなり200本安打を達成した94年に、オリックスのバッティングピッチャーを務めていた奥村幸治氏から当時の話を聞かせてもらったことがある。その頃のイチローは田口(壮・カージナルス)と共に一番乗りで球場に現れ、全体練習が始まるまで連日の早出特打ちを行っていたそうだ。また、イチローのバッティング練習はテンポが速いため、奥村氏はかなりのハイペースで、しかも生きた球を投げることを求められた。「ほかの選手に投げるのとではこっちの疲れ方も全然違いました」とのことで、イチローの練習に対する意識の高さには「いつも感心させられた」と言う。また、イチローは宿舎へ戻ってもバットを振り続け、とにかく「キャンプでは徹底して振り込んで形を作る」、そしてシーズンに入ればゲーム前の練習とゲーム以外では一切バットを振らないのが当時のイチロー流だったそうだ。
 キャンプでの取り組みは選手それぞれだが、今シーズンは岡田にとって年頭に宣言した通り「勝負の年」。その勝負に勝つためにも、ひとまずの結果、アピールも大事だろうが、長いシーズンの中で成長の証をしっかり見せられるよう、キャンプでは自らを追い込んで欲しい。野球漬けの中で何かを掴む、宮古島から高知へと続くキャンプがそんなものになってくれることを願う。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は2月11日の予定です。

2007-01-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第30回-

Okada_top070121_1 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。早いもので、ついに30回目を迎えております。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。2005年秋の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年のフレッシュオールスターでは本塁打を放つなど、主にファームで経験を積みました。
 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。それではどうぞ!

   

夢のある話をしよう

 阪神・淡路大震災から12年目となった17日、岡田らオリックスの若手は自主トレを行っていた室内練習場で黙祷を行ったそうだ。僕もあの揺れを経験し、被災した知人もいたので、毎年いろいろと思い出す。震災当時の1995年1月と言えば、岡田はまだ6歳。以前、両親から聞いた通り「野球より虫取りに必死だった」頃だろうが、黙祷をしながら何を思ったのだろう。
 さて、この日になると震災の記憶と共に僕の中へ蘇ってくるのが、その年、初優勝を飾ったオリックスの勇姿だ。ユニフォームの左袖に「がんばろうKOBE」の文字を付け、まさにファンとチームが一体となってつかみ取った感動的な優勝だった。
 しかし、神戸の街並みは年々復興してきたというのに、オリックスの方は依然沈んだまま…。暗いニュース続きの現状に、最近は何を思っても、何を書いてもすぐ物憂げ調になってしまうが、このレポートも気がつけば30回目。一区切りということもあり、今回は少し「夢のある話」を書いてみたい。

   

Nakata_3中田翔(大阪桐蔭)は今季最注目の高校生選手。岡田とは一昨年の夏に大阪府大会で対戦した

岡田が抱く中田翔(大阪桐蔭)の印象

 前回のレポートでは書けなかったが、自主トレスタートとなった5日。岡田に話を聞いていると途中で中田の話題になった。「なった」というより、こちらから持ち出したのだが。もちろん、中田とはこの時期から凄まじい注目を集めている大阪桐蔭の中田翔。一昨年、岡田が高3だった当時の高校球界は「ナニワの四天王」の話題で持ちきりだったが、今年は見事に中田一色。そこで、プロと高校生、右と左の違いもあるが、同じスラッガーとして岡田の目に中田はどう映っているのか興味があった。
 ちょうど話を聞いた前日は、中田の練習初めで生駒山中にある大阪桐蔭のグラウンドには、国内外10球団のスカウトが集結。翌朝の各スポーツ紙の一面はその記事で埋まっていた。

谷上 スポーツ新聞は毎日読む?
岡田 結構読みます。
谷上 今朝見た? 中田。
岡田 一面のヤツですよね。
谷上 今からすごい騒ぎでなあ。卒業までには通算ホームランも100本に届きそうやし。
岡田 今、68本なんですよね?
谷上 そう。中田についての印象は何かある?
岡田 球は確かに速かったですね。
谷上 バッターとしては?
岡田 あの頃はまだまだ荒削りな感じが強かったですけど…。

「あの頃」とは、もちろん、履正社の主砲として活躍していた岡田と、スーパー1年生として登場してきた中田が共に甲子園を目指していた一昨年のこと。まず先に「打者」ではなく「投手・中田」の印象を口にしたのは意外と言えば意外だったが、岡田にとって高校生活最後の1本を放ったのがこの中田からだった。

 夏の大阪大会準決勝。それまで大きな注目の中で波に乗れず苦しんでいた岡田が高校生活最後の打席で意地を見せた。中田の真っすぐを捕らえた打球はライナーで舞洲ベースボールスタジアムのバックスクリーンへ飛び込んでいった。敗色濃厚の中、一塁ベースを回ったところで珍しく右手を軽く上げて拳を握った岡田の姿は、僕の胸にも強く迫ってくるものだった。ただ、今になって改めて思えば、あの最後の相手が中田だったことも、この先の物語へつながっていきそうな、そんな気がしてくる。

Okada_smil02_2岡田は中田よりも辻内(巨人)や陽(日本ハム)など同世代へのライバル心を口にした

 しかし、高校時代に「ホームラン数」で注目されてきた岡田だけに今の時点での68本、このペースで行けば100本突破という中田の数字には感じるものもあるだろう。練習試合の数や対戦相手、球場の広さなども違い、単純には比較はできないが、現時点で、清原和博(64本)も松井秀喜(60本)も、岡田の55本も更新しているのだから。そう言えば、あの清原が「自分より年下で凄い、と思ったのは初めて」と、中田について「異例」のコメントを出していたこともあった。

谷上 下級生でもホームランバッターが出てくると気になるもの?
岡田 どうなんですかねえ…。
谷上 ちょっとしたライバル心とか・・・。
岡田 ライバルって聞いて浮かぶのは、バッターじゃないですけど、今も辻内(崇伸・巨人)が一番です。桐蔭とやった最後の試合でも抑えられましたし(中田との対戦前に3打数ノーヒット2三振)、高校時代に対戦したピッチャーでは「一番すごい」と思いましたから。どこかでまたやってみたいです。
谷上 今でも辻内が頭にあるんや。
岡田 そうですね。あとはプロで1年やった同年代の選手とか。今年、1軍で出てきそうな陽(仲壽・日本ハム)なんかには、やっぱり負けてられないという気持ちがあります。
谷上 ただ、中田に関してはオリックスも興味を持ってるということやけど…。
岡田 まあ、これから高卒でプロへ入ってきたとしても、こっちは先にプロでやっている自信もあるんで…。どの選手でも入りたてに負けるとは思ってません。
谷上 単純な興味として、将来、岡田と中田の2人のホームランバッターが揃って活躍したら、野球界も相当盛り上がるはず。右と左。キャラクターもちょっと違ってるだけに、なんか余計面白いかなって。
岡田 どうなんですかねえ…。やってる方はあんまりそのへんは…。とにかく自分が頑張るだけなんで。

      

Okada_smil01_1もし、中田がこの秋のドラフトでオリックスに指名されたら…。将来2人で形成される打線を想像するだけで夢が膨らむのだが

見てみたい岡田&中田のそろい踏み

 プロの選手に高校生の話をぶつけるのは本来、かなり失礼なことなのかもしれない。しかし、中田に関してはやはり岡田の反応を見てみたかった。そして、その反応は「こんな感じ」だった。
 ちなみに、中田も岡田同様、昨秋からフォームを改造中で、やはり変化球への対応、確実性アップを目指し、すり足気味での打法に取り組んでいる。2人のスラッガーが共通の目的でフォーム改造中とは、これもまた面白いところだが、それぞれこの1年でどんな結果を残していくのだろう。

 しかし、本当に近い将来、プロの世界でこの2人が並び立つようなことになれば…、と考え始めると、それだけでワクワクしてくる。同じパ・リーグで争えばさらに面白いだろうし、オリックスへ入ってきたら…、と思うと、それはそれで夢が膨らむ。
 実際、オリックスも現段階では中田への関心は大きい。岡田に話を聞いていた5日には、宮田編成部長以下6人体制で中田詣を敢行している(中には昨年まで岡田の指導をしていた藤井康雄・新スカウトの姿も)。
 もし、岡田貴弘と中田翔の名がスタメンに揃うようなことにでもなれば、長らく不遇を囲ってきたオリックスファンにとってこれ以上ない楽しみとなるだろう。そして、かつてイチロー&田口がチームを引っ張りチャンピオンへと導いたように、岡田&中田が再び強きオリックスを作ってくれたら…、考え始めると止まらなくなってきた。
 いずれにしろ2人が順調に育てば、プロの世界で「ライバル」となる可能性は十分ある。早くそんな日が来て欲しいと願いつつ、今回の「夢のある話」はとりあえずここまで。来たる将来を待ちわびることにしよう。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は翌2月1日の予定です。

2007-01-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第29回-

Okada070111_swuat  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。29回目の今回から、ついに2年目のシーズンがスタートいたしました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。2005年秋の高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け、昨年1年間は主にファームで経験を積みました。
 2年目の今年、1軍定着を目指して奮闘する姿を、大阪・履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線で引き続きお届けいたします。渾身のレポートをどうぞ!

             

Okada070111_batting昨年末に引き続き、2007年も履正社高校のグランドからスタートを切った岡田

2007年始動

「練習なんですけど、明後日から始めることになりました」

 岡田からそう連絡が入ったのは3日の夜。昨年末、母校・履正社で年内最後の練習を取材した際、「年明けのスタートは4日」と言っていたので、変更の連絡をくれたのだ。
 その連絡を受け<もしや…>と思うことがあった。現役時代の落合博満が三冠王奪取に向け「3日の3時33分」に動き出したことがあった。自分の背番号に絡めた日時から新年のスタートを切りゲンを担ぐ選手もいる。そこで<もしや5日の5時55分から動き出すための変更では…>と考えたというわけ。ところが、あとで本人に確認したところこの予測は大外れ。真相は……、後日、岡田が活躍した時に笑い話として紹介したい。

 さて、というわけで5日に履正社グラウンドで行われた練習初日を観戦。朝の9時から昼過ぎまでグラウンドでキャッチボール、ノック、バッティングをこなし、午後からはウエートトレーニング。15時前に終了となったところで、じっくり話を聞いた。

   

Okada070111_talking年末年始はゴルフでリフレッシュ。走り回ったおかげで少し顔立ちもシャープになった?

年末年始はゴルフにハマる!?

谷上 正月はゆっくりできた?
岡田 お参りにいったり、欲しかった時計を買ったり、ゴルフの打ちっぱなしによく行きました。あと、父さんの知り合いのコンペに呼んでもらってコースも回ったんです!
谷上 こないだから話を聞いてると、ゴルフにハマってそうやな。
岡田 ハマってます(笑)。コースを回った時もスコアは良くなかったですけど、ハンデをもらって3位。ニアピンも取ったし面白かったですね。
谷上 聞いてるだけで楽しそうやけど、野球の方は…。
岡田 バッティングセンターで30日から3日まで4日連続で打ち込みはしてました。だいたい200球くらいずつは打ってたんで、段々、スピード感覚も戻ってきました。
谷上 でも、年末会った時より、一段と顔がスキッとしてる。
岡田 ほんまですか? 散髪したからじゃないですか(笑)?
谷上 ゴルフ効果も?
岡田 ああ、それもあったかもしれないですね。下手なんでコースを回った時も隣のホールに飛ばして走って球を探しに行ったりしてましたから(笑)。

            

理想のタイミングを求めて

 軽い話から入ってみたが、ここからは本題。練習初日、バッティングゲージに入り打ち出すと、すぐその変化に気づいた。フォームだ。昨秋から右足の上げ方をすり足気味に変更したことはここでも書いてきたが、そこへ加えて新たな変化が。昨年末の時点では打席の中で上体を結構大きく前後へ動かしタイミングを計っていたのだが、この「揺れ」が姿を消していた。

Okada070111_wristcurlトレーニング中の岡田。打撃フォームについては現在も試行を繰り返しながら、常に理想のタイミングを求める

谷上 上体の揺れがなくなってたけど。
岡田 また変えました。バッティングセンターで打ち込みながらいろいろ試してたんですけど、すり足の形の中で少し改造しました。今までは結構バットを大きく引いて打ちにいってたのを、今は構えたところからそのまま出ていくようにやってます。
谷上 狙いは?
岡田 無駄な動きを省いて確実性を上げていこうと思って。
谷上 まだまだ自分に合う形を探している段階。この先も変わる可能性も…。
岡田 わかんないです。また足を上げて打ち出すかもしれないし。一番はタイミング。どうやったら一番自分に合うか。ほかで頭にあるのは腰の開きを抑えることです。
谷上 開きについての対応は?
岡田 つま先が開いたらヒザも腰も開いてしまうんで、練習の時はとにかくスパイクの刃でしっかり土を掴んで開かないように意識してやってます。

             

「勝負の年!」

 一段落ついたところで、持参した色紙に今年の抱負を書いてもらった。テレビ番組の企画なんかでよくやっているが、ここでもちょっと正月気分を、ということだ。
 岡田が書き込んだのは「勝負の年」。高卒2年目でこう書いたところに強い決意が伝わってきた。これまでも繰り返し言ってきたが、今シーズンの成長が今後を決めると言っていい。それほど大事なシーズンであることを本人も十分自覚している。

谷上 「勝負の年」いいねえ。「開幕1軍」も当然狙ってるやろうけど、とにかく打って結果を残していくしかない。
岡田 はい。できるだけ早くフォームを固めて、キャンプは上になるか下になるかわからないですけど、とにかくバッティングでアピールしないと。ただ、最初からガンガンいくというより、オープン戦が始まる3月頃から上げていけるのが理想。監督も代わって、そういう意味では最初から目立つのも大事かもしれないですけど、尻すぼみになったら意味がないんで。
谷上 あくまでシーズンで活躍することが目標。

Okada070111_shobu自ら記した今年の抱負は「勝負の年」。生え抜きの大砲候補として、かかる期待は十分自覚している
岡田 1ヶ月も2ヶ月もバッティングの好調は続かないんで、難しいですけど理想は開幕に合わせて上げていく形です。
谷上 昨日(4日)雑賀社長が就任の挨拶で「生え抜きのスターを育てたい」と言ったそうやけど、俺はそのまま岡田への期待のように聞こえた。
岡田 いや…。
谷上 今のメンバーを見渡して「スター候補」と言えば、やっぱり岡田。そう期待しているオリックスのファンも多いはず。
岡田 ……。
谷上 言葉に出さなくても、それくらいの思いは自分でも持ってるんやない?
岡田 でも、まだ下でも結果を残せてないんで、そういうことは言えないですね。とにかく今年。今年結果を残せたら…。
谷上 来年の今頃はもう少し勢いのあることも言える?
岡田 と、思います。とにかく今年はやるだけです。去年の今頃はプロの世界に対する不安もありましたけど、プレッシャーは今年の方が全然きついです。本当に今年は勝負の年、やらなアカン、という気持ちで一杯です。

 谷がチームを離れ、年明け早々には前川勝彦の不祥事。さらには、中村紀洋まで退団する可能性が出てきた。オフの間もまったく明るい話題が見つけられないオリックスの惨状を目の当たりにすればするほど、もはや希望は岡田の活躍にしかないような気分になってくる。あまり必要以上のプレッシャーをかけても…、と言う声があるかもしれないが、僕にはその種の気遣いはない。何よりそのレベルで考えている選手ではないからだ。
 そして、そんなこちらの思いを、引き締まった表情と、控えめながら決意のこもった言葉で岡田もしっかり受け止めてくれたはず。さあ、僕も含め、オリックスファンの期待を一身に、岡田貴弘、勝負の2007年が始まった。

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新しています。次回更新は翌1月21日の予定です。

2006-12-31

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第28回-

Okada_top061231 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。28回目は今年最後の更新です。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けしてきました。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。
 新人として臨んだ今シーズンを振り返ってもらうとともに、いよいよ迫ってきた2年目に向けての抱負について語った模様を、たっぷりとレポートいたします。

               

               

年末は母校・履正社グランドで調整

Okada_batting061231母校・履正社高校のグランドで汗を流す(左から4人目が岡田。1番左が岡田龍生監督)

「こういう風にグラウンドに帰ってきてくれると後輩のいい刺激になりますわ」

「久しぶりに見たら一段と大きなってますね」

 冒頭は履正社高校の岡田龍生監督、次は松平一彦コーチのセリフだ。
 28日、今年最後となる「ナニゴジ奮闘記」取材のため、大阪府茨木市内にある履正社高校の練習グラウンドを訪ねた。昨年から出身校に限り、プロ選手が現役選手との練習が許可され、岡田も21日から後輩たちに混じり練習を続けていた。この日も、朝9時から14時過ぎまでたっぷり体を動かし、そのあと、今年最後となるインタビューを行った。

谷上 気分的にはまだゆっくりしてる?
岡田 でも、もう1月のことも頭に浮かんできて、本当に休める時期は短いですね。
谷上 久しぶりに母校のグラウンドで練習する気分は? やっぱり、かなりリラックスして見えたけど。
岡田 そうですね、2年生と3年生は一緒にやってきたメンバーですし楽しいですね。1年生は全然知らないんでしゃべりにくいところもあると思いますけど。
谷上 技術的な話はしてはいけないというルールがあるけど、練習を見てると、後輩が岡田の動きに注目してる。ティーの時もみんな動きを止めて見てたり。
岡田 僕も逆の立場だったらしっかり見ると思うんで、自分がいい手本になれたらいいなと思ってやってます。

           

The_eyes_of_allplayers_were_focused_on_oティーをする岡田。部員の視線は自然と岡田に集まる

今年1年を振り返る

 続いては、やはり今年最後ということでプロ1年目のシーズンを改めて振り返ってもらった。今季の成績は次の通り。

[1軍]3試合6打数1安打 打率.167 0本塁打 0打点 0四死球 3三振 0盗塁
[2軍]82試合 298打数73安打(リーグ2位) 打率.245(リーグ12位) 5本塁打 27打点 19四死球 75三振(リーグ1位) 6盗塁

 1軍へ上がった期間以外はファームでほぼフル出場。そして出場試合はすべてスタメンで、とにかく実戦経験を積んだ1年だった。その中で1軍では初ヒットも記録。レフト前へのなかなか渋い当たりだった。

谷上 改めて1年を振りかえってみるとケガなく順調にやれたのが一番?
岡田 そうですね。ただ、満足度としては・・・。もっと数字を残せたらよかったんですけど。自分としてはやっぱりホームランの数が少なかったのが物足りなかったですね。
谷上 一番印象に残っている一打は?
岡田 それはやっぱりフレッシュオールスターの時に打ったホームラン。打てるとは思ってなかったですけど(シーズン中から相性の良かった)吉見さんが相手だったのと、ああいう場なので真っすぐ一本に絞っていけたんで。全打席一発しか狙ってませんでしたから。
谷上 逆に悔しかったことは?
岡田 悔しかったのは・・・。どれがというより、1軍でもっと出たかったっていうことですね。やっぱり、打つにしても、ダメだったにしても、1軍で出てなんぼですから。もっと上で経験したかったというのがあります。

            

2年目に向けた新たな動き

Okada_firstbaseman2年目のシーズンはファースト固定での起用がすでに決定。打撃に専念する

 ファームの最終戦が9月2日に終わり、そこからは宮崎フェニックスリーグ、秋季キャンプへと続いた。シーズンでの課題を胸に、1本足からすり足へバッティングフォームを変更。また、レフトとファーストを兼用していた守備もコリンズ監督の意向でファーストへの固定が決定。2年目へ向けて新しい取り組みが始まっている。

谷上 秋季キャンプでは具体的に技術指導はまだなかったということだったけど。
岡田 その中でコーチ(ジョン・ディーバス)から1つ言われたのは「野手を殺すくらいの強い打球を打て!」ということです。
谷上 「殺すくらいに」とは、刺激的な言葉。でも、強い打球が飛ぶ時は調子がいい時ではあるよね。
岡田 そうですね。今年はそういう強い打球が打てる時期が少なかった。
谷上 前にも言ったけど、6月末の甲子園での阪神戦で見た時の状態が一番よかった。いかにも打ちそうな雰囲気があったし、その中で見た強烈なセカンドゴロが忘れられへん。
岡田 あの時が一番よかったですね。その少し前に長岡であった西武戦(交流戦)あたりからいい感じがあって。
谷上 今振り返って、何がよかった?
岡田 なんなんですかね・・・。軽く李承燁の感じをまねしたりはしてたんですけど。姿からタイミングの取り方から。
谷上 それは初めて聞いたけど、なら、調子が落ちた時も、またその感じでやってみようとは?
岡田 同じようにやってもみたんですけど、それがまた違う。微妙に感じが違ったんです。
谷上 守備の方ではコリンズ監督の意向でファーストの固定が決まった。
岡田 守備面の不安はないです。すっきりしましたし、その分、バッティングにも集中できますし。とにかくバッティングです。

              

Okada_and_doiこのブログでも取材した土井健大(今秋ドラフトでオリックスが指名)と。ちなみにこの日はかなり冷え込んだ

大きな期待に対する十分な認識

 ちょうど取材日が履正社高校の年内最終日。年が明ければ、いやが上にも気分も引き締まってくるだろう。スターになる選手の多くは2年目に1軍である程度の結果を残し、その勢いに乗って3年目でブレークというパターンが多い。是非、その流れに乗ってほしい。

谷上 年末年始の予定は?
岡田 29日から3日まではバッティングセンターに通って、徐々にボールのスピードに慣れていって、4日からは「ここ」で手投げの球を打って感覚を掴もうと思っています。そして8日か9日までやって合宿所に戻って、そこから打ち込んでいくと思います。
谷上 去年の今頃とは、気持ちも全然違う。
岡田 そうですね。気分的には今年の方が全然、余裕あります。1年やって流れみたいなのもわかりましたし、キャンプまでにどれくらい動けるようにしておけばいいかというのもわかってるんで。
谷上 今年はそのキャンプでオーバーワークから少し腰を痛めて出遅れた。そのあたりの調整具合もわかってきた。
岡田 そうですね。だから体の面は大丈夫だと思うので、1、2月にいろいろ自分の思うことをやっていって、3月の教育リーグで試して、結果を出していきたい。
谷上 そして・・・。改めて次回の取材でも聞かせてもらうけど、一足早く来シーズンへ向けての意気込みを。
岡田 開幕1軍、まずそれです。
谷上 2年目で手応えをつかんで3年目で爆発。スターになる選手の1つのパターンやけど、そういう予感は感じてる?
岡田 いや、まだ・・・。今年のシーズンがシーズンだっただけに、正直、不安な部分はあります。
谷上 でも、そのくらいの方が不安を消そうと頑張れるとも?
岡田 それもあります。とにかく2年目が大事なんで、やるだけです。

 この取材の前日、楽天に入団が決まった田中将大の壮行会(宝塚ボーイズ主催)に行ってきた。その席でやはり約1年前に行われた岡田の壮行会のことを思い出しつつ、近い将来、岡田貴弘対田中将大がパ・リーグの看板対決になっていくのでは…、という思いにワクワクしていた。

Okadas_cheerful_look_1日本でも数少ない長距離スラッガーとして、かかる大きな期待は自覚している。2年目はそれを結果で示したい

 僕はもちろんのこと、岡田の能力を知る者、熱烈なオリックスファンの期待は引き続き大きい。そこで話の最後に唐突ではあったが「期待の大きさはわかってる?」と聞いた。レギュラーの座やクリーンアップを打つ、というレベルではない期待。本当に松井秀喜に追いつけ、迫れ、というレベルでの期待。そんな思いを改めて伝えておきたくなったのだ。
 それに対する岡田の反応は、少し顔を引き締め、小さく頷くというものだった。
 いつもこのコーナーを読んでくれている人なら、岡田の性格も感じてもらえているだろうが、大きなことを言うタイプでも、ガンガン前に出るタイプでもない。ただ、2年目を前にしての決意は、岡田らしい控えめなリアクションからも、じんわり、確かに伝わってきた。

 短いオフを終えて、飛躍のシーズンへ。これからも岡田を追いかけ続けますので、読者のみなさん、来年もどうぞよろしくお願いします。

 今年1年ありがとうございました!

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は翌1月11日の予定です。

2006-12-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第27回-

Okada_5 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で27回目の更新です。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けしています。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。今回は、本人の話からちょっと外れたアナザーストーリーのようです。

        

オリックスの新人選手達が「のじぎく」を訪問

 今回は岡田に話を聞く時間がなかったので、少しこれまでとは違う感じで書かせてもらう。前回の記事の中でも少し触れたが、オフになるとプロ野球選手はよく養護施設などの訪問を行う。特にルーキーには無条件で義務付けられる場合が多いが、「そのあたりの話」について書こうと思う。そう思ったのも軒作、岸田護、平野佳寿、中山慎也、森山周、柴田亮輔と岡田のルーキー7人が14日に神戸市西区にある「兵庫県立のじぎく養護学校及び療養センター」訪問のニュースを知ったから。
 実はこの「のじぎく養護学校及び療養センター」は、僕も以前訪ねたことがあった。実は先日、世界大会まで開催(11月4、5日・スカイマークスタジアム)されるまでになった身体障害者野球が生まれたといってもいい場所で、僕が訪ねたのもそういった取材の中でだった。「のじぎく」は、オリックスの前身である阪急ブレーブスの時代からオフに若手が訪問していたが、身体障害者野球の誕生には阪急のトップスター・福本豊が大きく関わっていた。

        

Fukumoto阪急時代から続いている「のじぎく」訪問。その背景には福本豊の存在がある

「のじぎく」と福本豊

 もう40年近く前になる1969年の12月。「のじぎく」には、プロ1年目のシーズンを終えた阪急のルーキーたちが慰問に訪れていた。その中に山田久志、加藤英二らドラフト上位組に混じって松下電器からドラフト7位で入団した福本がいた。一通りの選手紹介や挨拶が終わり、レクレーションへと移ると、子供たちの間でたちまち一番人気となったのが福本だった。「よっしゃ、次はなんや」「負けへんで」…。過去に障害者と関わった経験があった訳でも、子供の扱いに慣れていた訳でもなかったが、福本は「自分でもようわからんけど、違和感なく入って行けたわ」と当時を振り返った。
 やがてレクレーションが終わると、個々に子供だちとサインを書いたり、写真を取ったりという選手が多い中、福本は館内にある講堂で虫取りの網を使いながらボールを投げ合う子供を見つけると、施設に使われることなく置かれてあったグラブなどを引っ張り出してきて声をかけた。「よっしゃ、外でやろか!」。
 突然の誘いに一瞬、戸惑いの表情を浮かべた子供たちも、「野球は外でやるもんや」と構うことなく寒空の下へ進んでいった福本のあとについていった。そして、車椅子の者、隻腕の者、義足の者…、たちが入り混じってのキャッチボールが始まった。これが身体障害者野球誕生への大きな一歩となった。

   

福本豊の持つ雰囲気

「あの時の感覚は、本当に最高でね、今も忘れられません」

 そう言ったのは、現在、日本身体障害者野球連盟理事を務め、当時、生徒の1人だった・岩崎廣司。原因不明の難病発症により足を患っていた岩崎だったが、それ以前は長嶋茂雄に憧れる『野球小僧』。寒空の下で投げ合ったボールの感触が、長い間胸に閉じ込めていた野球への思いが呼び覚ました。
 岩崎は、記念すべき“キャッチボール”について聞いた時「福本さんだったから」と言って続けた。

「施設には、いろいろな人が慰問に来てくれましたけど、ほとんどの人は僕らに対して『大丈夫?』『~出来る?』といった感じで恐る恐る接してくるんです。その気持ちもわかるんですけど、それでは間の壁が取れない。だから、あの時も、もし、『野球できる?』『一緒にどう?』みたいな調子で誘われてたら『いや、いいです…』となってたと思うんです。でも、福本さんは、いきなり『よっしゃ、外でやろか』でしたからね。みんなも、僕も、その勢いに乗せられて外へ飛び出して行けたんです」

 このあたりは今も変わらぬ福本の真骨頂だが、この日を境に「のじぎく」では、一気に野球熱が高まった。初めはキャッチボール程度だったものが、やがて三角ベース、ソフトボール、野球へと拡がり・・・、やがて「のじぎく」の卒業生たちがチームを結成するまでに至った。

        

20年経った今もなお

 1981年10月、今や、身体障害者野球の王者として君臨する「神戸コスモス」が誕生し、岩崎も監督としてチームに加わった。一方、福本は、結局、現役引退となった89年まで実に20年もの間、「のじぎく」への訪問を続けた。ほかにそんな選手はもちろんいない。

「2年目に球団の人から『ルーキーだけじゃ勝手がわからんからフクちゃん、また行ってくれるか』って言われてね。それで『ええよ』って言うたら、それが最後まで続いてね。子供たちからいつも元気をもらったし、あの子らが応援してくれてるんやから頑張らな、って思ってたわ」

Jdagame日本身体障害者野球連盟主催の大会は年に「春の選抜」と「秋の選手権」の2回開催されている(写真は筆者が取材時に撮影したもの)

 やがて岩崎が日本身体障害者野球連盟を立ち上げた。すると身体障害者野球の原点をいつまでも忘れないためにも、この先も福本に身体障害者野球の世界を見守ってもらいたい、との思いから連盟への参加を願った岩崎の熱意に応え、今、連盟名誉理事の職にある。そしてそんな肩書きだけでなく、福本は今も今も春(スカイマークスタジアム)、冬(但馬ドーム)で行われる大会に必ず顔を出しスタンドから大きな声を飛ばしている。

         

心の入った社会貢献をしてこそ一流選手

 岡田とは直接か関わりのない話を長々と書いてしまったが、「のじぎく」への訪問を知り、つい書きたくなった。多くの場合、選手たちのこういった訪問も「形だけ」で終わる場合が多い。しかし、本当の一流選手は心も一流なのだ。最近はファンに対する意識も徐々に高まり、先日、社会貢献活動をしたプロ野球人を表彰する「ゴールデンスピリット賞」を受賞した和田毅(ソフトバンク)のように、ボランティア活動へ関心を持つ選手も増えている。ちなみに身体障害者野球にも立浪和義(中日)ら側面から協力する現役選手たちもいる。
 岡田にも野球の技術を磨く一方で、今から心の部分を大いに磨き、ファンに優しく、愛される選手に育ってほしい。こういったものに早い、遅いはない。そして、その気持ち、取り組みは必ずグラウンドの結果にも跳ね返ってくる。まだまだ自分のことで精一杯というのが現状だろうが、頭の隅に常にファンの存在を置いて頑張ってもらいたい。

(取材・本文/谷上史朗)

■日本身体障害者野球連盟の公式サイトはこちら
http://www.portnet.ne.jp/~ciwasa30/

 
このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は12月31日の予定です。年中無休で頑張ります!

2006-12-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第26回-

Okada_batting26 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。オフも絶好調の26回目です。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。長らくお待たせしましたが、今回は久々に本人に直接話を聞くことができたようです。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

 

Okadas_mealtime 急遽予定を変更して岡田の実家へ。バッティングセンターへ行く前にまずは腹ごしらえ

予定変更、急遽、岡田邸へ

 ここ3回はスケジュールが合わず、岡田本人の言葉をじっくりと聞けずじまいだった。そこで今回は…、と連絡を入れると「8日なら時間が取れると思います」と返ってきて、ひとまず日程が決定。当日の岡田は日中、坂口智隆、吉良俊則や他のルーキーたちと県内の養護施設を訪問しボランティア活動に参加。マラソン大会で生徒たちと7キロを走ったそうだが、その後、夜に会ったのは大阪市内のある治療院。カイロプラクティックを用い施術を行っているところで、バランス面での調整を目的に最近通い始めたそうだ。

 19時から1時間余りの治療ということで終了時間を見計らい治療院へ向かうと、間もなく久しぶりの岡田と対面。予定ではそこから軽く食事でもしながら、秋季キャンプでの成果、オフの過ごし方等々、まとめて聞こうと思っていたが…。
 治療院を出たところで「ちょっと打ちたくなったんですけど…」と岡田が一言。「?」と思ったが、近くに中学時代から通っているバッティングセンターがあり「そこへ行って打ちたい」と言う。体を整えたところで感覚を確かめたくなったのかもしれない。僕も久しぶりにバッティングを見たくなったので急遽、予定を変更。まず、岡田の"送迎役"として治療院まで迎えに来ていたお姉さんの車に僕も同乗させてもらい岡田の実家へ向かった。"マイバット"を取りにいくためと、打ち込みの前の腹ごしらえのためだ。

 

岡田人形とのツーショット

Okada_with_okadadoll谷上氏が佐野文二郎氏に特注で製作してもらいプレゼントした岡田人形の横で

 移動中の車内で聞いた話については、次回以降に書かせてもらうとして、20分程で到着。岡田の実家へは昨年発売の「野球小僧10月号」で掲載した特集「ナニワのゴジラ伝説を追う!」の取材でお邪魔して以来だ。たまの息子の帰宅に引っ付いていくのも気が引けたが「いいですよ」という岡田の言葉にも甘え家の中へ。岡田が食事を取る間、横で待たせてもらいながら、母・美津子さんから幼少期のエピソードなどを聞き楽しませてもらった。

 家の中は岡田の写真や記念品の数々で埋められていて「岡田記念館」でも完成の暁には飾る品々に困ることはなさそうだ。記念館と言えば、入団時に僕も岡田にプレゼントしたものがあった。「野球小僧」の表紙でお馴染みの発砲スチロール人形作家・佐野文二郎さんに依頼し作製してもらった「岡田人形」が、それだ。その人形が岡田の部屋に飾られていると聞き、2階の自室にまで入れてもらい記念に本人とのツーショット写真をパチリ。「記念館に飾ってほしい」という佐野さんからのリクエストには笑って応えていたが、将来その日がやってくることを期待したい。

  

Okada_wait中学時代からなじみのバッティングセンターで順番を待つ岡田

夜のバッティングセンターへ

 食事を終えると今度は父・秀和氏運転の車で伊丹にあるバッティングセンター「シャローム」へ。ここは硬球を打てるバッティングセンターとして近隣では知られており、僕も球児だった昔々に何度か通ったことがあった。というわけで、金曜夜の店内も親子連れを中心に賑わっていたところへ、上下赤のジャージに身を包んだ岡田が登場。手にはメイプルとアオダモの2本のバットを携えて。その大きさとやはりプロの存在感に一同の目が釘付けになったことは言うまでもない。

 ただ、「中学時代から行き倒してました」というセンターには馴染みの顔も多く、あちこちから声もかかり岡田の表情も自然と柔らかくなる。まさに「ナニワのゴジラ」の原点と言える場所なのだ。早速、ゲージに入り打ち始めると、まず後ろで見ていた「観衆」からは「あれ木か?」「さすがやな…」の声。木製バットをまるでプラスチックバットのように扱うパワーにまず驚いていた。で、当たりの方は、というと…。「ボールを打つのは4日ぶり」ということもあり、最初の2回は110~120キロのボールを打ち損じる場面もあったが、3回目あたりから「さすが」の当たりを連発。

 秋季キャンプから取り組む「すり足」のフォームはまだしっくりはきていないようだが「足を大きく上げなくなっても飛距離には関係ないと思いますし、慣れてさえいけば」と大きな不安はなさそう。話の流れで秋季キャンプでの取り組みについても聞いたが「まだ手応えと言うより、キャンプは慣らすための時間という感じでした」と、過程であることを強調。ジョン・ディーバス、大島公一の両バッティングコーチからの指導についても尋ねたが、共に秋は選手の力量、特徴の把握に徹していたようで静観を通していたとか。
 ともかく今は何よりも、新しいフォームへ1日も早く慣れる。そのためにも1年の疲れは取りつつも、とにかくバットを振って、ボールを打っていくしかない。

 

趣味は合わずとも野球の話題で…

Okada_wait02今回は岡田の違った一面を見ることができたが、今後もあくまでバッター岡田貴弘として注目していきたい

 営業時間は22時半までのところ、気づけばすでに23時前。ということで間もなく終了となり、僕にとっての贅沢な観戦時間も終わった。そこからは「通り道ですから」という秀和氏の言葉にまたまた甘えて、自宅近くまで送ってもらった。こういう時にはサラリーマン生活を辞めて間もなく車を手放したことを後悔するが、自分でもイヤになる程つたない運転技術と、自分以上の人を見たことがない方向感覚の悪さでは、やはりプロ野球選手は乗せない方が良かっただろう。というわけで、今回は岡田家のみなさんにお世話になりました!

 しかし、「岡田ファミリー」の中に混じり同乗させてもらったお陰で、岡田の素顔も少しは垣間見れ、それもまた貴重だった。岡田が車やゴルフに興味を持っていることも初めて知った。このレポートも26回目になるが、僕との会話では「野球」以外の話題が出ることはほぼ皆無。残念ながら車とゴルフの話題で僕は盛り上がらないが…。大阪人ということでお笑い好きででもあれば自信アリだが、タイプ的に岡田にその手の趣味はなさそう。

 ただ、機会があれば「野球以外」でも通じる話題を見つけていきたいとも思いつつ、やっぱり僕の関心は野球。限られた取材時間を「野球以外」の話に費やすのは、まだまだもったいない。趣味は合わずとも、このレポートはあくまでナニゴジの成長日記として硬派に(!?)まとめていきたい。
 僕が興味があるのは何より「バッター岡田」なのだから。

(取材・本文/谷上史朗)
 
このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は12月21日の予定です。

2006-12-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第25回-

Doi_batting シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は25回目。オフも絶好調です。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。

 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワ のゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。
 今回は残念ながら本人の談話はお預けになってしまいましたが、来年からオリックスで一緒にプレーすることになった履正社高校時代からの後輩、土井健大選手の取材を敢行しました。岡田選手卒業後、「ナニワのゴジラ」ならぬ「ナニワのミニラ」と異名を取った強打で甲子園出場を果たした土井選手の話も大変興味深い内容だったようです。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!
 
 
「ナニワのミニラ」こと土井健大を取材

 さて、今回は岡田に話を…、と思い本人に連絡を取ったが、ファン感謝デー、納会、契約更改…、と行事が続き、こちらの予定と会わず。そこで今回は、岡田の履正社高校の後輩で、この度のドラフトでオリックス入りが決まった土井健大選手を紹介したい。
 土井は高校通算43本塁打で岡田のあとを継いだ履正社の4番。加えてキャッチャー&キャプテンとしてもチームを引っ張り「ナニワのゴジラ」ならぬ「ナニワのミニラ」と異名を取っていた選手。
 急な依頼だったが、高校時代に岡田の取材で何かとお世話になった野球部の岡田龍生監督の計らいで、テスト期間中にも関わらず話を聞けることになった。
 1時間あまりたっぷり話してくれた内容のごく一部しか紹介できないが、ひとまずスタート!

   

Doi_kentaドラフト指名されたときのことや、先輩・岡田について話す土井健大

ドラフト前夜は一睡もできず

谷上 改めて、ドラフト当日の話から。オリックス5巡目、全指名33人中33番目での指名やったけど。
土井 当日まで、かかるかかからないか、まったくわからない状況だったんで前の日は一睡もできませんでした。普通に授業を受けていて、休み時間に野球部の仲間が見てきてくれた時には「3巡目が終わっても指名はなかった」って。それが最後に「5巡目で指名されたぞ!」って魚谷貴大(夏までのエース)が教えてきてくれた。ホンマかウソか、とにかくプロへ行きたかったんで嬉しかったです。
谷上 指名されたのがオリックス。岡田と同じチームになった。
土井 履正社からは岸田さん(護・東北福祉大-NTT西日本-オリックス)も入られてるんですけど、1年上に先輩がいるというのはやりやすいです。ただ、去年、岡田さんがプロへ先に入って負けたくないという気持ちもあります。岡田さんからは高校時代にも「お前は相手にしてない」って言われてたんですけど、プロに入れば学年関係はないので、勝負したい。
谷上 あくまで1人のライバル。
土井 そういう気持ちは強いです。

   

Okadadoi2年時ですでに岡田(写真手前)の後の5番を打っていた土井(写真後方)。自身の代では4番捕手としてセンバツ出場を果たした

岡田との出会い

谷上 高校時代の岡田についてはどう見てた?
土井 実は僕が中学で打ち出した頃、一度、でっかいホームランを打ったことがあったんです。でもその時、ボーイズリーグの関係者の人が「岡田はもっと凄いで」と言ったのを聞いて「岡田って誰や、どんな選手や」って思ったんです。それが岡田さんを知った一番最初。それが履正社へ入ってみたら岡田さんがいて。「この人か!」って思った。
谷上 実際に見てみたらやっぱり凄い!と。
土井 はい。でも…、一番最初はオーラがあんまりないなあ、って(笑)グラウンドを見渡してもどれが岡田さん? って感じだったんです。でも、それが2年の夏に爆発してから、そのオーラが出てきた。
谷上 その岡田もプロ1年目は、いろいろと苦労しながらやってた。バッティングでは、高校時代とは、ボールの切れも違うし、変化球では落ちるボールの割合が格段に増える。そのあたりは?
土井 もちろん最初は苦労するでしょうけど、バッティングは慣れていけば何とかやっていけるかなと思ってます。プロで通用するには逆方向に打たないとダメだと思うんですけど、そこは高校時代も意識してやってきました。理想のタイプは、場面によって打ち方を変えられて、勝負強さを備えたバッター。ツボにくれば一発もあるけど、しぶとさ、器用さも持っておかないとやっぱりダメだと思うんで。

   

自身が目指す選手像とは?

谷上 プロでこのバッターいいな、と思う選手は?
土井 日本シリーズで見た森本選手(稀哲・日本ハム)が頭に残ってます。何故かっていうと、ボールの待ち方が、自分と似てるなと思って。
谷上 というのは?
土井 日本シリーズで打ってたのはほとんど真ん中から外のボールだったんですけど、確実にコースを決めて打ってる感じがしたんです。やっぱりバッテリーの攻め方の基本は外。最後も外にくることが多い。自分がリードする時のことを思っても、外に頭を置きながら他のコースに対応する形がいいと思ってます。
谷上 キャッチャー目線を生かしての待ち方。
土井 マスクをかぶっていて、どのタイプがイヤかっていったら僕はコースで張ってくるバッターがイヤ。それに、実際インコースを3つ突けるキャッチャーも滅多にいませんし。
谷上 キャッチャーとして守りの方は?
土井 今の時点での僕の評価はバッティングだと思うんですけど、夏に引退してから守備面をもう1回見直してやってます。元々、動けるので、あとはスローイング。投げ方自体を今、修正していい感じになってます。
谷上 これまでを見てきて、やはりスローイング面が一番の課題だと思ってた。
土井 ランナーが走ると「早く投げないと」っていう意識が先に立ち過ぎてバラバラになっていた。左肩が入り過ぎて、体もねじれて投げるような形になって送球が浮いたり、逸れたり…。でも、そうならないために、まず自分から投球を捕りにいかない。そしてしっかり足を使って投げるということを強く意識してやってると、腕も振れるようになって送球も安定してきました。
谷上 あとは捕手としての頭の部分。
土井 これまでも配球面にはかなり自信を持ってやってきました。もちろん、これからまた勉強ですけど、そこは自分の持ち味と思っています。あと、キャッチャーの役目としては、ピッチャーに対してどれだけ気づいたことをアドバイスできるか。いくら年上の人であってもしっかり言っていけるようにしたい。
谷上 最後に改めて来シーズの目標を。

Doi_catchar自慢の強打以外に捕手としてのこだわりについても話してくれた土井。将来は岡田とともに中心選手としての活躍を期待したい

土井 やるからには開幕から一軍を狙っていきます。周りからは2、3年後とかって言われますけど、1年目からでもチャンスあれば上がれる。自分で2、3年後なんて思ってから絶対ダメだと思いますからね。
谷上 岡田共々、期待してるので。
土井 ありがとうございます。頑張ります!

 これはほんの一部。ほかにもリード面でのこだわりや、岡田にまつわるエピソード、同じく高卒でプロ入りした橋本良平(智辯和歌山)へのライバル心、等々、まだまだ書きたい事はあったが、行数にも限りがあるので今回はこのあたりで。
 しかし、一言で言うとのんびりタイプの岡田とは対照的にガンガン自分をアピールしてきた土井。ある意味で岡田とはいいコンビになりそうな予感がした。互いに刺激しあって、低迷オリックスを救ってほしい。
 
※話の中でオリックスの捕手陣の話題になった。その時、先日トレードでロッテから加入した辻俊哉の存在を忘れていた。このページを本人も見てくれるようなので、念のためお知らせ。ライバルに負けるな!

 
(取材・本文/谷上史朗)
 
このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は12月11日の予定です。

2006-11-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第24回-

Okada_top24 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今週でもう24回目です。元気に続いております。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。高知で行われていた秋季キャンプは昨日打ち上げ。今回は岡田の仲間でもありライバルでもある同期のプロ1年生について振り返ります。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!
 
 
ゴールデンルーキーたちのプロ入り後を振り返る

 岡田が参加していた高知の秋季キャンプ。ずっと気にはしていたのだが、アジアシリーズ→明治神宮大会→岡山→和歌山→姫路→大分…と、他の取材で奔走する間に気付けばキャンプ最終日の20日となってしまった。
 彼の秋の成長、苦悩ぶりは、まとめて本人の話を聞いてから次回以降にたっぷり紹介するとして、今回は岡田と共に今年プロの門をくぐった高卒ルーキーたちの1年をざっと振り返ってみようと思う。「ナニワの四天王」のほかにも大豊作と言われたゴールデンルーキーたちはスタートはどうだったのか?
 
 

Hirata高校時代から続く右肩痛に不安はあるが、打撃面で片鱗をみせた平田

打撃面で「らしさ」出した平田良介(中日)

 まずは平田良介(中日)。落合博満監督の強い要望で高校生ドラフト1巡目で入団も、高校選抜チームの一員として参加した昨秋のAAA大会時に痛めた右肩(関節唇)の影響で春季キャンプから別メニューでのプロスタート。
 5月に戦列に復帰し、シーズン中の姿はこのレポートの中でも何度か書いたが、何より気になるのは高校時代の面影を完全に失った肩。強打の一方でプロに入れば「強肩」と「足」が、平田の大きな武器になると思っていただけに心配だ。シーズン後半も全力での返球を見ることはできなかった。
 一方の打は、「さすが」というものは見えた。高校時代から通常より重めの竹バットで振り込んできただけにスイングの鋭さなどは高卒らしからぬものがあった。ただ、岡田とは違い小柄な体で飛ばすための肝でもある体を使いより遠心力を生かそうとするスイングはプロの投手のスピード、キレの前では差し込まれる場面も多かったように思う。
 秋季キャンプでは岡田同様、フォームの修正に取り組んでいるという。聞こえてきた話ではテークバックを小さくするというのが1つのポイントのよう。シーズン後半には構える前に大きく反り返り、バットを神主のように体の前に垂らす動きも影を潜めていたように、平田と言えども「これまで通り」というわけにはいかないということ。ただ、それより何より右肩の完治が待たれる。
 
[ファーム成績] 45試合131打数35安打 3本塁打23打点 打率.267
[1軍成績]2試合2打数0安打

 
 
辻内崇伸(巨人)はハワイの経験が生きるか? 

 辻内崇伸(巨人)のイースタンでのプロデビュー戦はCS放送を録画して見た。3回2死までに奪ったアウトのすべてが三振という内容はインパクト十分だった。そこからHRを含む3連打であっという間に3失点を許しはしたが…。
 ただ、その後は大きな話題に上ることはなく、昨夏以来となる岡田との再戦も期待されたフレッシュオールスターも左肩痛のため辞退。その後、早々に優勝争いから脱落した1軍への昇格も噂されたがこちらも見送られた。
 今は10月1日から始まり明日11月22日に終了するハワイのウインターリーグへ参加して揉まれている。伝わってくるニュースによると、日によって好不調の波は大きいようだが、初登板時は6回を投げ1安打8三振、2四球。18日の最終登板では4回3分の2で2安打、2四球、4三振、無失点。力も示している。
 その辻内がハワイで取り組んでいるのがチェンジアップ、スライダーの習得。一番の武器はストレートで、あとは平均的なカーブとフォークが主だったが、そこへカウントを整えやすいボールとしてスライダー、勝負球としてチェンジアップを磨いているようだ。
 しかし、1カ月半に及ぶ海外での実戦経験は技術面だけでなく精神的にも大きな財産になったはず。来季の大きな飛躍へつなげられるか。
 
[ファーム成績]13試合3勝4敗 53回3分の2 47奪三振 41四死球 防御率6.04
 
 
鶴直人(阪神)はしっかり投げられる状態を

 四天王のもう1人、鶴直人(阪神)は高校3年の夏前から不安を抱えていた右ヒジ痛の影響から今シーズンはファームでも登板はなし。現在もとにかく体力強化が一番の課題でまずは不安なく投げられる体になることが先決。
 去年の春先に近大付高のブルペンで捕手の真後ろから見たストレートは本当に惚れ惚れする美しさだった。あれだけキレのあるボールを投げる投手は滅多にいないだけに、来季はまずファームでしっかり投げてほしい。
 
[ファーム成績]登板なし
 
 

Sumitani開幕直後に戦列デビューを飾った出世頭の炭谷は、その後はプロの壁に悩んだ
1軍の喜びと苦悩を味わった炭谷銀仁朗(西武)

 「四天王」以外の高卒ルーキーでは、まずは炭谷銀仁朗(西武)。高卒捕手として51年ぶりの開幕スタメンマスクをかぶり、春先は話題を独占した。5月にスカイマークで行われたオリックス対西武戦をスタンドから観戦した岡田も一歩先をゆく同級生に「すごいですよねえ・・・」と大いに刺激を受けていた。
 が、その炭谷も1ヶ月を過ぎたあたりからプロの壁にぶち当たる。特にバッティング面。5月半ばに取材した時には「もう何が来ても打てません」と珍しく弱音を吐いており、その直後に2軍落ち。1カ月ほどで再昇格を果たしたが最後まで苦悩は続いた。フレッシュオールスター時に会った時も「左ピッチャーならまだ何とかなるんですけど、右の時はまったく…」と浮かない顔だった。
 それでもプロでも屈指の「強肩」と自らパソコンを購入し配球の勉強をするなど研究熱心な一面、加えて平安で鍛えられたハートもある。来季の巻き返しへこの秋も燃えているはずだ。
 
[1軍成績]54試合138打数25安打 3本塁打14打点 打率.181
[ファーム成績]13試合34打数6安打 1本塁打3打点 打率.176

 
 

Yo陽は1軍での公式戦出場こそなかったものの、ファームでしっかり経験を積んだ
陽仲壽(日本ハム)はファームで順調に成長

 ファーム組では陽仲壽(日本ハム)が極めて順調なスタートを切った。アジアチャンピオンに輝いたチームにあって、1軍での試合出場のチャンスはなかったが、ファームでは両リーグ最多の91試合に出場しリーグ打撃成績7位の結果も残した。本塁打もリーグ6位の9本。
 この秋は台湾代表に選ばれたインターコンチネンタル杯に参加。その後、12月には2週間の兵役を務める。この秋はじっくり腰を据えて鍛えたかったという思いもあるだろうが、一味違った経験を経てまたスケールアップする可能性は十分。来季は札幌ドームの試合でその雄姿を見られるのではないか。
 
[ファーム成績]91試合351打数96安打 9本塁打35打点 打率.274
 
 
若竹竜士(阪神)はこの秋赤丸急上昇

 この秋、関西のスポーツ紙を何度か賑わせているのが若竹竜士(阪神)。若竹と岡田は小学校時代から対戦を重ねており、中学時代には「生涯最高の当たりかもしれない」と語る特大アーチも放った相手。その若竹とはファームで夏前に対戦したがその時は、打ち取られた。「スローカーブにやられた」と岡田から聞いた覚えがあるが、それが今「あのボールが面白い」と岡田監督の目に止まった。聞けば最遅82キロとか。
 一方でこの秋はその使い手として知られた久保ピッチングコーチから「曲がりの小さいスライダー」の伝授を受け取り組み中。早い時期にまた岡田との再戦を見たいものだ。
 
[ファーム成績]11試合0勝0敗 28回3分の2 23奪三振 19四死球 防御率4.08
 
 

Okada_batting24 そして岡田は高知での秋季キャンプで何をつかんだだろうか?
そして岡田の秋は?

 ライバルであり仲間でもある同世代の選手たちも、ルーキーイヤーは厳しい戦いを強いられていたことは成績ひとつから見てもわかる。そして、この秋は各選手とも新しいフォームや球種の獲得へ取り組み来季の飛躍に備えている。
 そして、岡田も前回ここでも書いたように、足を大きく上げる形からすり足へとタイミングの取り方を変え、新フォームに挑戦中。だが、20日付けの日刊スポーツ(大阪版)に「秋季キャンプの自己採点は50~60点」とあったように、高知では満足のいく結果は得られなかったようだ。「まだまだですねえ・・・」という冴えない岡田の顔が浮かんでくる。
 ただ、そう簡単に形を掴めないのは当然のこと。秋季キャンプは終わっても、今度はここから来季のキャンプまでにどう作っていくか。そのあたりも今後のレポートの中で紹介していきたい。
 
 
(取材・本文/谷上史朗)
 
このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は12月1日の予定です。

2006-11-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第23回-

Oakda_top23  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今週は第23回目です。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。チームが新体制に変わる中、現在、宮崎で行われている教育リーグ「フェニックスリーグ」では、視察に来たコリンズ新監督からも将来の大砲候補として指名されました。現在は高知で行われている秋季キャンプに参加中です。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

    

フォーム改善はシーズン中からの試行錯誤の延長

 「なにわのゴジラ大噴火 満弾 岡田」
 9日付けの日刊スポーツ(大阪版)に写真入りで岡田の記事が載っていた。岡田ファンならすでにご存知の通り、秋季キャンプの第2クール最終日、満塁想定のシート打撃で山口和男から放った一発を伝えたもの。小見出しには「すり足打法の成果!コリンズ監督も絶賛」とあった。

Nakamuranori豪快な1本足が魅力の中村紀洋だが、コリンズ監督の中ではフォーム修正案もあるという
 それまでの紅白戦は2試合ノーヒットというから、この一発で「確実性アップ」と騒ぐのはどうかと思うが、フォーム修正がいい方向へ進んでいるのなら嬉しい限りだ。新聞記事には「中学時代以来」とあったが、この部ログで何度か書いてきた通り、大きく上げていた右足をすり足への修正はシーズン中にも試してきたことで、今回は本腰を入れて取り組み始めたということ。これも秋季キャンプに入った直後に自らの考えで取り組み始めたもので、その結果、コリンズの考えにも一致したという流れだ。

 ちなみにコリンズは岡田だけでなく、同じく投手寄りの足を大きく上げる中村紀洋(以後ノリ)のフォームの修正も口にしている。理由として手首への負担も挙げているが、一番は「確実性の低下」を問題視してのことだろう。こちらも日刊スポーツ紙面の文面を借りれば<腕力に任せてボールを飛ばしていたが今季は打率2割3分2厘、12本塁打、45打点と不振。年齢からくる反応の遅れで差し込まれるケースもあった>。ノリのバッティングを<腕力に頼った>と表現するのはまったく逆で、何よりノリはあの体ではあるが驚くようなパワーの持ち主ではない。むしろ技術で飛ばすタイプなのだ。
 ともあれ“ああいう”アクションの大きいフォームは結果が出ないとその形へ原因を求められやすい。そこで今回は岡田も試行錯誤を繰り返すフォーム、中でも「足元」について少し考えてみる。

  

Howard3_1メジャー選手の多くがすり足タイプ。日米野球で活躍したハワードもそうだ(写真・中川和泉)

「足上げタイプ」か「すり足タイプ」か?

 そもそもアメリカでは岡田やノリのような「足上げタイプ」は好まれない。7日に観戦した日米野球時に改めて試合前の打撃練習からメジャー選手の足元へ注目したが、大きく足を上げる選手は皆無で、わずかに上げるすり足タイプが主で、ノーステップに近い選手も数人いた。メジャーの打撃投手の投球テンポは日本に比べ格段に早いため、打撃練習時にしっかり形を作る時間もないが、最も足を大きく上げていたのは城島くらい(日本ではごく普通の形だが)。試合へ入っても大きく足を上げるメジャー選手は見当たらなかった。
 今回の日米野球5戦で4発を放ったライアン・ハワード(フィリーズ)もそう。バッターボックスをフルに使ったオープンスタンスで構え、そこからスクエアへ戻し打ちに行くが、足が地面から浮くのはわずか。一般的に考えれば、その方が岡田が新フォームの感想として語っているように「目線が安定する」と考えられやすい。しかし、単純にそういうことなのだろうか…。

   

「モーやん」こと小川亨氏に聞く足上げ論

 この原稿を書く直前にかつて近鉄で「モーやん」の愛称で親しまれた小川亨氏に打撃論を聞く機会があった。小川氏は自身もプロで1634安打を放った好打者だが、のちにオリックス、近鉄で打撃コーチを歴任。オリックス時代はまだ世に出る前のイチロー(マリナーズ)も指導しており、中西太氏も認める「打撃理論」の持ち主でもある。その小川氏に「足の上げ方」についての考え方を聞いた。
   

Mo_yan 現役時代は「三振しない打者」として名を馳せた小川氏。足の上げ方より下ろし方の方が肝心と説く

小川 まあ、すり足にするのか、足を上げるのか。タイミングの取り方ですから、それ自体は自分に合うならどっちでもいいんですよ。足を上げることで上下動が大きくなって確実性が落ちるという人もいるけど、それは足を上げること自体が問題じゃない。
谷上 と、言うのは?
小川 門田(博光・元南海ほか)っていたでしょ。あの人は大きく足を上げて打ってた。あの小さな体で飛ばすために、常にフルスイングしてたけど、あそこまで振らなかったら3割なんか毎年打てる技術がありましたよ。ノリだってそう。要は足を上げることじゃなくて、カギは上げたあとの下ろし方。門田はケツの方から投手方向へジワ~ッと右足を下ろしていったでしょ。一言で言えばあの「間」が作れるかどうか。
谷上 そこで「ドタッ、バタッ」と下りてしまっては目線のブレも大きくなる。
小川 そう。上体から投手方向へ行ってしまって、よく言う突っ込んだ形で、そのままバタンと下ろすと、当然、目線のブレレは大きくなる。そこでジワ~ッと下ろせるかどうか。下ろすまでの「間」もないと緩急の変化にももろくなるし、タイミングも合いづらくなる。
谷上 当然、確実性も落ちる。
小川 そう。だからコーチが下半身の使い方を教えてやればいいんです。そして自分でも、ジワ~ッと、ジワ~ッと、と下の動きを意識して、練習の中で覚えていくしかない。そこにはもちろん、軸足でしっかり立って、粘って間を作れる強靭な強さがないとダメですよ。足を上げる選手は普通の選手より、軸足が強くないと。ノリも結局、ここ数年苦しんでるのは軸足を故障して粘れなくなったからですからね。
   
 ノリの軸足の話はここでも書いたことがあるが、その強さがあって、ジワ~ッと降ろせる「間」が作れれば、足を上げること自体に問題はないという見解だ。

   

いずれにしても強靱な軸足を

Okada02_1写真は足を上げていた頃のもの。どの形にしても軸足の粘りが必須条件だ

 足を上げるバッターは、その行為によって投手とのタイミングを合わせようとする。ここでメジャーの投手のフォームには日本の投手のような「間」がないことが多い。そのフォームからかつ、スピードボールが多くくるわけだから、より「すり足」「ノーステップ」タイプが増えていくということはあるだろう。加えて「メジャーの選手はステップなしで打っても体に力があるから飛ばせるけど、日本人は体を十二分に使わないと飛ばせん」(小川氏)ということも確かだろう。
 その点、岡田には日本人離れしたパワーがある。すり足にしても本来の持ち味に影響が出ることはないだろうし、松井秀喜(ヤンキース)や松中信彦(ソフトバンク)のように、足を上げなくても飛ばす選手もいる。ただ、長年染み付いたタイミングのこと。もし、どこかですり足が合わず再び「戻す」時期があったとしたら、その時は、門田ばりの「間」を十分に感じさせる着地型を目指してほしい。いずれにしても、フォームを安定させ、パワーを生み出すには軸足の強さは不可欠。以前にも書いたが、残り10日を切ったキャンプの中でも、いじめすぎる程にいじめて強靭な軸足を作り上げてほしい。
   
   
(取材・本文/谷上史朗)
   
このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は11月21日の予定です

2006-11-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第22回-

Okadatop シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今週は第22回です。

 昨秋、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。チームが新体制に変わる中、現在、宮崎で行われている教育リーグ「フェニックスリーグ」で奮戦中です。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

    
コリンズ新監督が宮崎を視察

Terry_collins_manager_1コリンズ新監督(右から2番目)がフェニックスリーグを視察。多くの報道陣が集まった

 このレポートが掲載される前日から岡田は高知での秋季キャンプをスタート。11月20日までの約3週間、野球漬けの毎日が続く。
 さて、キャンプレポートの前に、今回は10月24日にトンボ帰り取材となったフェニックスリーグ(対ロッテ)の模様をお伝えする。
 宮崎空港から車で約20分。向かった先は「生目の杜運動公園」内にある「生目第二球場」。その向かいにある「アイビースタジアム」と共に園内一帯はソフトバンクのキャンプ地として利用されている場所だ。
 10時前に到着すると間もなくサーパスの選手がやってきたが、その前から報道陣の姿もチラチラ。本来、こういった秋のリーグにマスコミの姿は皆無だが、この日は新監督・コリンズの視察日ということでの「集まり」だった。僕も久しぶりに顔を合わせた久保充広マネージャーから「それで今日来られたんですか」と聞かれたが、僕の目的はあくまで岡田一本だ。
 しばらくすると、練習前のナインを集めコリンズが挨拶を行った。何と言ってるのかわからず、通訳の声もよく聞き取れなかったが、最後の「Good Luck」の一言だけははっきり聞こえた。コリンズとの出会いが岡田にとっての大きな幸運となってほしいものだ。

 

住友2軍監督の言う「いい音」

Okada_hit_off_a_tee_1ティーバッティングを行う岡田。「いい音」が出るかどうかがポイント

 10時25分からサブグラウンドでアップが開始。その様子を横で見ていた住友平2軍監督に挨拶がてら、僕の「おかっけ状況」を説明。またそのついでに岡田の印象を聞いた。

住友 うん、岡田ね。楽しみやけどすべてこれから。でも、ここ数日でもバットの軌道とかタイミングも少しずつよくなってきてるわ。これからは本人に野球のね、正しい理論をわからせていかなアカン

 監督、よろしくお願いします!
 間もなくバッティング練習へ移ると、岡田はその住友監督相手にティーバッティングを開始。僕はこちらへ向かって打ってくる形の岡田のバッティングを贅沢にもネット裏、真正面から観戦。迫力があるのは当然として、時折、3球に1球ほどの割合で住友監督から「よっしゃ、今のところや」と声が飛ぶ。その時は僕の耳にもバットがボールを捉えた音が明らかに違うことがわかった。木製バット特有の「カシーン」という乾いた、実に心地いい音が響いていたのだ。
 芯で捉えることはプロのティーバッティングだから当然として、いいポイントで捉え、かつスイングスピードがあるから出る特有の音。以前、福本豊氏が若手選手を教えていた時「音が変わるポイントがあるやろ。そこを覚えろ。バットが“抜けて”音が変わるんや」と熱っぽく言っていたが、まさに「その音」。そして、僕が岡田の「いい音」を聞きながら思い出したのは、かつて宮古島で聞いたイチローの音。まだオリックスにいた当時のイチローのティーバッティングを平良市民球場のネット裏からじっと観察したことがある。するとやはり他の選手とは違う「いい音」を連発していたのだ。いいバッターのティーバッティングというのは見ていても本当に飽きないが、岡田にはこれからますますティーを磨き、イチローの音に近づいていってほしい。

             

Oshima_coach_1試合前、大島公一コーチの指示に耳を傾ける岡田(左から2番目)

試合前の岡田を直撃

 さて、フリーバッティングも終わり、シートノックへ移るところで一瞬、グラウンド横のプレハブへ着替えに出てきた岡田を直撃した。

谷上 引き続き好調?
岡田 まあまあです。
谷上 相変わらず練習はキツイ?
岡田 いや、もう結構慣れました。
谷上 早いなあ(笑)。ところで、フェニックスリーグでの好調の秘密は改めて何だと?スローボール打ちの効果というのも言ってたけど?
岡田 あと、ちょっと変えたのは足の上げ方ですね。こっちへきた頃の感じはイマイチだったんで、足を(大きく)上げずに打つようにしたんです。それが結構、いいのかも。
谷上 シーズン中にも上げなくしたことはあったよな。
岡田 はい。でも、その時よりも今の方がいい感じだと思います。自分の判断でやったんですけど。
谷上 今日は新監督も来てるけど。
岡田 アピールしたいですね。
谷上 俺も1発見たいし。
岡田 頑張ります。

 12時半に始まった試合に岡田は「5番レフト」で出場。しかし、期待したバッティングは、サーパス打線が15安打、11点と大爆発する中、3打席目のセンター前ヒット1本のみ。
 4打数1安打の結果以上に、凡打に終わった三塁ファウルフライ、ショートフライ、ショートゴロも含めタイミングがずれていたように見えた。力みも入っていたのか、ティーバッティング時の「いい音」は聞けずじまいだった。

               

思いもよらぬ人物が隣席で観戦

 ネット裏では僕の斜め後ろでコリンズが視察していたが、その周辺が沸いていたのはコリンズへ背番号「1」を譲った後藤が2ホーマーを放った時のみだった。
 その代わり、と言ってはなんだが面白い話を1つ紹介する。実は、試合が始まった直後「ここいいですか」と僕の横に何と小泉社長が座ってきたのだ。コリンズの視察に会わせての訪問だったが、まさか社長と並んで観戦することになろうとは。結構、気さくに話かけてきたのでアレコレ答えていたが、途中、岡田の話にもなった。

Okada_running_2和製長距離砲として岡田にかかる期待は大きい。秋季キャンプでも鍛えに鍛え、明日の飛躍につなげたい

谷上 春先から岡田を追いかけてやってるんですけど、小泉社長の期待も大きいですよね。
小泉 こういう長距離砲っていうのは日本ではなかなかいませんからねえ。松井選手、松中選手くらいですか。何とか上手く育ってほしいですね。
谷上 本当にそう思います。
小泉 それに彼は非常に人間性が良さそうなので、そういう面でも頑張ってほしい。
谷上 子供たちの目標となるような選手に。
小泉 そうですね。来年1軍で30、40試合くらい出て、再来年にバッと行ってくれれば…。楽しみにしてます。

 試合前にも“場外”で見かけた岡田を小泉社長が呼び止め激励の言葉をかけるという光景があった。方々からの大きな期待を力に変えて大きく育ってほしい。
 そのためにも――。
 しつこいようだがこの秋。どこかで1度キャンプ取材にも向かう予定だが、たっぷりしごかれヘロヘロになったゴジラを見るのも悪くないと思っている。

[フェニックスリーグ最終成績]
14試合51打数14安打、打率.275、2本塁打、5打点、5四球、14三振

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は11月11日の予定です。

2006-10-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第21回-

_okadatop  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で21回目です。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。チームが新体制に変わる中、現在、宮崎で行われている教育リーグ「フェニックスリーグ」で奮戦中です。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

Okada_batting_7シーズンは終了しても若手選手に休みはない。岡田は現在、宮崎のフェニックスリーグで奮戦中

西京極球場にて堀井スカウトに聞く
 19日、大学・社会人ドラフトの目玉でもある大隣憲司(近大)vs金刃憲人(立命館大)の、大学最後の対決を取材で西京極球場にいた。すると、そのネット裏でオリックスの堀井和人スカウトとバッタリ。話題は注目の2人からやがて堀井さんの担当でもあった岡田へと向いた。
「調子ええみたいやなあ。もう2本やろ(宮崎で開催中のフェニックスリーグにて)。順調、順調、順調に来てるわ。また来年のキャンプが楽しみや」

 堀井氏がスカウトとして近鉄時代に初めて手がけたのが中村紀洋で、オリックスと合併後の第1号が岡田。そんな堀井氏は、若かりし頃の中村紀の成長を思い出してか「この秋で伸びる選手はグッとくるからね」と、岡田への期待を口にしていた。

 西京極での観戦を終え、夕方に外で食事を取っていると、店に置いてあったテレビでコリンズの監督就任会見のニュースが流れていた。
 「来年の目標は?」との問いに「簡単です。英語で『W・I・N』勝つことです」と言っていい笑顔を見せていた指揮官。3年契約ということなので、しっかり土台からチームを作りなおしていってほしいが、首脳陣の交代時が若手が飛び出す絶好機でもある。かつてのイチローの例を持ち出すまでもなく、岡田にとっても来季は大きな飛躍のチャンス。追い風に乗れるかどうかは本人次第だ。
 確かに何かを期待したくなる雰囲気を感じたコリンズの会見を見ていると、岡田の話も聞きたくなってきた。そこで本当なら、<20日の夜に…>と思っていた電話取材を1日早め10時過ぎに連絡を入れた。

           

淡々としていた電話取材の裏には

Okada_deffence好調中の電話取材にしては淡々としていた岡田。そこからは、もっと高いところに目標をおいている意識が感じられる

谷上 調子良さそうやなあ。
岡田 感じは結構いいですね。
谷上 何か好調の秘訣が?
岡田 特に変わったことをやってるというのはないんですけど。緩いボールを練習でよく打ってるくらいですかね。しっかりボールを引き付けて打つということなんですけど、そういう意識がいい結果につながってるのかも。
谷上 今日を入れて9試合でホームランが2本。シーズンを思えば驚異的なハイペースや。
岡田 (笑)
谷上 1本目は?
岡田 日本ハム戦(15日)で右のサイドのピッチャー(橋本義隆)からです。真ん中高めの真っ直ぐ。バックスクリーンの辺に飛びました。
谷上 2本目は?
岡田 一昨日の楽天戦(18日)で片山(博視)からです。これも高めの真っ直ぐでバックスクリーン左。片山はあんまり調子もよくなかったみたいですけど、2本とも手応えは良かったです。

 片山からは高校時代にも報徳学園のグラウンドで特大弾を放っているが、それに続く一発。なかなか好相性のようだ。しかし"好調"にも特に声が弾ませることもなく、淡々と振り返る様子にはもはや意識が「そこ」にないことを物語っている。堀井さんの言う「グッと来る」秋となりそうな、そんな気配を感じた。最後に、首脳陣の多くが変わり再スタートを切ったチームについても聞いてみた。

谷上 新体制はどう?
岡田 いやあ、しんどいですよ。練習時間も長いですし、結構、厳しいです。
谷上 新しくバッティングコーチになった大島さんから何か言われてる?
岡田 まだ特には…。今はとりあえず見てもらいながら、自分ではこれまでやってきたことを頭に置いてやってます。
谷上 この秋で何かつかめそうな感じはある?
岡田 つかめたらいいですね。

            

新体制でさらなる「野球漬け」を

 岡田はここ2試合はノーヒットで打率をやや下げているようだが、全体としてはひとまずは順調なようだった。その中で本人の口から「厳しい」という一声を聞いた時には、思わずニヤッとなった。

 かつて中村紀の取材中に「3年目まで野球漬けでやったから今がある」という話を聞いたことがある。当時、水谷実雄コーチ(現・阪神2軍コーチ)のマンツーマン指導による練習量は尋常ではなく「ノリじゃなかったら潰れていた」という関係者からの声も聞いたことがある。
 あるいは若かりし頃のイチローがキャンプ時にマシンを使い3時間連続で打ちっ放しをしていたという話を聞いたこともある。要は、のちにスターとなる選手には、それこそ語り継がれる猛練習をこなした時期が必ずあり、岡田にとってそれをすべき時期は「今」なのだ。

Goodluck_for_nwesystem_okada住友平2軍監督のもと、新体制では猛練習の日々が続く。岡田にとってそれが追い風になることを期待したい

 だから、「厳しい」と言った環境の変化に触発され、岡田がこれまで以上に野球の虫となっていくことへの期待が膨らんだというわけ。

 今回、2軍監督に就任した住友平氏は、かつて阪急黄金期に上田利治監督のもと、若手育成のためファームでコーチ経験を積んだ人。のちに日本ハムでも上田監督から呼ばれ1軍コーチを務めたが、とにかく厳しさには定評がある。「体で覚えろ!」というタイプで、ある意味で旧式な感覚を持つ住友氏のサーパス監督就任は、岡田にとって案外悪くないような気がする。
 しかも、フェニックスリーグでは岡田を常に5番で起用。12日の巨人戦では4番も任せるなど、打順ひとつにしても大きく育てようという期待もヒシヒシと感じる。是非、新しい首脳陣との出会いが岡田にとって大きなプラスをもたらせるものになってほしい。そのためにも、この秋は寝食を忘れて遮二無二バットを振ってほしい。

 さて、僕の観戦予定が立たないうちに、リーグ戦は後半戦へ突入。何とか25日の最終戦までには宮崎へ向かい、今年最後の実戦を見てくるつもりだが、果たして締めの一発は見られるだろうか。

フェニックスリーグ成績 10月20日現在の成績
10試合35打数9安打、打率.257、2本塁打、4打点、4四球、10三振

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は11月1日の予定です。

2006-10-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第20回-

Okada20_top_2  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回でついに記念すべき20回を迎えました。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。今回はシーズン中の自分自身のプレーについて振り返ってもらいました。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

          

ルーキーシーズンを振り返る

 この原稿を書いている前日にセ・リーグでは中日の2年ぶりのリーグ制覇が決定。パ・リーグでは今夜からプレーオフの第2ステージが始まる。
 一方で明日のスターを目指す若手選手たちが戦う終結の「フェニックスリーグ」は一昨日に宮崎で開幕。住友平新監督の元、サーパスは25日までに14試合を行う予定。
 そこでの岡田の動向も気になるが、今回は宮崎への出発前に本人にプロでの始めてのシーズンを振り返ってもらったので、そのインタビューを紹介する。

谷上 まず、1年目のシーズンを振り返って率直な感想は?
岡田 とにかく早かったです。本当に90試合もあったんかなあ、って感じで。数字はあまり残せなかったですけど、大きなケガなくやれて、上の雰囲気も味わえたし、いい経験でした。だから充実した1年って言えば、そうですね
谷上 ちょっと引っかかるのは、やっぱり成績の面?
岡田 そうですね
谷上 数字の方が打率.245、ホームラン5本、三振75。後半はもうちょっとホームランの数を伸ばしたかったよな
岡田 そのつもりだったんですけど
谷上 三振はリーグトップ…
岡田 多分、そうですね
谷上 いや、結構断トツでリーグトップ(笑)
岡田 (笑)

              

Okada_batting_6シーズン後半は少しずつ対応力がついてきた岡田。来年はチャンスで三振するケースを少なくしたい

ベンチから信頼されるバッターへ

谷上 三振の数は気にはしてなかった?
岡田 いや、やっぱり気にもなってました。最初の頃はカットしようと思って当てにいったりもしてたんですけど、途中からは追い込まれてもしっかり打ちにいこうと意識は変わりました
谷上 それは?
岡田 ベンチから気にするなって言われてたのもあるんですけど、ほかの理由もあって。ある時、一輝(嶋村)さんと筧(裕次郎)さんと話してて、僕が「カットしようと思って当てにいくと打球が中(フェアグラウンド)へ入ってしまうんです」って言ったんです。そしたら「お前すごいこと言うな。カットしようと思ってカットなんかできへんで」って言われたんですよ。それで、あっ、そうなんやって思って、それからですね
谷上 狙ってカットはできない。一流になればファウルで逃げる技術も身についてくるんやろうけど。そのへんもアマチュアとプロのボールの差なんかな
岡田 そうなんですかね。ただ、同じ三振でもその場面ですよね。今年はチャンスに三振するケースが結構あったんで、数よりそれが一番の反省です。ノーアウトとかワンアウトで三塁にランナーがいる時に三振されたらチームから見て計算できないバッターってなるじゃないですか。そこを変えていきたい
谷上 チャンスに仕事をして打点を稼げるバッターに、ということやな。1年間やってみて、成長したな、と思う点は?
岡田 自分の中では対応力だと思います。やっぱり、シーズン当初と中盤以降では全然攻め方も違って、厳しくなってきました。プロは「ここが弱い」とわかったら徹底して突いてくるし、でも、その中で自分なりには対応力ついていったかな、と思います
谷上 プロのスピード、キレ、落ちるボール、サウスポー…、それぞれの対応力も上がっていった。成績的に見れば前半、後半で大きく変わることはなかったけど、自分なりに成長の手応えは感じてた、と
岡田 最初の頃は形も悪くて結果も悪いっていう凡打が多かったんですけど、後半は結果はともかく、自分の形で振れる打席は増えたと思います。その中で打ち損じて凡打にはなっても、前半とはその内容は違ってきたと思います
谷上 じゃあ次はいかにミスショットを減らしていくか
岡田 そうですね

                 

Okada_practice秋季キャンプでは特に下半身を徹底的に鍛え直す覚悟で臨む

下半身強化で実りの秋へ

谷上 春先から見てると、練習でもいろんな課題を持ちながらやってたよな。でも、プロは教えてくれる人も多いけど、その面で苦労することはなかった?
岡田 いろいろ言ってもらいますけど、そのあたりは大丈夫です。言われたことを試しながら、でも、合わないと思ったら自分で捨てていってるので
谷上 確かに首脳陣に聞いても「結構マイペース」「頑固なところもある」と言うのが岡田評やから大丈夫か(笑)。この秋は何を一番の課題として過ごしていきたい?
岡田 技術面はもちろんなんですけど、下半身ももう1回鍛えていきたいです。吉良(俊則)さんいるじゃないですか。あの人って、ものすごく下半身とか腹筋、背筋なんかも強いんですよ。バッティング練習なんか見てても全然下半身がぶれないし。そういうのを近くて見てると余計に自分の下半身はまだまだやなって思って
谷上 土台は大事やからな。ガンガン鍛えたら絶対バッティングにも生きてくる
岡田 今、内野をやることが多いんですけど、内野ノックとか股割りとか、そういうことを地道にやっていけば、それがまた下半身強化にもつながると思ってやってます。弓岡さん(敬二郎、サーパス内野守備コーチ)の練習がキツイんですよ(笑)
谷上 内野ノックで下を鍛えるっていうのは中村(紀洋)がずっとやってる。キャンプでも暇さえあればノックを受けて下半身を作って、シーズンに入っても試合前のバッティング練習の横でいつも受けてる
岡田 ああ。でも、中村さんの守備って上手いですよね。イメージではバッティングの人って感じでしたけど、1軍へ上がった時にじっくり見て「ホント上手いなあ…」って思いました
谷上 「フェニックスリーグ」から秋季練習までは、どれだけ下半身をイジめられるかやな。
岡田 そうですね。来年の2月のキャンプは何とか1軍メンバーに入りたいんで、そのためにもこの秋だと思っています

                 

スカウトへ転身した藤井コーチのためにも奮闘を

Okada_and_fujii今年、熱心に岡田を指導した藤井コーチ(左)はスカウトへ転身。この光景が見られなくなるのは残念だ

 9日から開幕のフェニックスリーグではスタメン「5番」で初戦から出場の岡田。1戦目の湘南戦が4打数1安打で、2戦目のインボイス戦が1打数ノーヒット、3四死球。僕の宮崎行きは、おそらくは後半になる予定だが、その時にはぜひいい状態の岡田を見て、このレポートでお知らせしたい。

 さて、その宮崎には、これまで岡田をマンツーマンで指導してきた藤井康雄コーチの姿はない。知っている人も多いと思うが、このインタビューを行った直後にスカウトへの配置転換が発表されたのだ。
 実は岡田と話す中でも藤井コーチの話が出ていて、僕は「来年も大丈夫やろう」と気楽なことを言っていたのだが…。

 1軍も2軍もよくもまあ、これだけ毎年、毎年、首脳陣が入れ替わるものだ、とオリックスには呆れるが、嘆いていても仕方ない。岡田には今年1年学んだことをしっかり胸に刻み、来季の飛躍へと繋げてほしい。それが岡田の成長を誰より楽しみにしていた藤井コーチへの恩返しにもなるわけだから。

               

フェニックスリーグ 10月20日現在の成績
2試合5打数1安打、打率.200、0本塁打、0打点、2三振

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は10月21日の予定です。

2006-10-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第19回-

Okada_batting_5 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で19回を迎えました。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。ファームのラストゲームを迎え、どんな心境で打席に入ったのでしょうか。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

             

最終戦を観戦
 前回の予告どおり、29日はナゴヤ球場でサーパスの今季最終戦を観戦。試合前のグラウンドやネット裏のあちこちで「今年1年ありがとうございました」といった声が聞こえたが、いつもの練習風景からも、どこかモノ悲しい気配が伝わってきた。この中から何人いなくなるのか…。
 しかし、岡田に関してそんな感傷に浸っている時間はない。とにかく今は、1打席、1打席の中で何かをつかんで前に進んでいくのみ。
 試合前のフリーバッティングが終わったところで、ベンチ横の通路にパイプイスを置き着替え中の岡田に聞いた。

Okada_and_oishiゲーム前の打撃練習。大石二軍監督が後ろで見守る

谷上 この間の一発(9月18日)以降の感じは?
岡田 (練習試合も含め2試合)ヒットは1本ずつ出てるんですけどまだまだです。24日から藤井(康雄)コーチとまた新しいことへ取り組み始めてるんですけど。
谷上 それは?
岡田 左の腰を…。何て言うんですかねえ、打ちにいく時に、右腰よりも上に上からこう回していく感じです。
谷上 左の腰をボールにぶつけていくイメージ?
岡田 いや、右の腰を我慢させて、左腰は右腰より高い位置から回していく意識。
谷上 狙いは?
岡田 左腰を右腰より上に意識するくらいでちょうどレベルに回る。感覚的ですけど左腰を意識した方が開きを抑えることにもつながると思うんです。阪神戦(26日に行われた練習試合)では左ピッチャーのスライダーもしっかり見極められたし、いい感じかな、と思ったんですけど。一昨日あたりからまたちょっと…。
谷上 安定するところまではいってない。ところで25日のドラフトで土井(健大・履正社)がオリックスから指名されたなあ。
岡田 はい、ちょっとビックリしましたけど、前の日にスポーツ新聞に載ってたみたいで、(指名が)あるんかな、って。
谷上 どんな感じ?
岡田 なんかへんな感じですね。まさかプロで一緒になるとは思ってなかったんで。
谷上 岡田から見た土井のバッティング面での良さは?
岡田 距離も出ますし、スイングも速いですよ。結構、右にも打てますし。
谷上 プロに入れば1人のライバルでもあるやろうけど楽しみや。で、今日が最終戦、最後にもう一発見たいなあ。
岡田 がんばります!

             

Okada_swingoutいよいよ迎えた今季最終打席の結果は!?

今季最終打席は!?
 最終戦は「8番ファースト」での出場。これで1軍へ上がっていた期間を除き、出場した82試合は全て先発。高卒ルーキーとしては素直に評価していいだろう。
 3回に回ってきた第1打席は、サウスポー川井進の前にハーフスイング気味の三振。2打席目はやはりサウスポー・樋口龍美の前に詰まらされてのファーストゴロ。それにしても、岡田を中心に見ていたお陰で、今のプロ野球界にいかにサウスポーが多いかがわかった。
 7回に回ってきた第3打席の相手は落合英二。思えばまだシーズンが始まって間もない頃、岡田が「さすがプロの変化球!」と唸らされたのがこの落合のシュートだった。
 しかし、そのベテラン右腕も優勝争いを繰り広げる一軍の輪の中から外れ、微妙な立場で秋を迎えているところに改めてプロの厳しさを感じさせられる。
 そして、今度の対決は岡田が落合の136キロのストレートをセンター前に返した。岡田本人は「たまたまです」と控えめだったが、何気ない1本にも着実な成長感じた。

 さらに、この日一番の見せ場は9回裏にやってきた(降雨中止となったサーパス主催ゲームの代替試合だったためサーパスが後攻)。
 2点を追うサーパスは代打攻勢をかけ、横山徹也ツーベース、吉良俊則のタイムリーで1点差。長田勝、鈴木郁洋は倒れたが、2死二塁、一打同点の場面で岡田の第4打席が巡ってきたのだ。
 三塁側スタンドから名古屋では極めて珍しいサーパスファンの中年男性が声を飛ばした。
「岡田~!サヨナラホームランでみんな万歳や!」

Okada_feel_a_deep_regret_for_my_battingうつむきながら引き上げる岡田。来季は笑顔で戻る姿をたくさん見たい(しかも1軍で!)

 ベンチ前で藤井コーチのアドバイスを受けボックスへ向かった岡田。マウンドには高橋聡文。またしてもサウスポーだ。
 初球は149キロ、2球目は148キロのストレートが外れ0-2。なかなか勢いを感じるボールだ。3球目は147キロのストレートをフルスイングするもバックネットへ。4球目は外寄りのスライダーを三塁側スタンドへファウル。
 そして2-2からの5球目。キャッチャーの清水将海は外へ構えたがボールはインハイへ。明らかにボール球だったが149キロの速さにつられ空振り…。今シーズン75個目の三振でゲームセットとなった。
 その瞬間、先ほど声を飛ばした男性の「あ~あ」というタメ息と「来年は頼むで岡田君…」という言葉が聞こえてきた。さすがにうつむきながら三塁ベンチへ戻った岡田だが、来季はこのため息を歓声に変えて欲しい!

             

フェニックスリーグ~秋季キャンプへ
 ここからは最終戦の翌日(9月30日)、休養日に訪れる徳永治療院からの帰りに本人から聞いた話の一部を紹介する。最後の場面を振り返ってのやりとりだ。

谷上 昨日は見せ場やったけどなあ。
岡田 センター前のことですか?
谷上 いやいや最後の三振や!
岡田 打てなかった打席は忘れるようになってるんで(笑)
谷上 それはええことやけど、でも、あそこは打ちたかったよなあ。
岡田 高橋(聡文)さんとは、これまで3打数3安打かなんかで相性が良かったんです。左でスピードもあるんですけど、なんか合う。だからいい感じで打席に入ったんですけど。あの3球目ですね。あの真っすぐをとらえられなかったのがすべて。
谷上 0-2から狙ってたボールやった?
岡田 はい。コースも内甘(内角甘め)で「来た!」って感じで振ったんですけど、ちょっとバットがボールの下に入った感じで。
谷上 わずかな差なんやろうけど、難しいよなあ。
岡田 ほんと(バッティングは)難しいです。
谷上 でも、今年の最終打席が三振っていうのも、それはそれでか。
岡田 (苦笑い)
谷上 ひとまず、これでシーズン終了。でも、またここからやな。
岡田 はい。フェニックスリーグ(10月9日~宮崎)もありますし、実戦の中でまた勉強です。

 ひとまず、1年目のシーズンが終わった。
 このレポートも、降雨ノーゲームとなった幻の開幕戦取材から19回目を迎えたが、本当にアッという間。早いものだ。
 ルーキーシーズンを振りかえった本人の総括については、次回のレポートでたっぷり書かせてもらうのでお楽しみに。

Okada_titleシーズンは終了しても、フェニックスリーグや秋季キャンプなど、プロ1年生の岡田にはまだまだ飛躍するための試練の日々は続いていく

 岡田も言った通り、来週からは14試合を戦うフェニックスリーグが始まり、その後は秋季キャンプ(高知)へ。シーズンは終わったがまだまだ修練の日々は続く。
 最近「あのレポートはいつまで続くのか?」と続けて聞かれたが、答えは「岡田が1軍で活躍するようになるまで」。その時期がいつになるかは岡田次第。というわけで、とりあえず秋も「ナニゴジレポート」はノンストップで続きます。よろしくお願いします!

2006年シーズン終了後最終成績
[1軍]3試合6打数1安打 打率.167 0本塁打 0打点 0四死球 3三振 0盗塁

[2軍]82試合 298打数73安打(リーグ2位) 打率.245(リーグ12位) 5本塁打 27打点 19四死球 75三振(リーグ1位) 6盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は10月11日の予定です。

2006-09-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記ー第18回ー

Okada_back_2  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で18回目です。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。ファームの試合は残り2試合。岡田の動向もすでに来年へ向けたものとなっているようです。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

               

本拠地最終戦を観戦

Okada_running_1本人はいろいろ考えながら日々取り組んでいるが、期待も大きいだけに求められるレベルは高い

 前回取材時は本人も認めるところの「絶不調」だった岡田。そこから約1週間が過ぎた18日、「あじさいスタジアム」で行われたソフトバンク戦を観戦に向かった。
 台風の影響で時折小雨も落ちる微妙な天候だったが、球場へ着くと「今日は何が何でもやらなアカンのや」と谷村智啓コーチが笑顔で一言。というのもこの日がサーパスの本拠地最終戦で、日程的な絡みからも「何がなんでも…」ということだったのだ。

 続いてベンチ裏で内匠政博コーチにも会ったので、岡田の近況について聞いてみた。内匠コーチは現在、外野守備・走塁担当となっているが、近鉄時代にはバットマンとしても活躍した人でこれまでにも何度か話を聞いていた。

内匠 岡田? まだまだやね。そら、試合にずっと使ってもらってたらある程度ヒットは出るし、2割3分くらいはどの選手でも打てますよ。でも、こっちももっと上を求めてるし、その力もあると思うから、まだまだ物足りない

 PL学園時代はK・Kコンビと同級生で高3時にはトップバッターを務めた内匠コーチ。その後、近畿大学から日本生命という関西のエリートコースを歩んだのちのプロ入りだったが、170センチの上背で激しい競争を勝ち抜いてきた裏には並外れた努力、負けん気、根性があったはず。それだけに岡田の余りある資質を目にすると<もっとやれる><もっとやらないと>の思いが強くもなるのだろう。

内匠 プロに入れば、もう本人次第。いろんな人のアドバイスも受けるけど、その中からどれを選んで、どうやっていくかも本人次第。岡田をここまで見てきて思うのは、もっと変わっていかんと、っていうことやね。例えば変化球が苦手で、同じパターンでやられてるなら、もっと何かを変えていかんと。あのイチローだってオリックスでデビューした当時の振り子と今の形なんか全然違う。打っていてもあれだけ変える。打てないのなら、もっと変えていかんと

 当然、本人は本人なりに試行錯誤を続けながらやっているのだが、毎試合、三塁コーチャーズボックスから打席を見続けていると、時にはもっと大胆な変化を求めたくなるのだろう。

           

近況告白

Okada_batting_4試合ではヒットが出るようになった岡田。だが、自分の納得のいく打撃はまだできていなかった

 そんな話を聞いたあと岡田にバッタリ。近況から、今の取り組みについて聞いた。

谷上 この間(12日)は「全然ダメ」ってことやったけどその後は?ヒットは結構出てるよな(前回取材以降の4試合で7安打)
岡田 ヒットは出るには出てるんですけど、当たり自体はあんまり…。この前に比べたら少しはよくなってきてますけど、まだまだです
谷上 今、一番頭においてやってることは?
岡田 呼び込む形をしっかり作ることとバットの出し方です
谷上 自分のポイントまでひきつけて打つ…。バットの出し方というのは?
岡田 打ちにいく時に少しヘッドをピッチャー側に入れて、そこからそのまま出すイメージでやってます。そうするとヘッドを遅らせて出せるかなというので…
谷上 そういったことがこれまで言われていた開きを抑えることにもつながる?
岡田 そうですね
谷上 その2つについては今のところいい感じでやれてる?
岡田 えー……。ティーの時は結構いい感じでやれてるんですけど、フリーとか試合になるとやっぱりまだまだで

 岡田なりに「変化」を求めながらやってはいる。あとは「イメージ」と「現実」。この間にある差を少しでも近づけられた選手が結果を残すことができるわけで、結局、そのためには本人の努力しかない。

                 

Okada_homerun_2 第2打席で待望の一発。後半戦初アーチとなる第5号を放ち、藤井康雄コーチらベンチに祝福される

超特大!後半戦初の5号!

 試合の方はサーパス・オバミュラー、ソフトバンク・田之上慶三郎で12時半にスタート。当日は以前、雨で流れた代替試合のため「あじさいスタジアム」ながらソフトバンクの主催。そこで「6番ファースト」で出場の岡田の第1打席は2回表の先頭で巡って来た。
 ネクストサークルにいた時からゆっくり足を上げながら呼び込むイメージとヘッドを少し倒してのスイング。意識は見えたが、結果は一塁寄りで小さく弾むピッチャーゴロ。田之上のエラーによって一塁に生きたが内容は…。

 しかし、続く3回に巡って来た第2打席でやってくれた!
 2点を先制し、なおノーアウト二塁のチャンス。おそらくストレート系のツーシームあたり、真ん中寄りのボールをジャストミートした打球は右中間のネット上段へ一直線。「あじさいスタジアム」の両翼は99.1メートル、中堅は122メートル、わずかな外野芝生席の直後には最長で25メートル程のネットが立つが、その上段を揺らす完璧な一発。

Azisai_stadium あじさいスタジアムの全景。岡田の打球は右中間ネットの上段を揺らした

 遅まきながら後半戦の初アーチとなる第5号は、本人に確認はしていないが間違いなくプロ最高の当たりだったはず。

 僕はネット裏下にある一室で見ていたが、すぐ近くにはソフトバンクの「上がり」の投手陣が3人ほどいた。
 すると一発の瞬間に彼らから聞こえてきたのは「はぁ~」という呆れ声。あとには「こんな当たり久々に見たな」「今のまだ伸びとったで。ネットなかったらどこまでいってたか…」と続いた。確かにスカイマークスタジアムなら右中間の最上段あたりに突き刺さっていたであろう驚弾だった。
 会心の一発の瞬間を上手く写真に収められなかったのは残念だが、あじさいスタジアムの写真を入れておくので想像してもらいたい。この右中間ネットの上段を揺らしたのだ!

                 

ラスト2試合、いい形での締めくくりを!

 続く5回の3打席目。今度は竹岡和宏からあわや2打席連続と思わせた打球は、ショートバウンドでフェンスへ達する右中間へのツーベース。惜しい! しかし、気配は上々で5回裏が終わったところでスタンドへ上がり会った岡田の母、祖母に「もう1本出るかもしれませんよ」と言って更なる爆発を期待した。
 が、7回1死一塁で巡って来た第4打席はサードゴロでゲッツー。岡本劼能のインコースのボールに完全に詰まらされた。呼び込む意識が今度はこの結果になってしまったのか。一瞬のタイミングの差、ポイントのズレで、結果が大きく変わるのが改めてプロの世界でもある。
 一転、うなだれてベンチへ戻った岡田ではあったが、1試合の中でも手応えと悔しさを味わいながら、その1打席、1球に何を感じ、次へどう生かしていくのか、だ。

Okada_traning 試合後、藤井コーチとの練習風景。シーズンが終わればトレーニング系の練習はさらに増えていく

 とは言っても、いいものを見せてもらった。
 この試合のあとの広島2連戦でもヒットを続け、前回の更新以降の7試合では28打数11安打で打率も.245まで上昇。内容を求めつつも、数字が残るにこしたことはない。
 この調子でラスト2試合! 最終戦となる29日の中日戦(ナゴヤ球場)には何とか観戦に向かうつもりなので、できれば最後にもう一発見たいところだ。
 1軍ではグラボースキーも退団となり、もしかすると最後にまた「お呼び」がかかるかもしれないが、ともかくいい形でシーズンを締めくくってほしい。

9月20日現在の成績
[1軍]3試合 6打数1安打 打率.167 0本塁打 0打点 0四死球 3三振 0盗塁

[2軍]80試合 290打数71安打 打率.245 5本塁打 27打点 19四死球 72三振 6盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は10月1日の予定です。

2006-09-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第17回-

Tytle  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で17回目です。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。今シーズンも終わりに近づきつつあり、岡田の動向もすでに来年へ向けたものとなっているようです。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!

   

神戸サブで久々の観戦

 シーズンも後半に入ると特にファームでは飛び石日程が目立つ。昨年、楽天が誕生した関係で5チームになったウエスタンリーグでは普段から日程の組み辛さを感じているが、ともかく今シーズンも残りわずかということだ。
 そんな中、今回は6、7月の中日戦(あじさいスタジアム)を観戦の予定にしていたが、よりにもよって両日共に雨で中止。7日は午前中にほぼ上がったので実施を期待したが、球場へ連絡を入れると早々に中止が決まっていた。
 結局、前回の更新以降に行われたサーパス戦はわずか3試合でその間の岡田の成績はトータル8打数1安打(1四球)。試合があったりなかったりで、なかなか調子もつかみづらいだろうが、ファームへ戻って以降結果がついてこない。

Okada_with_battingcage_1 打撃練習の順番を待つ岡田。2軍落ち後、悩める日が続く

 というわけで、何を書こうかと困っていたところへ、8日の昼にスカイマークで1軍の取材が入った。取材が終わり広報の佐藤さんにファームの予定を確認すると「午前10時から午後3時近くまで神戸サブグラウンドで練習してますよ」とのこと。そこでスカイマークから歩いて約10分のサブグラウンドへ移動し、練習を観戦することにした。
 サブグランドに着いたころはシートバッティングの最中。岡田はファーストを守りながら、由田慎太郎、坂口智隆、吉良俊則、田中彰、筧裕次郎、小島昌也、柴田亮輔らに混じって順番が回ってくると打席に入っていた。観戦できたのは2打席。1打席目は「飛び入り参加できよった」(谷村智啓コーチ)という吉井理人を相手におそらくストレートをゴロでセンター前へ。2打席目は山口和男から、やはりストレート系のボールを打って二遊間へのショートゴロ。どちらも悪い当たりではなかったが、岡田本来の爆発力を感じる当たりでもなかった。

         

悩めるナニゴジ

Okada_and_fujiicoach02    本人も認めるほど不調の状態をオフにかけての練習で解消したい

 シートバッティングが終わると15分ほどの休みに入った。そこでスタンドを降り、ネット裏の部屋を覗くと谷村コーチの姿が見えたので話を聞いた。

谷村 岡田なあ。まあ、まだまだやな。打率も2割3分くらいからなかなか上がってこんしなあ。もうひと回り体も締まってきてからやろな。秋のキャンプで野球漬けの毎日になるから、そこでどう伸びるかや

 夏頃までなら高卒ルーキーということで「出続ける」ことでの評価も高くあったが、この時期になると言葉もちょっと渋くなる。
 そんな話をしているところへ「こんちわ!」と入ってきたのが真っ黒に日焼けした藤井康雄コーチ。岡田が1軍へ上がってから話す機会もなかったので、久しぶりの対面。現状を尋ねようとしたところ先に返ってきた。

藤井 岡田君、岡田君…、悩んでますねえ

 ちょっとおどけた感じだったが現状は一言でそういうことのようだ。
 藤井コーチによれば、1軍に上がる前からそれほど状態はよくなかったということだったが、中でも「今は絶不調」で、現状で一番気になっているのは右サイドの「開き」。5、6月頃の取材で藤井コーチからよく聞いた修正ポイントで、「右投手のスライダーが膝元へ来ると対応が難しい」という話もその頃よく聞いていた言葉。
 藤井コーチは当時から岡田のスイングについて「ちょっと外から出る軌道なので、そこをもっと内から出るように変えていかないと」とも話していたが、そのあたりもまだまだ途上ということなのだろう。僕は、高校当時の印象から岡田のスイングが外から出るタイプとは思っていなかったが、それが「高校生の中」と「プロの中」での評価の違いということか。
        

 また「開き」という言葉に<確かに>と思い出したのは、シートバッティングでの打席をネット裏から見ていた時の光景。何気なく見ていたが、テークバックでバットが背中側に入っているように見え<こんな感じやったかなあ>と思い、確かにそこへ目が向いたから。当然、背中側に入れば開きやすくもなる。
 そのあたりはもちろん承知の上で「いろいろ試してやってるんだけど」(藤井コーチ)、なかなか形が安定してこないということだ。

         

炎天下の特打

 午後2時過ぎ。この頃からすっかり夏の日差しが戻ったグラウンドで、若手による特打が始まった。見ているだけでも汗が噴き出してきたが、その中で岡田も必死の打ち込み。するとその合間に藤井コーチが小走りでネット裏へ消えた。戻ってくるとこちらを向いて「ビデオ、ビデオ」と指差した左手にはデジタルビデオが握られていた。あとで聞けば「1週間ほど前から使い始めた」そうで、自前のビデオだ。
 これも岡田を含め若手に何かをつかんでほしいという思いからで、各選手のバッティングフォームをゲージの横から撮影し、打ち終わるとその映像を見ながら身振り手振りの指導を行っていた。実際の姿を見せることでより話が伝われば…、ということだ。
 岡田も自らのフォームを合間合間にチェックしながらのバッティングだったが、右方向へドライブ気味の打球が多く「切れそうで切れない」好調時の軌道は見られず。また、スローボールマシンに対してのバッティングでも待ちきれず大きく右へ切れるファウルが続くなど、やはり「開き」を感じる内容。横から見ていても足を上げた時に十分軸足に乗れてない感じを受けた。
 これまで見て来た中では、6月末に甲子園で行われた阪神戦前後の状態が一番良かったと思うが、第10回レポートの写真にある形など、軸足に十分乗って「カチッ」とハマっている。対して今は全体に「緩い」感じ。これも、そういった違いがわかった上でどう修正していくか、ということだが、岡田を追いかけているとバッティングの繊細さ、奥深さといったものを実感する。
 特打のあとも一塁側ベンチで藤井コーチと映像を見ながら話込んでいた。その話が終わったところで浮かない表情の岡田に「どう?」と聞くと、「…全然です」というさらに浮かない表情で浮かない一言が返ってきた。それ以上、聞く雰囲気もなかったので、あとはベンチ裏へ消えていく大きな背中を見送るのみで、僕の観戦も終了。

          

Okada_and_fujiicoach 藤井コーチが自前のビデオで撮影した映像を見せながら岡田に指導する

飛躍の秋へ

 そのあと、午後3時過ぎにグラウンドを出て再びスカイマークスタジアムに戻り、オリックス対日本ハム戦を観戦。この時期のスカイマークのナイター観戦は本当に気持ちがいいが、試合の方はサッパリ。優勝を目指して戦う日本ハムとの勢いの差は明らかで5対2での敗戦だった。
 それにしてもスタメンを見ると一番若いのが28歳の後藤で、あとはみな30代。この時期、この成績のチームの顔ぶれとしては何とも言いようがない。その中で一塁には打率.150のグラボースキーが…。
 岡田にはこの秋はとにかくバットを振って、振って、振り倒して自分の形を一日も早く掴んでほしい。今のオリックスなら出場のチャンスはいくらでもあるのだから。

              

9月10日現在の成績
[1軍]3試合6打数1安打 打率.167 0本塁打 0打点 0四死球 3三振 0盗塁

[2軍]73試合 262打数60安打 打率.229 4本塁打 24打点 18四死球 65三振 6盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は9月21日の予定です。

2006-09-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第16回-

Okada_tytle060901_1 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で16回目です。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。残念ながら1軍ではほとんど試合に起用されることなく2軍落ちとなってしまいましたが、シーズンも残りあとわずかという状況の中、岡田のこれからのプレーも要注目です。
 それでは、必読のレポートをどうぞ!
   
   
ファーム落ち決定の連絡
   

Okada_warming_up1軍ではほとんど出番のないまま二軍落ちとなった岡田
 先月22日の夜。パソコンに向かっていると携帯電話が鳴った。表示を見ると岡田の父・秀和氏から。11時になろうとしていた時間での連絡にピーンと来た。
「一応、お知らせしとこうと思いまして…。大西(宏明)さんと代わって明日からまたファームらしいです」
 予感的中…。そういうことだ。結局、8日に1軍へ上がって以降、3戦目に途中出場で1打席(凡退)、7戦目と10戦目に先発出場しそれぞれ2打席(無安打)、3打席(1安打)。期間中13試合あった中で出場わずか3試合、6打席で再びのファーム落ちとなった。はあ。
 15日のロッテ戦からは北川博敏の手術による離脱が決まっていて、そこから出場機会が増えるのだろう、そのための昇格だろう、とばかり思っていたが、現場の考えは違っていたようだ。
 しかし、この時期、今のチーム状況ならやっぱり相川や水口の一塁起用より、岡田をもっと使ってほしかった。まして、岡田が1軍にいた間のチーム成績は2勝10敗(1分け)。しかも、ファームに落ちる日まで打線は11試合連続3得点以下、という極度の貧打状態だったのだから(結局、この状況は15試合連続まで続いた)。26日付けの日刊スポーツに岡田の起用について聞かれた中村監督のコメントが載っていた。
「こんなにクソ暑いのにもうストーブリーグに火がついたし、(じっくり起用する)余裕なんてないよ」
「残りひとつでも勝たないといけないし、上(1軍)だとどうしても起用が限られるから」
 この期に及んで「ひとつでも多く勝ってくれ」なんて、多くのファンは思っていない。中村監督の去就が取り沙汰されるようになって以降「シーズンの終わり方が大事」というコメントがあちこちから聞かれる。
 でも、それは「ひとつでも多く勝つこと」より「来季へ向けて若い力を育てる、試す戦いをする」ということであるはずだろうに。そもそも使う余裕がないなら、何故、あのタイミングで1軍に上げたのか…。
  
  
1軍は1打席トータルのコントロールが違った
   
Okada_return1軍と2軍の違いを肌で感じたことで、気持ちの余裕が生まれたことは収穫だ
 書き出すと止まらなくなるので僕の話はこのあたりにして、気になるのは当然、岡田の心境だ。28日(月)のファームの練習休養日に、徳永治療院へ来るとすればそこで話を聞こうと思っていた。が、朝から締め切り等でバタバタしていたので落ち着いた昼前に連絡を入れると…。
「あっ、朝から治療に行ってもう戻ってるところなんです」
 そんなに早く来ていたとは…、残念。
 次は29日~31日に「あじさいスタジアム」で行われた広島3連戦での取材を考えた。ところが、ここもどうにも時間を作れずに断念。
 で、結局、最終手段として31日の夜、電話取材をすることにした。
   
―― ファーム行きを告げられた時の状況は?
岡田 22日の試合後に新井さんから「明日からファームで」って言われました。特に、そこで理由とかはなかったです。言われた時は、まあ、仕方ないな、という気持ちでした
―― 1軍にいる間、状態はどうやった?
岡田 感じは良かったと思うんですけど
―― こっちは毎日もっと使ってくれよ、と見てたけど
岡田 まあ……
―― 本人の口からは何とも言われへんやろうけど
岡田 もっと出たかったっていうのはあります
―― 1軍に上がったことで得たものはあった?
岡田 ベンチの雰囲気とかそういうのはありましたけど、あんまり試合に出なかったんで…
―― やっぱり、打席に立って経験を積まんことには見えてくるものもないか。少ないけど6打席立った中で感じたところは?
岡田 1球、1球は、2軍でもいいボールを投げる人がいるので、1軍だからといってそこまでの違いは感じなかったんです。もちろん、変化球のキレなんかは良かったんですけど。それより、一番感じたのは、1打席の中で甘い球が来ないっていうことです。1球、1球というより、1打席トータルで考えた時のコントロールがやっぱり1軍は違うな、と
―― これからはそういう中で数少ない失投をとらえられるようになっていかんと
岡田 そうです
―― 23日からファームで、ゲームには25日から出場。1軍を経験したことで、以前との違いはある?
岡田 すべてに余裕が持てるようにはなったと思います。まだバッティングの結果はあんまり出てないんですけど
――6試合で20打数4安打、2打点。
岡田 感じは悪くないんですけど。これはずっとですけど左ピッチャーが多いのは多いですね
――でも、それも今はファームやから左でも打席に立てる。貴重な経験を生かしてその面でも結果を積んでいかんと。最後に、これから先に向けて残り少ないけど何かひとこと。
岡田 それはもう、1日でも早く1軍に戻りたい。それだけです
――今度は上がるだけじゃなくて、もっと打席に立って、やな。
岡田 はい、頑張ります
Okada_on_firstbaseシーズンも残りわずか。本人の姿勢が前向きなだけに、再昇格に期待したい
   
   
 ざっとこんな感じだった。
 今回の1軍帯同については本人なりにいろいろ思うところもあっただろうが、あまり口にするわけにもいかない。というわけで、さすがに歯切れ良くとはいかなかったが仕方なし。
    
    
再昇格を待つ
    
 さて、1軍の方は残りゲームは17。中でまた上がる機会もあるだろうが、今はそこへ向けてバッティングレベルを上げていくしかない。
 それにしても…。今回の昇格の意図は何だったのか…。
 23日に入れ替わりで上がった大西がわずか2日後に肉離れを起こし登録抹消。そんな巡りの悪さも手伝って「なんだかなあ…」という気分が残る。
 ただ、本人はすっかり切り替えているので、僕のボヤキも今日を限り(?)に、再昇格の日を楽しみに待ちたい。

8月31日現在の成績
[1軍]3試合 6打数 1安打 打率.167 0本塁打 0打点 0四死球 3三振 0盗塁
[2軍]70試合 254打数 59安打 打率.232 4本塁打 24打点 17四死球 65三振 6盗塁

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は9月11日の予定です。

2006-08-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第15回-

Okada_back  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で15回目を迎えました。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏の視線からお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。念願の1軍昇格も果たし、これからシーズン後半戦でのプレーが注目されます。それでは、必読のレポートをどうぞ!

          

Okada_up15日には初のスタメン出場を果たした岡田。だが、出番はまだ少ない

岡田の取材はひと休み
 先に断っておくと、今回は夏の甲子園が 終盤に差し掛かり、そちらに張り付いているため、岡田の生観戦には向かえず。合間、合間にテレビ、ビデオで打席を確認したが、なかなか出番が少ないので確認するのに時間はかからなかった…。
 前回レポートした9日西武戦での初打席以降、この10日の間に初スタメン、初安打を記録。簡単に振り返ってみると、初スタメンは15日のロッテ戦(千葉)で、これは1軍昇格から7試合目のこと。北川博敏が前カードのソフトバンク戦を最後に右肩手術のため戦線離脱し、ある意味で予定通りの出場だった。
 しかし、「8番・ファースト」で登場した一戦は、久保康友の前にファーストゴロ、三振で、8回に代打・水口を送られ交代。ビデオで確認したが、やはり自分のタイミング、形でスイングをさせてもらえていなかった。「さっぱりです。思い通りにいきませんでした」というのが本人の感想だったようだが、「(ファームと1軍の投手について)そんなに変わらないと思う」というコメントも翌日の紙面で見つけた。
 それはそうなのだと思う。ファームであってもすでに1軍クラスの投手とも対戦をしてきたのだから、高校からプロの世界へ飛び込んだ時のような明らかな違いは感じていないはず。4月の段階で話を聞いた時にはファームで対戦した中里篤史(中日)のストレートや落合英二(中日)のシュートに「さすがプロのボール」と感心していた。5月には安藤優也(阪神)の低目の伸びに「ワクワクした」と話していた。
 ただ、今1軍で活躍している投手とファームの投手の大きな差は、1つ1つのボールより、その組み立てであったり、緩急のつけ方であったり、微妙な間合いであったり、ワンランク上のコントロールであったり、トータルでの攻め方にあると思う。やはり、このあたりは打席に立って経験を積んでいかないことには、なかなかその差を埋めていくのは難しいのだろう。

   

Okada_and_sakaguchi18日にはプロ入り初安打を記録(左は4年目の坂口智隆選手)

父・秀和氏よりプロ初ヒットの報告を受ける
 初スタメンのあと、新井チーフ兼打撃コーチは「(久保は)非常に緩急をつけてくる投手だったので少しかわいそうだった」と話したそうだが、今の岡田にとってそれ以上の不幸は「打席に立てないこと」。まして1軍昇格後、ゲーム勘はどんどん薄れていく中、たまの登場で結果を出すのは至難の業だ。
 そんな中、2日後の楽天戦(18日・スカイマーク)で待望のプロ初ヒットを記録。2度目のスタメン出場(8番・ファースト)となったこの夜は、山村宏樹相手に三振のあとの第2打席。真ん中寄りの141キロストレートにやや差し込まれ気味ながらゴロで三遊間を破ったものだ。この日も甲子園で取材していたため、予約録画しておいたのだが、帰宅途中に岡田の父・秀和氏から連絡が入って記念すべき一打を知った。
 何事も「1」がなければ「2」にも「3」にもなっていかない。ひとまずオメデトウ! ちなみに翌日の紙面に載った岡田のコメントは「少し楽になりました」。おそらくベンチ裏で記者に囲まれながら、それも横をゾロゾロ過ぎて行く連敗中で暗い表情の先輩たちに気遣いながら「そうですねえ…。とりあえず1本出て楽になりましたけど…。でも、もっと結果を出していかないとダメですねえ」という感じで取材に応じてたのだろう。

          

出場機会の増加を重ねて懇願
 しかし、その一打以降の2試合は再びベンチ要員で代打での出場もなし。これで1軍昇格後12試合で打席に立ったのはわずか6回。これではどんな選手でもそうそう結果は出ない。「相手が左だから」「好投手だから」と起用に慎重になっていては、なかなか次へ進めない。
 さっきも書いたが、今の岡田に必要なのは何より1軍のゲーム、1軍の投手に慣れていくこと。元々、何をするにも少し慣れるまでは時間のかかるタイプだと思う。逆に、ジワジワいって、ひとたび慣れてしまえば、そこから大きな伸びが始まると思うだけに、なおのこともっと打席に立つチャンスを与えてほしい。
 10日の試合に至っては、北川に次いで清原和博も左ヒジ痛でまたしても離脱。さらに相手が右(グリン)、チームは4連敗中(この夜で5連敗)でも出番なし。もちろん、岡田のためだけにゲームを行っているわけではないが、1軍に上げたということは逆に「少々のことはあっても先々のために使う」ということではなかったのかなあ。

Okada_batting_2今の岡田に必要なのは、とにかく多くのゲームに出場すること。今後の出番増加いに期待したい
 今のチームの状況を思えば、少々の犠牲を払っても新しい選手、それも軸になっていく選手を育てていくべきだろう。この軸になり得るという意味で、前回も書いたが今のオリックスの若手を見渡しても岡田以外には見当たらない。とにかくもっと使ってほしい。
 20日の夜、駒大苫小牧と早稲田実業の延長15回引き分け試合を観戦ののち、家に戻りテレビをつけた。するとオリックスの3回裏の攻撃を前に何やら球場が沸いていた。2日の日本ハム戦以来となる世界初のボールモンキー「ゴウ君」がボールを審判へ運んだからだ(結果は初登場に続き失敗)。
 この背番号が「555」。カメラの位置によっては「55」にも見える。僕はその小さな「55」を見ながら
<モンキーより見たいのはゴジラ!>
<使えばもっと沸かせてやるから>
と嘆かずにはいられなかった。

              

8月20日現在の成績
[1軍]3試合 6打数1安打 打率.167 0本塁打 0打点 0四死球 3三振 0盗塁

[2軍]64試合 234打数55安打 打率.239 4本塁打 22打点 17四死球 62三振 5盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は9月1日の予定です。

2006-08-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第14回-

Okada_backsight  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は14回目。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。今週はついに待望の1軍昇格も果たし、これからますますそのプレーが注目されます。それでは、必読のレポートをどうぞ!

           

予想よりも早かった待望の1軍昇格
 8日に待望の1軍昇格を果たした岡田。予想よりも2、3週間早く、このタイミングであるとは思っていなかったので、2日前には今回の原稿用にスカイマークでサーパス戦を取材していた。その試合で後半戦初の2安打を放ち、北川博敏の離脱(8月下旬に右肩手術の予定)が予想される8月下旬までさらに調子を上げていけば、と思っていたところ…。甲子園観戦をひと休みし、家で原稿を書いていた8日の昼過ぎ、岡田の父・秀和氏から一報が入った。
「今日から1軍みたいです。広島を朝出てそのまま神戸に向かうって連絡がありました」
 そうと聞けば居ても立ってもおれず、スカイマークへ直行。15時過ぎにグラウンドへ着くと、間もなく岡田のフリーバッティングが始まった。ほぼ5本ワンセットで計9回。3回り目にマスコットを通常のバットに変えてから芯を食いだし、ライナー性の打球を連発。なかなか感じは良さそうに見えた。バッティングが終わり、ベンチ横へ水分補給に戻ってきたところでひと言聞いた。

谷上 初の1軍の気分は?
岡田 完全に浮き足立ってる感じです(笑)

               

取材の数もファームとは大違い

Kiyohara_and_yoshida 待望の1軍昇格を果たし、広島からあわただしく神戸へ(右は由田慎太郎選手)
 そこから走塁練習などひと通りのメニューを終えると、大西英治広報の「元気よくやってくれよ!」の言葉に促されテレビ用のインタビューがスタート。それが終わると今度はベンチ裏で新聞記者による囲み取材。僕しか話を聞く者がいなかったファームの風景とは大違い、そんなところでも1軍を実感していたはずだ。

記者 いつ言われたの?
岡田 今朝です。2軍の吉田(直樹)マネージャーから言われました。サーパスのユニフォームに着替えてた時に「戻る用意しろ」って言われて。急だったし、ちょっと焦って帰るための準備がなかなかはかどらなかったんです。
記者 家の人に知らせた?
岡田 朝、連絡しました。おばあちゃんが喜んでくれて泣いてたみたいです。

 そこからおばあちゃんの名前や年齢、家族構成、その後は「これまでの取り組み」や「今後の目標」といった質問が繰り返された。
 その最後にある記者が「中村(勝広)監督が『スタメンもあるかもって』言ってたけど」と話を向けると「いやあ…」と苦笑いもまんざらでない表情を見せた。

             

Kiyohara_and_okada_1初の1軍ベンチでは「暗黙の決まり」に戸惑いつつ、試合後半は清原の隣に座った岡田

初戦は結局出番なし
 18時。オリックス・デイビー、西武・ギッセルの先発で試合開始。しかし、残念ながら「もしかして」と期待した先発メンバーに岡田の名はなかった。
 戦いが始まると、自軍の攻撃時にはベンチ後列、守備時には前列に座りながら戦況を見つめていた。このあたりのポジションも決まっているのだろう。途中に一度、後列の出口近くに座ろうとしたところ、近くにいた迎祐一郎から何やらひと言あって右へ移動。すると元いた場所へ水口栄二がやってきて座った。いろんなところに「1軍の決まり」があり、そういうことも覚えていかないといけないわけだ。
 ただ、試合中盤からの岡田は守備時には清原和博の横という「特等席」に移動。自ら動いたのか、誰かからそそのかされたのかはわからないが(笑)、遠目に見てもより緊張の表情が伝わってくるようだった。
 試合は8回裏に清原が石井貴から起死回生の同点アーチを放つも、9回表に勝ち越しを許して迎えたその裏。攻撃が始まると岡田がベンチ裏へ消えた。バットを振りにいったのだろう。さらに中村監督と何やら話込んでいた大島公一バッティングコーチが岡田のあとを追うようにベンチ裏へ。もしかしたら…、と期待したが出番のないままゲームセット。残念!

              

Tani_sayonara京セラドームでの2戦目も岡田の出番はなし。谷のサヨナラヒットで姿を見せた(左から4人目の背番号55)だけだった

2戦目も出番なし
 そして翌日。場所を京セラドームへ移しての第2戦も、前日に続き試合前の練習から観戦。フリーバッティングのあとはライトと一塁のポジションで松山秀明、真喜志康永両コーチからそれぞれノックを受けるなど精力的な動き。スタメンに備えての準備か…と再び期待が膨らんだが、17時半過ぎに発表されたラインナップにその名はなかった。この日、西武の先発は松坂大輔。前監督の仰木彬氏ならこういうシチュエーションに好んで岡田を起用しただろうなあ、と思ってしまった。
 そこで思い出されるのは1997年のシーズン。前年日本一に輝いたオリックスだったが、この年は序盤から苦しんでいた。この時、当時の仰木監督は、連敗中の5月末に谷佳知、塩崎真、佐竹学というルーキー3人をスタメンで揃って出場させたのだ。
 大学、社会人上がりとはいえ、前年のVメンバーを押しのけての先発出場には相当な決断がいったはすだが、その試合で佐竹が4安打、谷が3安打4打点、塩崎が先制の口火を切るツーベースと揃って大爆発してチームも大勝。さらにその3日後からは、球団新記録となる10連勝を記録した。
 残念ながらシーズン後半に失速しリーグ3連覇はならなかったが、鮮やかな仰木マジックの記憶は今も頭に残る。博打的な要素は多分にあるし、当時の3人と今の岡田では完成度も違うし、チームの状況も違う。まして1軍に上げたからには早く使ってほしい。そもそも上げるということは「その選手の状態がいい」と判断したからで、そこで使うことが選手の意欲を生み、好結果がチームの活性化にもつながるはずなのだが…。
 結局、2戦目に岡田がグラウンドへ現れたのは試合前の国家斉唱と、金子のキャッチボールの相手をした場面と谷のサヨナラヒットで飛び出した最後のみだった。

              

3戦目についに初打席
 岡田が1軍に昇格してついに3戦目。この試合が終わるとチームは福岡、千葉へ移動となり、日中に甲子園取材がある僕としても、デビュー戦を見れる最後のチャンスとなった。18時前に甲子園で駒大苫小牧の取材を終えるとすぐ秀和氏に連絡を入れ、スタメン出場の有無を確認。「出てないですねえ」の言葉に、身勝手ながら少しホッとしながら足早に京セラドームへ向かった。
 3回の時点で現地に到着すると、すでに西武が6対0とリードしていた。普段ならオリックスを応援しているのだが、岡田の出番を考えれば願ってもない展開。前の2戦を見ていると競った展開での起用は考えられず、勝つにしろ、負けるにしろ一方的な展開が望まれた。相手の先発がサウスポーの松永浩典だったのが気になったが、そんなことを言っていたらいつまで立っても打席に立てない。
 すると6回表。思わぬ形で岡田の名前がドームに響いた。
「オリックスのライト迎に代わりまして岡田」
 高校時代やファームでも見たことのないライトでの守りが記念すべきプロ初出場。ポジションについた岡田は、グラブを何度も叩いたり、手首や足首をグルグル回したり、大きく息を吐いたり…と何とも落ち着かない感じだったが、1死後に飛んできた和田一浩のライナー性の飛球を無難に好捕。そしてひと安心となった7回裏に待望の初打席が回ってきた。

Okada_made_a_bittersweet_debut 待望の初打席。初球はフルスイングの空振り(左)。2球目は三塁側へファール(中)。最後は体を崩されての空振り三振(右)。大打者を証明する(?)三振デビューとなった
「8番、ライトフィルダー、タカヒロー・オカダッ」
 この日一番の歓声に送られて、左バッターボックスへ進む足がいつもより速い。はやる気持ちを抑えて立った記念すべき初打席。初球は内に抜け気味に入ってきたカーブを強振し空振り。続く2球目は115キロのスライダーを三塁側スタンドへファウル。
 そして3球目。今度は外へ逃げワンバウンドとなった115キロスライダーに崩され空振りの三振。3日間待ちに待った打席は本当にアッという間に終わった。
 しかし、結果は二の次で、とにかく1軍でのスタートを切ったことが何より。ちなみに王も長嶋も田淵も…、みんな初打席は三振だった。

               

今後はもっと積極的な起用を希望!
 最終回にあと1人出れば2打席目も巡ってきたが残念ながらそこでゲームセット。試合後のベンチ裏で岡田は記者に囲まれていた。

記者 1軍初打席どうでした?
岡田 う~ん、そうですねえ…。来た球を思い切り振ろうと思って入ったんですけど…。でも、結果はあんなんでしたけど、振ることはできたし次にいい結果が出るようにやるだけです。
記者 ファームと1軍のボールは違ってましたか?
岡田 特にそれは感じなかったですけど、3つ変化球が来るとは思ってなかったです。
記者 ライトの守備については?
岡田 守りから入るとは思ってなかったんですけど、普通に2つさばけたしよかったです。
記者 いろいろ反省もあるだろうけど、良かったところは?
岡田 3球全部振れたこと。次も振って結果を出していきたいです。

 家に戻って、早速録画しておいたCS放送で初打席を確認すると、解説の本西厚博氏も「1球はストレートを投げてほしかったですねえ」と話していた。11対1の7回裏、相手は高卒ルーキー、まして左対左。そう思って当然の場面だが、逆に考えれば、その状況ですべて変化球を投げさせたのも岡田だからこそではなかったか。「コイツには打たせたくない」「打たせるとマズイ」…、岡田は相手にそう思わせるだけの選手だということだ。
 だからこそ、オリックスベンチは岡田を積極的に使ってはどうだろうか? プレーオフ進出の可能性が完全に消滅するまでは今の形で…という考えなのだろうが、現状の流れを変える起爆剤として岡田の起用があってもいいはず。チーム内の若手、控え選手を見渡して、何かを変えてくれそうな期待を抱けるのは岡田以外に見当たらない。岡田貴弘の可能性をもっと感じ、大事にするばかりでなくもっと大胆に使ってほしい。
 そうすれば時期はともかく、きっと大きな結果で応えてくれるはず。それだけの選手と僕は信じている。

8月10日現在の成績
[1軍] 1試合 1打数0安打 打率.000 0本塁打 0打点 0四死球 1三振 0盗塁

[2軍] 64試合 234打数55安打 打率.239 4本塁打 22打点 17四死球 62三振 5盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は8月21日の予定です。

2006-08-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第13回-

Okada_backshoot シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は13回目。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。7月のフレッシュオールスターでは本塁打を放って優秀賞を獲得するなど、1年目から確実にその力を積み上げています。それでは、必読のレポートをどうぞ!

電話取材敢行!

Kidokoro_and_okada履正社高時代、岡田最後の夏は大阪大会準決勝で大阪桐蔭に敗れたが、今年の後輩達もまた大阪桐蔭に涙を呑んだ
 昨日、高校野球大阪大会では決勝戦(舞洲ベースボールスタジアム)が行われ、大阪桐蔭が金光大阪を下し2年連続の代表切符を手に入れた。 実は、雨の影響で決勝戦が31日になるとわかった時、僕の頭には密かなプランが浮かんでいた。
 当日は月曜日でもあり、通常ならサーパスの練習は休み。そこでセンバツにも出場した岡田の母校・履正社が決勝まで勝ち進めば、本人が応援にやってくるのではないか…。だとすれば、後輩に声を送る岡田の横で面白い取材ができるのではないか…。ということだ。
 しかし、その思惑は履正社が昨年の決勝で涙を飲まされた大阪桐蔭に4回戦で敗れ、ご破算。そして気づけば、前回のフレッシュオールスター以降、11日間でわずか3試合しか行われなかったサーパスのゲームを観戦することもできず…。
 そこで今回は急遽、締切日当日の夜、神戸での練習を終え福岡入りしたばかりの岡田を電話で直撃することになった。

初の1軍練習を終えて
谷上 フレッシュオールスターの翌日から 初めて1軍の練習に参加したけど、まずはその感想から
岡田 いやあ、やっぱり緊張しました。1軍はオールスター期間中だったんですけど、ベテランの方もほとんど参加されてましたし。ホント緊張しました
谷上 その中でアピールはできた?
岡田 どうですかねえ。やっぱり、自分の場合はバッティングなんですけど、まあまあ…、まあまあ…、っていう感じでした
谷上 1軍の首脳陣から何か言われたことは?
岡田 中村監督とは話すことはなかったんですけど、新井コーチ(チーフ兼打撃)からは、フリーバッティングの時に軸足について言われました。前からそうなんですけど、僕はスイングの時に軸足が少しずれるっていうか、動くんです。だからそれを動かさないように意識してやってみろと言われました
谷上 21日の練習のあと、首脳陣が「もう1日見たい」ということで22日の参加も決まったということだったけど
岡田 いや、あれは最初から2日間って言われてたんで、1日目が終わって決まったわけじゃなかったんです
谷上 そうなの。で、2日間参加した結果、1軍にはサーパスから一緒に呼ばれていた由田慎太郎が昇格。結果はどういう形で知らされたの?
岡田 2日目の練習が終わったあとに新井コーチから「今回はないから」って感じで。まあ、仕方ないですね

Kidokoro_and_okadaオールスター明け直後の1軍昇格は見送られたが、チャンスはこれからいくらでもある
後半戦スタート!
 サーパスへ戻った岡田は7月25日から「あじさいスタジアム」で広島と3連戦。結果は4―0、4―1(1打点)、3―0(1四球)。結果よりも内容ということだが、11のアウトのうち5つが三振というのはちょっと気になるところ。本人はどう思っているのか。

谷上 後半戦に入ってからの感じは?
岡田 感じはそんなに悪くないんですけど、結果は出てないですね。でも、1つあったのは、広島戦の前に藤井コーチと相談して、新しいことを取り入れてやってみたんです。でも、それがあんまりうまくいかなくて結果もイマイチでした
谷上 具体的にはどういうことを?
岡田 う~ん、ちょっと電話で説明するのは難しくて…
谷上 じゃあ、それはまた今度。広島戦以降は、試合から遠ざかってるけど、その中では?
岡田 今はまた元の形に戻してやってるので、あとは1日から始まる試合でどうかです
谷上 ファームの方は残り30ゲームほど。これからどういう気持ちで戦っていこうと?
岡田 残りゲームでは、もっと長打にこだわっていきたいですね。やっぱり、自分の1番のアピールはそこだと改めて感じていますし、ホームランの数ももっと増やしていきたいです
谷上 今回は見送りになったけど、1軍に上がるチャンスもまた巡って来るやろうし
岡田 はい、頑張ります

余計なお世話ながら…
 これはあくまで僕の考えだが、実際に岡田の今季中の1軍昇格はおそらくあるだろう。プレーオフ進出の可能性が限りなく薄くなった1軍の状況に加え、一塁を守っている北川博敏が8月下旬にかねてから痛めていた右肩の手術をすることも決定。その時点で岡田の状態が上がっていれば、そこがまず昇格のチャンスだ。レギュラー選手の故障を機に若手がチャンスをつかむというのはよくあることだが、そういう運を持っていることも勝負の世界では大事なことだ。

Kidokoro_and_okada順調に成長しつつある岡田だが、今後、故障にだけは最新の注意を払ってほしい

 最後に、北川の話が出たところで加えておきたいことが1つ。それは北川が右肩を故障した経緯についてだ。致命的なダメージを負った原因は、5月30日に行われた中日戦で一塁守備についていた際、小飛球に頭から飛び込み右肩を強打したプレーと言われている。
 しかし、はじまりは同月11日の巨人戦で、一塁走者として頭から帰塁した際に右肩を突いたことにある。やはり「関節唇損傷」の症状で苦しんだ濱中治(阪神)や高校時代の岡田のライバル平田良介(中日)が痛めたのと同じパターンだ。
 以前のレポートでも書いたが、時に頭から戻ることもある岡田にはくれぐれも注意してほしい。ハッスルプレーをすることも、少しでも先の塁を盗む意欲を持つことも大事なのは当たり前だが、岡田の一番の魅力はそのバッティングにある。そのところを本人には強く、強く意識してもらいたい。

7月31日現在の成績
60試合 220打数51安打 打率.232 4本塁打 19打点 17四死球 60三振 5盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回更新は8月11日の予定です。

2006-07-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第12回-

Scoreboard_1  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は12回目です。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。
 今回はフレッシュオールスターで一発を放ち、優秀賞を受賞した記念として、その時の岡田選手のプレーぶりを普段よりも文字量を増量して詳細にお届けします。

フレッシュオールスターに密着
 前回予告した通り、20日に東京ドームで行われたフレッシュオールスターを観戦してきた。
 そして、そこで飛び出した岡田の一発を見てきた。
 久しぶりにスタンドで興奮した。
 これまで、この欄でも過去にここからスターダムへと上っていったオリックスの先輩、イチローや藤井康雄コーチの話を書いてきたが、見事にそこへ続いた。大舞台で打つという“星”は一流選手になるには絶対に必要なもの。単に1本のホームランというだけでなく、岡田の確かな未来を予感させる一発でもあった。

 当日を振り返ってみる。15時過ぎに東京ドームへ到着すると、ちょうどパ・リーグのバッティング練習が行われていた。
 そして、間もなく岡田がベンチから登場。ソフトバンクの2年目、城所龍磨と組んでティーバッティングからフリーバッティングへと流れていく。すると5本1セットで回して打っていた3回目にライトスタンド中段へ一発。まともに当たれば打球が違うし、改めて高卒1年目の当たりじゃない。
 ベンチ前へ戻ってきた岡田に新聞記者が集まる。「結構、緊張してます」「自分の力をアピールしたい」「サーパスの代表として頑張りたいです」その輪が解けかかったところで岡田をつかまえ、話を聞いてみた。

Kidokoro_and_okada城所(ソフトバンク)と打撃練習中に話をする岡田

谷上 バッティング練習の時、ゲージのうしろで秋山さん(幸二・ソフトバンク2軍監督)が外野方向を指差して何か話しかけていたけど?
岡田 松井さん(秀喜・ヤンキース)はスタンドの上にある看板にバンバン当ててたって言われたんです
谷上 前半戦の最後は(僕は)見られなかったけど、最近の感じはどうだった?
岡田 ちょっと落ちて、また戻ってきて。でも、形は悪くないし、いい感じが続いてます
谷上 東京ドームは初めてやけど試合前に打った感触は?
岡田 やっぱりよく飛ぶ感じはします
谷上 見てると一発出そうな気がするけど?
岡田 (ニヤッとして)芯に当たっていい角度で飛んでいけば…、ハイ

秋山が指差していた右中間のスタンド上には長嶋茂雄が微笑むセコムの看板があった。

Okada_top第1打席は三振を喫したが、第2打席で左中間に二塁打を放った

第1打席は空振り三振も第2打席で左中間二塁打
 18時20分試合開始。セントラルがいきなり1回表に4点を先行する展開。7番・岡田の第1打席は2回裏、2死走者なしの場面で巡ってきた。
 相手先発は同じくルーキーの山口俊(横浜)。岡田に合いそうな右の本格派だ。その初球、138キロのストレートを思い切り強振し空振り。岡田は自ら大きなことを言うタイプではないが、内に秘めたものは強い。完全に狙ったスイングだ。
 2球目は139キロ、3球目は140キロの真っすぐを続けてファウル。内に1球外れたあと138キロの真っすぐを三たびファウル。そして最後は真ん中低めストレートを豪快に振り抜いた…が、空振りの三振。スコアボードの球速表示には136とあったが、数字以上のスピードと力強い伸びを感じた。2イニングで交代した山口が投げた渾身の2球だったわけだが、当たっていればそれこそ長嶋さんのところまで飛びそうなスイングだった。
 第2打席は4回の2死無走者の場面。ピッチャーは3番手のやはりルーキーの佐藤剛士(広島)。初球真っすぐをファウル。3球目カーブが外れたあと、外寄りの低めの真っすぐを今度は捉えた。打球は右中間で微笑む長嶋ではなくセンター左にあるイチローの日興コーディアル証券の看板を目指して伸びていったが、惜しい! フェンス直撃のツーベース。しかし、左方向へ大きな打球を打てる岡田の本領をまず見せた。

ついに記念すべき一発が!
 そしてクライマックスは先頭バッターとして登場した7回裏。相手ピッチャーは吉見一起(中日)。6回から登板して2奪三振と球もキレており、ラジオの実況では「さすが貫禄を感じます」と賞賛していた。が、僕は一緒に観戦していた編集部のIさんに「吉見には強いんですよ」とひとこと。球場入りしてから「岡田が」「岡田が」と話す僕に「身内みたいですねえ」と苦笑いしていたIさんは聞き流していたが、吉見への相性の良さは以前のインタビューの中で岡田からも聞いていたし、実際にゲームを見ても感じていた。
 すると…。
 まず、初球は外寄りの真っすぐでストライク。2球目はインコース膝元へのスライダーがボール。5月頃まで空振りしていた球にしっかりバットが止まった。これも成長の証だ。そして3球目。132キロ内寄りの真っすぐを一閃した打球は高々とライトへ上がり、そのままポール際の前列へ落ちた。見事にこの大舞台で打って見せたのだ。

 試合後に聞いた感想によると…。

Kidokoro_and_okada吉見(中日)からライトポール際に本塁打を放つ。本人いわく「ちょい詰まりのちょいこすり(笑)」

岡田 ちょい詰まりのちょいこすりです。でも、結構手応えはあったんでゆっくり走ってたらギリギリだったんで焦りました(笑)

 しかし、ポール際で切れない打球も岡田の特徴の1つ。看板直撃弾とはいかなかったが、ある意味で「岡田らしい」一発でもあった。そこから僕は一塁ベンチ裏へと走った。すると岡田はちょうど「スカイA」のインタビューのために出てきたところだったので横でそのインタビューの内容を聞いていた。

―――どういう気持ちでバッターボックスに入ったのですか?
岡田 ウエスタンの時も吉見さんは相性がよかったんで、すごくいい感じでバッターボックスに入れました
―――前の打席でもツーベース。ホームランを狙っていたんじゃないですか。
岡田 1打席目から狙ってましたけど、まさかここで出るとは思ってなかったです
―――フレッシュオールスターは楽しんでますか?
岡田 楽しんでます(ニコッ)

 やはり吉見との相性を口にしたが、それにしても実にいい表情でインタビューに答えていた。
 岡田が去ったあと、インタビュアーの女性が「嬉しそうやったねえ。なんか華やかな雰囲気でよかったなあ」としみじみ話していたが、ホント、いい顔をしていた。
 すると間もなくグラウンドからは「岡田コール」が響いてきた。こっちもじんわりとなってしまった。

 スタンドへ上がると、僕はそのまま一塁側上段の席へと向かった。そこには応援に駆けつけた「岡田ファミリー」の姿があり、もちろんその一角も笑顔、笑顔、笑顔。父・秀和氏から「谷上さん、(岡田の)ホームランを見たの初めてでしょう?」と笑って言われたが、そこはズバリ「この日のために取っておいたんです!」と答えた。

Okada_topセ・リーグ選抜の勝利でMVPは夢と消えたが、岡田は優秀選手賞を獲得

シーズン後半戦1軍定着への大いなるステップ
 最終回の第4打席は、福田聡志(巨人)の前にセカンドゴロに倒れた岡田だったが、4打数2安打、1ホーマー、1打点で見事、優秀選手賞に輝いた。
 これまで「ナニワのゴジラ」の名は聞けど、近畿に住む熱心な野球ファン以外は、実際にそのプレーを見ることがほとんどなかったはず。今回の活躍で、岡田の実力の一端は感じてもらえたと思う。
 また、僕も活きのいい若手が揃ったこの舞台で、改めて岡田への期待を大きくした。とにかく、他のどの打者が打席に立つよりもワクワクするものを感じた。身びいきを差し引いても打席での雰囲気が違っていたのだ。

 試合後。グラウンドへ下りて、一塁側のベンチ前で表彰の開始を待っていると僕の横に何とオリックスの小泉社長の姿があった。すると、横にいたおそらく新聞記者が「岡田はオリックスにないものを持っているんじゃないですか」と話しかけた。小泉氏が「ウチのチームに何が足りないと思う?」と返すと、記者は「ホームランです」と答えた。それに対し、小泉氏は「君、ウチはホームランは少なくないんだよ」とひとこと。そう、オリックスに足りないのはリーグトップの西武に6本差の「ホームラン」ではなく「チームの柱になる若手」、そこで岡田なのだ。
 オリックスにとっては、イチロー以来となる待望のスター候補生登場。その後、ベンチ前で岡田とガッチリ握手を交わした小泉社長もまた、その可能性をたっぷりと感じたはずだ。
 しかし、表彰を受け、ベンチへ戻ってきた岡田の顔はゲーム中とは切り替わっていた。
 それには大きな理由がある。明日から神戸で1軍の練習への参加が決まっていたのだ。

岡田 中村監督に見たいって言ってもらって。何とかそこでアピールして1日でも早く1軍に上がれるように頑張ります

Okada_top試合後、多くの記者に囲まれる岡田選手。翌日から1軍の練習に合流の予定。1軍デビューは近い?

 取材の最後を力強く締めた岡田。 何かが一気に動き出した感じがするが、スターになる選手というのはこういうものなのだろう。
 もちろん、まだ1軍に上がれるか、どうかはわからないし、上がったとしてもすぐ活躍というほど甘くもないはず。しかし、この一戦で岡田がスターダムへの一歩を記したことは間違いない。新聞記者の輪が解けた最後にひとこと、言わせてもらった。

谷上 やったな
岡田 ハイ!

 僕にとっても最高の東京遠征、おそらく生涯忘れられない一戦となった。

7月20日現在の成績
57試合 209打数50安打 打率239 4本塁打 18打点 16四死球 55三振 5盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は8月1日です。

2006-07-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第11回-

Okada_defencepreparation  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は11回目。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後の成長を綴る必読のレポートをどうぞ!

好調の秘密を語る

 練習がオフだった3日の月曜日。以前、ここでも書いた「徳永治療院」へ午後行くという岡田と、治療後に近くの店で待ち合わせて話を聞くことにした。
 そこで、約束の店に早めに入って取材の準備をしようと家を出ると…。最寄り駅から乗り込んだ電車で治療へ向かう岡田とバッタリ。思わぬ偶然に2人で顔を見合わせたが、「こんにちは」のあと、笑顔の岡田から続いたのは「今、いいんですよ」のひと言。もちろん、最近のバッティングについての言葉だが、決して口数の多くない岡田が自ら切り出してくるとは、それだけで状態の良さがわかろうというもの。
 治療を終え再会したところで、早速、その好調の理由に迫った。

Okada_finishこのところ打撃好調の岡田。「向かっていく形がわかってきた」と自己分析

谷上 特に何がよくなって調子が上がってきた?
岡田 入った時からずっと言われてたんですけど、ボールに向かっていく形、これが何となくわかってきたのが大きいと思うんです
谷上 右肩をぶつけるようにとか、強く踏み込んでいくとか、そういうイメージ?
岡田 う~ん、今までは、向かっていこうとすると、左足にあった体重がすぐ(踏み出した時に)右足へ全部移って突っ込んでしまっていたんです。でも、最近は下がしっかりいってから上がついていくようになってきた。下半身リードで、バットも勝手についてくる感じがここへきてやっとわかるようになってきたんです
谷上 下半身主導の動きができるようになり、向かっていく形にもつながってきた、と
岡田 はい。藤井さんからもいい感じになってきた、と言われてるんですけど、まだちょっと開くのが早い。まだ向かっていく形が甘いとも言われています
谷上 先日の甲子園で見たバッティングでも、3戦目のセカンドライナーなんか凄まじい当たり。凡打しても打球の迫力という点で高校時代の感じが出てきた
岡田 確かに(プロ入り後)これまでああいう打球はなかったですね。他にも、左投手から外へ逃げるボールをレフト前に落としたヒットもあったんですけど、それもしっかりボールに向かっていけてるから粘ってついていけた。全部つながってると思いますし、その結果、状態が上がってきました

プロ1年目、前半のシーズンを振り返る

 ただ、残念なことは、この絶好調期にサーパスの試合が少なかったことだ。7月は元々予定の公式戦が12試合と少なかった上、1、2日の広島戦が雨で中止。その結果、6日までは四国アイランドリーグの選抜チームと行った交流戦(5日)の1試合のみ。
 この影響も多少あったのか、7日からのソフトバンクとの3連戦では11打数2安打(打点、本塁打なしで三振1)とやや沈黙。
 しかし、それでもひとつの形を掴みつつあるということで、もちろん、この先も期待は膨らむばかりだ。
 そして、次回の更新では20日に東京ドームで行われるフレッシュオールスターの話が中心になる予定のため、今回、ひと足早く本人に前半戦を振り返ってもらった。

Okada_impact前半は苦心しながらも個々の課題を順調にクリア。後半は結果も残していきたい

谷上 もうすぐ前半戦が終わるけど、その点についてはどんな感じかな?
岡田 この1年はしっかり経験を積んで…、という頭だったんですけど、ここへきて調子も上がってきたんで、後半戦はもっと結果を残していきたいです
谷上 思えば教育リーグではチームトップの打率を記録したものの、公式戦が開幕すると一転、苦労が続き…。それでも徐々にプロのスピード、次には落ちるボール、そしてサウスポーへと対応しながら1つずつ課題をクリアしてきた印象
岡田 そうですね。好調の期間も長くなってきましたし、今までになかった感覚をその都度、感じていけてる気はします。自分でもプロに入って一番成長したのは、そのあたりの対応力がついてきたことだと思っています
谷上 具体的に技術面で成長したところは?
岡田 やっぱり、ボールに向かっていく姿勢。それと、スイング自体もバットが内から出るようになってきたと思います
谷上 高校の時も内から出ていたとは思うけど? 当時から逆方向に大きい当たりも出ていたけど、内から出ていなければそんな打球はなかっただろうし
岡田 調子のいい時は出来ていたと思います。でも、それも今思えば高校生のレベル。最近になって、三塁側のファウルが打てるようになってきたんです。例えばインコースに真っすぐがきても、ボールに向かっていってバットが内から出るから三塁側のファウルになる。プロへ入った頃はそういうファウルがなかったんです
谷上 なるほど。加藤英司さんは一塁側のファウル(前回記事参照)で、本人は三塁側のファウルとは面白い話。でも、そういった成長も、やはり試合に出続けているからこそ感じられる部分。首脳陣の期待はもちろん、試合に出続ける体の強さを感じている?
岡田 自分で強いとは全然思ってないんですけど。ただ、地元のチームに入ることができたことで、オフの日にこうやって徳永さん(治療院)のところにも通えますし、あとは1日の終わりにも部屋で1時間くらいかけて体をほぐしたりしています。やっぱりプロは野球をするのが仕事なんで、そういった体のケアについてはしっかりやるようにしいています
谷上 ケガが一番怖いからね。さて、苦労を重ねながらも順調な滑り出しということで、1年後、2年後のイメージもかなり湧いてきたのでは?
岡田 そこはまだですね。今はとりあえず後半戦。そこで結果を出して、何とか後半に一軍へ上がりたい。そうなるように頑張るだけです

藤井、イチローに続け! フレッシュオールスター(7月20日)の岡田に期待

Okada_privatestyle取材時の岡田。そのスタイルは普通の若者と変わることはない

 先にも触れた通り、次回はフレッシュオールスターを観戦し、練習段階からしっかり岡田に密着してくるつもりだ。おそらく高校時代の宿敵・辻内崇伸(現巨人)との対戦も実現するだろうが、その中でドームのスタンドへ豪快な一発を放つ姿が見られれば…。想像するだけで、今から楽しみになってきた。
 以前、この連載の中で1992年にプロ1年目だったイチローが、同じく東京ドームで行われたジュニアオールスターで代打決勝アーチを放ちMVPに輝いた話を書いた。実は、その4年前には、やはり東京ドームでの一戦で藤井コーチも決勝弾を放ちMVPを獲得していたことが判明。岡田にも是非、この流れに乗って先々への大きな弾みにしてもらいたい!

7月10日現在の成績
52試合 193打数45安打 打率233 4本塁打 17打点 14四死球 48三振 3盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は7月21日です。

2006-07-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第10回-

Okada_batting_1 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は10回目。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後の成長を綴る必読のレポートをどうぞ!

         

ナニゴジと甲子園

 このコーナーも早いもので10回目を迎えた。岡田の「爆発レポート」はなかなか届けられずにいるが、前半戦も終わろうとするこの時期まで全試合スタメン出場を続けていることがまず何より。
「僕の密かな自慢は毎日ゲームに出続ける体力」そう言っていた松井秀喜(ヤンキース)の言葉を思い出す。
 もちろん「育てよう」とするベンチの決断があってこそだが、その起用に元気な姿で応える岡田。あり体だが「無事是名馬」、屈強な肉体こそプロで成功する何よりの資質でもある。

Okada_top高2秋の近畿大会以来となる甲子園のバッターボックスに立つ岡田

 さて、そんな岡田が今回は6月27日からの阪神3連戦で甲子園球場に登場。通常、阪神のホームゲームは鳴尾浜で行なわれるが、時折、甲子園を使う時があり、今回がその“時折”。岡田と甲子園と言えば、履正社高校時代の2年秋に出場した近畿大会を思い出す。
 準々決勝で八幡商の好投手・上田大貴からセンターバックスクリーン横へ弾丸ライナーで突き刺した一発は圧巻だった。
 さらにセンターへのライナーに1、2歩前へやってきた野手の頭をグン、グンッと加速し超えていった打球がワンバウンドでフェンス直撃という「驚弾」も目撃した。
 さあ、再びの甲子園で岡田はどんなバッティングを見せてくれるのか!

引っ張ったファウル

 結果からいうと、岡田は甲子園での3連戦で16打数4安打のノーアーチ(1打点、4三振)。
 ただ、内容的には随所に見るべきところがあった。そのあたりのレポートを…、とも思ったが、実は2戦目、3戦目はそれぞれCS放送の「GAORA」、関西U局の「サンテレビ」で珍しくテレビ中継されていた。特に3戦目の解説は福本豊&加藤英司という超豪華版。ビデオに録って見た放送の様子を重ねながらレポートを書いてみる。

Okada042死満塁の絶好機で三振。悔しそうな表情でベンチへ戻ってくる

 3戦目の第1打席は阪神先発・杉山直久からセカンドライナー。第2打席に相木崇からライト前ヒットを放ったあとの第3打席。岡田の前で投手がサウスポーの吉野誠へスイッチし、迎えた2死満塁の絶好機。0―2から3球目の内から内へ曲がってきたスライダーを叩き一塁線に強いゴロのファウルを打った時だった。加藤氏がこんなことを言った。

加藤 インコースのボールを、ああやってバットの芯に当てて一塁側へファウルできる。今のひと振りを見ただけで打てるな、いい選手になるな、と判断できますよ

 実はこの「一塁側へのファウル」については雨で4回途中でノーゲームとなったサーパスの開幕戦でも聞いていた。その時はネット裏でやはり加藤氏と観戦していたという福本氏の口からだったが、確かこんな感じだった。

福本 岡田はええよ。加藤と見とったけどインコースをキチッとファウルしよる。あれはねなかなかできへんねん。外国人なんか見とったらようわかるけど、根っこに当たってファーストゴロ、セカンドゴロになるヤツが多い。フェアゾーンに入ってしまうんや

 つまり、インコースを芯に当てられるということは、それだけバットが内から出ているということ。俗に言うドアスイングになっていたら引っ張ってのいい打球は飛ばないということなのだろう。ちなみに加藤氏は昨年までのサーパスの監督、かつては日本ハムのコーチも務めていたが、指導の中ではよく「ファウルを打て」と言っていたそうだ。
 結果的にその打席の岡田は、2―2から内角のボールコースへ抜けたスライダーを空振りして三振に倒れたが、何気ないファウル1本に岡田の非凡さを再確認した思いだった。

名球界コンビが絶賛

 そして第4打席。1―1からサイドハンド伊予野貴照が投じた145キロのストレートをジャストミート。強烈にラインドライブのかかった打球は二塁手・上坂太一郎の横っ飛びによるファインプレーで好捕されたが、まさに火の出るような当たりだった。
 そこで、その裏の阪神の攻撃になっても名球界メンバー2人による岡田話は続き…。中でも加藤氏は感心しきりの様子で再び力を込めていた。

加藤 バッターっていうのは1打席の中で何球か手を出しますけど、その打球はバックネットへ飛んだり、三塁側へファウルになったりすることが多い。でも、彼は手を出した初球からバットの芯に当てる。新人でこれができるっていうのは並のバッターじゃありませんよ

 岡田の状態が上がってきていたことは確か。2戦目、3戦目ではかなりの確率でファーストストライクから打ってでていた。これは岡田の調子を図るひとつのバロメーターでもあるが、そのボールをまたしっかり芯で捉えていた。

 ちなみに2戦目の阪神先発はサウスポーの田村領平だったが、その1打席目でも0―1からのストレートをジャストミート。先のセカンドライナーに劣らぬ強烈なショートゴロというのもあった。ワンバウンドで飛んできた打球を大和(前田)が体を反転させながら好捕しアウトとなったが、数少ない観客のタメ息が集音マイクを通じて確かに聞こえた。

Katoh_and_fukumotoテレビ解説を務める福本豊、加藤英司の両氏も岡田を絶賛

 また、その3席目では同じく田村相手に粘り、最後は外角低目のボールゾーンへ落ちるカーブを片手で拾ってレフト前に落とした。イチローばりの芸術的なヒットだったが、以前なら腰が逃げてヘッドが返り、間違いなく空振りしていたコース。そんなワンシーンを見ても確実な上昇が感じられた。

 しかし、ブラウン管を通して見たことで、岡田への期待が改めて膨らんだ。何より福本氏、加藤氏ともに太鼓判を押していた打席での雰囲気には、何かを期待さずにはおれないものがあった。
 やっぱりこれは相当なことになる!
 早ければ来年にも、このブログが貴重な資料としてアチコチで用いられる日がやってくるかもしれない。

6月30日現在の成績
49試合 182打数43安打 打率236 4本塁打 17打点 14四死球 47三振 3盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は7月11日です。

2006-06-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第9回-

Okadas_back_view  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は9回目です。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりを、履正社高校(大阪)の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後の成長を綴る必読のレポートをどうぞ!

Okadas_highschooldays履正社高時代の岡田。練習試合の対戦相手からも注目される存在だった

あの子はもう1軍ですか?

 去年の今頃は「ナニワの四天王(岡田、辻内、平田、鶴)」の取材で大阪の中を走り回っていたが、今年は一転、遠方へ向かうことが多い。そんな中、思わぬところで岡田の話題を耳にすることがある。
「あの子はもう1軍ですか?」
 そう尋ねてきたのは先日取材でお邪魔した愛工大名電(愛知)の倉野光生監督。愛工大名電と岡田の母校である履正社は時折練習試合を行う関係で、倉野監督は岡田の高校時代を何度か見ていた。
 いきなり「1軍ですか?」と口をついたのは「僕はプロ野球をあまり見ないから情報もなくて」ということだったが、岡田の力をそれだけ見込んでの言葉だったことには違いない。

倉野 履正社さんとは岡田君が1年の時と3年の時に練習試合をしたんですよ。1年の時は確かにパワーは感じましたけど、ちょっとドンくさい感じでしたね。でも、それが3年になると、体も締まって大きいのに瞬発力を感じる選手になっていた。だからこれは楽しみだな、と思ってたんですよ

 練習により締まった肉体面だけでなく、高校3年間で育った「打つだけの選手と思われたくない」という意識面での成長を改めて感じさせる言葉だった。そして、プロに入り後もその「瞬発力」はさらに磨かれており、より楽しみは広がっている。

Ina_ryuya_1近江高のスラッガー・伊奈龍哉。「ゴジラ」の称号がつけられる程の豪打が魅力

「ナニワのゴジラ」と「近江のゴジラ」

 「岡田と比べてどうですか?」
 近江高校(滋賀)を訪ねた時、今度は若手のコーチから“逆取材”を受けた。
 実はチームには今、「近江のゴジラ」と評判のスラッガー・伊奈龍哉がおり、今回もその取材だったのだが、ゴジラつながりということもあり岡田の名前が出た。
 そのコーチは岡田を生で見たことがなく興味津々。ただ、単純に比較をすることはできない。伊奈については、これまで甲子園や近畿大会で見た姿からはもっと力任せの印象を持っていたが、その日に見た練習試合では低目の変化球を軽くミートして外野の前に落とすなど変化・成長を感じさせる一面を見せてくれた。

 しかし、何と言っても伊奈の魅力は中学時代、砲丸投げで3度の日本一に輝いたこともあるというパワー。現時点ですでに高校通算本塁打は70本を超えており、数だけで言えばすでに岡田超えの域。ちなみに松井秀喜の星稜時代に何度か試合をしたことのある近江の多賀章仁監督による“本家”との比較も「打球の飛び方は負けてない」というもの。
 そして…。サラッと書いておくと実は伊奈はオリックスのファン。この話を本人から聞いた瞬間、僕の頭には岡田貴弘と伊奈龍哉、Wゴジラが並ぶ夢の打線が浮かんだ。
 もし、実現すれば…、これもまた相当に楽しみだ。

Okada_manager履正社高・岡田龍生監督。岡田の在学時代を語る

今は試合に使い続けてもらっているのが一番

「この間もね、ちょっと電話して話したところなんですよ」
 そう切り出したのは履正社の岡田龍生監督。実は僕の家と履正社は歩いて15分の距離にある。そこで先日、夏へ向けての話を聞きに伺ったところ、途中からは岡田の話になった。
 岡田監督の口からは、高い注目の中で十分に力を発揮できなかった昨夏の岡田の姿を思い出し反省の言葉が続いた。

岡田監督 2年の夏の状態が一番良かったんですけど、その時の形に戻りきらないまま最後の夏に入っていってしまった。トップを作った時の“割り”の形が3年になってからはもうひとつ上手く作れなくて。そのあたりのフォームの違いをもう少し早い段階で気付いてアドバイスできていれば…

 僕は今も時々<岡田が甲子園に出ていればどうなっていただろう>と思うが、岡田監督の中にも同じ気持ちがあるはず。しかし、プロ入り後の話になると、順調な成長を感じているのだろう、自然と監督の表情も和んだ。

岡田監督 今は試合に使い続けてもらってるのが一番。打数もウエスタンリーグでトップでしょ? この経験をしっかり生かして大きく育っていってほしい

 最後は「一度試合を見に行きたいんですけど、なかなか時間が取れなくて」と苦笑いを見せていたが、そう遠くない時期にブラウン管を通して観戦できるようになるはずだ。

本塁打量産態勢へ突入!

 さて、僕があちこちを訪ね歩いている間にも、岡田はしっかりスタメンでの出場を続けている。
 前回の更新以降は3―0(2三振)、3―0(1三振)、3―0(2三振)と低調な滑り出しだったが、17日に新潟の長岡悠久山球場で行われたファーム交流戦(対インボイス)から状況が一変。まず、この試合で実に5月10日以来となる第3号が飛び出した。
 週末を使って大阪から駆けつけていた父・秀和氏からの一報によると、

秀和氏 滞空時間のあるホームランで場外に出て行きました。私もプロでは初めて(ホームランを)見れたんでよかったです

 ちなみに相手投手は3年目の右腕・岡本篤志。
 翌18日は3―1。自由枠で入団のサウスポー・松永浩典からレフト前に1本。とりあえず1日1本のペースで打っていけば…と思っていたところ、20日の夕方に再び秀和氏から連絡が入った。
「なんか、4本目が出たみたいですよ」
 あじさいスタジアムでのソフトバンク戦を観戦していた知人からの一報を受け、僕のところへも知らせてくれたのだが、第1打席でホームラン、続く第2打席もスリーベース…と目覚ましい活躍だったとか。
 あとで確認してみると、第4号はレフトへ放り込んだソロで、2打点つきのスリーベースはセンターへ、ともに先発の高橋秀聡から打っていた。
 この結果に一瞬、<こういうゲームを見たかったなあ…>と悔やんだが、すぐに気分は切り替わった。この調子で上がっていけば、昨日のようなゲームも珍しくなくなると思えたからだ。
 去年の夏は相当苦しんだ岡田だが、今年こそは爆発の夏に!
 次回の更新では、ぜひ、この目で目撃した初のホームラン観戦レポートをたっぷりと書きたいものだ。

6月20日現在の成績
44試合 160打数36安打 打率.225 4本塁打 16打点 14四死球 41三振 3盗塁

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は7月1日です。

2006-06-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第8回-

Okada_feelding  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。早いもので8回目を迎えました。

 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

プロの厳しさ

 前回の更新以降、僕自身球場へ行けない日々が続いていたが、その間、岡田の方もちょっと地味な成績が続いた。2日からのソフトバンク戦(雁ノ巣、久留米)が4―1、4―0、4―1。6日からの広島戦(由宇)が、4―1、5―1、3―0。一発はなく2打点、3四球の6三振。確かに一時の好調を思えば物足りない。
 ただ、コンディションが万全でない中、先発出場を続け、単発とはいえヒットも出ている。そのことをもっと評価すべきなのかもしれない。まあ、シーズンが進むにつれ、見る側の要求も高まっていくということも考慮しなくてはならないだろう。

Okada_and_kira_1
チームメイトとの会話から何かを得ることも(写真は2年先輩の吉良俊則と会話する岡田)

 そんな中、今回の原稿締め日となる10日に名古屋球場で行われた中日戦を観戦。10時半過ぎに球場へ到着し、ネット裏の記者席に座ると、目の前で田中彰と坂口智隆が並んでティーを打っていた。2人は8日に1軍登録を抹消されファームへ戻ってきたばかりだったが、田中については岡田と話す中で何度かその名前が登場していた。共におっとりタイプと見える2人は性格的にも合うようで、岡田曰く「よくしてもらっています」。
 こんな話も聞いたことがあった。田中が1軍へ上がって間もなくの頃、寮で顔を合わせた岡田は田中に"上"の雰囲気を聞いた。すると思うところを話した田中は最後にこう言ったという。
「上がるだけじゃダメ。やっぱり試合に出ないと」
 田中は2週間余りの1軍帯同でわずか2試合の出場、2打席に立っただけで残念ながら登録抹消となってしまった。今の岡田は幸いにもファームでの出場機会には恵まれ、成長のための場も与えられている。しかし一方で、周囲から伝わってくるプロの厳しさを大いなる刺激として毎日を過ごしてほしい。

軸足の状態は?

 さて、そんなことを思いながら見つめた試合前のフリーバッティング。ここ数回の観戦時に比べると芯を外すシーンが目立っていた。そこで気になったのはやはり左足。軸足に感じているハリが、少なからずバッティングに影響しているのではないか、ということだ。
 打者にとって、いかに軸足が大事かということは、一昨年、年間を通じ取材をした中村(紀洋)から教わったことのひとつ。前年の秋に軸足である右のヒザを手術し、キャンプから慎重に、慎重に仕上げていく過程を見ていたが、なかなか元の感覚に戻らない。本人も歯痒さを感じながら、何度も口にしていたのが「軸足に乗り切らへん」「もっと軸足が粘れるようにならんと」といったフレーズ。
 体重が軸足に乗り切らないままボールを捉えにいくと、自分では「捉えた」という打球が思ったほど伸びきらない。あるいは、軸足に乗り切らないために左足(右打者の場合)の降ろし方にも粘りがなくなり、体が前に流れやすくなるという悪循環にもつながりやすくなる。特に中村や岡田のようにピッチャー側の足を上げて打つタイプには、軸足の安定が結果へよりダイレクトに関わってくるはずだ。
 もちろん、今の岡田に過度な心配は無用だが、いい時のドッシリ、ジワ~ッとした感じが見えなかったフリーバッティングに左足が気になった。

 試合直前、本人とひと言ふた言交わすことができた。

谷上 このところの感じは?
岡田 まあまあです。良くもなく悪くもなく…
谷上 あまり良くないのかと思ったけど
岡田 今日のフリーバッティングは全然でしたけど、特に悪いとは思ってません
谷上 足の状態は?
岡田 まだ、ちょっと気にはなりますね。でも、まあ大丈夫です

Okada_hitting
10日のウエスタンリーグ中日戦では2安打を放つ

不安を吹き飛ばす2安打

 この日の試合は12時30分プレーボール。中日の先発は、今年の希望枠で入団の吉見一起。ここまでファームで6試合に登板し、まだ勝ち星のない吉見だが、今日の立ち上がりは球が切れていた。
 2回には3者三振を決め、迎えた3回に先頭で対したのが岡田。1―1から外のストレートを軽く弾き返した打球はグングン伸び、左中間フェンスにショートバウンドで当たるツーベース。軽く振ったように見えて大きく伸びるのが調子のいい時の岡田の打球の特徴だが、まさに高校時代の好調時を思い出させる一打だった。
 続く1死一、三塁のチャンスで立った2打席目は、同じく1―1から外の140キロを振り抜いた! と思ったらバットが根本から真っ二つに裂け打球はショートへ。6―4―3のダブルプレーに終わった。
 しかし、6回表の第3打席では外のスライダーを軽くミートしレフト前へクリーンヒットと、試合前の僕の見立てをアッサリ覆す7試合ぶりの2安打は、内容もなかなかよく見えた。
 そこで、その3打席を試合後に訪ねた宿泊先のホテルロビーで振り返ってもらった。

岡田 1本目は自然と外のボールにバットが出て。久しぶりにいい感じで捉えられました。2打席目もストレートと思って打ちにいったんですけど、今度はシュートで芯から外れてしまって。あそこで打ちたかったですけどね。3打席目は高めのスライダー。甘かったですけどあれも自然とバットが出ました。吉見さんとは前回の対決でラッキーもあったんですけど、3本打ってて、いいイメージが残ってたっていうのもあったと思います

 そして、藤井康雄コーチにも現状を解説してもらった。

藤井 今は、日によって良かったり悪かったりの繰り返し。試合の中でもそう。こっちもいろいろ言うようになってきて彼も頭では理解しているんだけど、それを体で表現するところまではいってない。だってまだ芯で捉える確率がフリーバッティングでも5割程度。素振りと同じような感じで打席でも振れるようになってくれば、その確率も1軍レベルの8割程度まで上がってくるはずなんだけどね。まあ、まだまだということ。でも、来年、再来年と大きく伸びるためにも今のうちにうんと苦労しておけばいいんですよ

再浮上のきっかけに!

Okada_bunt
今季2度目のバント? と思いきや、結果は死球に…

 ちなみにこの試合には9回ノーアウト二塁の場面で巡ってきた第4打席もあった。3打席限りかと思っていたところ打線がつながり、4回目が回ってきたのだ。マウンドにはその回から登板の樋口龍美。天敵となっている左のサイドハンドだ。
 しかし、こういう打席に立つことが何よりの実戦経験。少しでも対応できるようになっているか、と注目したところ、なんとベンチからのサインは送りバント。前回のプロ初に続き、2度目も観ることになろうとは…、と思っていたら、初球のスライダーがすっぽ抜け、バントの構えから身をよじってよけた岡田のお尻あたりにドスン。プロ2個目のデットボールであっさり4打席目は終了となったのだった。
 一塁へ歩く岡田の背中を見ながら、自由に打たせてほしかったなあ…、と思いつつ、それが現状の大石監督の評価なのだ、と納得。岡田には、今日の"いい感じ"を再上昇のきっかけとして、ここからはベンチにバントサインを封印させる猛打に期待したい。

6月10日現在の成績
38試合 141打数32安打 打率.227 2本塁打 11打点 14四死球 34三振 2盗塁

※今回から盗塁も加えました

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は6月21日です。

2006-06-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第7回-

 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は7回目。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

フォークの次はサウスポー

Practice_2
最近のバッティングについて近況を語る岡田

岡田 バッティングって本当に難しいですよねえ…。ちょっとタイミングや形が違うだけで結果が変わってきますから

 練習オフの29日、体のケアのため訪れていた大阪の徳永治療院でしみじみそう言った岡田。このひと言でもわかるように、それまで好調をキープしていたバッティングは5月後半に入ってやや調子が落ちていた。
 近くの喫茶店に場所を変え、ざっとこの1週間余りを振り返ってもらった。まずは21日に熊本・八代で行なわれたソフトバンク戦。5月半ばから由宇→鹿児島→熊本と続いたロードの最終戦は、相手先発・高橋秀聡の前に4打数ノーヒット。

岡田 でも、2本捉えた当たりがありましたし、あの頃はまだいい感じが続いていたんです

 その言葉通り24日に神戸サブグラウンドで行なわれたプロ・アマ交流戦(NOMOベースボールクラブ)では公式記録には残らないもののライトへ一発を放り込んだ。

岡田 真っ直ぐにちょっと詰まり気味でしたけど手応えはありました。やっぱり毎日プロのボールを打っているので、打ちやすく感じたというのも確かです

 しかし、このあと26日から続いた阪神3連戦が4―0、4―1、3―0で5三振。改めて確認してみると相手先発は、中村泰広、筒井和也、田村領平とすべてサウスポーだった。
 これまでの試合を見ていても右に比べ左投手にはやや分の悪さを感じていたので、ストレートに聞いてみた。

岡田 自分では特に苦手意識はないんですけど。筒井さんからは右中間にスリーベースも打ちましたし。でも、右に比べて結果がもう1つだとすれば、これもやっぱり『慣れ』が大きいと思います

 少し前まで苦しめられていた「落ちるボール」同様、「慣れ」と共に地応力も上がってくるはずだ。

安藤(阪神)を相手に1軍級のボールを体感

 そんな岡田が前回更新以降の対戦で最も印象に残った投手として名前を挙げたのが、阪神3連戦の初戦、中村のあとに投げた安藤優也。

岡田 これまで対戦したピッチャーとは低目の球筋が違ってたんです。140キロ出てないボールでもベース上での切れが違うし、変化球もストレートの軌道できて手元で鋭く曲がったり。やっぱり1軍で投げてるピッチャーのボールだとハッキリ感じました

 ただ、その安藤との対戦では三振のあとバックスクリーン手前まで飛ばす一打も放ったという(結果はセンターフライ)。しかも打ったのはフォーク。

岡田 片手1本で拾ったらフェンス手前まで飛んでいったんで、自分でもあそこまでいくか、って感じだったんです。でも、ああいう形で拾えていけるようになってきたのもやっぱり落ちるボールに慣れてきたから

 また、その日は親子ゲームということで、サーパスのゲームは午前中から大阪ドームで行なわれた。そこで3月11日、巨人とのオープン戦以来となる大阪ドームでプレーした感想も聞いてみた。

岡田 もう打席に立つだけでワクワクしました。やっぱりああいう球場でプレーしてこそプロって感じがしますから

 しかし、その試合で岡田はヒーローになり損ねる。1対1で迎えた9回裏ワンアウト一、二塁で巡ってきたサヨナラ機に、牧野塁のストレートに空振りの三振に倒れたのだ。

岡田 速さもあったんですけど、それより力んでバットが出なかったのが…。あれは相当悔しかったです

 ただ、相手はかつて最速155キロを誇ったスピード自慢の牧野である。今でこそやや衰えは見えるものの、そのボールは一軍クラスのもの。こういったピッチャーと対する1打席、1打席がまた岡田を大きくしてくれるのだろう。

Okada_shibata
高校時代からのライバル平田(中日)が放った飛球を岡田が捕球し試合終了
気になる左足

 そして30日の中日戦(あじさいスタジアム)。別の仕事を片づけ、15時前に球場へ飛び込むと、試合はすでに9回表2アウト。バッターボックスには、高校時代のライバル平田良介が立っていた。
 1球ファウルのあと、平田が強振した打球は高々と上がったフライとなってピッチャー後方へ。そこへ「オッケー!」の大きな声と共に岡田が飛び出し、最後はショートの柴田亮輔を制しウイニングボールをキャッチしてゲームセットとなった。もう少し見たかったが、岡田の軽快な動きを確認できたのでホッとした。というのも、前日に会った時、やや左足を気にしながら歩いていて、聞いてみると「左足の内側がちょっと…」と少し曇った表情を見せていたからだ。

 開幕から全試合スタメン出場の疲れもあるのだろう。軽い張りがあり、28日のゲームから患部をテーピングで固定しての出場だったという。
 試合終了直後、ベンチ裏で本人に状態を確認すると「昨日よりマシでした」と案外明るい表情にまた少しホッ。
 ケガへの強さも一流プレーヤーの証でもあるが、あくまで無理することなくこのまま試合に出続けてほしい。そして最後に聞いたバッティングは…。

岡田 今日は2打数1安打(1四球、1犠飛)でした。佐藤(亮太)さんからセンター前、1本です

フレッシュオールスター出場決定!

  また、翌31日にも4打数2安打と再びヒットを重ね始めた岡田に嬉しいニュースがひとつ。7月20日に東京ドームで行なわれるフレッシュオールスターへの出場が決まったのだ。
 「楽しみです」といった岡田は続けて「辻内と対戦できるかもしれないですよね」とニヤリ。昨夏の大阪大会準決勝で対戦し、敗れたものの「ワクワクした」と認めたのが辻内のストレートだった。
 それぞれに成長した姿での、1年ぶりの対決を是非見てみたい。

 また、ジュニアオールスターと聞いて、いつも僕の頭に浮かぶのは92年のゲームのことだ。8回に中村紀洋の代打で登場したイチロー(当時は鈴木一朗)が有働克也(元横浜ほか)から東京ドームのライト中段へ決勝アーチを放ちMVPを飾った一戦。見た目は華奢な高卒ルーキーが放った完璧なホームランの記憶は今も鮮明に残っている。

Victory
岡田はフレッシュオールスター出場が決定。辻内(巨人)との再戦が楽しみだ

 もちろん、岡田がその話を知ることはなかったが「えっ、そうなんですか」と関心を示したので、そこから少しイチロー話となった。そして、1年目のウエスタンで.366を打ち首位打者を獲得したことも話すと「さすがですよねえ。高卒で3割、3割6分ですかあ…」と改めて感じ入っていた。
 今度は岡田の番だ! イチローがスターの足がかりを掴んだ舞台で、新たな伝説をスタートさせるド派手な一発に期待したい!

5月31日現在の岡田貴弘の成績(ファーム)
31試合 114打数26安打 打率.228 2本塁打 9打点 10四死球 28三振

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は6月11日です。

2006-05-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第6回-

 シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は第6回です。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。プロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

依然、好調キープ

Practice_2
頭もサッパリ気持ちも充実の岡田

  前回20日の更新日以降もバッティング好調の岡田。雨にたたられ3試合を流したが、中日(名古屋)、広島(由宇)、ソフトバンク(川内)との3試合でも計13打数5打数とコンスタントにヒットを重ねた。
 その中で17日に由宇で行なわれた試合を観戦。到着したグラウンドではすでにサーパスの練習が始まっており、岡田はティーバッティングの最中。そこでまずは、一塁ベンチ前にいた谷村智啓コーチに話を聞いた。以前も書いたが、谷村コーチはスカウト経験が長く、投手に限らず各選手を観る目が鋭いので岡田に関しても参考になる話をいつも聞かせてくれる。

谷村 なかなかいい感じできてるわ。一時の状態に比べて大化けとまではいかんでも、中化けくらいにはなってきてる。この間の第2号(9日・ソフトバンク戦)も、低目のボールを右手1本で持っていっとった。ああいうのができるようになって打率も上がってきた

 さらにこんな話も加えてくれた。

谷村 名古屋でファーストを守ってた時にファウルフライが飛んできたんやけど、フェンス際まで追ってきて最後にグラブをスッと出してポケットキャッチしよった。ああいうプレーや普段のグラブ捌きをみてても案外器用。守りでの器用さは必ずバッティングでも通じるから、そのいい面が打席でも出てきた感じやね

Runner_1
「若さ」を全面に積極的な走塁も魅せる

 

 その後、左右に打ち分けた"いい感じ"のフリーバッティング、柔らかなグラブさばきでこなしたシートノックを見終えると、間もなくプレイボール。
 広島の先発はかつて巨人に在籍したサンチェを思い出させるフェリシアーノ。
 サーパス戦でも3試合目の先発とあり、球筋も頭に入っていたのだろう。1打席目から積極的に手を出した岡田は2球目の内角ストレートを振り抜いた。
 会心の当たりではなかったが、力負けせず一塁手・浅井樹のグラブの先をゴロでかすめていった打球はライト線へ。ライトの山本芳彦も素早いバックアップでフェンスまでは達しなかったが、迷わず走った岡田は二塁へ滑り込みツーベース!
 すかさずサーパスベンチから「ナイスラン、ゴジー!」の声が飛ぶ好走塁だ。

 ちなみに、バッティングの一方で、最近目立つ"足"について試合後の岡田に聞くと「まだ若いんで」と笑っていた。
 続く2打席目は少し落ちたボールをやや引っ掛け気味にセカンドゴロ。3打席目は再びインコースのストレートを引っ張り、一二塁間を破るヒット。本当にヒットは普通に出る感じになっている。
 4打席目は外のストレートにサードゴロ、この当たりも悪くなかった。コースに逆らわずにバットが出ていた。

スイングの軌道修正

Game_1
由宇での広島戦でもまずまず好調。もう少し打球があがり出せば!?

 試合後、移動のバスへ急ぐ列の中からまず藤井康雄コーチに聞いた。
 前回観戦の9日の試合後に聞いた時には「もうちょっとのところまで来てるよ」と話してくれていたが、今日は僕を見つけるや藤井コーチの方から「よくなってきたよ」とニッコリ。さらにこのところのヒット量産の一因を明かしてくれた。

藤井 10日ほど前からスイング軌道を変えてやってるんですよ。元々バットが少し外から出る感じがあって、それで落ちるボールやインコース低めのスライダーなんかに空振りすることも多かった。だから今、簡単に言えばそこをインサイドアウトの軌道になるようにやってるところ。もちろんまだ段階の1つに過ぎないけど、少しずつ練習の成果も出てきてるよね

 前回少し書いた、アウトステップした形から内側の球を逆方向へ返すティーバッティングなども、その"練習"の一環だ。

 そして、最後にバットとバッグを両手いっぱいに抱えながらバスへと急ぐ岡田を捕まえた。

谷上 今日の感じは?
岡田 かなり良かったですよ
谷上 プロ入り以来、最高に近い状態じゃない?
岡田 そうですね。一番いいくらいの感じです。バットもいい感じで出ていると思うし、打席の中で少し余裕も出てきました

故障には細心の注意を!

 好調を語る岡田に余計なお節介かとも思いながら、ひとつ気になっていたことを伝えた。
 それは、これまで何度か見かけた一塁走者となった時の帰塁の仕方だ。
 実は、岡田は結構な割合で頭から戻る。それだけ大きなリードをとる姿勢は素晴らしいが、そのシーンを見るたび僕の頭には「あれでケガしたらどうするんや」という福本豊さんの口癖が浮かんでいたのだ。

 事実、ようやく本格復帰を果たした浜中治(阪神)の右肩の故障も、一塁帰塁によって起きたアクシデントが始まりだった。岡田と同じ中日のルーキー・平田良介が昨秋のAAA大会で右肩を負傷した最初のきっかけも同じパターン。

 ただ、福本さんもおそらく直接忠告したこともあるはずの赤星憲広(阪神)などは今もしばしば頭から帰っている。
 しかし、赤星の「ウリ」は何より足であり、そこでギリギリの勝負を求められる選手。対して岡田の最大の魅力は当然そのバッティングにある。やはり致命傷となる怪我だけには注意してほしいということだ。

 奇しくも先日、岡田が尊敬する松井秀喜(ヤンキース)が大きなケガをした。
 術後の会見で「僕の中では最善を尽くしたプレー。やり直したとしても同じプレーをしたと思う」と話したように、防げないアクシデントはある。
 ただ、松井が1768試合もの連続出場を続けてこれたのは、防げる事故を防いできたからにほかならない。そんな僕の言葉に岡田は「そうですねぇ…」と黙り込んだ。

Sarpus
現在、サーパスはウエスタンリーグ首位を快走中

 もちろん、最後は自分自身の判断で…となるが、くれぐれも故障には気をつけてもらいたい、という意味を込め、あえて言わせてもらった。
 しかし、そういったところへ目が向くようになったのも、好調なバッティングがあればこそ。今の僕の注目は「いつ打球が上がり始めるか」その一点だけにあるといってもいい。

5月20日現在の岡田貴弘の成績(ファーム)
23試合 92打数22安打 打率.239 2本塁打 8打点 7四死球 21三振

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は6月1日です。
 また、5月10日発売の次号『野球小僧6月号』にて、ブログとの連動企画として岡田選手の記事が掲載されています。まだ、ご覧頂いていない方はぜひご一読を!

2006-05-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第5回-

Okada05_top  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は第5回です。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。そのプロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

Dr_tokunaga思わぬラッキー
 4月26日の中日戦(名古屋)以降、しばらくサーパスの試合が空いたことや、他の仕事と重なったりしてなかなか観戦に向かえなかった。
 そこでネットや新聞で結果を拾っていたところ、5月2日からの広島戦3連戦と6日の阪神戦で2、1、0、1と計4安打。ヒットが珍しくなくなってきた。
 ヒットが珍しくなくなってきた状況を喜んでいたのはいいが、気がつけばもう8日だ。更新間近というのに今回はまだ一度もプレーを見ていないし、本人の話も聞いていない。どうしたものか…、と頭を捻っていたところ「もしや」と思いついたことがあった。
 サーパスは基本的に月曜日が「オフ」なのだが、以前、岡田から「その時はたまに徳永さんのところへ行ってます」と聞いていた話を思い出したのだ。「徳永さん」とは「ナニワのゴジラ伝説を追え!」(昨年9月発売の『野球小僧10月号』に掲載された記事)の中でも取材させてもらった、岡田が中学時代から通う大阪にある治療院の先生のことだ。
 唐突ではあったが、わずかな望みを持って徳永先生のところへ電話をかけてみた。企画の趣旨説明すると、「そういうことなら」と先生から返ってきたのは「もうすぐ来ますよ」というこれ以上ないひと言。早速、出発の準備を整え昼前の治療院へ一目散に向かった。

ついに2割台へ突入!
 岡田が通う目的は「治療」より「ケア」にあり、疲れをためこまないうちに体を整えておこう、ということだ。気心の知れた先生の治療によるリラックス効果も大きい。
 しばらくロビーに飾られた若かりし頃の藤井コーチや大島公一コーチ、酒井勉スカウトらの写真を眺めていたところへ、治療を終えた岡田が登場。さすがにこういう場所で会うといつにも増して「デカイ」! 少し先生とも話をさせてもらい「コンデイションは問題なし。もうちょっと慣れてくれば打ち出すでしょう!」という力強い言葉をもらったところで、僕らは治療院を出た。そしてブラブラと歩きながら即席インタビューを開始。ベンチ裏でのいつもの取材とは違い、リラックスした感じで名古屋以降の近況を中心に聞いた。

岡田 広島の初戦の2本は、三塁線とレフト前でした。逆方向でも理想はもっと左中間に飛ぶ強い打球なんですけど、まだそこまではいかないですね。でも、少しづつ良くはなってきてると思います
谷上 名古屋で見ていた時も、フォーク系のボールに対応していたし
岡田 フォーム的なものもあると思いますけど、一番は慣れかな、と今は思ってます。慣れてカットできるようになってきたし、見極められるようにもなってきた。でも、その日の状態が試合前のフリーバッティングで打ってみないとわからなくて。高校の時は2週間くらい好調の期間が続いたんですけど、プロに入ってからは日によって状態が全然変わるんで、そのへんがちょっと…
谷上 それと、打球がもっと上がり出せば、というところも?
岡田 そうですね。でも、広島の初戦ではいい感じのライトフライがあったんです。で、その試合で2安打ですから、調子が上向いてくれば打球も上がっていくと思っています

 しかし、思えば3回目のレポート時には.152だった打率は4回目、そして今回と3分、3分とアップし一気に2割台へ突入! 1軍でいえば中村紀洋並みの急上昇ぶりは、シーズンに入って以降では一番の状態といっていいだろう。

足でも魅せたゴジラ
Okadas_running  しかし、話を聞くと、やはりプレーも見たくなる。そこで翌9日は何とか時間の都合をつけ、急遽、試合開始直前に「あじさいスタジアム」へ飛び込んだ。
 この日はソフトバンク2連戦の初戦。相手先発は、右サイドハンドからのストレートがややデニー(中日)を連想させる高橋秀聡。その3打席目、岡田は真ん中低目のおそらくストレートにバット合わせると、打球は強いゴロでセンターへ。やはりヒットは当たり前に出る雰囲気になってきた。
 ただ、その日一番の見せ場は驚くなかれ足だった。2打席目にショートゴロエラーで出塁した直後、次打者・前田の初球にいきなりスタート。悠々とプロ初盗塁を決めたのだ。
 前回の記事でも少し触れたが、岡田の足は高2の秋の大会ではチームトップの4盗塁を決めたこともあるなど決して遅くない。もちろん相手の警戒レベルの問題もあるが、本人に走る意欲があることと、一定レベル以上の脚力があることは強く強調しておきたい。
 続く3打席目にヒットで出たあとも再三、高橋の牽制に頭から戻る大きなリードで揺さぶるなど、相手にも「岡田の足」を印象付ける一戦となったはずだ。

無念の初バントも爆発の予感
 その日は盗塁ともうひとつ岡田の「プロ初」を見た。
 試合終了直後のベンチ裏で「プロで初めてというか、高校時代もやったことありません」と言った送りバントだ。
 もしかすると、人生初かもしれない貴重なシーンではあったが、振り返る岡田の表情は何とも冴えない。というのも、同点で迎えた10回裏、ノーアウト一二塁の場面で行なったバントはピッチャー岡本の素早い処理で三塁フォースアウトに終わったからだ。
 試合の方は坂口のタイムリーでサーパスがサヨナラ勝ちを飾ったが、それで岡田の表情が晴れることはなかった。
 沈んだ表情にもうひとつ思ったのは、やはり打ちたかっただろうなあ、ということ。「勝つためにやむなし」とはいえ、岡田にとっては何とも悔しい初バントだったのではないか。
 そして僕も、もちろん「初バント」より「初サヨナラ打」を見たかった。また、今の岡田の打席には、そう期待させるだけのムードがある。
 しかし、「もうちょっと。そこまできてますよ」とは試合後の藤井コーチ。爆発を予感しているのは僕だけではない!

と、書いたところ、10日のソフトバンク戦で待望の2号が飛び出したというニュースが飛び込んできた。初回に倉野からライトへ放り込んだという一発。いよいよ、ゴジラの季節到来の予感だ!

Okadas_bunt5月10日現在の岡田貴弘の成績(ファーム)
22試合 80打数17安打 打率.212 2本塁打 6打点 7死四球 20三振

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は5月21日です。

 また、5月10日発売の次号『野球小僧6月号』にて、ブログとの連動企画として岡田選手の記事が掲載されています。
 まだ、ご覧頂いていない方はぜひご一読を!

<写真>
上・毎試合のようにヒットが出るようになった岡田。プロの攻めに慣れつつある
中上・岡田が今でも時折診てもらっている「徳永治療院」徳永文男先生(写真左)
中下・スタートを切る岡田。走るのも決して遅いわけではない
下・ひょっとすると人生初かもしれない岡田の送りバント。だが残念ながら失敗に終わった

(取材・本文/谷上史朗)

2006-05-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第4回-

Okada01  シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポートも今回で4回目に突入しました。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。そのプロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続けてきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

ナゴヤを訪ねてみると…

 今月10日発売の『野球小僧6月号』の中で、「ブログ連動企画」として岡田の「ここまで」をまとめた原稿が掲載される。
 そこでは高校時代の連続写真も使いながら、バッティングフォームの変遷についても触れて書いたが、当時との最も大きな違いとしてタイミングの取り方があった。簡単に言えば以前の一本足から、右足をほとんど上げなくなったのだ。もう少し言えば、一端右足に体重をかけてから軸足に移す中でタイミングを取るようになった。
 このあたりについては前回も少し書いたが、先月18日のソフトバンク戦から試した新フォームに岡田本人も「いい感じです!」と笑顔を見せていた。

 ところが―。

 4月26日に観戦のため出向いたナゴヤ球場(中日戦)で試合前のフリーバッティングを見たところ、なんとその右足が以前同様に上がっていたのだ!!!
 ビジターのため、フリーバッティングに続き行なわれたシートノックのあとベンチ裏で早速、岡田に聞いた。

Okada02谷上 また右足が上がってたけど
岡田 そうなんです。変えた日は確かにいい感じだったんですけど、そのあとがちょっとしっくりこなくて。また昨日から戻しました
谷上 藤井コーチのアドバイスで?
岡田 いや、昨日のフリーバッティングから自分の判断で戻しました。でも、そこからは今日の感じも含めて悪くないです

 確かにその日のフリーバッティングでは藤井コーチが投げる球を気持ち良さそうにスタンドまで運んでいたが、まだまだ試行錯誤の真っ只中といったところだ。

間一髪間に合う

 続けて藤井コーチにも聞いた。
 足を上げずにタイミングを取る形は、自身の現役時代を元にアドバイスしたものでもあった。

藤井 僕の感覚だと1回右足へ体重を乗せると次は左足にしっかり乗りやすくなるんだけどね。そこがどうも思ったほど乗ってこなくて、前に体重を乗せるとそのまま出て行ってしまう。それでもう一度、戻そうということになった

 長年体に染み付いた形を変えるということは、当たり前ながら大変ということだ。
 しかし、この再修正で僕には困った事態(?)が2つ発生した。1つは『野球小僧6月号』の記事の中で、足を上げていないフォームの連続写真を載せ「このフォームが上昇のきっかけになる!」といった感じで強調して書いていたということ。ただ、この点についてはナゴヤ球場から編集部に即連絡を入れたところ、校了直前に何とか間に合い、ページ下の余白に注釈を入れることで多少フォローすることができた。

もう1つの誤算とは?

 もう1つは…。
 こちらは困ったというほどのことではないが、実は前回、岡田と話した時に「フォームが段々、藤井コーチに似てきた」と僕が言ったことがあった。すると本人も「藤井さんの現役時代のバッティングを見たいんです」という話になり、それなら阪急、オリックスのファンだった僕のところに昔のビデオがあるので、それをダビングして渡そう、という話になった。
 その旨を藤井コーチにも話すと「なら、ベテランになってからのものより88年~92年の間くらいのものがいい。その方が今の岡田のタイミングの取り方に合ってると思うから」というアドバイスをもらった。ちょうどいい時代のビデオがあるか心配だったが、幸い押入れの奥から数本、入団間もない頃の「藤井選手」が出場した試合のテープを発見。早速<これが不振脱出のきっかけになるかも…>と期待を込めつつビデオからDVDへのダビング作業に入った。
 で、その一枚を持ってきたところフォームが元へ戻っていたというわけだ。念のため藤井コーチに確認したが「う~ん、今の感じだとこないだ言った90年前後の僕のフォームとは少し違うなあ。あまり参考にならないかな」との言葉。確かにそうだ。少しガッカリしたが、それでもせっかくなので岡田に「藤井選手」の約40打席が入った1枚を渡した。
 また参考になる時があるかもしれないし、何より自分を指導してくれているコーチが現役時代どんなタイプの選手で、どんなフォームで打っていたかを知っておくことは、アドバイスを受ける中で決してマイナスにはならないと思ったから。とりあえず、暇な時にでも見て楽しんでもらいたい。

Hirata ライバル対決再び!

 さて、肝心の試合の方だが、実は観戦日の前日に岡田は公式戦では初の猛打賞を記録。そのあたりについて試合前に谷村ピッチングコーチからこんな話を聞いた。

谷村 昨日の3本は当たり的にはどれもそんなに良くなかったんですよ。でも、途中でスイングバットを止めてサードの頭を越えた当たりなんかも、バットを素直にポーンと出した形が良かったからヒットコースに飛んだ。この当たる角度っていうのは大事ですよ

 谷村コーチは長年スカウトとしての経験があるだけに非常に選手の特徴を掴んで話すのが上手く聞いていてもわかりやすい。また、この「角度」という点で藤井コーチからもこんな話を聞いた。

藤井 昨日、今日のフリーバッティングでは打球に角度が出てきたよね。それまではあまり上がらなかったんだけど、いい角度で上がり出したから楽しみだよ

 こちらも期待を持たせる話だ。さて、そんな中で迎えた一戦には大きな話題がもう1つ。中学のボーイズリーグ時代から「右の平田、左の岡田」と並び称されていた中日の平田良介(大阪桐蔭)が、この試合から右肩の負傷、リハビリを経て実戦へ登場してきたのだ。試合前の岡田も「(平田は)今日出るんですよね。3番ですか?」「センターですか?」と聞いてくるなどやはり少し気になる様子。
 結果から言うと共に1安打、1三振のドローで終了。岡田の1本は1打席目、左腕・小笠原孝のスライダーに軽くバットを合わせ平田の前へ落とした。平田の1本は最終打席でルーキー岸田護(NTT西日本)のスライダーをセンター前へ返したもの。
 ちなみに岡田の残り打席はフォークに空振り三振のほかは2つの内野ゴロ。しかし、三遊間、二遊間とあたりは今ひとつながら打球はヒットコースに飛んでおり、イチローの足があれば2試合連続の猛打賞間違いなしだった(笑・誤解のないように言っておくと岡田は別に鈍足というわけではない)。
 それでもやはり、ヒットコースへ飛ぶ当たりが増えてきたということはやはりバットの出る角度、ボールを捉える角度が良くなってきたから。今度こそ、今度こそ、上昇の気配が僕には見える。次回の爆発レポートをお楽しみに!

4月30日現在の岡田貴弘の成績(ファーム)
16試合 61打数 11安打 打率180 1本塁打 3打点 2四球 15三振

Okada03このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は5月11日です。

 また、谷上氏のレポートの中にも記載されていましたとおり、5月10日発売の次号『野球小僧6月号』にて、ブログとの連動企画として岡田選手のインタビュー記事が掲載されることになりました。そちらのほうもお楽しみに!

<写真>
上・4月25日からナゴヤ球場での中日戦に臨む岡田貴弘
中上・タイミングの取り方は再び足を上げる形に
中下・中学時代からライバル関係が続いている平田良介(中日)
下・始動の形についてはまだまだ試行錯誤が続きそうだ(ティーバッティング時のパートナーは同じく高卒ルーキーの柴田亮輔)

(取材・本文/谷上史朗)

2006-04-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第3回-

Number シリーズとして連載中のオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポートも今回で3回目に突入しました。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。そのプロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続け、『野球小僧』誌上にも関連記事を何度も寄稿してきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

高く険しいプロの壁

岡田 今日は全然でした。なんていうんですかねえ…。バッターボックスに立った時から感じがおかしかったんです

 そう言うと「う~ん」としばしの沈黙に入った岡田。12日に神戸サブグラウンドで行なわれニチダイ戦(プロ・アマ交流戦)のあと、本誌用の取材も兼ね、話をスタートさせたところ、冒頭でこのセリフが出た。
 「4番・レフト」で出場したニチダイ戦は、好球を仕留められず、落ちるボールを見極められず、3打数ノーヒット。チャンスで巡ってきた第4打席では開幕戦の最終打席以来となる代打(鈴木邦洋)も送られ途中交代となった。
 試合後に藤井コーチとマンツーマンでロングティーを行い「あの時は結構いい感じで打ててたんですけど、生きた球を打つとどうも…」と歯がゆい思いが続けて口をついた。
 そんな状況の中で約50分話を聞いたが、話題の大半はバッティングフォームに関するものとなった。高3の夏以降、プロでの対応を頭に置き自分なりにどう考え、どう変えてきたのか。そして、その結果として今、見えている課題、取り組んでいる形とは…。
 フォークの変化に「プロの壁」を乗り越えようと格闘する岡田の思いが見て取れるはず。このあたりの詳細は6月号の誌面をお楽しみに。

Groundkeeping00今は技術より馬力

 週末は場所を由宇(山口県)へ移しての広島戦。初戦が4打数ノーヒット1三振で「ニチダイ戦の時と同じ感じで全然ダメでした…」。1日雨で流れたあとの2戦目も4打数ノーヒット3三振で「感じは悪くなかったんですけど、なかなか結果につながらなくて…」。この時点で打率は.171にまで下がってきたが、首脳陣は使い続けることを確認し合っている。大石大二郎監督に聞いた。

大石 技術的にいいところですか? う~ん、今のところないですね。バッティング練習の芯で捉える確率の悪さがそのまま試合での結果につながってるし、すべてにおいてまだまだ。でも、試合では使い続けますよ。技術はないけど、彼には馬力があるから(笑)

 大石監督なりのゲキを含んだ言い回しだったが、この「馬力」「体の強さ」といった点は、多くの関係者がまず初めに口にする岡田の長所。キャンプ中に少し腰を痛めるアクシデントはあったものの、ここまでプロの練習、スケジュールをしっかりこなし、全試合に出続けている。これはファームとは言え、高卒ルーキーとしてはやはり特筆すべきことなのだ。

Longtee00 フォーム改造へ

 18日からは地元へ戻ってのソフトバンクとの2連戦。練習開始に併せ9時過ぎに「あじさいスタジアム」へ到着し、フリーバッティングもしっかり観戦。ところが、絶不調と覚悟して見始めたところ、数本のフェンスオーバーも含め、思いのほかいい打球が飛んでいる。そこで一段落となったところで藤井コーチに聞いてみた。

藤井 これまでフォームについてはほとんど言わなかったんですけど、今日からタイミングの取り方を変えてやってみてるんです。僕の現役時代に近い形なんですけど、今見た感じはなかなかいいんじゃないかな

 ごく簡単に言えば、これまでは少し大きめに上げていた右足をほとんど上げずに、投球動作に合わせ軸足側に小さく引くようになった。そして軸足側に引き寄せるようになった。そして、そこで1つ足先で「クンッ」とリズムを取りボールを捉えにいく。続けて本人に聞いた。

岡田 感じは良かったです。高校時代はあまり意識してなかった『割り』をプロでは意識するようになってから、足を上げた時に腕と体も上に伸び上がるような感じになってたんです。でも、このタイミングの取り方だと上下の動きも少なくなるので、伸び上がりもなくいい感じで『割り』ができるように思います

16打席ぶりのヒット!

 「あとは試合で、どうかです」といって入っていったゲームの2回裏。「8番ファースト」で先発出場した第1打席で早速その成果を見せ、ニチダイとの交流戦も含め16打席ぶりとなるセンター前へのヒットを放った。そして捉えたのがソフトバンク先発・田之上慶三郎のフォーク。これまで見極められずに苦しめられていたボールを拾って、運んだ一打は「公式戦では初めて(フォークを)打てた」(岡田)という当たりでもあった。しっかりとした「割り」によってボールを見極める「間」が生んだ一打と言っていいだろう。
 その後はセカンドゴロ(エラーで出塁)、四球、セカンドゴロで終わったが、打席の中でバタバタしたり、振らされている感じはなく、打撃指導の中で藤井コーチが繰り返し言っている「いつでもいらっしゃい、という形で投球を待つ」という雰囲気も出てきたように思う。試合後、再び本人に聞いた。

岡田 良かったです。しっかり見れましたし、今日は良かったです!

 このレポートを書くようになってから一番の笑顔と弾んだ声でそう返ってきた。もちろん、「これで掴んだ!」というほど甘くはないだろうが、モヤモヤッとしていた中で手応えを感じさせる試合となったことは確かなようだ。そして、あとになり「あの1本が…」と振り返るかもしれない大きな一打は、僕の岡田観戦時、15打席目で出た記念すべき初ヒットでもあった。さあ、次回こそこの流れに乗って快打連発のレポートをお届けしたい。

※「第2号が出るかも…」と期待した翌日は3打数ノーヒット。一気に上昇!とはいかなかったが、次に期待させるムードは出てきた。

Okada0020日現在の岡田貴弘の成績(ファーム)
12試合 46打数 7安打 打率.152 1本塁打 1打点 3四球 11三振

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していきます。次回は5月1日です。

また、谷上氏のレポートの中にも記載されていましたとおり、5月10日発売の次号『野球小僧6月号』にて、ブログとの連動企画として岡田選手のインタビュー記事が掲載されることになりました。そちらのほうもお楽しみに!

<写真>
上・練習に耐えられる頑強な肉体を誇るのは岡田の強み。一流プロの条件のひとつでもある
中・藤井康雄コーチの指導によるロングティー。ついにフォームの改造に乗り出す
下・好感触→即大活躍とはいかないのがプロの厳しさ。それでも岡田は笑顔を絶やさず明日に向かって突き進む

(取材・本文/谷上史朗)

2006-04-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第2回-

Number_1  本日2回目をむかえましたオリックス・バファローズ岡田貴弘選手のレポートです。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。そのプロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続け、『野球小僧』誌上にも関連記事を何度も寄稿してきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートをご覧ください。

           

Batting 待望の一発!

 「今日の試合で1号が出たみたいです!」
 6日(木)の夕方。別件の取材を終え一息ついていたところへ、連絡をくれたのは岡田のお父さん(秀和氏)。昨年、『野球小僧10月号』に掲載された岡田の特集記事を書く際に取材させてもらって以来、時折、連絡を取らせてもらっていたが、さすがに声が弾んでいた。教育リーグではチーム1の打率.351を残すなど順調なスタートを切ってはいたが、やはりアーチスト岡田に待たれていたのはこの一発。
 記念すべき初アーチは鳴尾浜球場で行なわれた阪神戦の2回表、プロ17打席目に飛び出した。相手ピッチャーは同じくルーキーでスピード自慢の金村大裕(大商大)。翌7日にサーパスvs中日戦が行われる「あじさいスタジアム」へ向かい、本人に記念弾の感想を聞いた。

岡田 コース、高さ的にも真ん中に近い真っ直ぐで、結構手応えもありました。ここまでなかなかホームランが出てなかったんでやっぱり嬉しかったです

 紅白戦なども含め、ともかく実戦でのプロ初ホーマーは緩やかな放物線を描きライト後方のネットを揺らしたそうだ。本人にとっても気持ちを楽にする1本となったはずで、ここから一気に! と、いきたいところだったが、そう甘くないのがプロの世界だった。

                 

難敵・フォークボール

 コメントを聞いた日の中日戦は5打数ノーヒット3三振。首脳陣からは「三振を怖がるな!」とも言われており、それ自体を気にする段階ではない。が、その日はなかなかフルスイングをさせてもらえず苦労しているように見えた。
 1つ目の三振は佐藤充のフォークを空振り、2つ目は石川賢のストレートを空振り、3つ目は遠藤政隆のフォークを空振り…。いずれも1軍に近い投手ということもあってボールのキレ、コースも良かったが、中でも今の岡田にとって大きなポイントとなっているのがフォークの見極め。

岡田 高校まではフォークを投げる投手はそんにいなかったんで、やはりそこは大きな違いです

と本人も認めている通り、アマチュア、特に高校からきたバッターには落ちるボールへの対応は大きな課題となる。
 2つ目の三振を喫した第4打席はオールストレートで、3球勝負の最後は外のボールへの反応が遅れたような空振り。おそらくは1打席目の三振や3打席にセカンドゴロへ打ち取られたときのフォークが頭にあったからだろう。
 ただ、こういった状況は十分予想されていた。雨のため5回途中でノーゲームとなった開幕戦の試合前に聞いた藤井康雄コーチの言葉を思い出す。

Under_the__guidance_of__mrfujii藤井 教育リーグの途中までは相手も「岡田ってどれくらいのもんなんや?」って感じで攻めてきていた。実際ストレートも多かったし、変化球もそう厳しくはなかったからね。でも、後半からは攻め方も厳しくなってフォークも多くなってきて。だからこれからの実戦ではこの落ちるボールへどう対応するかがひとつのカギになっていきますよ

 それでも、高卒ルーキーにしてスタート段階で相手をいわば「本気」にさせた岡田の力はさすが。普通ならまだ単純にボールのスピードや木製バットへの変更に戸惑っていておかしくない時期なのだからだ。そして、この対応能力の高さが岡田の長所の1つでもある。
 観戦できなかった翌8日にはレフトオーバーのツーベース、ライト前ヒットと2安打。9日に再びあじさいスタジアムを訪ねると試合前に藤井コーチが教えてくれた。

藤井 昨日はね、落ちるボールにつられず見逃してましたよ。もちろん、相手投手のレベルにもよるけど「やるな」という感じは見せてくれた

                     

「感じは悪くない」 

 その言葉にまた楽しみをもらい、中日3連戦の最後となるゲームを観ることに。しかもスタンドでは応援に駆けつけていたご両親を初めとする岡田ファミリー、岡田の中学時代のコーチで今も良き相談役の片山通弘さんらと並んでの観戦。なおのこと「ナニゴジ」の大爆発を期待したが…。
 残念ながら結果は三振、セカンドライナー、三振、セカンドフライの4打数ノーヒット。今日の2三振は昨年一軍で47試合に登板した150キロ近い球速を誇るサイドハンド・鈴木義広と変則左腕・小林正人の外のストレートを共に空振りしてのものだった。
 中には惜しい一打もあった。ランナーを一二塁に置いて迎えた第2打席では鈴木の初球スライダーを捉え、打球は低いライナーで右中間へ。「初タイムリー!」と一瞬スタンドも沸いたが、二塁ベース寄りに守っていたセカンド森岡良介がこの打球をキャッチ。飛び出した二塁ランナーも戻れずダブルプレーとなってしまう。
 そして、一打同点の場面で立った9回裏では、金剛弘樹の高めストレートを一閃。タイミングはドンピシャに見えたが、高々と舞い上がった打球はセカンドフライ。バットの上っ面だったか、もったいない!
 ただ、今日の4打席のうち3度はファーストストライクを打ちに出ており、岡田の調子を計るひとつのバロメーターといっていい積極性、反応の良さは見えている。「感じは悪くない」と口にする本人の言葉通り、また次に期待だ。

                 

そういえばまだ…

 そういった結果の一方で、ここまでの岡田を眺めながら“恵まれているなあ”と感じている。
 それは何より試合に出し続けてもらっているから。開幕からの8試合すべてにスタメンに名を連ね、途中交代は初戦の最終回に筧裕次郎を代打に送られた時のみ。バッティングにしても守りにしてもどんな練習より、やはり試合での1球に勝るものはない。その貴重な経験を誰よりも積めているのだから恵まれている。
 9日のゲームでも、試合は膠着状態(最後は早川大輔のサヨナラタイムリーが飛び出し5対4でサーパスが勝利)で目まぐるしく選手が入れ替わる中、左対左の場面でも岡田は打席に立ち続けた。“試合に出して大きく育てよう”という首脳陣の意図、期待が十分見て取れる起用だ。
 まだ数字がついてきておらず、その中で出続けることは本人にとってプレッシャーとなる面もだろうが、この経験もまた必ず大きな力となって返ってくる。今はただガムシャラにプレーしてほしい。
 とは言いつつ、個人的にはやはり数字も気になる。そんな中、9日に並んで観戦していたお父さんから耳に痛いひとことをもらった。
「谷上さんが来ると打てないのかなあ(笑)」
Okada  そういえばここまで降雨ノーゲームの試合も含め僕が観戦した打席では11打数ノーヒット。気付けばまだヒットも見ていない上、なんと5三振!
 自称“岡田ライター”として、あらぬジンクスが定着しないうちに会心の一撃を見たいものだ。

※10日現在の岡田の成績
8試合 32打数 6安打 打率.188 1本塁打 1打点 2四球 6三振

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していく予定です。次回(4月21日予定)のレポートをお楽しみに。

<写真>
上・6日にファームの公式戦で待望の一発が出た岡田
中・藤井コーチによる指導風景。落ちるタマの克服を目指す
下・「感じは悪くない」という岡田。自然と表情も明るい

(取材、本文・谷上史朗)

2006-04-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第1回-

Batting_1 本日から、新たな連載企画が始まります。
 昨年、高校生ドラフトでオリックス1位指名を受け入団した「ナニワのゴジラ」こと岡田貴弘選手。そのプロ1年目の奮闘ぶりの模様を、履正社高校の下級生時代から取材し続け、『野球小僧』誌上にも関連記事を何度も寄稿してきたライターの谷上史朗氏がお届けします。
 高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから「ナニワのゴジラ」という呼び名がついた岡田選手。プロ入り後、どう成長していくのか? 必見のレポートです。

ナニワのゴジラ見参!

 早いものでセンバツもいよいよ残り2日。桑田二世や離島のドクターKの活躍など、やはりスターが現れると戦いも盛り上がる。
 そこで思い出せば、昨年の高校球界の話題の中心にいたのはナニワの四天王。揃ってドラフト1位でプロへ進んだ辻内崇伸(大阪桐蔭→巨人)、平田良介(大阪桐蔭→中日)、鶴直人(近大付→阪神)、そして岡田貴弘(履正社→オリックス)の4人だ。
 それぞれにスケールもあり魅力的な選手だが、取材を通しより強い興味を持ったのは岡田。高校通算本塁打55本は70本の平田に及ばなかったものの、何よりアーチストとしての魅力に嵌った。星稜時代の松井秀喜(ヤンキース)とも対戦経験を持つある高校の監督は「高校時代の松井と比べてどっちか上かと言われたら迷う」と言ったそうだ。
 また履正社高校の岡田龍生監督からは「清原、松井に続くホームランバッターの系譜に乗る男」という言葉も聞いた。確かにそのレベルの選手だった。そんな岡田貴弘の成長記録。そこでここでは、近い将来、球界を背負って立つであろうアーチストのプロ1年目を追う。

教育リーグから見せた怪物の片鱗!

 3月28日。甲子園球場を背に向かったのは神戸市北区にある「あじさいスタジアム」。 オリックスのファーム、サーパスの本拠地だ。到着間もなく、打撃練習を終えサブグラウンドへ向かう岡田を捕まえた。

谷上 調子はどう?
岡田 ボチボチですね

 言葉以上にニッコリと返してきた表情にプロの世界での順調なスタートが見て取れた。

谷上 プロのボールは?
岡田 やっぱり全然違います。同じ130キロ台後半でもキレが違います

 プロに入ればどんな強打者も口にする"差"だ。
1stbase_feelding しかし、そう言いながら先に行なわれた教育リーグでは37打数13安打。「1人で打ってましたからね」と藤井康雄打撃コーチも感心しきりの実戦デビューを飾った。2月頭に高知キャンプを観戦した際には、腰の違和感から別調整をしていて少し心配したが不要だった。

岡田 キャンプから戻って2日目に1箇所バッティングをしたんですけど、その時に感じが掴めて。そこから上手く実戦に入っていけました

開幕戦スタメンデビューも…

 そんなオープン戦も終わり、いよいよウエスタンリーグ開幕戦。岡田は「7番ファースト」でのスタメン出場となった。高校時代の大半はレフトだったが、グラブ捌きは柔らかく先々はファーストでの出番も増えるはずだ。
 さて、気になるデビュー戦の結果は広島先発・玉山健太の前に2打数ノーヒット。2回の第1打席は、ランナー一塁の場面で1-1から内のストレートに差し込まれショートゴロ(二封)。高校時代よりもやや重心を低くし、腕を柔らかく使おうとする意識が見て取れた構えからは、通算282本塁打、左のスラッガーとして活躍した藤井コーチの現役時代がチラチラ。
 4回の第2打席は追い込まれたあとファウルで粘ったが、7球目の外角ストレートに空振りの三振。しかし、結果はともかく、打席に立った時に感じるワクワク感、体の大きさだけでなく際立つ存在感は<プロのグラウンドでどう見えるか>と注目した僕の期待をも上回るものだった。
 それで何故2打席しかなかったのかと言えば…。1対1で迎えた5回表、広島の攻撃中に試合開始直後から降り出していた雨が強まり降雨ノーゲームとなったから。何よりこれが残念だった。

目標は元祖ゴジラ・松井秀喜!

 雨の中、帰りのバスへ乗り込むところで再び直撃した。

谷上 今日のバッティングについてひとこと!
岡田 感じは悪くなかったです。でも、2打席目のあとベンチへ戻ったら『三振を怖がるな!』って言われました

Fan_service  そして「また明日です、ハイ」と言ってバスへ乗り込んでいった。最後にはまたいい笑顔を見せながら。岡田に惹かれた理由の1つはその人柄にある。プロ入り以前は周囲から「優しすぎる」「大人し過ぎる」といった声も聞かれたが、朗らかで好感が持てる好青年。この部分でも非常に魅力的なのだ。
 さて、バッターとしても人間としても尊敬する松井秀喜を追って、ナニワのゴジラから、日本の、そして世界のゴジラへ! 岡田貴弘のプロ野球人生がスタートした。

※仕切り直しとなった翌日は「8番ファースト」で3打数ノーヒット。昨日のソフトバンク戦(雁ノ巣)も「7番レフト」で3打数ノーヒット。産みの苦しみを味わいつつ、そろそろ初日が出る頃か。

このシリーズは、今後、毎月1日、11日、21日に更新していく予定です。次回以降の岡田選手のレポートをお楽しみに。

<写真>
上・オープン戦は打撃好調。高校時代よりも柔軟性が出てきた
中・一塁守備も無難にこなす
下・少年にサイン。今の時期から応援してくるファンはありがたい存在だ

(取材、本文・谷上史朗)

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